2012年12月17日月曜日

20121216 25th AADO-OLC comprehensive bioskill course on fracture fixation その4


変形治癒偽関節
変形治癒偽関節について明確な定義はないなにをもって骨癒合とするかとい定義もはっきりとしたもはない関節内変形が残存することが基本的には許されていないだろといがコンセンサス

外傷後関節感染
開放骨折は全身状態悪化軟部組織防御組織破綻出血など感染が成立しやすいすべて要素を備えている
とにかく抗生剤投与は早く開始すること3時間以内が望ましい基本的にはCEZGM投与香港先生たちはこれにシプロキサンを加えていたが別にエビデンスは無さそ
骨折部強固な固定軟部良好な再建が必要である

cadaverワークショップ
脛骨内後方へアプローチ縫工筋前後で分けてダブルインドとして侵入することも可能

後側方アプローチ幸いにして今までそこまで重症な骨折にであったことはないただ三次で外傷を取り扱先生には必要なアプローチなだろ

sural frap, medial gastrochnemius flap, soleal flap一応勉強していたつもりであるが全く刃が立たなかった。。。もしおこなといことであるならば皮弁を体系的に学ばないと行けないだろと思った。今の自分の実力では無理ですね。。

講義の内容は日本で散々セミナーに出席してきたので、びっくりするような目新しい内容はありませんでした。
しかしながらこの香港の外傷チームは外傷チームとしてそれぞれ役割を与え、教育システムを構築し、このようなセミナーを世界向けに行なっているところが素晴らしいと感じました。

日本で漫然と聞いているのよりは刺激にもなりますし、是非次の機会もあれば参加したいものです。




20121216 25th AADO-OLC comprehensive bioskill course on fracture fixation その3

さてはて、このコースも2日目。

このセミナーの時間のルーズさにはびっくり。笑
まったく予定通りに講義が終わりません。まあ、こんなものかもしれませんね。
講義をしてくれるのはprofecerから若手まで。
若手の先生が自信をもって自分の担当分野を講義する様子に感銘を受けました。
英語の勉強にはなるし、プレゼンテーションの練習になるし一石二鳥ですね。

日本でこのようなセミナーが行われない理由は言葉の壁が大きいそうです。。。。
同時通訳をいれるとものすごくセミナーへの参加費が高くなってしまうそうです。
英語でもいいから、いい話を聞きたいんだ!という強い気持ちを持つことが大事ですね。

創外固定の基礎と合併症
ピンが太く、ピンとピンの間が広く、ピンの数が多いこと、骨とロッドの間が短いことで固定性が増す。
ピンサイトの感染が0−15%で発症。またピンのゆるみ、創外固定器による褥瘡の出現。(特に骨盤創外固定)には注意。

大腿骨転子部骨折の過剰なスライディングの話。
患者側の要因よりも手術での整復が髄内型、外側型になっていることが問題であると。おこがましですが統計学的検定が惜しいなあと。整復などは骨折型と交絡が否定できませんので因子間の調整を行った上でlogistic multivariate regressionを行うべきであると考えました。

膝蓋骨骨折
全人口の1%にみられる骨折であるが未だにcochraneにのるような質の高い研究は無い。とのこと。皆が経験的に治療をしている。
横骨折であればtension band wiringは効果的であるが、斜骨折、少しでも粉砕があるような場合には有効ではないので注意。私が普段おこなっているk-wireをもちいたtension band wiringはmodifiedだったのですね。。。。
皮切は縦が良いのか横が良いのか、K-wireをどれだけ入れいるのか、いつリハビリを開始するのか、術後の固定は必要か、免荷はどうするのかといった内容に答えは未だ見つかっていないと。
香港の先生は経皮的なwiring、関節鏡下での整復位確認などを行なっているということでした。変わったことするなあと。笑。けど、面白い目の付け所だと思います。
distal pole fracture(sleeve fracture)はpartial paterectomyをするとのこと。へえ。

足関節骨折
三角靭帯は距骨の動的安定性に関わっている。Micheal PらのArch orthopでの内反受傷型の足関節骨折のreviewでは4ミリ以上の内側関節開大、ストレステストでの5ミリ以上の関節開大があれば三角靭帯の再建を追加すると良いとのこと。
Syndesmosis screwの話。骨折型を評価して前脛腓靭帯が5ミリ以上開いていれば固定術を。アメリカではスクリュー4,5本で、ヨーロッパ、香港では1本のスクリューで止めることが多いと。
この部分の関節はなかなか上手に整復、固定できていいないことがおおいと。術後CTで確認すると脛腓靭帯の亜脱臼が50%以上に見られる。

コンパートメント症候群
とにかく痛がるので、痛がったら内圧はかって筋膜切開。

神経血管損傷、軟部組織再建
神経血管損傷を起こしやすい脱臼、骨折を知っておく。(膝関節脱臼と膝窩動脈、上腕骨骨折と撓骨神経麻痺みたいな。)。骨折にともなって起こる神経麻痺は時間はかかるものの基本的には予後良好なことが多い。ただ整復で骨折部に巻き込んでいないかの確認は必要。
軟部組織再建は”reconstruction ladder”の原則を知っておく。VACによる陰圧療法はやはり有効であるとの認識。
ただfree flapなどが不要になるわけではない。

2012年12月16日日曜日

20121215 25th AADO-OLC comprehensive bioskill course on fracture fixation その2

プレート理論
プレートの理論はAO principleで聞いた話とほぼ一緒。むしろAO principleのほうが体系だっていて良いと感じた。
自分が使っているプレート、スクリューの意味を考えながら使用すること。
compressionによる一次骨癒合を目指しているのか、それともbridgingによる二次骨癒合をさせようとしているのか。
コーティカルスクリュー、ハーフスレッドスクリューなどの使いわけ。
Plate-Span ratio, Plate screw ratio。
骨折部をまたぐだけの十分な長さ(2倍から3倍)のプレート。骨幹部でスクリュー穴の50%、骨幹端部は75%を固定。骨折型によって固定するスクリュー数を決定。
ロッキングスクリューは先端のセルフタップの部分での固定性が低いので長さに注意。

髄内釘
もっとも患者にたいする侵襲のすくない手術の一つ。筋肉の付着部を考えると転位する方向がわかるので整復の際によく考えること。

ワークショップ
cadaverを使用したアプローチ、固定法の実際。

膝蓋骨固定。十分な幅をもった8の字締結。

大腿骨外側プレート固定。
大腿骨からGardy結節までの長軸方向の皮切。
脛骨のプラトー骨折でも同様。脛骨プラトー骨折の時にはGardy結節からITBをはがして外側半月板を持ち上げて骨折部を直視でみて整復することが重要。

足関節の展開。
外側後側方アプローチ。なれると腓骨筋腱をその腱鞘からはがすだけで早く展開できる。そのまま脛骨後方の固定までいけるので三果骨折のときには有用。

Cadaverはほんとにわかりやすく、今後もそのような機会が得られるのであれば是非体験したいものですね。

20121215 25th AADO-OLC comprehensive bioskill course on fracture fixation その1

ブログの更新も学会などで滞っておりましたが、只今ブログ主は香港に来ております。
香港で25th AADO-OLC CBCFF 2012に参加させていただいております。

AADOーOLCは日本でいえばJABOにあたるものです。
JABOはStr◯ker社が主催する骨折の勉強会の一つです。大腿骨頚部骨折のような誰もが経験する骨折からpilon骨折のようなすこし難しい骨折まで体系だって勉強できる良い機会だと思います。
受講されていない方は是非Stryke◯社の関係者もしくはHPから問い合わせて参加されることをオススメいたします。

AADOですが、JABOのアジア版といった趣の会です。
JABOとの違いは
1.当然英語。
2,cadaverによる実習が体験できる。
ことです。

医療は文化、その国の背景に大きく左右されるところはありますが、それでもタメになりましたので、いくつか覚書程度に残して参ります。

福田先生の大腿骨転子部骨折と整復の評価
AP、MLそれぞれを3つずつ分ける。AP像でmedial, anatomial,lateral
ML像でintramedullary, anatomical, extramedullary
それぞれ近位骨片が遠位の骨片に対してどの位置にあるのかを評価。レントゲン評価でlateral, intramedullaryタイプが最もスライディング量が多い≒整復損失が多い。

そこでk-wireを用いた整復。
前方から先を少し曲げたk-wireを挿入。カパンジー法に準じて回転させながら整復。近位骨片が遠位骨片に対して内側、そして髄外型になるように整復する。

手術計画
レントゲン写真だけでなく患者の状態などもすべて勘案し手術計画をたてる。手術は手術室(Theatre)で行われるので、台本とリハーサルが必要である。
計画は起こり得ることをすべて考えておく。PlanA,B,Cといくつも考えておく。
自分の経験。手術室の設備、周囲の経験量などをふまえて手術は可能な限りのところまでとする。5時間も6時間もかかって整復固定し、感染させるくらいなら創外固定で帰ってくるという選択肢があってもよい。

MIS
傷が小さいことをめざす必要がない。正しく整復、固定できることが重要。

Damage control surgery
Hong KongのQueen Elizabeth Hospitalのtraumatologyの治療の変遷、その治療成績の話。
最近はnon responderに対する治療としてRCC,FFP,Pltを1:1:1の割合で大量投与開始。まずはとにかくペルビックバインダーを装着。FAST陽性であればそのまま回復の準備へ。FAST陰性であれば後腹膜ガーゼパッキング。その後創外固定、TAEを考慮と。これによって死亡率が70%台から40%台までさがったということであった。
治療方法をプロトコールとして院内に周知徹底しておくことが大事。


2012年11月21日水曜日

20121121 Up to date Epicondylitis(tennis and golf elbow)

Victoria Dimuzio

上腕骨上顆炎=テニス肘、ゴルフ肘の治療のマトメです。

Summary and recommendations

・発症の危険因子としては、加齢、一日2時間以上の反復する運動。20kgを超える荷重がかかるような運動があげられる。
・ラケットの扱い方が悪かったり、不適切なラケットを用いているテニスプレイヤーに発症しやすい。
・上腕骨上顆炎の患者では内側もしくは外側の肘関節外の痛みを訴える。内側であれば屈筋腱の収縮、外側であれば伸筋腱の収縮もしくは他動にて疼痛が誘発される。
・鑑別には別に掲げる表のようなものがある。
・上腕骨上顆炎に対する治療のエビデンスはいずれも乏しい。
筆者らはリンク先のアルゴリズムにしたがって治療を提供している。(訳を別につけたものを提示します。)具体的にはテニスエルボーバンド、日常生活動作指導、禁忌がなければNSAIDsの処方を行う。
テニスエルボーバンドは筋腱付着部の負担を軽減し、疼痛、動きの改善が見込める。また上手な理学療法士によってプログラムされた積極的なストレッチングは効果的である。
・ステロイドの腱鞘内注射は短期的な予後を改善しうる。しかしながら再発を防ぎうるものではなく、また長期成績を保証するものでもない。
・この初期治療に反応しない場合には他の治療を提供する。腱の修復に関わる様々な治療が行われているが効果はいずれも限定的である。
・6ヶ月間の保存療法に抵抗し、また強い疼痛、著しい機能障害がある症例は専門医へ紹介を考慮する。


アルゴリズム1 6週間以内の急性期の上腕骨上顆炎に対する治療
アルゴリズム2 慢性期の上腕骨上顆炎に対する治療



<論評>
上腕骨上顆炎の治療のエビデンスの少なさに驚きました。
これだけ多種多様な治療法が提示されているということはいかにこの疾患が治りにくいかということを示していると思います。
腱、腱付着部の病態の解明がすすむと良いですね。

2012年11月19日月曜日

20121108 JBJS(Am) THA vs open reduction and internal fixation of distal fractures RCT and long term follow-up

Insufficiency fracture, left femoral neck, due to disuse osteoporosis from amputation, pelvis

抄録
転位型の大腿骨頚部骨折については、短期のフォローでは、高齢者で内術が固定よりもTHAのほうが成績が良く、再手術が少ないということはよく知られた事実である。
本研究の目的は長期にわたってフォローをしてみても、本当にTHAのほうが臨床成績がよいのか、ということを検証することである。
方法
100例の大腿骨頚部骨折の患者。単施設、無作為割り付け試験。受傷前は健康であった例を対象とした。女性79例、男性21例。平均年齢は78歳。43例にTHA、57例に内固定が行われた。最終評価ポイントは股関節機能とし、Harris Hip Score(HHS).を用いた。十zくする評価因子としては死亡率、再手術率、歩行スピード、ADLとした。
結果
HHSはTHAのほうが高得点であった。平均の得点差は14.7点であった。2群間に死亡率の違いを認め中田。THAの9%、内固定群の39%で再手術が行われた。最終的な再手術率はTHA群が23%、内固定群が53%であった。この結果は術後1年の段階でのADL、歩行スピードにも影響していた。
結論
17年という長期フォローを行った結果、健康な高齢者に発生した転位型大腿骨頚部骨折はTHAで治療したほうが臨床成績がよいことが分かった。

