2014年6月27日金曜日

20140626 JBJS(Am) A Comparison of Various Contemporary Methods to Prevent a Wet Cast

久々にJBJSに僕好みのおもしろ論文が。

ギプスを巻いた時には濡らさないように、と注意されますがその時何で保護するとよいでしょう?という論文です。
僕は、「名古屋市の大きい方のゴミ袋がいいですよ~。口はガムテープで止めてねー
」と患者さんに伝えておりますが、果たして今回の検証の結果はいかに。

抄録
ギプスを濡らさないようにするために、古来から考えられてきた方法や、ギプスを濡らさないようにする専用の靴下があるが、実際にどの方法がよいかというのは検証されていない
マネキンの足にギプスを巻いた。その上で次の6つの方法を試した。
A Glad® Press'n Seal® wrap(アメリカ版サランラップ。粘着力が強力)
B ビニール袋にゴムバンド
C ビニール袋にガムテープ
D ビニール袋2重にしたうえにガムテープ
E CVS Pharmacy Reusable Cast & Wound Protectorという薬局で売っている専用の下肢保護靴下。
F Dry Corp Dry Pro Large Half LegWaterproof Cast Cover
写真に載せた特殊な防水長靴下

この6つの方法を比較検討した。
方法はギプスを巻いたマネキンの足を2分間水中に着ける。その後取り出して検査前と後での重量を比較しギプスにどの程度水分が吸収されたかを測定するという方法をとった。
結果、防水率は62%ー100%であった。A,Bはそれなりで、D,E,Fは最も効果的であった。
C,D,Eの方がA,B,Fよりも取り扱いしやすかった。
結論 ビニール袋2重か、CVSプロテクターが安くて効果的である。

背景
ギプスは骨折の治療などに昔から使われている方法である。ギプスは水に濡らすと強度が落ちる。また中の綿が湿っていることで皮膚トラブルを惹起する。ある研究では救急外来をギプスのトラブルで受診する患者の30%がギプスが水に濡れてしまった。ということであると報告している。
昔からビニール袋にで保護するように言われてきた。最近はよい保護材も出てきている。
AAOSの推奨ではビニール袋を巻いてシャワーをあびるようにするべしとなっている。しかしAAOSのその推奨には文献的な裏付けはなく、またコストがどの程度かかるのかということもわからない。
本研究の目的はギプスを保護するのに良い方法はなにかということを検討することである。
この研究に関するCOIはない。

考察
いずれの方法も一定以上の防水性はあった。しかしながらビニール袋を2重にする方法、CVS保護材、DryCastカバーの3つの方法が特に有用であった。6週間のコストを計算するとビニール袋が10ドル、CVSが11ドル、DryCastカバーが38ドルであった。難易度もDryCastが最も難しかった。
以上からビニール袋2重とCVS保護材による保護がもっとも良いのではないかと考えられた。
先行研究としてはNielsenの商業ベースでの研究がある。その研究では保護材は水泳している時には役に立たなかったが、ビニール袋による保護は水泳にまで堪えたと報告している。ニールセンたちは統計的な検討を行っていない。本研究は統計的に昔から言われている方法を検討したものである。
AAOSが推奨しているように、ビニール袋を二重にしてテープで固定する方法は、統計的に検討を行ったものの誤差を生じることはなかった。
本研究にはいくつかのlimitationがある。
ひとつは水につけているだけなので普段の生活を反映していない可能性があること。CVS、DryCastカバーを6週間実際に継続使用したわけでは無いので途中で壊れてしまうことも有るかもしれないということは考慮されていない。
マネキンを使って実験しているので、テープによる皮膚障害の可能性を考慮できていない。またひとりの検者による計測のみであることも問題である。
今後は実際の活動時にどうなるかということの検証が必要である。
そもそも患者が水辺に近づかないように指導することがひとつ。どうしても近づきたいときにはビニール袋2重にするか、CVSを装着すると良いのでは無いかと考える。

<論評>
2分間も水の中に完全に浸かるという実験方法がよいのかどうか考えてしまいますが。。。
普通の生活であればビニール袋で充分なのでしょう。
おもしろかった。

2014年6月17日火曜日

20140617 BJJ Patient-reported outcome is influenced by surgical approach in THR

こんにちは、がみたけです。
ただいま病院の都合でSICUに勤務しておりますのですこーし時間が出来ました。
ということで論文読んでます。

DAAから始まった股関節へのアプローチ、なにがいいのか?ということがここ近年話題になっておりました。
医師側からの評価だと、自分の用いているアプローチがいい、という主張のために結果が変わってくる可能性がありますので、patient-reported outcome measures(PROMs)wお用いて評価してみたという話。
スウェーデンレジストリーから。患者立脚型評価(PROMs)を用いてアプローチごとの比較検討。

