閉経後の女性で長期間にわたってbisphosphonate(以下BP剤)を服用していると転子下骨折、または骨幹部骨折のリスクが高くなるか?
カナダのオンタリオ州で行われた地域ベースの症例対象研究。7年間フォローされた。
症例はBP剤を飲んでいて大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折を起こした68歳以上の205,466人。コントロールとしてはそのような骨折を起こしていない5人を年齢をマッチさせてそれぞれ割り当てた。
骨軟化症、甲状腺機能異常、てんかんなどの既往がある場合には除外した。
研究の参加者をBP剤の内服期間に応じて、長期(5年以上)、中期(3-5年)。短期(3年未満)の3群にわけた。これらをそれぞれ内服して100日未満のグループと比較を行った。
primary outcome は大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折で入院したかどうか、secondary outcomeとしては骨粗鬆症による大腿骨頚部骨折、転子部骨折による入院とした。
結果
7年間フォローしたところ、BP剤を飲んでいる高齢者は全体の0.35%、716人が大腿骨転子下骨折、または骨幹部骨折で入院した。5年以上内服した群では大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折のリスクが高くなった。secondary outcomeとしては9723人が大腿骨頚部骨折、転子部骨折で治療を受けた。長期間内服したほうが骨折のリスクを減らせる(0.76CI 0.63-0.93)が、短期間内服ではそれほどの意味はなかった(0.93CI 0.81-1.07)。
結論
5年以上のBP剤の内服は大腿骨転子下骨折、骨幹部骨折のリスクを高くする
今回の結果から導かれたこと
・BP剤の長期投与を行ったほうが骨粗鬆症による骨折を減少させることができる
・5年以上の内服を行った群のみで非定型的な骨折が起こりうる。(500人中1人くらい)
・非定型的な骨折自体は稀であるので、その治療効果とリスクとを天秤にかけて使用すること
<論評>
一時期話題をさらったBP剤による大腿骨転子下骨折と骨幹部骨折の話の大規模な研究です。
僕の意見も結論と同様です。可能であれば積極的に治療を継続する以外にはないと思っています。
リスクが上がるといっても、転子下骨折をおこす!ということを予見する方法がない限りは、難しいですよねええ。
2011年8月19日金曜日
2011年8月14日日曜日
20110815 JBJS(Am) AAOS guideline : The diagnosis of periprosthesis joint infection of hip and knee
AAOSから出た人工関節感染の診断についてのガイドライン
Evidence level
<<Strong>>
・人工関節感染を疑った時には、血沈、CRPの測定をおこなうことを強く推奨する。
・膝の人工関節置換術後の患者で、感染が疑われているような場合には関節穿刺を行うことを強く推奨する。また同時に穿刺で得られた関節液を培養に出すことと、白血球数を含めた成分分析を行うことを強く推奨する。
・股関節の人工関節感染が疑われるような場合には、別の表に示すようにその時々によってアプローチの方法を変える。
・人工関節感染を否定するために術中にグラム染色を行うことは全く推奨できない。
・人工関節感染と確定診断に至っていない患者で、再手術中に人工関節周囲の組織を凍結迅速病理診断に出すことは強く薦められる。
・再手術の最中に複数個所から細菌培養の検体を提出することを強く推奨する。
・提出した培養の結果が出るまでに適当な抗生剤を用いて治療をすることは全くお薦めできない。
<>
・股関節の場合、見た目の人工関節感染の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度穿刺を行ったほうがよい
・関節穿刺を培養に出すときには最低2週間は抗生剤の使用を止めておいたほうがよい
・感染している可能性が低く、人工関節感染と診断され、再手術を受けている患者でも術前の予防的抗生剤投与は行ったほうがよい。
<>
・核医学検査は診断が確定しておらず、再手術の予定もない患者では診断の助けになるかもしれない
<>
・CT,MRIは診断の助けになるのかどうかは結論が得られていない
<>
