2016年9月25日日曜日

20160925 JBJS (Am) Patient Compliance with Postoperative Lower-Extremity Non-Weight-Bearing Restrictions

免荷を指示すると患者さんはどれだけその指示を守れるか?という論文です。

結論として、27.5%の患者さんは免荷の指示を守れず歩いてしまいますよ。という結論です。
なぜか季節が暖かいとコンプライアンスが不良となるという結果を出していますが、苦しい感じは否めません。苦笑。平均気温摂氏16度とか、日本で言ったら寒い季節だし。
この論文はDiscussionの最後の段落が読みどころです。本研究の意味合いについて「この論文を書いたところ、自分の指導医の診療姿勢がかわったのが本研究が意味があるところである」という手前味噌なオチ。苦笑。
サンプルサイズの問題はあるかもしれませんが、コンプライアンスの良、不良に関わらず合併症の発生率に差がないというのもなかなか深い。と思います。

そうそう、この間95歳のおばあちゃんに三分の一の部分荷重を指示した若いDrがいました。本論文でも書いてありますが、部分荷重は本当に指導する方も守る方も大変です。
高齢者にそんな指示だすな。というのはこういう場で言っておきます。
閑話休題

以下本文

  • Background
  • 整形外科領域では、外傷の治療や手術後に免荷を指示することがある。免荷は創部の回復に有用であると信じられている。しかしながら免荷がどの程度守られているかと言うことについては今までわかっていない。本研究の目的は免荷のコンプライアンスがどの程度かを調べることである。
  • Methods
  • 一重盲検。片足の免荷を指示された患者のギプスに、圧がかかると色がするフィルムを貼り付けた。ギプス除去時(平均24日目)にフィルムを回収した。50%以上フィルムに着色されている場合にはコンプライアンスが不良であると定義付けた。患者背景、ギプス装着期間との関連を調査した。
  • 結果51患者中14患者(27.5%)がコンプライアンス不良であった。コンプライアンスが良好であった37例では11例に症状の悪化などがみられ、コンプライアンスが不良であった14例の患者の内6例で症状の悪化が見られた。この2群間に有意差はなかった。年齢、性別、言語、BMI、ギプス固定の期間、術者などで有意差を認めなかった。寒い季節よりも暑い季節のほうが荷重をかけていた。
  • 免荷を守れない患者は27.5%であった。暖かい季節だと有意に免荷が守れないことがわかった。免荷をしないことで合併症は免荷を守った群と差を認めなかった。
  • Introduction
  • 患者のコンプライアンス、アドヒアランスについて医療界ではよく語られている。特に多いのは薬剤の服薬継続についてである。これらの報告で明らかになるのは、コンプライアンスが低いと大きな問題が引き起こされるということである。
  • 整形外科の論文では、ギプスについての報告が最も多い。術後どの程度コンプライアンスが守られているかというのは不明である。今まで、患者が術後の指示をどれだけ守っているかということについて調査することは困難であった。しかし、術後良い結果を得るためには術後厳しい指導をしておく必要があるということが信じられてきた。患者がどの程度その指示を守っているのかわからないのにもかかわらず結果について報告することは時間の浪費であるとも考えられる。
  • 本研究では術後免荷の指示がどの程度有効であるかを調査することを目的とした。
  • Methods
  • アメリカボストンの大学病院を受診した患者。51名。術後免荷の指示が必要だった患者を対象。
  • ギプスの中に圧がかかると色が変わるフィルムを挿入しギプスを巻いた。
  • 最低3ヶ月間フォロー。術後合併症を記録。
  • フィルムの50%以上が着色されている群をコンプライアンス不良群と規定。まず6名のボランティアの健常人を準備し、ギプスを巻いて免荷、半荷重、片脚立位、2分間歩行の4パターンでのフィルムの着色を調査。これらの調査で、免荷、半荷重、片脚立位では着色が50%を越えることはなく、歩行した場合にのみ50%を越えることがわかった。
  • 患者の属性を記録。気温が16度を超えるときには暑い季節、それ以下のときには涼しい季節と定義した。
  • Result
  • 51例全例でフォローが可能であった。最低3ヶ月のフォロー。ギプス固定の平均は24.3日であった。27.5%の患者がコンプライアンスが不良であった。様々な患者要因を検討した結果、暖かい季節のほうがコンプライアンスが不良であった。その他多変量解析でも独立した真摯は認められなかった。
  • 51例中17例、33.3%で何かしらの合併症を発症した。持続する疼痛、再手術、感染、DVT、骨接合金属からの痛み、骨折治癒遅延などである。コンプライアンス不良例の14例中6例。コンプライアンスが良好であった37例中11例で合併症は発生した。この2群間に有意差を認めなかった。
  • Discussion
  • 術後の荷重制限については部分荷重についてその指示をまもれるか、という報告がある。部分荷重を守らせることは部分荷重を指導するのと同じように難しいという結論となっている。部分荷重についてははっきりと守らせることが困難だからである。BMIが高い群でよりコンプライアンスが不良であったとする報告がある。
  • 整形外科領域のコンプライアンスについての報告は散見される。これらの報告の多くは患者の申告に立脚している。このような報告式のデータ収集の報告ではコンプライアンスが実際よりも良好になる。
  • 本研究でわかったことは、免荷の指示を出したときに守れるのが72.5%であったということと、暖かい季節ではコンプライアンスが不良となるということである。しかし、多変量解析では有意な結果は得られなかった。その上、コンプライアンスの良、不良に関わらず術後合併症の発生には影響がなかった。ただし、骨癒合について影響があるかどうかを検討するには症例数がすくなく、本研究はコンプライアンスについて調査することを目的としているのでこの有意差がなかったのはサンプルサイズが不足しているせいであるとしておく。
  • 患者には、コンプライアンスについての調査をするということを前もって伝えてあるため、コンプライアンスの遵守率は実際の患者群より高くなっている可能性がある。(ホーソン効果の可能性)
  • コンプライアンスが不良であった原因について、職業なども含めた検討が必要であると考える。
  • 本研究によってこの研究を指導したDrの診療がより丁寧になったので本研究は意味があるものと考える。