考察
近年健康な高齢者が増加している。健康な高齢者が大腿骨頚部骨折を受傷した場合の長期成績においても、THAのほうが内固定群よりも優秀であった。

THAはcementedにて行われている。使われているステムはチタン合金であった。近年チタン合金よりもコバルト合金のほうが臨床成績が良いことが知られてからは当施設では17年前に使っていたこのタイプのステムを使用していない。

本研究の価値はRCTである上に長期間のフォローを行ったことである。大腿骨頚部骨折の報告は雲の数ほどあるものの、長期成績について述べたものはほとんどない。今後長寿化が予想されるので、長期成績について知っておくことは重要である。

本研究の限界はいくつかある。一つは20年前に行われた無作為割り付けであるのでその確からしさが怪しい。
また完全に健康であった高齢者のみを対象にしていることは注意が必要である。

4年を超えたころから2群間でHHSの点数に差が出なくなってくる。これは多くの患者がTHAにコンバージョンしてしまっていることと、高齢化が進行し、機能低下が避けられないためであると考えられる。

死亡率については両群で差がなく高かった。しかしながら歩行能力はTHA群のほうが高かった。重要なことはTHA群のほうが疼痛なく生活できていたという事実であろう

THA群のもっとも多い合併症はやはり脱臼であった。大径骨頭の使用、後方要素の再建を行うことで脱臼率は低下傾向にあることは追記しておく。

ゆるみについては他の股関節疾患の患者とそれほど変わりは見られなかった。

<論評>
RCTにも関わらず、17年という長期フォロー。恐れ入りました。
確かに大腿骨頚部骨折の患者の長期フォローってなかなか難しいところがあります。
外来の予約日にお見えにならなくて電話をするとご家族が代わりに出られて、他界されたというお話を聞かされることは同様の研究を行ったものであれば一度は経験したことがあるかと。

HHSで20点違うというのはものすごい違いです。疼痛が常時あるか、歩行が必ず杖もしくは松葉つえとなっているか独歩疼痛なしかくらいの差がありますので、患者さんに負担をかけてまで内固定を選択する理由はないものと考えます。




2012年11月12日月曜日

20121109 JBJS(Am) Does sleep deprivation impair orthopaedic surgeons' cognitive and psychomotor perfomance

SLEEP DEPRIVATION ILLUSTRATION


睡眠不足は、反応を遅らせ、判断を鈍らせ、思考能力を低下させる。本研究の目的は睡眠時間によって外傷整形外科医の認知機能や、精神状態が変化するのではないかということを調査した。

方法
都会にある教育研修施設であるような外傷センターに勤める31人の外傷整形外科医を対象とした。(レジデントから指導医まで)。ハンドヘルドのコンピューターを用いて認知機能と精神状態のテストを行った。結果は多変量解析を用いてテストの点数とその他睡眠量などに関連する因子に関して検討を行った。

結果
4時間をしきい値として、4時間以下の睡眠では有意にミスをする可能性が高くなった。(Odd比 1.43)。記憶力、集中力、注意力などでも有意に低くなった。

結論
4時間以下の睡眠しかとっていない整形外科外傷外科医は認知面での機能低下を認めた。このテストが実際にどの程度手術のパフォーマンスと関連しているかは不明である。

考察
本研究は当直/夜勤明けでも働いている整形外科外傷外科医の認知機能面での活動を評価したものである。睡眠が4時間以下となった場合には1つ以上のミスを犯す危険率が43%増加することがわかった。特に連続して記憶する能力の低下が認められた。記憶に関してはミスを犯す危険性が83%増加した。

本研究の対象となった外科医は短期の睡眠障害状態にあるというように本研究では定義されているが、実際にはこの外科医たちは慢性的な睡眠障害に陥っている。NIHの定義によると健康的な睡眠とは7から8時間程度の睡眠を指す。睡眠時間の減少は集中力の欠如、反応時間の遅延、気分障害を引き起こす。この研究に参加した外科医たちの睡眠時間は7時間を下回っていた。平均的な睡眠時間は研修医で5.4時間。指導医で6時間であった。以前に行われた研究では慢性的に6時間以下の睡眠しか取れていないと機能低下することが示唆されている。

もし、一晩寝られないだけで認知機能の低下が認められるようであれば、夜勤の連続は慢性の睡眠障害を引き起こし、より有害である。という結論になるのかもしれない。Saxenaらの研究で自宅までコールがあるレジデントと、自宅へのコールがないレジデントを比較して自宅までコールがあるレジデントのほうが反応が鈍くなってくるということを示している。これらの研究の結果は睡眠障害は認知機能、精神状態に大きく影響するということを示している。

いままで整形外科医に対する同様の研究はなかった。外科医以外での研究はいくつか行われており、それらはすべて睡眠障害が臨床能力に悪影響をおよぼすということを示唆している。ある研究ではコールが連続した状態の能力はアルコール摂取した精神状態とほぼ同じであるとする報告もある。

外科医の能力が睡眠障害によってどう変化するか、について。腹部外科では当直明けの医者が腹腔鏡シュミレーターを行うと手術時間が14%伸び、20%ミスが増加することを示している。この結果はシュミレーターを用いたものであり、実際の手術ではどうなるかは定かではない。

胸部外科の分野では、日中、夜勤帯での手術成績を比較して合併症、死亡率に差が無いことを示している。しかしその前にどの程度働いていたかなどのデータは無いため睡眠障害とどの程度関連しているかは不明である。

本研究の限界はテスト自体が10分間で終わるものであったために、実際の睡眠障害の程度を測る上で適切なテストであったかどうか不明なことである。またテストのまえに普段からのどのような生活をおくっているのかについても聴取できていない。本来1時間程度の精神状態を測定するほどのテストを行わないと行けないのであろうが、日中普通の業務をしている外傷外科医の時間をとるわけにはいかなかったため短時間のテストしか行えなかった。

睡眠障害では連続して記憶していく能力の低下が著しかった。これが注意力の低下、集中力の低下につながっていた。困難な事例に夜間遭遇した際に特に問題になるものと考えられた。

パイロットなどの職業では睡眠障害による害を認め、国家レベルで就業時間の制限を設けているのにもかかわらず、医療関係ではそういった配慮をしないことは不思議なことである。

実際の手術にどの程度影響があるかは本研究ではわからない。今後は睡眠障害と手術の影響についての評価が必要である。

<論評>
アメリカの夜勤帯はハゲしいと聞きますので、一概に日本の当直体制と比べて良いかはわかりません。笑

日本では当直明けそのまま勤務が普通ですので、36時間程度病院にいることは珍しくありません。
『当直』という言葉の定義は『夜間病院で何かがあった時に対応できるようにその病院にいること』ですので、救急などの対応を行うのは『夜勤』であるべきと考えています。

こんなブログを仕上げているひまがあれば早く寝なさいというのが本日の結論です。笑


2012年11月1日木曜日

すごい時代になったものですな。



YoutubeでTKAのビデオが見れちゃうんですね。(in English)

患者教育用ということですが、日本でも普及していきそうな予感。

20121101 JBJS(Am) The influence of obesity on the complication rate and outcome of total kenn arthroplasty : A meta-analysis and Systematic review

obesity signs

抄録
アメリカでは、病的な肥満患者数が増加している。BMI30以上を肥満とすると、肥満患者では明らかに関節症の危険性が高まる。更に肥満患者に対する人工関節置換術はこの10年で増加傾向にある。本研究の目的は肥満が人工膝関節置換術に与える影響についてsystematic review, meta-analysisを用いて評価することである。

方法
文献検索を行い、Cochraneのガイドラインに沿ってその論文に重み付けを行った。

結果
20の文献が評価するに値する文献であった。14の文献、15276例の報告で感染について述べられていた。感染について、肥満であることは肥満でない患者に対してodds比1.90で感染し安かった。再手術、デブリードマンを必要とするような患者については9つの文献で述べられており、肥満であることのodds比は2.38であった。再置換術についてはodds比1.30であった。

結論
肥満であることは人工関節置換術に悪影響をおよぼす

考察
今回のシステマティックレビューの目的は肥満が人工膝関節置換術に悪影響を与えるかどうかを明らかにすることであった。
BMI>30を超えるような肥満であると、感染率、再置換率がより高くなることがわかった。なので、肥満を有するような患者に対しては体重が増えることの危険性について十分に情報提供を行い、また体重コントロールをするように手助けをする必要がある。

感染についてのメタアナライシスを行ったものの、感染率が極めて低いためにバイアスがかかっている可能性が否定出来ない。

肥満患者は肥満でない患者と比べて併存症の率が高い。肥満で併存症のない患者と肥満で併存症のある患者のリスクは同等ではない。今回はBMI30以上を肥満と設定したことでより問題のある肥満患者を抽出したものと思われる。

肥満についてはRCTは困難である。盲検化するのが精一杯である。今回論文のスコア化の方法を用いて幾つかの論文をピックアップでき、妥当性を確保することができた。

とにかく肥満は人工膝関節に悪い。

<論評>
肥満とTKAについてのシスティマチックレビューです。
一般にメタアナライシス、システマティックレビューは無作為割付試験のようなレベル1と呼ばれる高いエビデンスレベルをもった論文をピックアップするのが普通ですので、本研究のように前向き研究、後ろ向き研究からだけでつくられたというのはやや珍しい印象を受けました。
まあ、いわれている内容は別に大したことありませんが、この方法論をしっておくとRCTが困難な外傷なんかも解析が可能になるのかもしれません。

2012年10月18日木曜日

20121018 JBJS(Am) Plaster our orthopaedic heritage その2

前回のポストの続きになります。


David - Napoleon Bonaparte

ナポレオン1世です。
”世の辞書に不可能の文字はない”と言う言葉で有名です。

この時期、音楽の世界ではベートーベンがナポレオンをモチーフとした”英雄”を作曲しましたし、哲学の分野でもヘーゲルなどの巨人が現れたヨーロッパ文明が花開こうとしていた時期といっても過言ではないでしょう。

整形外科分野でもフランスを中心とした治療の進歩がみられます。
なぜフランスで整形外科治療が進歩し、有名な整形外科医が多数出現したのでしょうか。

これはナポレオン戦争では一説には200万人の命が奪われたとも言われています。多分、それの数倍の傷病者もいたのでしょう。

戦傷外傷患者の増加が整形外科分野の進歩を後押しした事は歴史の事実です。

ということでJBJSのナナメ読みです。

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近代の整形外科治療の基礎をつくった4人の軍医がいる。Dominique Jean Larry, Louis Seutin, Antonius Mathijsen, Nikolal Ivanovich Pirogovである。

Dominique Jean Larryはナポレオン1世のワーテルローの戦いに外科主任として参加している。Larryは歴史上初めて衛生兵を組織し、前線に移動用医療ユニットを持ち込んだことで知られている。1812年のBorodinoの戦いで腕を切断した歩兵に対して固くギプス固定をしたところ創部の治癒が得られたことを報告している。

Louis Seutinはナポレオン戦争時代のベルギーの外科主任出会った。Larryの方法を応用し、切断しを羊毛で固く固定している。創部の形に切ったボール紙にでんぷんを浸し、固定していた。この方法によって2,3日で固定ができるようになり、搬送期間の短縮と入院期間の短縮が可能となった。

同時期のもっとも有名なフランスの外科医としてはAlfred Velpeauがいる。(ベルポー固定のベルポーさんですね。)
ベルポーはSeutinの方法を改良し、数時間で固定が得られるようにしたことでも知られている。

Johann Friedrich Dieffenbachはベルリンの整形外科医である。Seutin、Velpeauの方法をもちいて内反尖足の治療を行った。箱の中で尖足を矯正した肢位で助手が固定する。その箱のなかに石膏を流し込み、その後箱を取り外すと言う方法であった。この方法をGuerinがパリで発展させ、かのLancet誌に投稿し掲載されている。(1832年のことです。日本では11代将軍徳川家斉の時代ですな)

この時代の石膏のギプスはまだ重く、全く身動きのとれないようなシロモノであった。Antonius Mathijsen, Nikolal Ivanovich Pirogovという二人の軍医が現代につながるような石膏ギプス方法を発展させた。
1851年に発表されたMatijsenの方法は2重にした布の間に乾いた石膏を挟み込み、容易にまけるようにしたものだった。この方法が現在のギプス包帯の基礎。となっている。

Pirogovはロシアペテルスブルグの軍陣医学学校の外科教授であった。彼は戦場に初めて女性の看護師を導入したことでも知られている。PirogovはMathjjsenの方法を知っていたものの独自の方法でギプス固定を進化させた。
1837年のクリミア戦争でPirogovの方法はロシア軍全体に導入された。

(ちなみにこのクリミア戦争で有名なのがフローレンス・ナイチンゲールですな。クリミア戦争以降環境衛生の概念が急激に発達しますが、その端緒となったのがナイチンゲールの働きです。

Leopold Ollier(多発性内軟骨腫のOllier病のOllierさんです。)がこれらのギプス固定の有効性を骨膜反応を基盤として体系づけた。

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とギプス治療が一気に進化します。コレによれはギプス治療自体は150年間進歩のない治療といって良いのかもしれませんね。それだけインパクトのある治療であったのでしょう。