・股関節の場合、感染していなさそうで、血液検査でCRPまたは血沈のどちらか一方だけ異常値である場合には3か月以内に定期的に採血を行い再評価を行ったほうがよいかもしれない
・膝関節の場合、見た目の人工関節の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度先生を行ったほうがいいだろう、という意見がある。
<論評>
人工関節感染ガイドラインですが、あまり大したことは書いてなかったですねえ。
Evidence level
<<Strong>>
・人工関節感染を疑った時には、血沈、CRPの測定をおこなうことを強く推奨する。
・膝の人工関節置換術後の患者で、感染が疑われているような場合には関節穿刺を行うことを強く推奨する。また同時に穿刺で得られた関節液を培養に出すことと、白血球数を含めた成分分析を行うことを強く推奨する。
・股関節の人工関節感染が疑われるような場合には、別の表に示すようにその時々によってアプローチの方法を変える。
・人工関節感染を否定するために術中にグラム染色を行うことは全く推奨できない。
・人工関節感染と確定診断に至っていない患者で、再手術中に人工関節周囲の組織を凍結迅速病理診断に出すことは強く薦められる。
・再手術の最中に複数個所から細菌培養の検体を提出することを強く推奨する。
・提出した培養の結果が出るまでに適当な抗生剤を用いて治療をすることは全くお薦めできない。
股関節穿刺の基準
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<
・股関節の場合、見た目の人工関節感染の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度穿刺を行ったほうがよい
・関節穿刺を培養に出すときには最低2週間は抗生剤の使用を止めておいたほうがよい
・感染している可能性が低く、人工関節感染と診断され、再手術を受けている患者でも術前の予防的抗生剤投与は行ったほうがよい。
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・核医学検査は診断が確定しておらず、再手術の予定もない患者では診断の助けになるかもしれない
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・CT,MRIは診断の助けになるのかどうかは結論が得られていない
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・股関節の場合、感染していなさそうで、血液検査でCRPまたは血沈のどちらか一方だけ異常値である場合には3か月以内に定期的に採血を行い再評価を行ったほうがよいかもしれない
・膝関節の場合、見た目の人工関節の可能性と穿刺液の培養の結果が食い違うようであれば再度先生を行ったほうがいいだろう、という意見がある。
<論評>
人工関節感染ガイドラインですが、あまり大したことは書いてなかったですねえ。
2011年8月13日土曜日
20100813 JBJS(Am) Total Joint arthroplasty in patients w/ Hepatitis C
抄録
C型肝炎は全世界で見られる病気であるが、C型肝炎に罹患している患者が人工関節置換を行われた場合の予後についてはほとんど知られていない。今回HCV陽性でC型肝炎になっている患者でTHA、TKAが行われた場合の術後合併症について調査した。
方法
1995-2006年までに手術を受けた71人の患者。40人がTHA、21人がTKAを受けた。血液検査では肝機能異常は指摘されていない。HIV、HBVの混合感染は除外。血友病も除外。HCVグループに年齢、BMI,性別、手術を受けた年、糖尿病、RA、免疫抑制状態などを2:1でマッチさせて症例対照研究を行った。
結果
HCV感染群では、THAを受けた15%の患者で抗生剤の内服、創洗浄、デブリードマンを行われた。10%の患者でインプラントの緩み、インプラント周囲骨折、脱臼などの機械的な合併症が起こった。これに対して対照群では創感染は3.8%、機械的合併症が起こった患者は3.8%であった。
TKAに関してはHCV群の9.4%の患者に機械的な合併症がおこった。対照群は4.7%に創感染を発症し、1.6%で再置換を必要とするような深部感染を発症した。
HCV感染は入院期間の延長、周術期、晩期合併症の増加、再手術、再置換率の増加を有意に認めた。
考察
HCV感染は関節置換術に置いて危険因子の一つであると言える。しかしながらその理由については不明であるのでさらなる研究が必要である。
