2013年9月28日土曜日

20130927 BJJ THA for DDH w/ more 30% lateral uncoverage of un cemented acetabular components.

DDHに対してTHAを行う際に、臼蓋のコンポーネントを原臼設置するとその上方に骨欠損部が生じる。この時にセメントレスカップを用いた際にどの程度まで骨によって被覆されていればよいのか?というのは未だ結論が出ていない。本研究の目的はDDHに対してTHAを行った患者で、その臼蓋側コンポーネントの骨性の被覆がない患者(30%以上被覆されていない)を対象にそのコンポーネントの安定性、機能評価を行うことである。
DDHに対してTHAが行われた760例。全例で原臼設置。56関節で臼蓋コンポーネントの30%以上の非被覆部が残存していた。非被覆部には術中にモーセライズボーンを移植した。スクリュー2本以上で固定。その他の補強器具は用いなかった。
4関節でフォローが出来なかった。52関節に対して3年から7年のフォローを行った。男性11例、女性41例。平均年齢は60.1歳。フォロー中に再置換術、著明な人工関節のゆるみは認めなかった。HHSは40.7から91.1に改善していた。
本研究の結論として、臼蓋外側の骨欠損部の距離が17mm、50%の被覆が得られていれば臼蓋コンポーネントは安定するのではないか。

Introduction
Crowe2,3のようなDDHに対して原臼設置でTHAを行うと臼蓋コンポーネントの外上方に大きな骨欠損ができる。骨欠損が大きいとTHAの臨床成績に影響すると考えられ、骨移植が行われる。しかし今のところどこまで被覆されていなくても大丈夫かという報告はなされていない。Gravinらは20%までにしないと人工関節の破綻のリスクが高まる年、Jastyらは30%以下の被覆率はセメントレスカップの長期予後に影響しないと述べている。KImらは非被覆部は40%以下にすべきだと述べている。一方、50%被覆されていれば大丈夫という識者もいる。
本研究の目的は臼蓋側の非被覆率が30−50%の患者の短期成績について報告することである。

対象と方法
2003年から2007年までに行われたTHA760関節のうち、臼蓋側コンポーネントの非被覆率が30−50%の関節56関節を抽出。フォロー出来なかった4関節を除外。52関節についての経過観察。女性41例、男性11例。平均フォローアップ期間は4.8年、手術時平均年令は60.1歳。平均身長158センチ、平均体重58kg。DDHの程度はCrowe分類を用いて評価。Crowe1が2例、Crowe2が20例。Crowe3が27例。Crowe4が2例であった。非被覆率は31−40%が36例。41%ー50%が16例であった。
HAのセメントレスカップを使用。30関節でmetal-on-polyethylene、22関節がceramic-on-ceramic.コンポーネントの平均は48ミリ。骨頭は28ミリ骨頭。
術後翌日から離床。一週間は完全免荷。その後6週間は疼痛内での部分荷重。8から12週で自立歩行可とした。12週後とその後1年毎のフォロー。臨床評価はHHS。レントゲン評価はDeleeとCharnleyの方法。臼蓋側コンポーネントの緩みは全周性に2ミリ以上のクリアラインがでたものとした。原臼から35ミリ以上上方設置を高位設置と定義。図2,3に示すような方法で非被覆率を計算した。

結果
経過観察期間中に再置換が必要となった例はなかった。平均のHHSは40.7点から91.1点アで改善した。脚長の補正は2.3センチ。1.5センチ以上の脚長差が残った患者は52関節中二関節のみであった。感染、脱臼なし。1例で神経麻痺。
最終フォローまでで臼蓋コンポーネントのゆるみをきたした症例はなかった。1例で大きなRLLが出現。1例で臼蓋コンポーネントの骨融解を認めた。12ヶ月までで移植骨のリモデリングを観察。異所性骨化を6関節で認めた。
臼蓋の外方開角は46.8度。平均の高位設置の程度は21ミリ。非被覆率が40%以下の群と40%以上の群でカップの外方開角に有意差はなかった。臼蓋の外側の壁からコンポーネントの設置までの距離は17ミリであった。