まだまだ続きます。


20121018 JBJS(Am) Plaster our orthopaedic heritage AAOS Exhibit selection

ギプスの歴史


JBJS(Am)にギプスの歴史が述べられていました。
温故知新。ということですこしこういったところに話をふるのも良いかと思ってまとめてみました。


紀元前3000年~2500年ごろにはヤシの木の枝と葉の繊維で作った包帯で大腿骨骨折を固定し、ギプスのような治療法(いわゆる外固定)はエジプトのミイラに巻かれているものが発見されている。

紀元前600年ごろ、竹の副子による外固定法が行われていた、と古代インド二大古典医学書の一つである「シュシュルタ」に記載されている。
(シュシュルタが外科の教科書。チャラカが内科の教科書。これマメな。)

紀元前460‐377年 ヒポクラテスは骨折治療における添え木と包帯法の重要性を認めていた。この包帯は厚く、また油脂を染みこませることで強度を得ていた。

古代ローマ人は石材、石膏の建築物を多数構築したことで有名であるが、その石膏の知識を医学に応用することはなかった。古代ギリシャの医学者、哲学者であるCelsus、Galenらもバンテージ法による骨折治療を行なっていたという記載がある。

初めて石膏をギプスとして用いたのは、9世紀のアラビアの外科医Avicenna(アバボウエブンシナ)であった。”Canon of medicine”の中で貝殻からの酸化カルシウムと卵白を用いて固定を行ったという記載を見ることができる。
石膏法は12世紀になってイタリアにわたり進化した。骨接ぎ師がぐるぐる巻きにする治療を行なっていた。
同時期11世紀のアラビアではAlbuusasis(当時のアラビアのもっとも有名な臨床医)がサンドイッチ法によるギプス固定を行なっている。

14世紀になりGuy de Chauliac(1300-1370)が牽引と固定を初めて行った。コードと細い棒を用い、ゆりかごを用いて鉗子を挙上し、コードを用いて牽引することでベッド上で患者が動けるようにした。

中世ヨーロッパでは徒弟制で骨接ぎ師がこれらの知識を受け継いでいった。骨接ぎ師のギルドは医師のギルドと異なるものであった。最終的に医学校ができ、そのカリキュラムの中で骨折治療が教授されるようになると骨接ぎ師のギルドは徐々に衰退していった。

硫酸カルシウムは1798年に発見された。現在のような系統だった石膏ギプス固定法は1852年にオランダで開発された。(Dr. Mathijisen 1805-1878)


と続きます。笑

2012年10月12日金曜日

20121012 JBJS(Am) Prognostic factors for predicting outcomes after intramedullary nailing of the tibia

evb_EARL,ROBERT TIBIA FIBULA1165524809000_2_1

長官骨骨折後の予後不良因子を予測することは患者の治療に当たる上で重要である。今回北米での前向き研究(Study to prospectively evaluate reamed intramedullary nails in patient with tibial fractures(SPRINT))を持って多施設での研究を行い、1226例の症例について検討を行った。

方法
ロジスティック回帰分析を用いて手術に関連する要素を解析してみた。

結果
高エネルギー外傷(OR=1.57)、ステンレス製の髄内釘の使用(OR=1.52)、骨折部のギャップの存在(OR=2.40)、術後の全荷重(OR=1.63)が骨癒合に不利な因子として明らかになった。
これにたいしてNSAIDSの使用、手術のタイミング、喫煙状況は独立した危険因子とはならなかった。
開放骨折は骨癒合遅延の予後不良因子の一つである。リーミングしてから髄内釘を入れた場合にはOR=3.26、ノンリーミングではOR=1.50であった。
開放骨折の患者で何かしらの軟部組織再建を加えた場合と、加えない場合では加えない場合の方が骨癒合遅延の危険性が低下した。

結論
脛骨骨幹部骨折に関わる危険因子について大規模な解析をおこなった。これらの要素について前もって患者に伝えておくことが重要である。

考察
脛骨骨幹部骨折ので再手術率は12%から44%までにのぼるとの報告がある。この問題に対処するために今回大規模な多施設共同前向き研究を行なってみた。高エネルギー外傷、ステンレス製の髄内釘の使用、骨折部のギャップの存在、術後荷重状況、開放骨折に対してリーミングして髄内釘を挿入することが危険因子として挙げられた。開放骨折に対する軟部組織再建については複雑な再建術を行うばあいよりも行わない場合の方が危険率が低下するということがわかった。その他の要因については危険因子となりえなかった。

開放骨折の場合にリーミングを行うか、ノンリーミングで行くか、ということは今までも議論されてきた。リーミングを行ったほうが骨癒合遅延が起こる、というのは筆者らの以前の研究でも報告してきた。
Randomized trial of reamed and unreamed intramedullary nailing of tibial shaft fractures. Study to Prospectively Evaluate Reamed Intramedullary Nails in Patients with Tibial Fractures Investigators, Bhandari M, Guyatt G, Tornetta P 3rd, Schemitsch EH, Swiontkowski M, Sanders D, Walter SD. J Bone Joint Surg Am.  2008 Dec;90(  12):2567-78.[CrossRef]
ちなみに有意な差はないとこの時には報告している。)

この他にもネイル径、骨欠損の程度、ネイルの製造メーカーについて検討したがいずれも独立した危険因子とは成り得なかった。

骨折部のギャップは1センチをしきい値として本研究では設定した。1センチのギャップで明らかに骨癒合遅延の危険性がました。

術後に全荷重も重要な因子であることがわかった。これは術後全荷重にしてよいと考える多くの術者の考えとは真っ向から対立する。荷重によって自然なダイネミゼーションがかかるのだが、疼痛、スクリューの破損などの危険もあり、脛骨の骨幹部骨折の髄内釘ではまずは荷重はホドホドにしておいたほうが良いのかもしれない。

喫煙は予想に反して危険因子とは成り得なかった。しかしながら有害であるということがわかっているため、禁煙は推奨した方がよい。

この研究の限界はアルコール使用、ステロイド、肥満などに搗いての調査が行えなかったことである。また比較的若年者を対象としているので高齢者が多くなるとまた変わってくるであろう。
しかしながらこれだけのサンプルサイズで行った研究がないことからこの研究結果は有用であるとかんがえられる。

<論評>
さすが北米。というような報告です。
臨床でもこれだけの多施設でまとまった研究ができるというのは素晴らしいことだなあと感じ入りました。
優れたコーディネーターの存在、データをまとめる人間がいることなどさまざまな要因が考えられます。日本では日常の雑務が多すぎて難しいでしょうね。。

結果についてはいままでの論文とやや違っているところも拝見されます。
リーミングした方が良いのでは?とおもっていましたが、今回は逆の結果となりました。
また喫煙も危険因子になるだろうと思っていましたがならなかったですね。

荷重については今ひとつよくわからなかったので、原文を読まれた方はコメントいただければと存じます。

また考察にも書いてありましたが、比較的若年対象ですので、日本のように高齢者が多いところで同じ話が通じるわけではない。というのは注意が必要でしょう。



2012年10月11日木曜日

最近買った本の紹介

学会会場にいっての楽しみの1つは、学会場に出店している本屋さんを覗くことです。
 普段A◯azonさんでほとんどの買い物を済ましてしまっていますが、このような思いもかけない様な本と出会うことは実際の本屋さんならではです。

何冊か購入して参りました。

そのうちから一冊、初期整形外科研修医から整形外科専門医程度を対象にしたおもしろい本を。

 

 理学療法士向けの本ですが、普段から外来でよくみられる疾患(外反母趾や撓骨遠位端骨折)についての臨床解剖学について書かれています。 

知っているつもりの疾患の再確認と、外来で患者さんから”こういう時、どうしたらいいんですか?”とか”ウチでやれるりはびりって何がありますか”と聞かれた時にお答えするための引き出しが増える感じがする本でした。

 外反母趾は僕自身系統だって学んだ記憶がないのですが、種子骨の役割からそれに基づいた具体的なリハビリ方法まで書かれていて驚きました。

 本屋さんで見かけたら是非一度中身をみていただきたいと存じます。

2012年10月10日水曜日

20121010 JBJS(Am) Outcome after sequential hip fracture in elderly

抄録

大腿骨頚部/転子部骨折(以下大腿骨近位部骨折)は高齢者の機能障害、死亡原因の一つとなりうる。片側の骨折をきたしたあとにも体側の骨折のリスクが存在する。本研究の目的は高齢者の近位部骨折の両側例について発生率、疫学、予後について調査することである

方法
スコットランドの急性期病院で1998年から2005年までのデータを収集。2つの時期に分けて分析を行った。片側の骨折をおこしてから2年間は20日間隔にフォロー。その後は半年間ずつフォローを8年間継続した。

結果
反対側の骨折を起こす割合は片側の骨折を起こしてから最初の12ヶ月に最も高かった。3%の患者に起こり、その後2%ずつ減じた。反対側骨折をおこした場合の1年生存率は、片側だけの骨折の場合には68%であるのに対し、63%と有意に低下していた。反対側の骨折は死亡率の増加、居住場所の変化に影響する独立した因子として存在した。

結論
片側の大腿骨近位部骨折後に反対側の大腿骨近位部骨折をきたすのは比較的珍しい病態であることがわかった。反対側の大腿骨近位部骨折を起こすと生命予後、機能に悪影響を与えることがわかった。

考察
骨粗鬆症、転倒は大きな健康、社会問題の一つである。近年65歳以上の3分の1が、80歳以上では2分の1が1年の間に一回は転倒しているというのがわかっている。転倒した患者の10%から15%が骨折にいたる、ということがわかっている。
骨脆弱性骨折の既往は骨粗鬆症、続発する骨脆弱性骨折の危険因子であるということは知られている。そしてそのような患者に対しての介入が必要であることが公衆衛生学的見地より言われている。
骨塩量の低下、高齢、骨脆弱性骨折の既往、機能障害、視力低下、睡眠導入剤の使用はそれぞれ独立した大腿骨近位部骨折のリスクであると言われている。いずれも介入することが難しく、できることは片側の大腿骨近位部骨折をきたした患者に対して介入することであると筆者らは考えた。
本研究では反対側の骨折を起こす割合は3%と低かった。今までの報告では2%から10%と報告されていたからこの結果は驚きである。
片側の骨折後1年以内に反対側を骨折するというのは従来の報告通りであった。
反対側の大腿骨近位部骨折をきたした症例では1年生存率が片側だけの群よりも有意に低くなっていた。
大腿骨近位部骨折では術後の機能障害も問題となる。術後120日での患者の居住場所について調べたところ片側のみ、反対側まで骨折した群で差は認められなかった。
もともと54%の患者が自立した生活を送れていたものの、大腿骨近位部骨折を減ることでその割合は14%減少した。反対側を骨折するような患者では、片側を手術して反対側を手術するまでの間は21%しか自立した歩行ができず、術後はわずか6%が自立歩行を回復した。
最近の研究で反対側まで予防的に骨接合する。と言う方法を行ったものがある。これは発生率からするとやり過ぎではないかと考えられる。

<論評>
片側の大腿骨近位部骨折をきたした患者で反対側の骨折をどれくらいきたすか、という研究です。
かくいうブログ主も一度調べたことがありまして、その時には7%でありました。
三重で同じような論文を英語でだしていらっしゃる先生がいて、同じような割合であったような気がいたします。(今回の中部整災でも同じようなネタがあった気が。)

日本でコレを調べようとすると、よその片側はA病院、反対側をB病院で、ということがしばしばあるためにその発生率がどれくらいになるのか、と言うのがわからないことが多かったです。
本研究は20000人のフォローということで、JBJSにのる価値のある論文やなあと感心して読んでおりました。

大規模になりましたので細かい因子分析などは行えておりませんがこれは仕方ないでしょう。

術後にどう介入するか、が今後の課題。ということになります。
大腿骨近位部骨折の患者で、同意が得られる患者であれば反対側骨折予防のためにて◯ぼんなどの投与も考慮してよいのではないでしょうか。
nは150くらい必要、ですな。。。。。


2012年10月4日木曜日

20121004 JBJS(Am) Early initiation of BP does NOT affect healing and outcome of volar plate fixation of osteoporotic distal radial Fx.