Disscution
HCV感染は全人口の1.8%に存在する比較的よく見るウイルス感染症である。
HCVは肝硬変のリスクとなりうるが、今回の手術群では肝機能はすべて正常範囲内であった。肝硬変や、肝炎の状態にない患者でも入院期間の延長、合併症の増加などのリスクが高くなることが今回の研究で明らかになった。
最近知られてきている事実として、HCV感染は多様な肝臓以外の症状を引き起こす。
例としては甲状腺炎、糖尿病、凝固異常、血管炎、腎糸球体炎、炎症性の筋炎、関節痛、MCTDなどなどである。
血小板機能が低下することも知られており、今回、合併症がHCV群で多かったのは出血コントロールが付きにくい事も影響しているのかもしれない。ターニケットを用いたTKA群では創治癒不全が生じなかったことから凝固系の機能低下が関連しているのかもしれない。
HCVには糖尿病が合併しやすい事が知られている。糖尿病は手術の危険因子となりうる。実際、HCV群の21%(アメリカ全体で糖尿病の罹患率は約10%)と高かった。しかしながら今回は前もって対照群も糖尿病を有する群をあてはめてあるのでこの議論については結論を出すことができない。
この研究の限界点は後ろ向き研究である事である。
今後HCV陽性であることでどうして術後合併症の発生率が高くなるのかという研究がなされる必要がある。
<論評>
やられたなあと言う感じです。笑
日本の病院はほとんど術前にHCVなどをスクリーニングとして採血をしていますが、このように術後の成績に影響を与えうる。というところまでには頭が及びませんでした。
HBV,HCV,HIVはいずれも関節症状をきたしうるウイルス群ですので、何かどこかで影響しているのかも知れません。
脊椎、手の外科などの神経を扱う手術ではHCV陽性ならどうなるのだろう、大腿骨頸部骨折では?多発外傷では?と言うのが新しい疑問として湧いてきますね。
後ろ向きの症例対照研究ですので、このpaperのプロトコールに沿って行えばすぐ出来ますしね。
2011年8月7日日曜日
2010807 Up to date Lumber spinal stenosisの続き
手術治療
LSSに大して手術治療は症状を軽減し、機能の回復の面で有効な手段の一つである。手術治療は保存治療が限界となったところで行なわれる。LSSを保存治療を行なうと約30%の患者が手術治療を希望する。
緊急手術は神経外科学的欠損、膀胱直腸障害が出現した場合に行なわれる。腰椎の変性でおこることは稀で腫瘍や脊髄円錐症候群として起こる。手術後の予後は手術までの時間と麻痺の程度によって決まる。
手術治療としては椎弓切除が考慮される。固定術は腰椎の側弯がある場合に考慮される。側弯がない場合には固定をしない方が合併症の発生率が少ないため、旧来の椎弓切除の方が好ましい。
椎弓切除術
LSSに対して手術治療が有効であるとするシステマティックレビューがある。
60―90%の患者で術後症状が改善していることが様々なコホート研究で言われているが、疾患の性質上試験の再現性に乏しく、また患者個々の状態が違うため比較、評価することは困難である。
棘突起拡大インプラント
最近開発されたインプラントで、MISの一つといわれている。
良好な成績も報告されているがその長期成績、副作用についてはまだまだ不明な点も多い。
側弯をともなったLSS
何かしらの固定を用いられる。
インプラントを用いることで骨癒合率の改善を認めたが、そのことによる臨床成績の影響を調べた報告はない。
合併症を集めた報告では全体の13%に血腫を含めた合併症が生じる。
また非常に高価な手術となることが多い
患者の選定
LSSの手術に関してはそのメリット、デメリットについてよくお話しておく必要がある。
15―25%の患者で再手術を受けることになる、ということも同時にお話しておくべきであろう。
手術による合併症での死亡率は0.5―2.3%
感染、深部静脈血栓症などの重大な合併症が起こる可能性は12%
患者の年齢、併存症が手術の危険性と関連。インプラントを用いるか、手術する脊椎高位、数が合併症率に影響する。
術後成績に影響する因子はシステマティックレビューでえられている。
手術成績に負の影響を与える因子
・うつ病の既往
・歩行能力に影響をあたえる併存疾患の存在
・心血管系の合併症を有する
・側弯症の存在
手術成績に正の影響を与える因子
・男性
・若年
・歩行能力が保たれている
・自らの健康に対して自信があるタイプの性格
・併存症が少ない
・狭窄が画像上でも明らか