考察
セメントレスカップはbone ingrowthによって長期間の固定性aを得る。どれくらいカバーされていれば良いかとする報告は今までになかった。本研究ではカバー率が30%から50%であれば短期成績は安定していることを示した。
いくつかの研究上のlimitationがある。フォロー期間が短いこと、単一機種しか使っていないこと、測定方法に一定の方法が無いことで2Dでした評価できていないことである。
30%を超えているようであれば何かしらの骨移植は必要と考える。しっかりとした初期固定性を得るために前後の壁をしっかり確保することと、スクリュー固定を用いた。
30%以上の非被覆率がある患者では骨移植は必須と考える。バルクボーンは術後10年から15年で吸収されてしまうとする報告がある。外側からの距離が17ミリであれば臼蓋コンポーネントの外方開角もカップのサイズにかかわらず安定しているはずである。

論評
セメントレスTHAが主流となっているご時世ですので、どれだけ被覆されていたら固定されるかということを知っておくことは重要だと思います。
AP像で何%ということ以上に前後の壁が確保されているということがポイントだと個人的には考えています。
中国からの報告で、彼の国からの報告は今後増えていくことでしょう。
BJJくらいのクオリティジャーナルでこの程度のフォロー期間、内容でのるという当たりでなんだか政治の匂いを感じます。苦笑。

2013年9月11日水曜日

20130909 BJJ Femoral head deformity and severity of acetabular dysplasia of the hip


臼蓋形成不全の患者では将来の変形性関節症の予防に寛骨臼骨切り術が行われる。いくつかの研究で大腿骨頭の形態異常が将来の予後に影響をおよぼすことが示されている。本研究では112例、224関節の臼蓋形成不全と初期関節症の患者について調査を行った。103例が女性、9例が男性。平均年齢は37.6歳。(18歳から49歳)。201例に臼蓋形成不全を認めた。23例は臼蓋形成不全がなかった。臼蓋形成不全群ではCE角とAHIが有意に小さかった。acetabular angle、acetabular roof angleは臼蓋形成不全群のほうが正常群よりも大きかった。骨頭の円形度とその他のパラメータはすべて有意に相関した。骨頭の形態は臼蓋形成不全の重症度に影響されている可能性がある。

introduction
日本では一次性の変形性股関節症の発生は少なく、ほとんどが臼蓋形成不全に伴う続発性の変形性股関節症である。臼蓋形成不全に伴う変形はアメリカの患者よりも多く(46%対4.5%)イギリスの患者よりもより重症の臼蓋形成不全の患者が多い。(CE角37度対31度)。将来の変形性関節症の発症を予防するために寛骨臼骨切り術(PAO)が臼蓋形成不全の患者に行われることがある。大腿骨頭の形態異常は臼蓋の適合性を最適下限にしたり、また二次性のインピンジメント症候群の原因となりうる。いくつかの研究で大腿骨頭の形態異常は臼蓋形成不全に対するPAOの予後を規定することが報告されている。
大腿骨頭の形状についての論文はいくつかある。Stulbergの分類はペルテス病の評価に用いられ、Kalamachi,SchmidtとMacEwenの分類はDDHの無腐性壊死に対して用いられてきた。しかしながら臼蓋形成不全に注目して行われた研究はほとんどない。通常の股関節に比べて臼蓋形成不全股では大腿骨頭の変形が起こりやすいかどうか、また臼蓋形成不全の重症度と大腿骨頭の変形との関連を調査した。