Typical 'Colles fracture', distal radial metaphysis, wrist, XR

 抄録

ビスフォスフォネート製剤は破骨細胞の骨吸収を抑制するため骨折の治癒機転に悪影響を与えると考えられている。しかしながら撓骨遠位端骨折後の患者で投与された場合にビスフォスフォネート製剤の悪影響があるかどうかは不明である。本研究の目的は掌側ロッキングプレートにて固定された撓骨遠位端骨折の患者にビスフォスフォネートが治癒、臨床機能に影響をおよぼすかどうかを調べることである。

方法
50人の骨粗鬆症と診断された50歳以上の女性。術後早期からビスフォスフォネート製剤を飲む第1群と3ヶ月後から飲む第2群の2群に分けた。レントゲン写真で骨癒合判定を行い、24週の時点でDASHスコア、握力を用いて機能判定を行った。
またレントゲン写真での変化も調査した。

結果
2群でレントゲン写真、機能に差は出なかった。すべての患者で骨癒合が得られた。骨癒合の期間はよく似ていた。骨癒合までの期間は骨粗鬆症の程度、骨折系と関連がなかった。

結論
術後早期からのビスフォスフォネート製剤の投与は撓骨遠位端骨折術後の骨折治癒に影響を与えない。

考察
今まで術後早期にビスフォスフォネート製剤を投与することが撓骨遠位端骨折に対して影響を与えるかどうかということは知られて居なかった。本研究によって撓骨遠位端骨折術後の患者でビスフォスフォネート製剤は骨折の治癒、機能に影響を与えないことがわかった。このことによって術後早期からの骨粗鬆症治療が可能となる。
幾つかの動物実験でビスフォスフォネートが骨折の治癒を遅らせるとする報告がある。
反対にビスフォスフォネート製剤にて骨折治癒が促進したとする報告も散見される。
骨密度が低いと骨折型が重篤になるとする報告もあるが、今回は関連が認められなかった。
本研究の幾つかの問題点として、骨癒合についての検者間信頼が低い。治療者がブラインドでないこと、アレンドロネートのみで治療を行なっていること、治療期間が短いこと、さまざまな除外基準を作ったため比較的健康な女性のみが対象となっていることがあげられる。

<論評>
骨折治療だけでなく、骨折の予防治療を行うことが現在の整形外科医には求められています。
骨折の予防のためには骨粗鬆症と診断し、的確に介入することが必要です。
骨粗鬆症と診断するのに比較的容易な方法としては”患者が脆弱性骨折の既往があること”ということがまず含まれている場合ではないでしょうか。
また、脆弱性骨折としては撓骨遠位端骨折、大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折、上腕骨近位端骨折などがあげられると思います。この中で最も若年に発症し、頻度が高いのが撓骨遠位端骨折です。
ですので、撓骨遠位端骨折を受傷した患者さんに対してBMDを測定もしくはFRAXによる判定を行い、骨粗鬆症であれば二次予防としてビスフォスフォネート製剤の投与を行うというのは臨床のプラクティスとして当然考えられるところであります。
ただ、外傷を取り扱う人間からして、高癒合に影響があるかもと考えると二の足をふむのもまた事実ですので、このような研究によって”差がないよ”といっていただくことで積極的に治療介入できるのではないかと思います。

ただし、骨粗鬆症治療の最終目標は生命予後、健康寿命の延伸です。撓骨遠位端骨折の患者で介入を開始してホントに生命予後、健康寿命が延伸するのかどうかという報告は学会発表でしかなかったような気がします。(不勉強であれば申し訳ありません)
ビスフォスフォネート製剤の長期投与での非定型骨折の危険性も併せて、どのタイミングで治療を開始するのか?というのはまた別の問題として考えられなければならないですねええ。。

2012年9月26日水曜日

20120926 JBJS(Br) The effectiveness of injection of hyaluronic acid or corticosteroid in Pts w/ subacromial impingement a three-arm randomised controlled trial

肩関節インピンジメント症候群に対するヒアルロン酸またはステロイドの肩峰下注射の効果

抄録
159人人の肩関節インピンジメント症候群の患者。女性84人、男性75人。平均年齢53歳。無作為に3群に分けた。リドカインのみの群、ヒアルロン酸を混ぜた群、ステロイドを混ぜた群の3軍である。26週間経過観察。主たる評価項目としては疼痛をVASスケールにて評価。その他評価項目としてConstant Murley score、肩関節疼痛スコア、金曜消化スコア、肩関節障害スコアを用いた。
施行後3週間、6週間、12週間の段階でステロイド注射がヒアルロン酸注射群の効果を上回っていた。プラセボを上回ったのは6週の段階のみであった。
12週の段階でのVASでの疼痛改善の割合はヒアルロン酸群が7%、ステロイド注射群が28%、プラセボ群が23%であった。
26週の段階で改善した患者の割合はヒアルロン酸群が63%、ステロイド群が72%、プラセボ群で69%で合った。
肩関節インピンジメント症候群の患者に対してヒアルロン酸を投与する効果はハッキリとしたものは見いだせなかった。ステロイドの注射は短期の疼痛改善効果があるものと思われた。しかしながら最も効果があったのはプラセボ群の注射であった。


考察
ステロイドの注射はプラセボよりも6週間は良かった。プラセボとヒアルロン酸の比較は26週の評価の時点で有意差を見いだせなかった。
本研究は施術者、患者、評価者の全てでブライドをかけた世界で初めての研究であることが価値深い。
今までヒアルロン酸の肩関節内注射は10編の報告があるが、どれも効果がある、とするもので合った。
ステロイドの投与についてはシステマティックレビューで短期の症状改善に有効であるが長期の安全性については保証されていないということが言われている。今回も短期間の症状改善には有効であった。


<論評>
ヒアルロン酸の肩峰下滑液包炎注射は無効。という報告ですね。
厳密なRCT、注射もエコーを用いて行ったりと丁寧にスタディデザインが組まれており評価できると思います。
じゃあ、肩の痛い人に何をしてあげたら良いのか?という疑問が出て参ります。
注射も無効となったらどうしてあげると良いのでしょうか?

2012年9月13日木曜日

20120913 JBJS(Am) Post-splinting radiographs of minimally displaces fractures; good medicine or medicolegal protection

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整復操作と打ち込むたびに制服捜査とおいらのPCでが変換するので、それっぽい画像をUPしてみました。苦笑。

抄録

背景
多くの施設では、整復操作を加えることなくギプス治療とし、その後レントゲンフォローとしている患者は結構いる。本研究の目的は特に整復操作を加えることなくただ単にギプス固定としたほとんど転位のない患者のギプス固定後のレントゲン上での変化について評価を行うことである。筆者らは特に整復操作を加えなくても良いような患者であればその後のレントゲン評価でずれなく経過するであろうという仮説を立てた。

方法
レベル1外傷センターで2008年から2010年までの間に整形外科にコンサルトが来た骨折について評価を行った。2862回のコンサルトがあり、1321の骨折がギプス固定によって治療がなされていた。342骨折(25.9%)が転位のない骨折であった。ここで転位がないというのは5mm以下のずれ、10°以下の角状変形を言う。204骨折がギプス後にレントゲン写真が撮影されていた。可能な限りのフォローを行い、その臨床症状についての評価を行った。

結果
204骨折のウチ、ギプス固定後に転位したものはなかった。2例ギプスの巻き直しが行われ、レントゲン撮像が行われていたがその理由については不明であった。患者は超急性期時に平均10枚のレントゲンを取られていた。そしてギプス固定後に平均3枚のレントゲン写真が撮像されていた。ギプス固定後から次の写真が撮られるまでの平均時間は3時間30分であった。受傷部位として多い骨折は手関節、手指の骨折であった。その患者さんたちの平均待ち時間は3時間。全部で9枚のレントゲン写真が撮られていることが多かった。ギプスをしないで帰る患者よりもERでの滞在時間は長くなる傾向にあった。82例でフォローが可能ですべての骨折にズレを認めなかった。

結論
ズレのない骨折に対してギプスを巻いたあとのレントゲン写真をとることは時間のむだであり、また無駄な被曝を増やしているだけとも言える。ズレのない骨折でむやみにギプス巻き後のレントゲンを取る必要はない。

考察
この研究では、転位がなく、整復操作をくわえていない骨折に対してギプス巻き後のレントゲン写真をとっている例が60%もあることが明らかになった。そのために10枚のレントゲン写真が撮影され、ERに8時間半以上滞在するハメになってしまうこともわかった。ギプスを巻いたくらいでは骨折のズレは出ないので、むやみにギプス巻き後のレントゲンを取る必要は無いものと思われる。
最近幾つかの研究で無駄なレントゲン写真を取ることをやめることで医療費の削減につながっているとする報告もある。
今回待ち時間についての研究も行ったが、ギプスを巻いてそのレントゲンを待ってその上でそのレントゲンの再評価をする。というところで余計に時間がかかっていることがわかった。
患者の無駄な被曝を減らすという意味でもむやみにレントゲンを取るのは良くないと考える。
評価することで教育的効果があるかもしれないという考えもあるが、ギプスを巻いた状態のレントゲン写真ではその厚みによってしっかりと評価ができない。
いままで慣習的にギプス巻き後のレントゲン写真を撮っていたが、これにはあまり意味がなく、特にERという環境下で人的資源を消費することを考えればさらに不要であると思われる。


<論評>
最後の方は端折っちゃいましたけど、同じような内容が延々と書かれておりました。まあ、とにかく早く帰ってもらわないと困るから、いちいちレントゲン取る必要あるの?という疑問に基づいた報告と思われます。
この研究はアメリカ、ニューヨークの外傷センターの報告です。ドラマ”ER”を見たことがおありになる方はご存知かと思いますが、アメリカではまずトリアージされて待たされます。その後各診療ブースで担当のレジデント、医師が診療。必要があれば専門家コール。結論が出るまでは帰れません。
この研究でも、ギプスを巻いて8時間待ち。。。。。(当然他の怪我の処置とかもあるのでしょうけども)というのにはまあ、彼の国の医療事情はそういうものかとびっくりした次第であります。

この論文の中で書かれていた文章で良いなと思ったのが
”その検査結果によって診療方針を変更する見込みのない検査をするべきではない。”という一文です。いや、確かにそのとおりだと思いました。
外来患者のレントゲン写真を取るときにはどのようになっているか、を検査する前に予想し、その上でオーダする。そうすることで見落としもへると思いますし。臨床力は向上していくのでは無いかと思います。
血液検査にしても抗生剤の変更などを考慮しないのであればむやみに取る必要はないと思っています。
ここの予想が立てられるかどうかが良い医者とまあ出来ない医者の境目じゃないかなんて勝手に思っています。ハイ。

2012年9月3日月曜日

更新サボっております。

更新サボっております。

一応自分の勉強は進めているつもりですので、JBJSの編集者が面白い論文を乗っけてくれれば。(ウソ)


ステロイド骨粗鬆症についてよくまとまった文章を見つけたので乗っけておきますね。

http://www.hakatara.net/images/no7/7-6.pdf


骨密度がアテにならない。というのが診療のピットフォールになるとおもいます。

RAなどでステロイドを処方している先生は要注意ですね。

2012年7月27日金曜日

20120727 JBJS(Am) Reliability of predictors for screw cutout in intertrochanteric hip fractures

背景
大腿骨転子部骨折において、Tip apex distance(TAD)、骨折型、大腿骨頭内でのスクリューの位置、整復状態がスクリューのカットアウトの条件と言われているが、これらの信頼性については知られていない。本研究ではTAD、スクリューの骨頭での位置(Clwvwland femoral dividing system)、Baumgaertnerの骨折の整復分類、AO分類を用いてスクリューのカットアウトをするかどうかを評価した。

方法
2007年から2010年までの間でオランダの代償センターで治療を行った大腿骨転子部骨折の患者について検討を行った

結果
TADは信頼性のある測定値であり、またTADが大きい患者ではカットアウトとすることが多かった。スクリューの設置位置、骨折型の分類については検者間での信頼性は中程度あった。TADとスクリュー設置位置を調整するとAO:A3型の骨折型がよりカットアウトのリスクが高かった。整復が不十分であることは単変量懐石では有意な危険因子とされたが、多変量解析では独立した危険因子とは成り得なかった。TADとスクリュー設置位置を調整したとこと中央下方、前方下方にスクリューが位置すると有意にカットアウトしにくいことがわかった。

結論
カットアウトの危険性を減らすために、できるだけTADを小さくするように十分に長いラグスクリューを入れ、中央下方、もしくは前方下方にスクリューを位置させるようにすることが重要である。