喫煙はいかなる場合でも術後の成績不良因子として挙げることができる。
LSSに大して手術治療は症状を軽減し、機能の回復の面で有効な手段の一つである。手術治療は保存治療が限界となったところで行なわれる。LSSを保存治療を行なうと約30%の患者が手術治療を希望する。
緊急手術は神経外科学的欠損、膀胱直腸障害が出現した場合に行なわれる。腰椎の変性でおこることは稀で腫瘍や脊髄円錐症候群として起こる。手術後の予後は手術までの時間と麻痺の程度によって決まる。
手術治療としては椎弓切除が考慮される。固定術は腰椎の側弯がある場合に考慮される。側弯がない場合には固定をしない方が合併症の発生率が少ないため、旧来の椎弓切除の方が好ましい。
椎弓切除術
LSSに対して手術治療が有効であるとするシステマティックレビューがある。
60―90%の患者で術後症状が改善していることが様々なコホート研究で言われているが、疾患の性質上試験の再現性に乏しく、また患者個々の状態が違うため比較、評価することは困難である。
棘突起拡大インプラント
最近開発されたインプラントで、MISの一つといわれている。
良好な成績も報告されているがその長期成績、副作用についてはまだまだ不明な点も多い。
側弯をともなったLSS
何かしらの固定を用いられる。
インプラントを用いることで骨癒合率の改善を認めたが、そのことによる臨床成績の影響を調べた報告はない。
合併症を集めた報告では全体の13%に血腫を含めた合併症が生じる。
また非常に高価な手術となることが多い
患者の選定
LSSの手術に関してはそのメリット、デメリットについてよくお話しておく必要がある。
15―25%の患者で再手術を受けることになる、ということも同時にお話しておくべきであろう。
手術による合併症での死亡率は0.5―2.3%
感染、深部静脈血栓症などの重大な合併症が起こる可能性は12%
患者の年齢、併存症が手術の危険性と関連。インプラントを用いるか、手術する脊椎高位、数が合併症率に影響する。
術後成績に影響する因子はシステマティックレビューでえられている。
手術成績に負の影響を与える因子
・うつ病の既往
・歩行能力に影響をあたえる併存疾患の存在
・心血管系の合併症を有する
・側弯症の存在
手術成績に正の影響を与える因子
・男性
・若年
・歩行能力が保たれている
・自らの健康に対して自信があるタイプの性格
・併存症が少ない
・狭窄が画像上でも明らか
喫煙はいかなる場合でも術後の成績不良因子として挙げることができる。
2011年8月6日土曜日
20110806 JBJS(Br) Operative vs non-operative treatoment of acute rupture of tendo achillis
アキレス腱断裂はスポーツ好きの中年に良く発症する外傷である。治療方法としては再断裂が少ないという理
由で手術治療がすすめられることが多く、また最近では経皮的に縫合する方法も散見される。
しかしながら最近のメタアナライシスでは手術治療でも、保存治療でもその治療成績には差がない、とする報告がある。早期復帰についてもその成績は同等であった。とされている。
今までの報告は合併症に焦点を当てて報告がなされていたが、今回は機能予後について注目して、手術療法と保存療法の二つを比較検討してみた。
Patient:60歳未満。受傷後10日未満で、RA、腎機能障害、ステロイド注射などの他の治療を受けていない患者80名
手術群か保存療法群かはカードを引いて決定
Setting:イギリスの900床以上の大病院での単施設研究
Intervention:
手術群は観血的に皮切を加えて吸収糸で縫合。術後は完全尖足位で4週間、半尖足位で2週間。ギプス除去後から全荷重可
保存療法群は4週間の完全尖足位ギプス、4週間の半尖足位ギプス、2週間の中間位ギプス固定を免荷で行った。
評価はVAS、関節可動域、トルク、筆者がShort muskleskeletal function assessment questionare(SMFA)を用いて評価した。
1年間にわたるフォロー。12週、16週、26週、52週で評価を行った。
Result:
Intention-to-treatの原則に従って結果を評価。
患者背景に有意差なし。
VAS有意差なし。
足関節可動域は3カ月までは変わらなかったが、半年後には手術群の方がわずかに良かったが、有意な差を呈するには至らなかった。
トルク(筋力)はほとんど差が生じなかった。
SMFAは3カ月の時点で有意な差を生じたもののそれ以降は同様の成績であった。