2016年9月10日土曜日

20160910 CORR Physicians’ Attire Influences Patients’ Perceptions in the Urban Outpatient Orthopaedic Surgery Setting


若い先生がラフな格好で外来をしていると「もっときちっとした服装で外来にでなさい」とお小言をいうようなお年ごろになってきた、がみたけです。
変形性関節症などはヒアルロン酸の関節内注射の結果をみても、プラセボ効果が無視できませんので、服装は大事やで!とおもっていたところでこの報告です。
白衣とスクラブがオススメとのこと。
ネクタイつけるだけで手術がうまくみえるのであれば、つけない理由はありません。
そこのスニーカーで外来にでているあなた。ちょっと気を使いましょう。

以下本文
  • 抄録
  • 以前筆者らは皮膚科で医師の外見が患者に与える影響について調査を行っている。しかしながら、他の科では外見が患者に与える影響について行なわれた研究はない。今回は整形外科で医師の外見が患者の信頼度に与える影響について調査した。
  • 外来セッティングで医師の服装が患者の印象に与える影響を調べることである。
  • 都会の教育指定病院の外来。100人の患者の内85人が3つのパートの質問に回答した。はじめのセッションは8つのイメージについての質問。白衣、スクラブ、スーツ、カジュアルウエアで男性、女性の合計8名の写真を見せた。次にそれぞれの写真について5段階で評価を行った。自信がありそうか、信頼、安心感、優しさ、賢さを示しているかを調べた。どれくらい手術がうまそうか、についても自由記載させた。
  • LikertスケールとFriedmanテストで統計学に有意かどうかを決定させた。
  • 結果
  • 自信、知性、手術の技量、信頼、信用できる情報、優しさ、安全性において白衣を着ているとスーツを着ている場合やカジュアルウエアを着ている場合よりも有意に前向きな反応が得られることがわかった。女医については、白衣とスクラブでは差がなかったものの、白衣を着ているとスーツよりも有意に前向きな反応が得られることがわかった。信頼感において白衣を着ていると他の3つの服装よりも有意に良い信頼感が得られていた。
  • 都会の整形外科外来において、白衣は信頼、知性、信用、安全性を担保する道具となることがわかった。白衣を着ていたり、スクラブを着ているだけで手術がうまく見えたり個人的な情報を話すことができると感じることがわかった。これらの結果は他の科での結果と一致するものである。院内感染に気をつければ、整形外科医が白衣を着ない理由はない。
  • Introduction
  • 医師の服装が重要であるということはヒポクラテスの時代から言われている。専門職であることを明らかとすることや衛生的な理由からどのような服装をすると医師患者関係に有益かということが議論されてきた。多くの研究が医師患者関係(患者教育、信頼感、信用、尊敬、アドヒアランス)に服装が与える影響について述べている。信頼感や信用と言った要素は多くの心理的な要因に影響されているものの、整形外科以外では服装がこれらに影響することはわかっている。服装は患者の第一印象に影響を与える中で変えることのできる要素の1つである。白衣は19世紀から医師の一般的な服装として認識されてきた。