考察
今までの種々の報告によれは大腿骨転子部骨折術後にカットアウトをきたすのは整復位、TAD、スクリューの設置位置などが関連していると言われてきた。これらの項目についてどの程度検者間で信頼性が置けるのか、ということとどの因子がどの程度関連しているのかということを検討するために本研究は行われた。
本研究で測定について十分信頼性が於けたのはTADの測定値だけであった。TADの値は検者の経験に関係なく安定した測定値で合った。多変量解析でもTADは独立した危険因子出会った。1mmTADが大きくなると、カットアウトのリスクが1.1倍に鳴ることがわかった。他の研究ではTADが25mm以上でカットアウトの率が高くなると報告しているが、本研究でのしきい値は19.9mmであった。25mmよりも19.9mmの方が妥当性の高い値であることがわかった。
25mmというのは以前の研究でカットアウトが有意に増えるとされる値である。安全を重視するのであればその値は19.9mmにした方がよりリスクは低くなるものと考えられた。
骨折型がAO:A3であればカットアウトのリスクは13倍に大きくなることがわかったが、これは不安定で、整復が難しいということと関係している。それらのようそまで考え合わせると骨折型だけで骨折型だけでカットアウトの危険性の寄与度は小さいと言える。
整復位については検者間の相違について中程度の信頼性がえられた。これは分類法が大まかであることと関連しているものと考えられる。
骨折の分類とTADとの間に相関関係は認められなかった。AO:A3でTADが大きくなるのかもしれない、ということは整復位の獲得が困難であることと関連していた。
骨頭内のどこにスクリューが挿入されているかということは大きなもんだんである。中心-中心、前下方、中心下方のいずれかにスクリューが設置されているとカットアウトが少なくなることが知られていて、本研究もその結果を追認するものであった。後下方にスクリューが設置された場合にはカットアウトが多いとも、カットアウトを積極的に防ぐことができるともいずれもいうことができなかった。クリーブランド分類は検者間信頼性が担保できる良い方法であった。性別はスクリューのカットアウトとは関連がなかった。
手術時間、入院期間、術前待機期間はカットアウト群で長い傾向にあったが、有意な差は認められなかった。ASA3で骨折型がAOA3である患者でカットアウトが多かったがコレも有意ではなかった。これらの因子を検討するためには更に観察集団のn数を多くする必要がある。
対象集団の総死亡率は14%にものぼった。すなわち、最初の手術を成功させることが非常に重要である。術者はこれらの結果を踏まえて慎重に手術を行う必要がある。
後ろ向き研究であることが本研究の限界である。


【論評】
大腿骨転子部骨折でその成績不良の要因は、となると判を押したようにTADと、整復不良みたいな話がよく学会でもきかれます。
本研究はそれらの言い訳に一定の妥当性を担保するものと考えました。笑
TADは25mm以内にするように手術をしていましたが、どうやらソレよりも小さな値の方が良いようですね。意識して長いラグスクリューを使ったほうが良いのかもしれません。
大腿骨転子部骨折はもともと虚弱高齢者が罹患しやすい疾患であり、全身状態も不良なことが珍しくありません。成績不良因子として患者側の要因が大きく関わっていることも間違いない事実だと思います。
ただ、本研究に示されたような術者側の要因を一つづつ対処することでよりよい医療が提供できたら。と考えます。

2012年7月20日金曜日

20120719 JBJS(Am) The benefits of implant removal from the foot and ankle

what are you doing to my leg?!!!!.jpg

抄録
整形外科の術後でインプラントの抜釘は勧められたり勧められなかったりする。インプラントのために疼痛を感じている患者はこの手術によって症状の改善が見込めるはずである。


方法
69例の前向き研究。足部と足関節の手術後の患者に対して手術を行い、疼痛のために抜釘を行った患者を対象におこなった。McGillの疼痛質問票をもちいて術前、術後6週の段階で評価。患者に満足度を尋ねた。


結果
抜釘することで疼痛が減った。VAS値が3.06から0.88まで低下した。術後6週で疼痛の訴えは減少した。術前の疼痛の程度と術後の疼痛の程度は相関していた。

結論
抜釘することで患者の疼痛の軽減と満足度につながることがある。

考察
足部、足関節の抜釘後に疼痛が改善した。多くの患者で術後6週で疼痛が改善した。術前の疼痛が術後6週の疼痛と関連していたことは当然であろうと考えた。筆者らは術前の痛みの程度が術後の痛みの程度と相関しているということを報告している。しかしながら術前の痛みが強いということと術後成績が不良であるということの相関はない。術前の疼痛が強くても術後疼痛は著明に改善するからである。術後の疼痛が強くても、抜釘は有効な方法になり得ると考えた。
術後2例の合併症を生じ得た。2例とも表装感染で合った。神経障害、再骨折は認めなかった。Sandersonらは118患者の抜釘後に3例の神経障害と1例の再骨折を生じたと報告している。これらはいずれも足関節ではなかった。経験のある術者が行えばこのような合併症は避けられるものと考える。
今回はインプラントに関連する疼痛を評価したが、OAによるものなどの評価は今後の研究が待たれる。
この研究の限界は1,対象の患者がインプラントのため術前から疼痛を訴えていた患者である。2,比較対象研究ではない。3疼痛のみを対象としている。4,疼痛に関わる他の因子について検討していない。
これらの限界はあるものの、抜釘が有効であるということを示せたので、今後はそのように推奨したい。

【論評】
なぜこの論文がJBJS(Am)に掲載されているのかよくわかりませんが、それはeditorに聞いてみたいものです。
足部、足関節はインプラントが当たると痛いので、抜釘をすることは珍しくありませんが、抜釘後6週間もフォローしたということに価値があるのでしょうかね。
あとはその程度を前向きに調べたということと。

ということで、骨癒合が得られたら、抜釘しましょう。(棒)

こういうのをみると、まずは英語の論文を書いて出してみることが重要ではないかと感じました。

2012年7月11日水曜日

20120711 JBJS(Br) Does early administration of bisphophonate affect fracture healing in pt. w/ intertrochanteric fractures?

Bone Healing


抄録
術後早期にBisphosphonate(以下BP剤)を投与することが骨折の治癒過程に影響するかどうか、また同時に合併症の発生に影響するかどうかを調べた。
2008年から2009年の一年間。大腿骨転子部骨折で手術治療を受けた90例。この90例を無作為に3群に分けた。
A群:術後1週間目から投与開始。B群:術後1ヶ月後から投与開始。C群:術後3ヶ月後から投与開始。
プライマリーエンドポイントはレントゲン写真上での骨癒合判定とした。合併症の発生、再手術などをセカンダリーエンドポイントとしている。
骨癒合までの期間はA群が10.7週、B群が12.9週、C群が12.3週であった。(有意差なし)
機能予後、合併症の発生についても有意な差を認めなかった。
これらの結果から大腿骨転子部骨折術後どのタイミングでBP剤を投与するのかは骨癒合には関連しないことがわかった。

考察
BP剤が反対側の大腿骨頚部骨折を減少させ、また死亡率を減少させると言うことは非常によく知られた事実である。しかし、BP剤が骨癒合に与える影響については今まで調べられたことがなかった。

動物実験レベルでは、BP剤の使用によって仮骨形成、レモデリングが遅延する。ということは知られている。しかしながら骨癒合、骨折治癒そのものに影響するかどうかは不明であった。Adolphsonらは撓骨遠位端骨折を受傷した32例について調べ、2ヶ月後にBMDが上昇していたとしているがその差は時間とともに小さくなっていっているとしている。Rozentalらは撓骨遠位端骨折で本研究と同様にBP剤を投与し骨癒合までの時間が延長したと報告している。(55日と49日だけどもね。)
NEJMでのHORIZONstudyで、股関節骨折を受傷した患者に受傷後2週間の時点でZoledronic Acid(ゾメタ®)を投与すると死亡率、再骨折率が下がる、と報告している。

BP剤は骨癒合に影響するのではないか。とかんがえられるが、 本研究でどのタイミングで投与しても骨癒合に差がない。ということがわかったので、再骨折予防のタメには早期介入が望ましいのではないかと考える。
サンプルサイズが小さいのが問題でしょうか。

【論評】
良い研究だと思うんですよね。
これを一歩進めてもっと面白いことができないか。と考えてみたいです。

例えばいま大腿骨頚部骨折で地域医療連携を組んでいる急性期病院、リハビリ病院は多いのではないかと思います。
この骨粗鬆症治療を、地域連携のパスの中に組み入れればよいなー。とおもいます。
出来ればそれを大規模コホートとして追ったら面白いと思うのですけど。。。


2012年7月6日金曜日

20120706 JBJS(Am) system-based safety intervention: reducing falls w/ injury and total falls on an orthopaedic ward


TABLE I  Systems-Based Interventions
InterventionDescription
Timed toiletingAll patients are offered assistance to the restroom three times every eight-hour nursing shift.
Wake ’em, take ’emAll patients who are awakened by staff in the course of their duties (e.g., vital signs or administration of medications) are offered assistance to the restroom.
Assist in, assist outAll patients who require assistance to the commode or restroom are attended and then given assistance back to the chair or bed.
Shoulder safetyAll patients undergoing inpatient shoulder surgery are instructed by both surgical teams and nurses not to get out of bed unassisted for the first twenty-four hours after surgery.

学会の抄録を出さないといけないのですけど、まーーーーったくやる気になれないのでブログの更新をいたしまする。
決してサボっているわけではなく、明日の臨床につながる何かを探すタメにやっているのだ!と自分に言い訳をしております。

抄録
背景
院内での転倒転落事故は時に死亡を含めた重症な転機をたどることがある。しかも転倒転落事故と言うものは2008年のMedicare, Medicadサービスから”病院内で起こしてはいけない事象”として定義されてしまっている。
患者の危険因子から様々な介入策がとられているものの、現在までで急性期病棟でうまく行ったことはない。今回System-basedプログラムを高リスクの状況に対して用いることで転倒、転落事故の防止につながるのではないかと考えた。
方法
術後の転倒について医師、看護師、助手、リハビリスタッフからの実際の情報を収集した。病院の状況、患者の要因、環境について調査した。これを準備段階とした。準備段階の結果に基づいて4つのsystem-basedプログラムを作成した。これらについて前向きに調査。すべての転倒事象の記録をおこなった。準備段階とプログラム導入後の転倒率について調査を行った。
結果
準備段階では11802人日に対して調査した。1000人日に対し 総転倒率が4.24、転倒によるケガが1.17発生した。プログラム導入後では12267人日に対して調査を行い、1000人日に対して総転倒率が2.53、転倒によるケガが0.41と有意な差をもって減少した。
結論
system-basedプログラムを用いることで転倒を減少させることができた。ただ、様々な方法を用いても転倒はおこってしまう。すべての転倒を防ぐことができると言うのは絵空事であろう。

4つのシステム型転倒防止法
・8時間の勤務時間中に3回はトイレへの援助を申し出る
・業務によって起こされた患者さんはトイレへの援助を医療者に申し出る。
・トイレに行くのに援助が必要な患者さんは自分のベッドに戻るまで援助を受けることとする。
・肩の手術を受けた患者では医療者の許可なしにベッドから離れては行けない

考察
本研究は継続型質的改善モデル(continuous quality improvement model)をもちいて転倒防止を行った。本研究はシステムに基づいた対策を行った最初研究である。このことによって転倒を40%減らし、転倒によるケガを65%減らすことができた。
ハイリスク患者に手をかける。と言う方法はほとんどうまくいっていない。また様々な観点から転倒防止を行う。というのは長期の入院を必要とするような病棟ではうまくいくが、急性期病棟ではほとんどうまく行かなかった。
本研究では転倒と、転倒による傷害のいずれも軽減することができた。これは転倒自体の減少にともなう傷害の減少と考えられる。
トイレでの動作が転倒の危険因子であるということは今までにも言われてきた。そこで今回設定したルールでは患者はトイレを原則として医療者の援助下で行うこととした。こうすることでトイレに関わる転倒の抑制ができた。
多くの研究でハイリスク患者に介入するというのは行われている。これらの患者に対してベッドを低くしたり、アラームをつけたり、ビタミンDの内服を始めたり、内服の見直し、患者教育、安全な靴の指導、運動療法などがある。
今回の研究ではこれらの研究での成果は殆ど無いと考えて研究を行った。何故ならば患者ごとにその要因は大きく異なるからである。また急性期ではせん妄、貧血、疼痛治療。また手術の安静などで大きくその様態が異なる。なのでこのような患者ごとにアプローチする方法は有益でないと考える。
当然患者の状態と患者の環境の両者に配慮することは必要である。今回の研究では肩関節術後の患者での転倒が多いことがわかったのでその患者にたいする対策を行なっている。
この研究には幾つかの限界がある。患者の割付が無作為割付になっていないこと。大学病院の整形外科病棟という限られた環境であることなどがあげられる。また報告されていない転倒事例もあることは否定出来ない。
2008年にMedicare,Mediaidの支払い機構から、転倒は防ぎうる事象なので、もし院内転倒、転落事故によって生じる費用はすべて病院が負担することと成っているとの通達があった。システムbased転倒予防を行うことで転倒転落事故の減少はできたものの、支払い機構が言うような”全く怒ってはならない事象”という取り扱いに転倒転落事故がなっていることに納得が行かない。どれだけ手を尽くしても転倒は無くならないのである。

【論評】
私自身、この論文を読む前にも病棟でサインして参りました。”転倒・転落に関わる同意書”。笑

看護師さんがせっせとリスク評価をしてくださって、”ほーら、このおばあちゃん、こんなに転びやすいのよ”と結論づいたところにサインをして、患者さんのご家族へお渡しする。と。

あまり大きな声では申しませんが、ホンマに意味有るんかなあ。と思っておりました。同意書はサインを貰えばよいと言うものではありませんし。

看護師さんは一生懸命評価してくれてるんやけど、ホントに転倒予防につながるんかな。。。。と。笑

この論文はその疑問に答えてくれる一つの回答だと思います。

非常にアメリカっぽいアプローチだなあというのが第一印象です。

ぼくがいうアメリカっぽいアプローチとは100点はとれなくても、誰がやっても同じように70点くらい取れるようなシステムの構築を行うことを指します。
(注:ブログ管理主はアメリカ留学経験、就労経験もないドメスティックな人間ですのでホントにアメリカっぽいかどうかは不明です。笑)