再断裂率は手術群5%、保存療法群10%で有意な差にはなりえなかった。
結論:手術をした方がよいという積極的な根拠を認めるには至らなかった。ルーチンに手術療法を行うことはおすすめ出来ない。
<論評>
少し前から言われていたことの追試、といった役回りでしょうか。
これ以外の患者群の設定の場合にはどうなるかということは分かりませんが、一般的には手術を強くおすすめすることは無くなってゆくのでしょうねえ。
由で手術治療がすすめられることが多く、また最近では経皮的に縫合する方法も散見される。
しかしながら最近のメタアナライシスでは手術治療でも、保存治療でもその治療成績には差がない、とする報告がある。早期復帰についてもその成績は同等であった。とされている。
今までの報告は合併症に焦点を当てて報告がなされていたが、今回は機能予後について注目して、手術療法と保存療法の二つを比較検討してみた。
Patient:60歳未満。受傷後10日未満で、RA、腎機能障害、ステロイド注射などの他の治療を受けていない患者80名
手術群か保存療法群かはカードを引いて決定
Setting:イギリスの900床以上の大病院での単施設研究
Intervention:
手術群は観血的に皮切を加えて吸収糸で縫合。術後は完全尖足位で4週間、半尖足位で2週間。ギプス除去後から全荷重可
保存療法群は4週間の完全尖足位ギプス、4週間の半尖足位ギプス、2週間の中間位ギプス固定を免荷で行った。
評価はVAS、関節可動域、トルク、筆者がShort muskleskeletal function assessment questionare(SMFA)を用いて評価した。
1年間にわたるフォロー。12週、16週、26週、52週で評価を行った。
Result:
Intention-to-treatの原則に従って結果を評価。
患者背景に有意差なし。
VAS有意差なし。
足関節可動域は3カ月までは変わらなかったが、半年後には手術群の方がわずかに良かったが、有意な差を呈するには至らなかった。
トルク(筋力)はほとんど差が生じなかった。
SMFAは3カ月の時点で有意な差を生じたもののそれ以降は同様の成績であった。
再断裂率は手術群5%、保存療法群10%で有意な差にはなりえなかった。
結論:手術をした方がよいという積極的な根拠を認めるには至らなかった。ルーチンに手術療法を行うことはおすすめ出来ない。
<論評>
少し前から言われていたことの追試、といった役回りでしょうか。
これ以外の患者群の設定の場合にはどうなるかということは分かりませんが、一般的には手術を強くおすすめすることは無くなってゆくのでしょうねえ。
2011年8月4日木曜日
20110804 Up to date. Lumber spinal stenosis: treatment and prognosis
Summary and recommendations
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰椎の変性のために起こり、60歳以上で罹患することが一般的である。
・腰部脊柱管狭窄症の神経学的な予後自体は良好である。多くの患者さんが数年のフォローアップの間は特に症状の悪化なく経過する。しかし、一部の患者さんでは症状のためADLの低下が見られることがある。
・進行性に悪化する神経学的症状のないLSSの患者さんでは、保存療法を行なうべきである。理学療法や、鎮痛剤が用いられることが多いが、その効果について確固たるエビデンスはない。
・手術治療は適切な保存療法を行なったにもかかわらず症状の軽快が認められない患者、進行性に悪化する神経症状を認めた場合に考慮される。
側弯を認めない場合、何かしらの固定法を用いいない椎弓切除術は,インプラントを用いた他の方法より好んで行なわれることが多い。
・進行性の馬尾症状、脊髄円錐症候群、新規に生じた膀胱直腸障害を稀に生じることがあるが、このような場合には緊急手術の必要性についてコンサルトすべきである。
----------
LSSの予後
32人の患者を49ヶ月間フォロー、70%の患者で症状は変化せず。15%の患者で改善。15%の患者で症状の悪化をきたした。症状が不変であってもLSSによる不快感のためにADLが低くなった患者さんもいた。
(Johnsson KE The natural course of lumber spinal stenosis. Clin orthop relat Res 1992)
LSSの保存療法
理学療法、薬物療法、硬膜外ブロックなどがあげられる。
理学療法
