2011年3月30日水曜日

20110330 Journal of shoulder and elbow surgery:Internal fixation versus nonoperative treatment of displaced 3-part proximal humeral fractures in elder

Internal fixation versus nonoperative treatment of displaced 3-part proximal humeral fractures in elderly patients: a randomized controlled trial

高齢者の上腕骨近位端骨折(2,3-part)に対して、ロッキングプレートを用いた手術群と、保存療法群のいずれが優れているかをRCTを用いて調査してみた。

60人の患者。平均年齢74歳。56‐92歳。うち80%が女性。DASHスコア、EQ5Dを用いたHRQoLで評価した。

2年後のフォローの結果、ロッキングプレートを用いた手術群の方が関節可動域、術後のQOLスコアで優れていた。平均屈曲は手術群が120度、保存療法群が111度。外転は手術群が114度、保存療法群が106度であった。Constantスコアは手術群が61点、保存療法群が58点。DASHスコアが手術療法群が26点、保存療法群が35点。EQ5Dでは手術療法群が0.70、保存療法群が0.59であった。手術療法群では86%が良好な整復位を獲得していたが、13%が大きな理由で再手術をうけ、17%がマイナートラブルによる再手術を受けていた。

HRQoLの観点から見れば、高齢者の上腕骨近位端骨折は手術治療を行ったほうがより良い成績を得ることができることがわかった。ただし、その治療コストは30%増しとなることがわかった。

<論評>
高齢者の上腕骨近位端骨折に対する手術療法についてinjuryに述べられていました。
今回はRCTによる上腕骨近位端骨折の治療成績です。

この雑誌とは契約していないので、内容を読むことが出来ないのでなんとも言えないので申し訳アリマセン。

ロッキングプレートは優れた方法ですが、合併症がかなり高率におこる事は事実として捉えるべきで、今後僕達が調べてゆくことは、どうしてその合併症が起こるのか、その合併症を防ぐ具体的な手段は何か、と言う事について研究して言うことだと思いました。

2011年3月29日火曜日

20110328 JBJS(Br) The treatment of open femoral fractures with bone loss

大きな骨欠損を伴った、29例31肢の大腿骨開放骨折について一つの外傷センターでのレビューを行った。
骨までの徹底的なデブリードマンを行い、髄内釘、またはDynamic Condyler plateによる早期固定を行った。48時間以内に軟部組織による被覆が行われ、必要に応じて骨移植、ネイルの入れ替えを行った。
骨癒合までの平均期間は51週(20週から156週)であった。骨癒合までの時間、患肢の機能予後と骨欠損部位とその割合には関連が認められた。楔状の欠損のほうが分節上の骨欠損よりも治癒しやすかった。骨幹端部の骨折のほうが同じ大きさの骨幹部骨折よりも治癒しやすかった。
骨欠損が大きいほど合併症が発生しやすく、その合併症は膝の硬縮、脚長差であった。
この筆者らのアルゴリズムにそって治療を行うと、多くの開放性の大腿骨骨折にたいして満足する治療結果が得られることが分かった。





<論評>
日本でも外傷センターの設立は急務だと思います。この筆者たちが行う治療ができる施設は日本では数えるほどしかないと思います。(特に48時間以内の皮弁)

結構骨癒合まで粘り強く待っているのだなあという印象を受けました。

施設ごとにアルゴリズムを作って、ある程度形にしておく必要もあるのかと思いました。

2011年3月23日水曜日

20110323 Injury: A systematic review of locking plate fixation of proximal humerus fractures

抄録

上腕骨近位端骨折に対するlosking plateを用いた骨接合術は急速に広がりつつある。この報告の目的はlocking plateをもちいて固定された上腕骨近位端骨折の患者の機能予後と合併症についてのsystematic reviewで行うことである。

方法
英語の文献で、18歳以上。15例以上。18ヶ月のフォローを最低行っており、一つ以上の機能評価が行われているものを選んだ。レビューワーのバイアスがかからないように筆者は誰だかわからないようにした。

結果
12本の研究、514症例が該当した。最終機能は、Constantスコアで74点、DASHスコアで27点であった。
内反変形例では49%に、内反変形例でないものでは33%に合併症がおこっており、全体の14%で再手術が行われていた。合併症で頻度が高いものとしては内反変形が16%、無腐性の骨頭壊死が10%。関節内へのスクリューの穿破が8%、肩峰下でのインピンジメントが6%、感染が4%で認められた。