抄録
THAを行うときにどのアプローチがすぐれているか?ということは未だ議論のあるところである。今回はスウェーデンの人工関節レジストリーを用いて検討を行った。42233例のTHAから6年間のPROMが完全に取得できた4962例を対象とした。
結果後方アプローチは側方アプローチよりも患者満足度が有意に高かった。後方アプローチの方が術後の疼痛を感じている割合が低かった。EQ5Dも後方アプローチの方が高かった。どのアプローチ方法でもTHAは満足できる結果であったが、側方アプローチは後方アプローチに劣っていた。大規模調査の結果であるので臨床的な差があると言って良いものと考える。

考察
後方アプローチの方が側方アプローチよりも健康関連QOL、患者立脚型機能評価のいずれでも優れていた。(術後6年の段階で)
THAの主要な目的は疼痛を除去、機能回復を目的とする。その機能回復の程度の評価方法は様々なものがある。THAの改善率はとてもよいために”天井効果、頭打ち”現象が起こる。また多用な原因で治療に対する反応性が低下する。
THAでQOL、股関節機能とも改善が認められた。アプローチによって改善の程度には差があること、また以前言われていたのはアプローチの違いは短期的なものといわれていたが、本研究では長期間にわたってアプローチの違いによる影響が出ることがわかった。
本研究をもってすべての患者を後方アプローチで手術すればよいということを言っているわけではない。違いは非常に小さい。また少数の患者が不満を述べているだけだということである。
レジストリーによる大規模調査、6年間という長期にわたっての評価であることが本研究の強みである。
limitationとしては教育、喫煙、社会的な問題などの他因子の影響を評価できていないこと。術者の技量についての評価がないこと、インプラントデザインの問題を考慮して以内ことである。
今回生じた差について、影響していると考えられるのは歩容の問題であろう。また上殿神経の損傷による影響も有るのかもしれない。
今後はこれらの2つのアプローチについてのRCTを考慮する価値がある。

<論評>
残念ながら知りたかった前方アプローチについての記載はありませんでした。
今回興味深かったのは、大規模レジストリーによる評価でもよりエビデンスレベルをあげようと思うとRCTしか無いという記載です。
多施設共同RCTを考慮してもよいかもしれませんね。


2014年6月10日火曜日

20140610 Google Scholarをつかってみよう!その2

すこし題名が変わっておりますが気にしません。
Pubmedで同じように引いたときと全く違った順に論文が出てきます。

最大の特徴は”他の論文に引用された回数順に表示されている”ことです。


ここが表示されている論文が他の論文で引用された回数です。
当大学はWeb of scienceと契約が有りますので、そちらを使っても良いのですが、GoogleScholarは”タダ”で使えるところがミソです。

他の論文にたくさん引用されている論文は、役に立つ、引用に値するから何度も引用されているわけで、その業界(今回なら感染性人工関節)でのKeyとなる論文であることが多いです。

また、この”引用元”をクリックするとその論文を引用した論文を教えてくれるので”逆孫引き”ができてしまいます。
この逆孫引きが便利で、このKeyとなる論文からどのように研究が進んできたのか、今現在どこまでわかっていて、何がわかっていないのかということまで追うことが出来ます。

Pubmedに満足できない貴方はいちどGoogleScholarで検索(僕的には”ぐぐすか”と呼ぶ)してみてはいかがでしょう?

ちなみにぐぐすかのトップページに出ている”巨人の肩の上に立つ”というのは
アイザック・ニュートンの言葉(パクったとも言われておりますが)です。

自分の研究成果は、膨大な先人の研究を土台とした上にある。その土台に立つことで地の領域をまた遠くまで見ることができる。ということらしいです。

いい言葉ですね。

20140610 Google Scholar(ぐーぐるすからー)ってすごいって話




こんにちは、管理人ガミタケです。
快調に更新をサボっておりますが、今回は新しい武器を手に入れましたので皆様と共有できればと思い提示いたします。

私、先日ある研究会で「人工関節と感染」で発表いたしました。

書き始めようと思ったらまずは文献検索っと。。。。

「医中誌」開いて、「人工関節」「感染」と入力。
よく似た論文見つけてその発表した先生が参考にした論文を探しに図書館に。
おおっと、大学院生たるもの英語論文にしなければなりません。英語の論文を「Pubmed」で引いてこないと。
"infected arthroplasty"なんかで引けばよいかな。。。

という流れで文献を探しておりました。

この方法で探した場合の弱点が2点あります。
1,医中誌からの孫引きはあくまでもその論文を書いた先生の論拠に沿った内容のものが引用されているので、自分の書きたいことと一致するわけではない。
2,Pubmedは新しい論文からKeywordに沿ったものを羅列するだけなので、論文の質が玉石混交。時にはマイナーな論文過ぎて取り寄せることすら出来ないことも。

Major Journal または Impact Factor ↑ = Good articleというわけではありませんが、Major journal、Impact factorの高い論文の方がより世の中の厳しい目にさらされているという点で優れていると思います。
(最近日本を騒がせたS●AP細胞も、Natureでなければあれほどの騒ぎにはならなかったでしょうし、Major journalであったからこそ自浄能力が働き淘汰されたものと思います。)

そこで、そんな悩みを解決するのがぐーぐるさんが提供する”Google Scholar”です。
では早速つかってみましょう。

”Infected arthroplasty

といれて検索すると。。。

次回に続きます。