理学療法は保存療法としてよく行なわれるが、その根拠は不明である。運動療法のレジメもないが、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動などがよく勧められる。治療の目標は筋力の改善と姿勢の改善である。
腰椎の可動域の回復と腰椎の前弯の解消を主たる目的とする。体幹コルセットによって腰椎の前弯の解消に役立つものの帰って腹筋などの筋力低下につながるのではないかと危惧されている。
(Willner S effedt of a rigid brace on back pain Acta orthop scand 1985)
無作為試験でトレッドミルによる歩行訓練と腰椎のストレッチを行なった群との比較では歩行群の方が改善が良かった。(1年後には両群に差はなかったが。)
(Whitman JM A comparison betmeen two physical therapy treatment program for patinet w/ LSS ,RCT Spine 2006)
決まったレジメはないものの、これらの報告を参照して患者指導に用いると良いか。
薬物療法
NSAIdsなどが使われるが、その効果効能、副作用についての詳しい調査はない。また神経学的予後にどう影響するかという報告もない。
硬膜外ブロック
LSSに対する硬膜外ブロックの効果について確固たるエビデンスは存在しない。いくつかの限定的なエビデンスがあるのみである。(後ろ向き研究では効果があるとするものもあるが、小規模のRCTでは1ヵ月後にはプラセボと変わらない効果とされている。)
<論評>
腰部脊柱管狭窄症についてのUp to dateの記載です。
まだまだ分かっていないことがほんとに多いことを実感。
保存療法についても多施設でプロトコールを組んでやれると面白そうですね。
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰椎の変性のために起こり、60歳以上で罹患することが一般的である。
・腰部脊柱管狭窄症の神経学的な予後自体は良好である。多くの患者さんが数年のフォローアップの間は特に症状の悪化なく経過する。しかし、一部の患者さんでは症状のためADLの低下が見られることがある。
・進行性に悪化する神経学的症状のないLSSの患者さんでは、保存療法を行なうべきである。理学療法や、鎮痛剤が用いられることが多いが、その効果について確固たるエビデンスはない。
・手術治療は適切な保存療法を行なったにもかかわらず症状の軽快が認められない患者、進行性に悪化する神経症状を認めた場合に考慮される。
側弯を認めない場合、何かしらの固定法を用いいない椎弓切除術は,インプラントを用いた他の方法より好んで行なわれることが多い。
・進行性の馬尾症状、脊髄円錐症候群、新規に生じた膀胱直腸障害を稀に生じることがあるが、このような場合には緊急手術の必要性についてコンサルトすべきである。
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LSSの予後
32人の患者を49ヶ月間フォロー、70%の患者で症状は変化せず。15%の患者で改善。15%の患者で症状の悪化をきたした。症状が不変であってもLSSによる不快感のためにADLが低くなった患者さんもいた。
(Johnsson KE The natural course of lumber spinal stenosis. Clin orthop relat Res 1992)
LSSの保存療法
理学療法、薬物療法、硬膜外ブロックなどがあげられる。
理学療法
理学療法は保存療法としてよく行なわれるが、その根拠は不明である。運動療法のレジメもないが、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動などがよく勧められる。治療の目標は筋力の改善と姿勢の改善である。
腰椎の可動域の回復と腰椎の前弯の解消を主たる目的とする。体幹コルセットによって腰椎の前弯の解消に役立つものの帰って腹筋などの筋力低下につながるのではないかと危惧されている。
(Willner S effedt of a rigid brace on back pain Acta orthop scand 1985)
無作為試験でトレッドミルによる歩行訓練と腰椎のストレッチを行なった群との比較では歩行群の方が改善が良かった。(1年後には両群に差はなかったが。)