考察
上腕骨近位端骨折に対するlocking plateをもちいた骨接合術では高率に合併症をきたし、また再手術が高いことがわかった。現在その合併症が高いことについての原因の精査をおこなう必要がある。

<論評>
結構衝撃的なシステマティックレビューでした。たしかに様々なタイプのプレートが発売されており、その良好な成績が報告されているのと同時に、再手術になることも多いなあと言う実感を持っていたので余計に実感をもって読みました。

具体的な対策として
1.アプローチの変更:deltopectoralアプローチはどうしても深くなり、肥満傾向のある患者さんでは上腕骨の後方と小結節の確認が難しい。腋窩神経損傷に注意して側方アプローチもひとつかも知れない。
2。内反変形、スクリューの穿破というところはスクリューの設置で改善できそうな問題かもしれません。

地方会、骨折治療学会でも”こんなにこの治療良かったですよ、( ゚Д゚)ウヒョー”という発表ばかりです。
それでは進歩はアリマセン。失敗例からしかヒトは学べない、と考えています。

このように、当たり前だと思っていた治療でも十分な成績が得られていませんので、そこに観察分析研究(後ろ向きコホート研究)をする余地があると思います。

2011年3月22日火曜日

20110322 JBJS(Am) Functional Elbow Range of Motion for Contemporary Tasks

日常生活で必要となる、とされている肘の可動域についての研究は1981年にMorreyが行った研究がもっとも有名である。しかしながら最近はキーボードの使用、携帯電話の使用などが要求され、これらの動作で必要となる肘の可動域がどれくらいかという研究はまだない。これらの動作で必要となる屈曲、伸展。回内、回外。内反、外反。について3Dトラッキングシステムを用いて計測を行ってみた。
方法
25人の患者でそれぞれ以前Morreyが行った項目に加え、最近必要となった動作について必要とされる肘の動作について計測を行った。
結果
必要となる角度は最小で27度±7度。最大149度±5度であった。回内は20度±18度。回外は104度±10度であった。内反は2度±5度。外反は9度±5度であった。
最大屈曲が要求される動作は携帯電話をかける動作で、142度±3度であった。最大回内外が要求されるのはフォークを使う動作で103度±34度であった。最大の回内が要求されるのはキーボードを打つ動作で回内65度±8度であった。最大回外動作はドアを開ける動作で77度±13度であった。最小外反はナイフを使う動作で、最大外反はドアを開ける動作でみられた。
結論
以前に報告されていた動作よりも現代社会では必要とされる肘の可動域は大きくなっていた。キーボードや、マウスを使うと行った動作はより回内が必要とされ、携帯電話を使うときにはより大きな屈曲が必要となることがわかった。

<論評>
おもしろい論文だと思いました。この結果自体は新しい人工肘関節がいかにあるべきかということを主眼におこなわれた研究だそうですが、いくつかの新しい視点があり、それを別の研究に生かせないかと思いました。

・人工肘関節がより屈曲と回内を必要とするということが分かりました。これを逆の視点で考えた場合、体が不自由になられた方が苦労するのは屈曲と回内となるので、屈曲、回内を必要としないインターフェイスの作成をすると、その機械はより使いやすくなるということではないでしょうか。携帯電話を耳に当てなくても聞こえるようにするとか、キーボードのないPCというのはユーザーにとって優しい。と言うことが分かりました。

・キャプチャーモーションによって測定したところが新しいと思います。これぞコンピュータの進化であると思いました。
腰椎、股関節、膝関節でも同様の機会を使って、日常生活でこれらの関節がどのように使われているかをチェックしてみると少し面白いかもと思いました。(ただし下肢の場合には歩行がメインとなってしまうというのは注意が必要です。)

・屈曲だけ、回内外だけという評価でしか出来なかったのがこの研究の弱点かなと個人的には思いました。食事でフォークを使う際には回内と屈曲動作が同時に行われていますがその評価が出来ていません。積分することでこの部分の評価ができないのでしょうか。詳しい先生がいらっしゃればご教示いただきたいと思います。