日本でもせっせと転倒の報告を挙げて頂いておりますので、同様の機能評価をおこない、転倒予防につなげたほうが良いのかもしれません。

日本の病棟では、どうしても仕事は”やっていること”という事実に夢中になりがちで、その仕事にどれだけの意味があって、どれだけ患者さんに資しているのか?ということを考えられなくなっております。やっていることに意味はありません。やったことで何か成果が得られて意味があるのです。

NST、ICT、褥瘡委員会。。。。。。。。。。病棟には山のように委員会、チームがありますが、仕事をしているだけではなく、もっと成果として発表し、その結果に基づいて改善していくというサイクルを組み立てる必要がある、と思いました。

大学の専門病棟を対象としているので、同じルールを導入してもすぐ自分のところでうまくいくわけではありません。もしやってみたい。と思われたら、まずは調査してみましょうか。ハイ。

しかし、アメリカの支払い機構はマジで厳しいですね。。。。
院内転倒は病院持ち出しなんですね。
そのうち日本もこんな風に世知辛くなったりして。。。。



2012年7月5日木曜日

20120705 JBJS(Am) Comparison of two preoperative skin antiseptic preparations and resultant surgical incise drape adhesion to skin in healthy volunteers

draped

”drape”とぐぐったらこの画像が出てきました。笑
本文と写真との間に何ら関連はございません。笑

抄録
背景
創縁にけるドレープのひっつき具合はとても重要である。皮膚とドレープはひっついている必要がある。創部のドレープが剥がれてしまった時の感染率は剥がれなかった時に比べて約6倍にもなるとの報告がある。本研究の目的は術前に行う処置がドレープのくっつき具合にどのように影響しているかを調べることである。
方法
3M社 Dura Prep なる 消毒用器械 または  ChloraPrep with Tint なる 器械 にて健常ボランティアの22名の消毒を行った。そこにドレープのサンプルを貼り付け、その後生食ガーゼで30分間カバーしておいた。(湿潤テストのため)。その後ドレープのサンプルを国際基準に法った引っ張り力測定器を用いて剥がした。その後皮膚トラブルがないかどうかを確認。
アウトカムは引っ張り力によって測定されるドレープの張り付き力とした。
結果
ChloraPrepで消毒された皮膚よりもDuraPrepの方が剥がれにくかった。はがれにくさがもっとも重要な要素であるが、皮膚トラブルがおこってはもとも子もない。いずれの皮膚消毒を用いてもドレープを貼った後には軽度の皮膚の紅斑が出現した。皮膚科を受診する必要はなかった。
結論
本研究で言えることは術前消毒の違いでドレープの張り付き方に違いがでる。ということである。ドレープを用いるのであれば、そのドレープが持ち上がらないようにするための消毒方法を考える必要がある。

考察
手術室ては様々な消毒方法が用いられている。Swensonらがおこなった後ろ向き研究でイソジン、イソプロリルアルコール、クロヘキシジングルコネートイソプロピルアルコールの3つを比較したところクロルヘキシジングルコネートイソプロピルアルコールが最も感染率が低かったと報告している。
多くの術者がドレープを用いいるようになってきている。
ドレープに対しては様々な見解があり、後ろ向き研究では効果がある。としており、前向き研究ではドレープあり群となし群で差がなかったとしている。Cochraneではドレープで感染率が下がるということはないだろうとしているが、エビデンスレベルが低い報告も含まれていることからさらなる研究が必要であると結論づけている。
ドレープは術中にはがれると細菌の混入率があがるのでしっかりとひっついていたほうが良い。今回DuraPrepのほうが有意によくひっついていた。今回は実際の手術体位ではなく、背中でしか評価しておらす、また実験室での結果にしかすぎないことがこの研究の問題点である。
このほかの問題としては皮膚トラブルの問題があるが、いずれの消毒でも大きな問題にはならなかった。
術前に使う消毒薬でドレープのひっつき具合が変わることがわかった。


【論評】
目の付け所が良いですね。笑。

私自身、綿球 with イソジンによる消毒を未だにつかっておりますが、アメリカではこんな消毒用マシーンが出ているのですね。(外用剤のアン◯ルツヨコヨコみたいな感じなんでしょうか)

僕自身はイソジン消毒に余り良い印象を持っておりません。

時々イソジン消毒のあと、ガーゼで拭きとってドレープを貼る先生がいらっしゃいますが、イソジン自体は乾くことによってその消毒能力を発揮するのであまりお勧めできない方法だよなー。だけどひっつかないと困るものな-と思いながら見ておりました。
そういう意味でこの研究は良い。とおもいます。実はイソジンそのものがドレープの張り付き具合を悪くしているのかもしれません。
できればイソジン消毒から変えて欲しいところですが、なかなか変わらないですよね。。。


ちなみにこの論文の執筆者はアメリカの3M社の研究者です。そりゃ自社製品が優っているという報告をするに決まっております。笑。 ChloraPrep を作っているScrub teal社の反撃を待ちたいところです。笑


2012年7月4日水曜日

20120704 JBJS(Am) The time up and go test is an early predictor of functional outcome after hemiarthroplasty for femoral neck fracture

Timed Up and Go Timed Up and Go

抄録
背景
大腿骨頚部骨折を受傷した患者の長期の身体的な機能予後を予想することは術者、リハビリ担当者のみならず患者本人、患者の家族にとっても必要なことである。本研究では大腿骨頚部骨折後の患者で術後早期の機能評価が長期的な機能予後とどの程度相関しているか調べることである。
方法
大腿骨頚部骨折を受傷し、人工骨頭置換術をうけた患者62人。最低2年間の経過観察を行った。機能評価の方法としてlower extremity measureとtime up and go test(TUG)を行った。
結果
受傷後機能レベルは有意に低下し、lower extremity measureは87.7点から62,4点に下がった。また補装具を要する割合も36%から54%に増加した。TUGを術後4日目、3週間目に施行した。ROC曲線を作成すると、術後4日目で58秒以上かかる、または術後3週目の時点で26秒以上かかる患者では術後2年目の段階で杖歩行となっていた。術後3週の時点でTUGが26秒かかる患者では術後2年で杖歩行となっている割合はそうでない患者の90倍であった。
結論
TUGは人工骨頭術後の患者の機能予後を予想する因子として有用であることがわかった。予後予測に基づいたリハビリなどの介入が今後は可能となるだろう。

考察
大腿骨頚部骨折後の予後を予測することは医療関係者のみならず、患者、患者の加須億にとっても重要である。リハビリは機能回復のための重要な因子であることのみならずリハビリ後の患者の状態が生命予後にも関わるのである。
この研究を通じて、TUGの値に対してその基準値を設けることができた。TUGは普段動的安定性をしらべるテストであるが、今回の研究を通じて2年後の歩行の能力の予測因子としても用いることができた。
一般に、退院時に杖が必要なければその後の予後も良好であるというのは言われていたが、大腿骨頚部骨折術後では退院時に杖なしであること自体が珍しい。TUGはシンプルなツールとして用いることが可能である。
術後4日目の時点でTUGが58秒以内であれば杖なし歩行が可能となる。3週目にTUGが26秒以上かかるような例ではそうでない例に比べて杖を必要とする割合が90倍となりうる。そのような例では早期に福祉、介護を導入しておく必要がある。
4日目での歩行能力も将来の歩行能力に影響することが今回わかった。4日目に大きな問題となるのは疼痛管理の問題である。術後の急性期疼痛管理はリハビリを進める意味でも重要である。
この研究の限界は、もともと歩ける人を対象としていることと、そのためにサンプルサイズが小さくなっていることである。大腿骨転子部骨折の患者や、手術方法が違う患者についても考慮はしていない。一つの目安として本研究は有用である。

【論評】
昔骨折治療学会で、術後2週間で平行棒歩行ができていれば元の歩行能力を回復するよ。という発表を聞いた記憶があります。僕自身が患者さんに説明するときもこの基準を使っていました。
本研究の優れたところはそれをTUGという連続変数で表したこと。連続変数を用いたことで、統計学的処理が可能となり、ROCで表すことができた、ことではないかと思いました。
筆者も述べているとおり、対象をしっかり絞り込んでおります。それを補って余りあるほどのしっかりとした前向き研究です。最初の研究デザインが良かったのだと思います。

同様の研究を行うとすれば、筆者らが述べたように骨折型、手術方法それぞれについて検討することや、アウトカムを生存率に変えてみるとかでしょうか。

術後4日目で予後予測が可能というわけですね。。。疼痛コントロールの重要性もまた調べて診る価値がありそうです。

2012年6月28日木曜日

20120628 JBJS(Am) Diagnostic peformance and reliability of Ultrasonography for fatty degeneration of the rotator cuff muscles

抄録
腱板の筋肉の質を知ることは再建が可能かどうかを決定するために重要な因子の一つである。近年、エコーの発達によって腱板の診察に超音波を使うことが増えてきた。しかしながら腱板の質にまで言及した報告はない。本研究の目的はエコーによる診察のパフォーマンスと検者間での妥当性について調べることである。
方法
棘上筋、棘下筋、小円筋についてMRIと超音波で診察した。対象は肩痛を訴える80人。MRIでの脂肪変性の程度はGoutallierの分類にもとづいて分類した。エコーでの脂肪変性は3点法を用いて3人の放射線科医のうちの一人が行った。エコーでの診察のパフォーマンスを2つを比較することで行った。検者間、検者内の妥当性の検討は4点法を用いて行った。Cohen Kappa、パーセンテージ、感度、特異度について検討を行った。
結果
エコーで脂肪変性を指摘できた例をMRIと比較してみると
・棘上筋、棘下筋で92.5%、小円筋で87.5%
・感度は棘上筋で84.6%、棘下筋で95.6%、小円筋で87.5%
・特異度は棘上筋で96.3%、棘下筋で91.2%、小円筋で87.5%
MRIとエコーの一致度は棘上筋、棘下筋ではほぼ一致と言う結果が得られ、小円筋では中程度の一致という結果が得られた。
検者間の検定についても3つの筋肉全てでほぼ一致と言う結果が得られた。
結論
エコーでもMRIと遜色ない結果が得られた。エコーは腱板の脂肪変性を見つけるツールとして初期診療から用いることができるだろう。

考察
腱板の画像診断にエコーはMRIを超える幾つかのメリットを示している。安価、耐久性があり、インプラントが挿入されている患者でも実施可能である。また動態撮影が可能である。MRIは静的な一部の状態しか示すことができない。今回の研究で今までMRIで判断することが一般的であった脂肪変性までエコーで診断可能であることを明らかにした。

MRIと遜色ない診断精度であり、またエコー検査でよく言われる検者間差についても統計的には有意な差はなかった。

エコーでは脂肪変性の程度を診断し、MRIでは実際に脂肪変性した筋肉の量についての情報が与えられることに注意が必要である。

エコーではやはりある程度のトレーニングが必要となる。また肥満した患者では検査が困難である。また肩甲下筋の診断も難しい。ただ、MRIの欠点(静的であること、金属が入っていると検査が困難なこと)などをかんがえると今後は画像検査のゴールド・スタンダードになるのかもしれない。


【論評】
肩関節のエコーは一度セミナーまで受けております。(高かったですね。。。数万円払った記憶が。。。)
エコーが手元にないとぱっと検査できないので、セミナー受けて以来まったくご無沙汰になってしまっておりますが。はい。
やるなら外来ですぐ手の届くところにおいて置かないとやらないですね。

肩関節の診断、治療については自分自身悩んでいるところがおおございます。

一般整形外科外来に来られる肩痛の患者さんの多くが診察前確率として、肩関節周囲炎、腱板損傷、変形性関節症ということになると思います。
肩関節周囲炎とはなんなのか?関節包?滑液包炎?
腱板損傷があっても痛くない高齢者は多いとのこと。ではどの人を治療して、どの腱板損傷が病態に寄与しているのか?

エコーがより導入されていくと、このような疑問が解決される方向に進んでいってくれるのでしょうか。


2012年6月27日水曜日

20120626 JBJS(Am) Does timing to operative debridement affect infections complications in open long-bone fractures? A Systematic review

"The Gross Clinic," by Thomas Eakins, 1875.