近年、スクラブ、スーツ、カジュアルウエアも外来ではしばしばみられるようになってきている。英国では診療中に肘より先に装飾品をつけることを禁止している。これは白衣が院内感染の媒体となっているのでは無いか、また患者に接触し傷つけるのでは内科という恐れに伴うものである。患者側の医師の服装に対する期待も無視できない。小児科、精神科では白衣は医師の権威の象徴として患者側が心を閉ざすことがある。また高齢者ではよりフォーマルな服装を好む。
  • 以前の研究において、さまざまな施設で様々な科においてどのような服装が良いかの研究を行ってきた。小児科、精神科ではよりカジュアルな服装が好まれる一方で、内科では白衣が好まれてきた。今までに整形外科領域で医師の服装に関する研究はない。本研究の目的は整形外科領域での医師の服装が医師患者関係に与える影響を調査することである
  • 方法
  • 横断研究。3つのパートにわかれた質問票への回答。セッティングは都会にある整形外科教育病院
  • 対象は18歳以上。85人の患者からデータを回収した。黒人、女性、プライベートな保険を有する人が多かった。
  • 最初の調査は図1のような8枚の写真を見せた。これをランダムに出現させた。背景、装飾品などは全て統一させてある。それぞれの写真についてLikertスケールを用いて整形外科医に対する信頼感、知性、信用、安心感などを5段階評価。
  • 続いての質問では、8枚の写真で、どの整形外科医が信頼、知性、信用、安心感があるかを調査順位付けを行った。
  • 最後のセッションでは患者自身の背景について年齢、性別、人種、教育レベルについて聴取した。
  • データ収集についての問題
  • 5段階のLikertスケールであるので、カテゴリアルデータとなる。0.75以上で有効であると判定できる
  • 統計学的データ
  • Friedmanテストを用いて4つの服装についての検討を行った。Bonferroniで補正してある。ノンパラメトリックで検定を行った。
  • 結果
  • 男性では、白衣は他の全ての服装よりも信頼、知性、人種、手術の上手さが高いという結果になった。
  • 女性ではカジュアルウエアで信頼、知性、人種、手術の旨さで前向きな反応が有意に少なかった。白衣とスクラブ、スーツのあいだには有意差を認めなかった。
  • 患者が好ましいと考えるのは、白衣またはスクラブだった。
  • 考察
  • 英国では感染防御の観点から白衣、時計、ネクタイの着用が禁止されている。今回の結果は患者からみるとそれらの対応は好ましく無いと言える。
  • 本研究の結果はあくまでもアメリカの都会の病院の結果である。
  • 幾つかのLimitationがある。都会で若い患者を対象としていること、気候の問題を無視していること、若い患者が多く、これらの患者はカジュアルな服装を好むことなどである。
  • また5段階評価を行ったが、この評価はValidateされて担保されたものではない。
  • スクラブが白衣とほぼ同等の評価であった。若い患者ではよりカジュアルな服装を好むので、本研究の対象が若い患者が多かったことが影響しているのかもしれない。
  • 患者の第一印象を変える最も容易な手段として服装を変えるということはあるので、医師患者関係の観点から考慮されてもよい。