コクラン共同研究エビデンスエイド

http://www.server-system.jp/resource/cochrane02.html

京都大学の先生方がなさった仕事をご紹介させていただきます。

Cochrane liberaryといえば泣く子も黙るEBMの総本山ですが、今回の大震災を機に、しばらくの間無償で提供されているようです。
その間に日本語にそれを翻訳されて提供されているのが上記URLです。

今回の大震災では地震そのものに加え津波が襲ったため、整形疾患、外傷へのニーズがそれほど高くないようです。

避難所生活が長期化することにともなう感染症の蔓延、慢性器疾患の急性増悪、精神面へのサポート。原子力発電所の事故にともなう放射線への備え、が今回求められているミッションのようです。

その中で整形疾患にかかわるか?というものがあったので掲載させていただきました。

また今週からJBJSなどを読み、勉強を進めていきたいと思います。
勉強し、少しでも良い診療を提供することで、社会に貢献できたらと考えています。

2011年3月14日月曜日

東北・東日本大震災に対してのaction

ブログの管理人です。
いつもは論文を読んで貼り付けるばかりですが今回ばかりは趣向の違う内容を御容赦下さい。

医療者のはしくれとして、東北・東日本大震災に対して何かできることはないかと考えました。

人手、物資ももちろん不足しています。

しかし、現実にできるか、といわれるといった先での受入れの問題やタイミングの問題があり、ボランティアでは有効に働くことができにくいといわれています。

そこで、下のような募金をおすすめしたいと考えています。
物資はタイミングを逃すとゴミにしかなりませんが、お金なら上手に使ってもらえるはずです。

”給料3日分”くらいがちょうど心が休まるらしいです。

募金してみませんか?笑

2011年3月6日日曜日

20100307 JBJS(Am) Comparison of Bipolar Hemiarthro​plasty with Total Hip Arthroplas​ty for Displaced Femoral Neck Fractures

抄録

120人の転位型大腿骨頚部骨折の患者に対して人工骨頭挿入術(BHP)と全人工股関節置換術(THA)でのRCTを行い、4年間の経過観察を行った。
Harrisの股関節評価基準では、術後1年の時点でTHA群が勝っていたが、術後4年の時点でよりその差は顕著となっていた。(術後1年でTHA群:対BHP群=87点:78点。術後4年の時点でTHA群:BHP群=89点:75点)
EQ-5Dを用いたQOL評価ではどの時点でもTHA群が勝っていたが、その差が有意に検知されるのは48週後であった。
以上の結果からはしっかりとした高齢者であればTHA群のほうが股関節機能、QOLともに優れていることが分かった。

<論評>
2007年に行われたRCTの追加報告(A randomised controlled trial comparing bipolar hemiarthroplasty with total hip replacement for displaced intracapsular fractures of the femoral neck in elderly patients.J Bone Joint Surg Br. 2007;89:160-5.)である。
股関節機能では疼痛、機能の項目でそれぞれ有意差が出ており、筆者らは臼蓋側のerosionが14%に見られたことから、これが原因でないかと考察で述べている。手術による合併症はTHA群のほうが多かった。両群とも脱臼はなし。

大腿骨頚部骨折の患者でQOLを測定している。というのが自分がやりたかった内容なので読んでみました。

統計的にはサンプルサイズも十分である。フォロー率も75%程度。で妥当であろう。
本邦での大腿骨頚部骨折ガイドラインでは、活動性の高い患者ではTHAのほうがよいかも、となっていたので、その結果を覆すほどのものではないと思います。