patient and method
後ろ向き研究。17歳以上の臼蓋形成不全症の患者。日整会の変形性関節症の基準にしたがってStage1,2の前関節症、初期関節症の患者を抽出。Stage3以降の患者、50歳以上の患者を除外。股関節の手術既往のある患者、脱臼股、外傷後変形、RAの患者は除外した。
2008年から2012年までに112人の患者をrecruit。103例は女性で9例は男性であった。平均年齢は37.6歳。224関節に対してレントゲン撮影を行い201例が臼蓋形成不全、23例が正常股と診断された。評価にはCE角、Sharp角、acetabular head index(AHI)を用いた。臼蓋形成不全の診断はCE角が20度未満、AHIが75%以下。Sharp角が45度以上、臼蓋傾斜角(acetabular roof angle)が15度以上とした。
大腿骨頭の変形を定量化するためにround indexを用いた。この指標は大腿骨頭の頂部から垂線をおろし、この垂線と大腿骨頭の内側縁からの距離と大腿骨頭内側縁から外側縁までの距離で割ったものである。
AP像で撮影。撮影距離は115センチ、足部は15度内旋。x線は恥骨結合上からまっすぐ入射した。
3人の検者にてCE角、AHI、Sharp角を測定。5枚適当に選んだレントゲンで検者間誤差が無いことを確認して残りは筆者が測定した。それぞれの大腿骨頭は3回ずつ一週間の間をおいて測定した。

result
正常群に比べて臼蓋形成群ではCE角、AHIが有意に小さくまた臼蓋傾斜角、Sharp角、round indexが有意に大きかった。round indexは臼蓋傾斜角、CE角と中程度の有意差をみとめAHI,Sharp書くと弱い相関を認めた。

discussion
正常群に比べ、臼蓋形成不全群では大腿骨頭の形態異常を認めることが多いことがわかった。また臼蓋形成不全の程度と大腿骨頭の形態異常の程度が相関していることがわかった。
round indexと臼蓋形成不全症のすべてのレントゲンパラメータで有意な相関があることがわかった。臼蓋傾斜角でもっともよく相関し、Sharp角が最も弱い相関を示していた。臼蓋傾斜角は臼蓋の荷重部である。Sharp角は臼蓋全体の角度を表している。これから言えることは臼蓋全体の形態よりも臼蓋荷重部の形態のほうが大腿骨頭の形態異常に影響を及ぼしているのではないかということである。
臼蓋形成不全の患者に対して手術治療をおこなうかどうかを決定するツールとしてレントゲン写真評価を用いることができる。しかしながら現在までに初期関節症の将来的な予測する方法は確立されていない。
小林らはCE角と臼蓋角をDDHの患者で経過観察した。3年から18年の経過観察の結果13.6%の患者で臼蓋形成不全を発症した。12歳までで将来の臼蓋形成不全を診断することは困難であると述べている。鬼頭らはCE角と臼蓋傾斜角が臼蓋形成の上でもっとも鋭敏な指標となりうることを述べている。
MurphyらはCE角15度以上、AHI68%、臼蓋傾斜角16度以下であれば65歳までは良好な股関節機能を保てると報告している。Albinanaらは臼蓋傾斜角が25度以上は成績不良と述べている。
岡野らは観血的整復の後の大腿骨頭の形態異常と臼蓋傾斜角の増大は年齢と関連することを述べている。しかしながら征服後も変形が残存したという理由で10歳以下で骨切り術を受けた患者ではフォロー時には球形となっていた。これらから早期の臼蓋の治療は大腿骨頭の球形度に影響をおよぼすものと考えられる。
Omeroglu らは臼蓋傾斜角が15度が早期に臼蓋形成術の適応となったと述べている。臼蓋傾斜角は大腿骨頭のround indexと関連が強い。臼蓋傾斜角は臼蓋形成不全での経過観察の時に最も影響を与えているのかもしれない。
本研究の限界は一方向からのレントゲン撮影しかしていないということである。将来的には3方向からの評価が行えるとよい。

conclusion
大腿骨頭の形態異常は臼蓋形成不全と関連していた。特に臼蓋傾斜角が大きく関連していた。大腿骨頭の形態は臼蓋傾斜角に大きく影響されているのかもしれない。