(Whitman JM A comparison betmeen two physical therapy treatment program for patinet w/ LSS ,RCT Spine 2006)
決まったレジメはないものの、これらの報告を参照して患者指導に用いると良いか。
薬物療法
NSAIdsなどが使われるが、その効果効能、副作用についての詳しい調査はない。また神経学的予後にどう影響するかという報告もない。
硬膜外ブロック
LSSに対する硬膜外ブロックの効果について確固たるエビデンスは存在しない。いくつかの限定的なエビデンスがあるのみである。(後ろ向き研究では効果があるとするものもあるが、小規模のRCTでは1ヵ月後にはプラセボと変わらない効果とされている。)
<論評>
腰部脊柱管狭窄症についてのUp to dateの記載です。
まだまだ分かっていないことがほんとに多いことを実感。
保存療法についても多施設でプロトコールを組んでやれると面白そうですね。
2011年8月1日月曜日
20110801 JBJS(Am) Comparison of total hip arthroplasty performed w/ or w/o Cement.RCT, 20 years F/U
抄録
THAのインプラントはすばらしい長期成績が報告されて来ているが、そのインプラントの固定法については未だ議論がなされている。250例の変股症の患者に対して無作為にセメント固定群とセメントレス群とにわけ、Kaplan-meier生存分析を用い平均20年間のフォローを行った。結果、セメントレスステムの生存率は99%であった。レントゲン写真上セメント固定ステムの95%に、セメントレス固定ステムの88%にいくらかのstress-shieldingを認めた。Grade3以上のstress shieldingはセメントレスステムの12%に認めた。
Malloy head total hip システムを使った20年の成績。
セメントレスシステムはセメント固定ステムの成績を上回った。このセメントレスTHAの生存率の全体の改善は大腿骨側ステムの長期成績が確保できたことが最も大きな容易であると考えられる。(ステム生存率は99%)
カップ側の置換率はともに大きな違いは認められなかった。
この研究の限界は、ステム以外はもう現在使われていないデザインであるということ。この研究はMalloy-headについてのみ、の検証であり、他のシステムについて同じことが言えるかどうかは不明である。
<論評>
股関節に興味をもっている人間として、読んでみました。
セメントレスステムの長期成績はものすごく安定している。と言うことがひとつ言えます。
以前このブログでも書いた記憶があるのですが、人工股関節の寿命がどれほど長いかを競う時代は終わりを告げようとしているのではないでしょうか。
人工股関節の生存に関する成績自体は安定しています。
やはり、人のQOLに関わる仕事をしているからこそ、その部分に着目した評価を行うべきでは無いかと考えています。
僕が考えるセメントレスTHAとセメントTHAの利点、欠点について
・セメントレスTHA
利点
・優れた長期成績
・手術時間が短い
・手技がセメントTHAよりは容易
欠点
・modular neckでない限り、ステムの太さとネックのオフセットが比例するので高齢者で髄腔の太いタイプでは大きなオフセットになりがち。
・脚長差、術後大腿部痛の出現はある一定の頻度で出現
・初期固定性が得られないと結構miserable
・髄腔の形状にステムの前捻、設置場所が規定される
・臼蓋側も同様に高位設置気味にならざるを得ない。
・revisionはfull porusタイプではとても大変。しっかりとした骨への固定性はrevisionの際の抜去困難と同義
・stress shieldingによる骨萎縮の問題
・セメントTHA
利点
・フレキシブルに脚長、前捻をコントロールできる。
・revisionがしやすい
欠点
・とにかく煩雑。手術チーム全体がセメントTHAに対する理解がないとトラブルが頻発
・セメント手技にともなう重大な合併症の可能性(血栓症など)
・手術時間が長い。
あくまでも僕の考えるところですので、機種の選定は術者がその機種についてしっかりと理解した上で行うべき。と考えますし、手術はナースや麻酔科の先生方の協力あって初めて成り立つものですので、チームとしてどうしたいかというコンセンサスを得ることも非常に重要であると考えました。
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