世の中システマティックレビューと大規模研究が花ざかりです。
そんな流れを感じさせるような論文です。

抄録
ガイドラインでは受傷後6時間以内に緊急でデブリードマンを行うように推奨されている。本研究の目的は手術開始までの時間と開放骨折後の感染との関連を明らかにすることである。
方法
MEDLINE、EMBASE、Cochraneデータベースを用いて文献を検索した。開放骨折と感染について、手術までの時間との関連について検討した無作為割付試験、後ろ向き、前向きのコホート研究を渉猟した。random effect modelを用いて緊急または時間がたってからデブリードマンを行った患者についてmeta analysisを行った。
結果
885編の論文を渉猟し得た。タイトルから173編にしぼり、RCT、後ろ向きまたは前向きのコホート研究を行った16編、3539骨折について研究対象とした。検討した結果、デブリードマンが緊急であっても少し時間がたった後でのデブリードマンであってもその感染率には有意な差はなかった。開放骨折の型、部位、感染の形態でサブグループ解析を行ったが有意な差はなかった。
結論
本研究では緊急手術によるデブリードマンと少し時間がたってからのデブリードマンとの間では術後の感染についての関連を見出すことができなかった。より重症な骨折で深部感染症の発生は多かった。今回の検討の結果、いわゆる”6時間ルール”を積極的に支持する根拠は得られなかった。今後はより慎重にデザインを考慮した研究が必要であろう。また同時にむやみに治療を遅らせることを勧めているわけでも無いことに注意は必要である。



考察
本研究では以下のことが明らかとなった。
・感染全体について見てみると早期にデブリードマンをするかどうかは感染成立との関連は無さそう。
・ただし、より重症な骨折、より深部への感染が考慮されるような場合には早期デブリードマンが有用。

本研究ではできるだけ多くの症例を集めてみた。サブグループ解析も行なっている。
後方前向き研究を入れたことで、バイアスはかかりやすくなっているものの、多くの症例について検討が可能となった。
入院中の抗生剤の投与について記載されているものは殆ど無かった。感染率を下げるにあたって、抗生剤の投与は大きくその成立の有無に対して寄与する。実験的研究でもこのことは明らかと成っている。これは今後デザインされた研究によって明らかになっていくだろう。

この研究では6時間ルールについての明確な結論を得ることはできなかった。今後は他の因子について(外傷センターに運ばれるまでの時間、デブリードマンの質、抗生剤投与のタイミング、骨欠損の有無、患者の併存症、喫煙歴の有無)についても調べ、前向きに調べることで開放骨折に関わる機能障害を減少させることができるだろう。

【論評】
いわゆる開放骨折6時間ルールについての検討であります。

出展は忘れましたが、この6時間。と言うのはin vitroの研究で最近が急激に増加する時間が6時間なだけであって、臨床的に6時間である必要があるのかどうかというのはいままで検討されてこなかったわけであります。
6時間じゃなくてもいいんじゃね?というのはこの数年アチラコチラで目にするようになってきていて、それのレビューが本研究となります。
早期のデブリードマンが必須であることは間違いありませんが、ソレとともにどこまで的確にデブリードマンするか、骨欠損の処置をどうするのか?definitive treatmentをどうマネージメントするか?ということまで考えるとなるとむやみに早期デブリにこだわらなくても、という主張のようにも受け取れました。

前に田舎の病院にいて、自前の施設では緊急手術ができませんでしたので、周りの医療機関にお願いすることもありました。その時に搬送されてきて、処置して、搬送してとやっているとあっという間に6時間超えてましたしね。6時間超えてもダメなわけじゃない。といってもらえるとそういうへき地でやっている人間は精神的に楽になります。笑

自分が緊急手術が出来ない環境にあった時にやっていたのは、CEZ1gを即座に投与。Gustilo2以上で挫滅が著しい場合にはGM60mgから120mgを併用。破傷風トキソイドの投与。
創部は疼痛があって十分な洗浄が困難だと判断した時点でガーゼでくるみ何度も開けないようにする。活動性の出血は圧迫で対処。てな感じでヘリコプターを要請したり、救急車でのっていったりしました。

受け入れてくださった周りの医療機関の先生方には本当に感謝しています。

話しはかわりますが、なんとか、こういったエビデンスを自分たちで創りあげて、発信していかなければならない。と強く思っています。
今週末にも骨折治療学会がありますが、どうしても報告の形態がcase seriesに偏っていると感じます。
発表の仕方が悪いということが言いたいわけではありません。
どうしても日常業務が忙しすぎて統計の手法を学ぶことが出来なかったり、また症例もアチラコチラに分散してしまう日本の現状ではcase seriesが精一杯になってしまうのはよく理解しています。(僕自身の発表がcase seriesばかりですし。)

若手がシステマティックレビューの様な手法を学ぶ機会を作ったり、症例の集約化またはデータベース化をして行かないと臨床面でも置いて行かれるんじゃないか。という危機感があります。

只今前向き研究の研究計画書を作成しております。
また出せるようになったらここでもおみせしますね。


2012年6月21日木曜日

20120621 JBJS(Am) Large femoral heads decrease the incidence of dislocation after THA :RCT


抄録

THAにおいて脱臼予防として大径骨頭を使う、というのはひとつのコンセンサスが得られている。しかしながらこのコンセンサスに対する明確なエビデンスは不足している。本研究の目的は術後1年以内の早期脱臼について、多施設無作為割付研究を行うこと、そして28mm骨頭と36mm骨頭のいずれが脱臼予防に効果があるか、ということについての検討を行うことである。
方法
645人の初回人工関節もしくは再置換術の患者を36mm骨頭群、28mm骨頭群の2群に割付。サーフェイスはメタル、ハイクロスリンクポリエチレンとした。認知症、神経筋疾患を合併していたり、反復性脱臼、感染性人工関節など脱臼の危険群と思われる群は除外した。対象を年齢、診断、など脱臼の危険因子がありそうなところで層別化を行った。脱臼の診断は臨床医による診断とレントゲン写真の療法で確認することとした。
結果
手術方法で調整を行い検討したところ、1年間のフォローで36mm骨頭の脱臼率は1.3%、28mm骨頭の脱臼率は5.4%と36mm骨頭の方が有意に脱臼率が低かった。初回の人工関節置換では28mm骨頭よりも36mm骨頭の方が有意に脱臼率が低かった。(0.8%と4.4%)。再置換術については統計的に有意な差は得られなかったものの、28mm骨頭で12%、36mm骨頭で4.9%と低下する傾向を認めた。
結論
術後1年での早期の人工関節脱臼について、36mmの大径骨頭にすることで28mm骨頭よりも脱臼を減らすことができた。しかしながら今後は遅発性の脱臼、非感染性のゆるみ、摩耗、インプラント破損(ライナーの破損)についても慎重に検討する必要がある。

考察
36mm骨頭は本当に28mm骨頭よりも人工股関節置換術後の脱臼を減らすことができるのか、ということについての研究である。統計学的に有意に大径骨頭にすることで術後の早期脱臼を減らすことがわかった。

近年、大径骨頭の使用は増加している。これは大径骨頭が脱臼の予防に有用でないか、とする考えかたによるものである。本研究によってプライマリーの人工関節置換であれば有意に早期脱臼を予防することができた。再置換についてはサンプルサイズが小さく、有意な差が得られなかった

36mm骨頭は術後1年の早期脱臼を予防することがわかったが、10年後の長期成績に付いては不明である。36mm骨頭ではよりライナーの厚さが求められる。またライナーの摩耗が早い可能性も言われている。
同じ割合でライナーの摩耗が進み、摩耗粉が出るとすると摩耗粉の量は大径骨頭のほうが多いかもしれない。しかしながらこのことによって骨融解が進んだとする報告は今のところない。

無作為割付にすることで脱臼についての様々な因子を揃えることができたことが本研究の強みである。

1.1%の患者が追跡できなかったことが問題の一つである。また28mm骨頭での脱臼率が4.4%と他の報告に比べて高い。これは後方アプローチを採用していること、しっかりと追跡を行ったので脱臼がよりしっかりと分かったからである。

<論評>
今号のJBJS(Am)は股関節についての内容が多いようです。
さて、そのうちの一つです。オーストラリアで行われた大径骨頭の脱臼予防に対する優位性についてRCTを用いて行った研究です。
ステムはプライマリーTHAでセメント。再置換のときにはセメントとセメントレスの両方をつかっているようです。

この筆者も書いていますが、大径骨頭のメリットとしては早期脱臼予防があげられます。しかしながら長期成績についてはまだ不明です。大径骨頭にすることで摩耗量の増加はありそうです。また僕は骨頭を大きくすることでトルクが大きくなり、摩耗を余計に加速するのでは?と個人的には危惧しています。

またオーストラリアの研究です。一番小さなカップで50mmが選択されていました。50mmでもライナーの厚さはだいぶ薄くなってしまいます。(コレはメーカーによっても少しずつ違いがありますが)
ポリエチレンはクロスリンクにしてからその性能が急激に上がっていますが、それでも万能ではありえません。
また白人が一次性OAが多いのに比べ、日本人の場合には臼蓋形成不全をベースとした二次性OAが多いです。一次性OAに比べ二次性OAはカップの設置の難易度が高くなり、また大きなカップを入れにくくなります。(大きなカップを入れようとするとカップの高位設置を許容しなければなりません)

個人的には日本でなら28mmまででないかなあと思っています。ハイ。

あと、この研究は脱臼率が高いですね。。。。。言い訳がまた、さえません。。。。

術後のカップ設置確度、ステムの設置状況についての記載は本文中に一切ありません。ホントにいいところに正しく設置してたの?と疑っています。
また、追跡をしっかりしたら脱臼と分かった。ということは普段どんな術後のフォローをしてるのですか?と伺ってみたい!

なんていやらしいことばかり考えてしまうのがこのブログの管理人のいけないところですね。

2012年6月8日金曜日

20120608 JBJS(Am) Predicting range of motion after TKA




背景
関節可動域(ROM)はTKAの術後成績を評価する重要な要素の一つである。本研究の目的は術後のROMを規定する因子について調査することである。
方法
3066例、4727膝。のTKAを受けた患者。同一施設で同一機種にて1983‐1998年の間に手術を受けた患者を対称とした。統計学的手法としては一つはlog linear回帰分析を伴ったクラスター分析でもう一つが回帰樹状分析である。回帰樹分析は術後のROMに関するものとして、年齢、性別、軟部の剥離の有無、術前の屈曲、伸展、術前のアライメントを用いた。
結果
術前のアライメントにかかわらず、術前の屈曲が術後の屈曲に最も関連する因子であった。その他の要因としては術中の屈曲、性別、術前の大腿脛骨アライメント、性別、年齢、術後の関節包剥離があげられた。関節後方の骨棘切除は、術前の大腿脛骨アライメントが内反の患者で関節可動域の増加に関連していた。
結論
術後のROMに最も大きく影響するのは術前のROMである。内反型の変形を来しており、後方の骨棘切除、内側の軟部の剥離を行い術中の関節可動域が良い群では術後の関節可動域の改善がより望める。

考察
本研究では2種類の統計学的手法を用いた。一つはlog linear回帰分析を伴ったクラスター分析でもう一つが回帰樹状分析である。本研究の前にも術後のROM改善について様々な分析が行われている。以前に行われた研究としては屈曲90°未満の群と90°以上の群の2群に分けて術後の可動域を調べると言うものである。ただし、この方法では機能でグループを分けてしまうので恣意的な要素が介入する余地がある。クラスター解析と回帰樹を用いた方法では最も有意な要素でもって分けることができるのため、先ほどのような恣意的にどうこうという問題は生じない。
最大屈曲位まで達した症例では有意な変化は生じない。我々の症例の問題は3年間毎年角度を測ったわけではないと言うことである。術後6ヶ月から3年後の時点での変化は2.8°しかなかった。
検者間、検者毎での測定誤差の可能性もある。しかしながら本研究では症例数が大変大きいので問題とならないであろう。
今回の研究では術前可動域が術後の可動域に最も影響する。ということがわかった。
今までの研究ではこの他に術後の可動域に影響する因子は年齢と疾患であるとされてきた。 本研究では疾患は術後の可動域に影響を与えなかった。
また、Schurmanらによると6°以上の内反は術後の可動域制限の原因になるとしていた。今回の研究の結果では内側側副靭帯の剥離を加えた群では3.3°ほどの可動域に影響を与えたようだ。このことから言えるのは剥離した、ということよりも術前から内反変形があることの方が術後の可動域に影響を与えそうだ、ということである。
術中の可動域と術後の可動域との間には強い相関関係が合った。また術前に内反変形があった群でも相関があった。この研究より前に行われた研究では術中の可動域は術後の可動域を知るための良い指標であるとされていた。しかしながら術中の屈曲が84°よりも小さいことよりも80°いかである群ではより強い相関をしめした。
術中の後方の骨棘切除はもともと可動域が良い群でより効果的であることがわかった。回帰樹によると105°以上の場合に有用であると統計学的に表された。
伸展制限も全体に改善傾向であった。


<論評>
統計学的手法を存分に使った研究です。クラスター分析を行い主成分を明らかにしてそれに関わるところをまた検討してゆくと言う手法はnがこれだけ大きければ有用なのかもしれませんね。
しかしそもそもこの統計学的手法がまったく理解できませぬ。。。。

2012年6月6日水曜日

20120605 JBJS(br) Balance is an important factor for quality of life and function after primary total knee replacement

week 4 balance

抄録
TKRでのバランスの改善が疼痛除去とともに手術後の成績に関わる因子ではないかと言うことで検討を行った。81人の患者を対象とした。うち62人の患者に対して術前、術後の動的、静的なバランス能力の調査を行った。運動機能、患者立脚型成績評価も同時に行った。
術後1年で動的バランスの改善が得られた。バランスの改善が運動機能、健康QOLに関連した因子との相関を認めた。疼痛除去だけでなくバランスを上手に取れるようになるということもTKRの重要な因子の一つで有ることが示唆された。バランスを取れるようにするトレーニングを術後のリハビリテーションに取り入れるようにしても良いのではと考えられた。