臼蓋形成不全で大腿骨側に変化が出るという論文です。
これだけマメに研究できる岡野先生はすごいなあ

2013年9月2日月曜日

20130902 JBJS (Am) Spinal anesthesia: Should everyone receive a urinary catheter? RCT,THA patients

脊椎麻酔後のTHAの患者で必ず尿道カテーテルが必要かどうかをRCTで調べた。
方法:一般的にTHAを脊椎麻酔後に行う場合には尿道カテーテルを挿入している。0.5%のマーカインで脊椎麻酔。従来治療群は術後48時間尿道カテーテル留置。実験群は尿閉の程度を測定、必要に応じて間欠的に導尿を行った。
結果:200人の患者を対象とした。尿閉、尿路感染、入院日数に有意差はなかった。術後48時間たったところで実験群で9人、従来治療群で3人が尿閉のため間欠的導尿を必要とした。尿路感染症は従来治療群で3人、実験群で認めなかった。
結論:THAの患者では尿閉のリスクは低いので尿道カテーテルの留置は必ずしも必要でない

尿閉は術後しばしば見られる合併症でTHAの患者でもありえる。尿閉の治療として尿道カテーテルを用いることがあるものの、尿道カテーテルの留置は感染症との関連も指摘されている。尿道カテーテルの留置は従来尿量の測定に用いられてきた。しかしながら留置することで神経因性膀胱をきたす患者もいる。
尿道カテーテル留置を行うメリットは術後の尿閉を避ける事ができることである。尿閉になると残尿がおこり感染につながる。カテーテル早期抜去によって尿閉がおこる率は0ー75%と言われておりよくわかっていない。現在、筆者らの施設ではカテーテル挿入を義務付けてはいない。カテーテル挿入による神経因性膀胱を避ける事が目的である。本研究の目的はカテーテルを留置したほうがよいのかどうかをRCTで調べることである。

考察
THA後にカテーテルを留置したほうがよいのかどうかということについて調べた論文はほとんどない。Knightらが行ったTHA、TKAの患者を対象とした論文では尿閉の発生率は35%となっている。Davisらは硬膜外麻酔よりも脊椎麻酔のほうが尿閉の発症が少ないと報告している。これらの方法はいずれも麻酔の方法が異なっており、交絡因子を除去するために今回はRCTを行うことで麻酔のプロトコールを一致させた。
本研究で重要な点はいくつか有り、術後の尿閉の発症率は今までに考えられていたのよりも低く、9.7%でしかなかったことである。
しかし、一方実験群と従来治療群との間では有意な差を認めなかった。しかし、その発症率には3倍の差があると考えることもできる。この研究からは尿道カテーテルを使わないと術後の尿閉の発症率が高くなるものの、1回導尿すればその問題を解決することができるといえる。
従来治療群で尿路感染症は起こりやすかった。尿路感染症は人工関節置換術後も重要な問題である。IDSAの報告では入院患者感染症の40%が尿路感染症であるとする報告をしている。カテーテルの留置を安易に考えるのは良くないということであろう。
RCTであるが幾つか問題があり、前立腺肥大の患者などは除外されている。IPSSのいう尿閉になりやすい人をスコアリングするシステムが有ることからそういったものを用いて判断する必要があった。モルヒネの投与を今回行っていないものの、モルヒネの投与で尿閉が多くなることも知られているので今後そういった研究も必要であろう。

<論評>
ペンシルベニアはトマス・ジェファソン病院からのご報告。
考察で”3倍も差があるやないか!”とおっしゃっておりますが、有意差が出なかったということはその3倍という数字は偶然かもしれません。あくまでも”差があるかどうか分からなかった”と記述すべきですわな。
カテーテル留置の害はよくいわれているところでこのように間欠的導尿をおこなったほうが良いのかもしれませんが、尿がたまっているかの確認をして導尿をそのたびに行うのであれば尿道カテーテルをいれたままでも早期離床して早く抜けるようにしてあげたほうが良いのではないかと思いました。この研究だけみてカテーテルなしにするのはあまりに早計。
なにかガイドラインであたらしくこうしたいとか、保険上の問題とかゴニョゴニョしたべつの力が働いているような気もいたします。