腱板の筋肉の質を知ることは再建が可能かどうかを決定するために重要な因子の一つである。近年、エコーの発達によって腱板の診察に超音波を使うことが増えてきた。しかしながら腱板の質にまで言及した報告はない。本研究の目的はエコーによる診察のパフォーマンスと検者間での妥当性について調べることである。
方法
棘上筋、棘下筋、小円筋についてMRIと超音波で診察した。対象は肩痛を訴える80人。MRIでの脂肪変性の程度はGoutallierの分類にもとづいて分類した。エコーでの脂肪変性は3点法を用いて3人の放射線科医のうちの一人が行った。エコーでの診察のパフォーマンスを2つを比較することで行った。検者間、検者内の妥当性の検討は4点法を用いて行った。Cohen Kappa、パーセンテージ、感度、特異度について検討を行った。
結果
エコーで脂肪変性を指摘できた例をMRIと比較してみると
・棘上筋、棘下筋で92.5%、小円筋で87.5%
・感度は棘上筋で84.6%、棘下筋で95.6%、小円筋で87.5%
・特異度は棘上筋で96.3%、棘下筋で91.2%、小円筋で87.5%
MRIとエコーの一致度は棘上筋、棘下筋ではほぼ一致と言う結果が得られ、小円筋では中程度の一致という結果が得られた。
検者間の検定についても3つの筋肉全てでほぼ一致と言う結果が得られた。
結論
エコーでもMRIと遜色ない結果が得られた。エコーは腱板の脂肪変性を見つけるツールとして初期診療から用いることができるだろう。
考察
腱板の画像診断にエコーはMRIを超える幾つかのメリットを示している。安価、耐久性があり、インプラントが挿入されている患者でも実施可能である。また動態撮影が可能である。MRIは静的な一部の状態しか示すことができない。今回の研究で今までMRIで判断することが一般的であった脂肪変性までエコーで診断可能であることを明らかにした。
MRIと遜色ない診断精度であり、またエコー検査でよく言われる検者間差についても統計的には有意な差はなかった。
エコーでは脂肪変性の程度を診断し、MRIでは実際に脂肪変性した筋肉の量についての情報が与えられることに注意が必要である。
エコーではやはりある程度のトレーニングが必要となる。また肥満した患者では検査が困難である。また肩甲下筋の診断も難しい。ただ、MRIの欠点(静的であること、金属が入っていると検査が困難なこと)などをかんがえると今後は画像検査のゴールド・スタンダードになるのかもしれない。
【論評】
肩関節のエコーは一度セミナーまで受けております。(高かったですね。。。数万円払った記憶が。。。)
エコーが手元にないとぱっと検査できないので、セミナー受けて以来まったくご無沙汰になってしまっておりますが。はい。
やるなら外来ですぐ手の届くところにおいて置かないとやらないですね。
肩関節の診断、治療については自分自身悩んでいるところがおおございます。
一般整形外科外来に来られる肩痛の患者さんの多くが診察前確率として、肩関節周囲炎、腱板損傷、変形性関節症ということになると思います。
肩関節周囲炎とはなんなのか?関節包?滑液包炎?
腱板損傷があっても痛くない高齢者は多いとのこと。ではどの人を治療して、どの腱板損傷が病態に寄与しているのか?
エコーがより導入されていくと、このような疑問が解決される方向に進んでいってくれるのでしょうか。