考察
疼痛除去だけがTKRでの主な改善点かという臨床上の疑問に答えるために本研究は行われた。術後1年の時点でTUG(Time up & go test)やFSST(Four square step test)を含め改善が得られていた。
静的、動的なバランスの両者とも改善が認められたが、静的なバランスの改善については統計学的に有意な差は得られなかった。膝を30°に曲げた時と90°に曲げたときの2つの場合においてのみ統計学的に有意な差が得られた。

TKR後のSF36の改善と静的バランスの改善、動的バランスの改善は強い相関が認められた。本研究はバランスがTKR後の臨床成績に影響を及ぼすことを示した初めての研究である。FSST、OKSの改善が疼痛の改善よりも日常生活の改善に大きく影響することもわかった。

本研究の限界はまずその脱落群の多さである。全体の24.3%が1年後のフォローを行うことができなかった。

結論として、変形性膝関節症の高齢者に対してTKRは疼痛の除去だけでなくバランスの改善ということでもQOLに貢献しうる。バランスを重視したリハビリテーションが必要である。

<論評>
バランスに着目した初めての論文である。というところがおもしろうございました。
身体のバランスを取れる関節は距踵関節、股関節、脊椎椎間関節の3ヶ所しかないと言われています。(出典不明)
膝の関節は身体のバランスを取るのにはあまり関わっていないので、静的なバランスの改善が得られなかったのかもしれません。
THRであれば体全体のバランスの改善が得られたのがわかるかもしれませんし、脊椎術前後などで動的バランスがどれだけ改善したかという研究をおこなっても良いかもしれませんね。

本文とは関係ありませんが。

PCモニタを購入いたしました。



今まで小さなモニタで画面を分割しながら論文を読んでいたのでUPが遅かった?のですが、これで文献を同時に横目で見ながらブログをUPできそうです。

嬉しくなったので本文とは関係ありませんが乗っけてみました。

2012年5月30日水曜日

20120530 JBJS(Br) The outcome of carpal tunnel decompression in Pts w/ DM

糖尿病は手根管症候群の危険因子の一つとして認識されている。しかしながらその治療に対する反応も悪いのか?ということはわかっておらず、またその治療成績が糖尿病でない患者よりも劣るのではないかということも知られていない。本研究の目的は糖尿病を合併した手根管症候群の患者と糖尿病を合併していない患者との間でその治療成績について比較を行うことである。主たる判定基準にはQuick DASHを用いた。1,564人の手根管症候群の患者のうち176人が糖尿病であった。糖尿病を合併している群ではより症状が重症であった。術後1年でのDASHスコアの値は有意に劣っていたものの、臨床的に差が出る。と考えられる最小の違いでしかなかった。年齢、性別をマッチさせたコントロール群と比較して、その改善率には有意な差がなかった。糖尿病を合併した手根管症候群の患者でも手術による改善は望める。

【考察】
手根管症候群で糖尿病を合併している人は11.3%であった。この値は以前に報告されていたものよりも低い。ただ、本研究では神経障害がより重篤な患者が多かった。
QuickDASHでは図のように糖尿病群、非糖尿病群ともに手術によって同じような改善を認めた。また、QuickDASHで臨床的に意味のある改善度数は8点以上の違いがある場合とされており、本研究では非糖尿病群と糖尿病群で5.9点しか違いがなかったため、臨床的に大きく結果が変わるとは言えない。

糖尿病と手の病気の関連としては手根管症候群、デュプイトラン拘縮、ばね指などが指摘されている。大規模研究の結果糖尿病がある患者では糖尿病の内観じゃに比べその危険率は1.51倍と言われている。また両側例が多く、加齢、体重の増加によって発症しやすくなることがわかっている。

この研究は糖尿病を合併した手根管症候群の患者の経過がどうか、ということについて大規模に行った初めての研究である。

本研究の限界は選択バイアスがかかっている可能性が否定出来ないこと、客観的評価をおこなっていないことの2点である。

糖尿病を合併した手根管症候群の患者ではもともとその機能低下があるものの、手術後の改善は非糖尿病患者と変わらず、また臨床的な違いもない。

【論評】
このグラフはわかりやすいですねえ。結論で言いたいことが一目でわかります。
糖尿病患者では改善に乏しいのではないか。とおもっておりましたがイヤイヤそんなことはまったくありませんでしたね。
腰部脊柱管狭窄症なんかでも同様の研究をデザインして行うことが可能ではないかなとふと思ったりもしました。
優秀なcase controlスタディは前向き研究に勝るとも劣らないというよい報告ではないかと思いブログにアップしてみました。

もう一点気になったのが、”QUICKDASHで8点差ないと臨床的に有意な差ではない。”というところです。
僕が学会の発表を聞いていて苦になるのは、”その有意差は本当に患者さんのためになる差ですか?”という点が今まで余り言われて来なかったことです。
どうしても統計的な有意差ばかりに目を向けてしまい、本当に臨床的な違いかどうか分からないではないかと思っておりました。

ということでまた今度はこの8点差なんていう論文を読んでみたいとぞんじまする。

2012年5月21日月曜日

20120521 日本整形外科学会に参加してきました。



関節リウマチにおける薬物療法と合併症対策

DMARDsとしてMTX、ブシラミン、SASP、プログラフ。生物学的製剤が6種類。レミケード、エンブレル、オレンシア、アクテムラ、ヒュミラ、シンポニーが現在リウマチ治療で主に使われている。
免疫抑制剤を用いることによる感染症と、薬剤そのもののトラブルに注意が必要。
初診の時のスクリーニングがまず必要。一般採血に加えて尿検査、肝炎ウイルスの検査、ベータDグルカン、QFT、胸部レントゲン写真は準備しておく必要がある。
MTXでは肝障害、肺障害。それ以外にはMTX関連のリンパ腫など。
ベータDグルカンが陽性ならバクタの投与を行う。
感染症として重症化するものとして肺炎球菌肺炎。ワクチンを可能であれば摂取しておくとよい。
Denovo肝炎。劇症化した場合の死亡率は100%。投与前の検査でHBs、HBc,HBe抗体のいずれかが要請の場合には肝臓専門医への紹介を要する。

臨床医のための疫学と統計学の基本。
医学の一分野である疫学に統計が関わるのはごく一部である。
以下エビデンスレベルの低い順にその研究の概要について述べる。
1,      case series
記述疫学、比較群なし。仮説を見出すために行う研究。
2,      crosssectional study
横断研究。Reverse causality(要因と結果を逆に捉えてしまうこと)が起こりえるので注意を要する
3,      case control study
質の高いcase control studyRCTにも勝ると言われるほど。Caseのとりかたが重要。Controlstudy baseの原則に従って、sorse populationを代表するものでなければならない。たとえばある病院でのcase seriesであれば、その病院からcontrol群を選ぶ必要がある。
4,      cohort study
相対危険度(relative risk)を表すことができる。
5,      controlled trial

いわゆるp値だけよりも、相対危険度と95CIで表したほうが情報量が多い。95CIが表しているのが偶然誤差、有意差、精度。

医学の分野で実際に使える多変量解析はロジスティック回帰分析とCoxハザード比例分析。
ともに目的変数はある、なしの2値を取る。ロジスティック回帰分析から得られるのがオッズ比。ハザード比例分析から得られるのがハザード比。
ロジスティック回帰はほとんどの研究デザインで使用ができる。ハザード比例分析は時間経過が関わるようなもの(生存率)などで用いられる。

人工骨移植
強度、連通性、ミクロ気孔の3つがキーワード。強度の有無。硬いものでは皮質骨程度のものもあるか。普通は海綿骨より弱い。
βTCPは連通性なし。まさに漆喰。
骨伝導性を高めるための工夫。
今後は骨誘導能をいかに持たせるかがキモ。

股関節セッション
変形性股関節症に対するT2マッピングの発表が2例。以前と比べ特に新しい知見なし。難しい技術で、この先の治療につながらないことが問題なのかもしれない。
fluoride-PETも同様。まだ研究の域を出ない。此処から先どのように臨床応用するのか。この高価な検査を行った時に患者さんへのメリットがどのようなものがあるのかということを考えていく必要があると考えられた。
セラミックオンセラミック全人工股関節置換術。耐摩耗性に優れるとされているが、保証されているのは中期成績まで。今回malseatingの率が6%との発表。硬いものを設置するためにどうしても技術的な困難が伴うのか。今後長期でどう変わるか不明なだけに新たな症例に対して積極的に使うのはどうかと感じられた。
脱臼危険因子について多くの症例をなさっている施設、先生から多変量解析を用いた発表。術前の可動域がよい症例、男性、高齢、カップ/骨頭比、脱臼の既往などが挙げられていた。28mm以上の大径骨頭では脱臼は明らかに減少していることが示されていた。個人的には大径骨頭にすることでトルクが大きくなり臼蓋側のゆるみが早く進むのでは無いかと危惧しているところはあるのであるものの、脱臼が人工関節で最も大きな合併症であることは間違いないので、長い年月をかけて検証されていく必要があるものと思われた。
透析患者の人工関節、人工骨頭は非常に成績不良。生命予後は5年。その短い期間でも再置換は20%にのぼる。透析患者さんへの人工関節についてはしっかりとしたお話が必要であろう。

股関節診療ガイドライン
発表されて4年となる。ガイドラインを作られるご苦労は大変なものであることを認識。変形性股関節症の診断基準が無い。というところから先ずは衝撃的であった。笑。本邦での発表は全体にcase seriesに偏っているためエビデンスレベルが低く、採用されにくいと言うことも伺った。今後は質の高いcase control studyを念頭において研究デザインを考えたい。

FAIfemoroacetabular impingement)のセッション
今まで診断についてあまり進んでいなかった股関節分野で新しい知見として注目されているFAI。臼蓋形成不全、関節唇損傷、との兼ね合いもあり難しい。関節唇損傷はMRIでもやはりはっきりしない。高解像度造影CTでなんとか見えるか。FAIについてはシュミレーションソフトを用いた診断も考えられているとのこと。今までゴールドスタンダードと考えられていたcross over signでも骨盤が後傾の結果に過ぎず、本当のFAIは44%にしか見られないとのこと。特異的な理学所見をとって、バランスボールなどの股関節周辺、体幹筋力訓練。ストレッチによる筋緊張の減少をプライマリーレベルであれば試みるべきか。
リハビリメニューなどについて専門施設に相談して、自分なりのハンドアウトを作成しておきたい。
股関節鏡が関節唇、FAIの切り札。何かしらのトレーニングを積む必要があるのかもしれない。
人工股関節置換術は後方アプローチの工夫についてのものが多かった。外旋筋を切離せずにおこなうERP法。外閉鎖筋の再建が重要でこれを再建することで屈曲時の安定性が増すようである。届かなくてもブリッジングで対応。
長谷川先生の可動域評価は実際的な方法ということで評価を受けていた。

足・足関節の日常診療の要点
診断をつけるためにはまず触診を行う。解剖学的知識に基づいて1つずつ触診することで病態に近づく。足関節の腫脹などでもその評価のためには触診時に動かしてあげるとより良く分かる。
外反母趾は第一中足骨が長いと起こり得る。特に若い子の場合にはそれが顕著。母趾外転筋は荷重時に働いて広がる。それが働かなくなるので外反母趾が進行する。
正しい靴の処方。かかとがしっかりしている。中足骨部をしっかり保持でき、あしがすべらない。つま先に余裕がある。柔らかい靴。
年寄りのSF36を取ると同年代の人達よりも外反母趾を主訴に来る人が圧倒的に元気。運動療法を処方。タオルギャザリング、Hohhman体操。ストレッチング。つま先歩き。
足底の痛みの原因としてベンチは重要。そこに荷重が集中しているという1つの証拠。中足骨頭によって押されている。
若年者の偏平足。靴を持ってこさせて判断。内側ばかりが削れているということが多い。腓骨筋痙性麻痺の見逃しに注意。うち返しができない。
高齢者の偏平足の原因としては後脛骨筋不全。 Toe many sign。片脚での爪先立ちが出来ない。できても踵骨が外反したままの状態となってしまう。アーチの再建が重要。

医学教育のポスターセッション
手術のラーニングカーブをQCの分野の手法で評価した発表があった。今後の検討課題としたい。クリニカルパスに導入されるような疾患であれば使えるはず。しかも人によらず、その対象によることが多いとのこと。ますます興味深い。

Facebookを通じて知り合った同年代の若手と話ができたり、ということで新しいことに取り組むことができたJOAであったと感じています。来年はまた面白いネタを考えて投稿していけたらよいなと感じています。
個人的に夜中に目を覚ますほどの咽頭痛に4日間悩まされながらの参加でした。
まずは体調管理から。ということで。