2011年3月5日土曜日

20110304 JBJS(Am) Are Dropped Osteoarticular Bone Fragments Safely Reimplantable in Vivo?

抄録
オペ室の床に落としてしまい、汚染された移植用自家骨についての正しい取り扱い方法についてのデータはほとんどない。この研究の目的は手術中に床に落としてしまって汚染された自家骨の適切な取り扱い方法について3段階に分けて検証することである。
方法
第一段階として、手術室の床に落とした自家骨の汚染状況について調査を行った。(N=162)。第二段階として、340の骨片に対して、オペ室で利用可能な方法で洗浄を行い、第一段階と同様な方法で培養してみた。第三段階として洗浄後の骨片の状態に対して病理学的な検討を加えてみた。
結果
床に落下させただけで、70%の自家骨に汚染が認められた。CNSがもっとも多かった。第二段階として、様々な薬品で洗浄を行ったが有意な差は認められなかった。スポンジで擦ったほうが生食で洗っただけよりも有効であった。生食よりも薬品を使ったほうが有効であることがわかった。BetadineとHbiclensが良く、28検体で一つも培養で菌が生えてこなかった。
第三段階で病理的に検索したところ、生食とBetadineで洗った群がもっとも細胞の生存数が多かった。スポンジで擦ったものは、生食で洗ったものよりも軟骨の損傷が多かった。
結論
床に落とした自家骨はほとんどが細菌に汚染されていた。5分間Betadineで洗浄を行い、生食で洗い流すのが最も殺菌と骨、軟骨細胞活性の残存とのバランスが良かった。

(Betadineは、IsodineやJDガーグルの同義語(異表記)です)

<論評>
”おいおい、アメリカ人って、落とした骨片普通に使ってるの?”とビビって読みました。

いくつか得られた知見として、”床に落とすと70%も細菌汚染されている”
普段使うオペ室でこの実験は行われているので、オペ室の床が非常に汚染されている一つの傍証であると考えます。
床に座っていたり、足台を椅子がわりにする人間、オペ室の床が汚れると言って座り込んで床にテープをはっているナースなども同じくらいの割合で汚染されていると考えるべきでしょう。笑

この論文ではその後洗い方、洗う薬剤、薬剤の洗い流しの仕方について細かく分けて検証を続けています。
短い時間では意味がないが、5分以上洗っても細菌の汚染具合には差が出ない。4%のヒビテンは殺菌には最も有用であるが、軟骨細胞の生存には最も厳しい。なのでbetadineを使うと一番バランスが良い、と言っています。

考察の最後に、この骨片の汚染が臨床的な感染の成立と関連しているかどうかは不明である。と書いてありました。

そもそも日本人にはこの発想は受け入れられないような。特に人工関節とかインプラントを使う人はムリでしょう。笑
くれぐれも骨片を落とさないようにするためにはどうしたら良いか、という工夫。例えば骨片を加工するときに骨把持鉗子をつかうとかそういった工夫を極めて行くほうが大事じゃないかと思いました。

まあ、オペ室の看護師さんと話すネタがなくなったときのおともにお使いください。笑

2011年3月4日金曜日

20110304 JBJS(Br) Is routine chemical thromboprophylaxis after total hip replacement really necessary in a Japanese population

<抄録>
薬剤による抗凝固療法は、人工股関節全置換術(THA)においてルーチンに行うよう推奨されている。筆者らの立場は薬剤を使用しなくても理学療法(機械圧迫)で十分ではないかとする立場である。二種類の抗凝固剤をそれぞれ使用し、理学療法のみの群と無作為割付試験で調べてみた。255人の日本人の患者。片側のTHAをセメントレスで行った患者。プラセボ群、フォンダパリヌクス群(アリクストラ群)、エノキサパリン群(クレキサン群)の3群に分けてそれぞれ85人の患者に投与を行った。全員理学療法は同様に受けた。術後11日目で全員超音波によるDVTの検索を行った。12週にわたってフォローを行った。
結果プラセボ群7.2%、フォンダパリヌクス群7.1%、エノキサパリン群6.0%で3群に有意な差は認められなかった。日本人の患者に限れば、THAの後に抗凝固療法を行わずに機械的圧迫だけで効果がえられるのではないかおと考えられた。

<論評>
素晴らしいですねえ。考察で筆者が書いていらっしゃるとおり、サンプルサイズの問題、単施設研究という問題はあるにせよ、一つの施設でこれだけの仕事をなさったと言う事に敬意を評したいと思います。
超音波での検索はほぼゴールデンスタンダードですので、構わないのになあと思いました。

もともとこの薬自体14日間使えとなっていますが、下手したら退院してますしね。
肺塞栓は起こったときの衝撃があまりに大きいので使いたくなる術者の気持ちもわかりますが、厳密には、心血管リスクが高い、再置換術であるなどのもっと明らかにハイリスクな群に使うよう推奨しても良いのかもしれませんね。

僕自身はガイドラインが変わるまでは使い続けると思いますけど。。。(笑)