- 人工関節置換術と金属アレルギーについてのSystematic review.
- 人工関節置換術と金属アレルギーについては論点が幾つかあります。
- 1)Metal on Metal(MoM) 人工股関節の金属摩耗粉によるALVALの問題
- 2)術前から金属アレルギーを訴えている人に対して金属インプラントを挿入することの是非
- 3)術後経過観察中に金属アレルギーにて人工関節のトラブル(人工関節の緩み)が出て来る可能性は?
- 4)金属アレルギーを同定するための有効な検査方法はあるのか?
- 1)については小生の勉強不足のため、コメントすることができません。また折を見つけて勉強し、お伝えすることができればと思っています。
- 2)から4)の問題について、和文での金属アレルギーと人工関節の報告はCace report, Case series以外はありません。人工関節の手術を考えているけども、金属アレルギーがあってどうしたらよいのか?ということに悩んでいる医師のために、明日からの臨床に役立つようにと思いSystematic reviewの内容をかいつまんで解説できればと思っています。
- 以下本文
- 1970年から2011年までに金属アレルギーと人工関節について記載された英語論文は358編。症例報告、英語論群以外、組織学的検討のみ、論文中に十分な情報が記載されていないものを除いたところ22編の論文が抽出された。
- RCTはなく、すべて観察研究または症例対照研究である。前者では人工関節の生存率について検討し、後者では術前後の金属アレルギーの有無を調査していることが多い。表1に論文のサマリを掲載する。
- 合計の患者数は3634例。3949例に対してパッチテストが行なわれ、168例に対してリンパ球刺激試験または幼若化試験が行われた。人工関節が挿入されていない接触正皮膚炎の患者も含まれており、その数は1202例であった。パッチテストでクロム、ニッケルに対する反応を着たしたのは8%であった。ただしこの1202例は以後の解析には含んでいない。
- 2432例についての検討が行われた。1910例が後ろ向きの解析。522例が前向きの解析であった。522例の内451例が術後の解析であった。インプラントが挿入される前の患者では金属への過敏反応が18%、インプラントが挿入された後の患者では31%と有意に金属への過敏性を示す患者数の割合が増加した。インプラントの不具合をきたしている症例、MoMの症例では金属への過敏反応をきたしている割合が高かった。Vitroでの検査はより高い陽性率を示したが、パッチテストでは有意な増加を示さなかった。これはサンプルサイズが小さいために信頼区間が広いことが影響していると考えられた。検査する抗原数が3つ以上になると陽性になる率が有意に上がった。1970年代からの調査で金属への過敏反応をきたす例の報告は増加してきている。
- 14編の論文を選定。1208例の患者を対象とした。人工関節置換を受けた患者の金属アレルギーはOR1.5とそれほど大きなものではなかった。MoMまたはVitroでの試験かどうかはサンプルサイズが小さいため検定不能であった。測定する抗原数について3つ以上の抗原で測定すると有意になることが多いことがわかった。近年金属アレルギーの報告が増えていいるが異質性が高く有意ではなかった。
- 金属過敏性とインプラントの状態
- インプラントが不安定な状態になっていると人工関節が安定している状態とくらべてOR2.7で金属過敏性が陽性になることが多かった。感度は0.44、特異度は0.76。陽性尤度比が1.8、陰性尤度比が0.74であった。
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まとめると
・金属アレルギーが原因としておこるインプラントの緩みは稀。(ないわけではない)。また術後金属アレルギーを訴える患者の数は増える。
・術前に金属アレルギーを申告する患者では、パッチテストを考慮する。
・アレルギーの検査として行なわれるパッチテストは強陽性が出た場合にはそのインプラントを避ける。弱陽性の場合にはVitroでのリンパ球幼若試験などを考慮する。
ちなみに、現在の人工股関節は全て合金ですので、全ての金属をさけることはできなそうです。問診をわすれずに、といったところが現実的な対応でしょうか