背景
週80時間以内に研修医の拘束時間を減らす、という試みが行われたが、それにともなう卒後研修に関わる費用は増加しなかった。多くの教育研修施設では研修医の労働時間の短縮に対応して、co-worker(NPなど)を雇うことで対応した。現在研修医の就業時間を56時間まで減らそうという提案がある。今回の研究はこれ以上の労働時間の短縮が費用に与える影響について調査することである。
方法
80時間制限後からco-workerを雇うことでその問題に対処した152施設に調査票をおくった。36施設、1021人のレジデントから回答があった。以前の公表されたデータが80時間制限の実施後と比較に使われた。一人のレジデントあたりに対する新規の職員の雇用数を算出した。そしてそこからこれ以上レジデントの勤務時間を減らした場合のコストの変化について調査を行った。
結果
80時間制限が行われた結果、レジデント一人当たりの勤務時間は週あたり5時間減少した。143人のco-workerがその穴埋めに働く事となり、一つのユニットあたり96,000ドルがかかった。56時間まで研修医の勤務時間を減らすとすると、一人の研修医あたり64,000ドルかかることが推定された。アメリカ全土で3200人の整形外科レジデントがいるので、1億4700万ドルから2億800万ドルの経費の増加が見込まれる。1時間動労時間を減らすことで800万ドルから1200万ドルの増加が考えられた。
結論
研修医の労働時間制限は、患者への有害事象をへらすことなく、高コストに終わる。政府はこのデータを参考として今後の研修医の就業時間についてのあり方を検討すべきだ。さもないとコスト的に教育が成り立たなくなる。
<論評>
アメリカでは医学教育はACGMEが一括して管理しています。2003年から研修医の労働時間は80時間以内にすべし!とお達しが出ておりました。(疲労によるミスを減らすことを目的としていたはずです)
今回のこの報告は金銭的な面から真っ向から喰いつくものです。
労働時間の制限で、事故が減る?有意差ないじゃん!と考察でも噛み付いています。しかも人が増えて手術経験できないし、みんなやる気がなくなってるんじゃないと考察しています。
研修医の労働時間短縮に、学会としても反対していますよ、という一つの意見広告かと感じました。
日本が古来より研修医を安くこき使っていたのは、この研究の結果を前もって知っていたからではないかなんて思ったりしました。笑
2011年4月8日金曜日
2011年2月3日木曜日
20110202 JBJS(Am) Earky effect of resident work-hour restrictions on patient safety: A systematic review and plea for improved studies
abstract
背景
研修医の労働が週80時間に制限されてから、労働時間を削減することについてのさまざまな議論が行われてきた。労働時間を制限することの目的は長時間の労働をしない事で、医療ミスを予防し、また患者に対しておこる有害事象を防いだり、死亡率を下げたりすることができるのではないか、ということで始まった。しかしながら現在のところ労働時間の制限をおこなうことが医学上、または特に整形外科にかぎっても助けになったかどうかということは明らかにされていない。今回のsystematic reviewは労働時間を制限することが患者の死亡率、医療事故の防止、合併症の減少につながっているかということを検証することである。
方法
患者中心のアウトカムの改善や、医療者のミス、死亡率や合併症の発生について検討した報告をもとにsystematic reviewを行った。
結果
労働時間の制限前と後で患者の死亡率を比べると、そのオッズ比は1.12倍で制限前の方が高かった。この差には様々な要素が関わっている。このデータ上では術前後の合併症についてのデータが規制前と後で混在してしまっている。また、直接の医療事故の報告はほとんどなかった。臨床研修施設と比べてみると臨床研修施設の方が規制前後での死亡率の変化は小さかった。
考察
労働時間の制限を行うことで患者の死亡率については減少することが分かった。臨床研修施設での死亡率の変化は有意ではなかった。この理由は不明である。患者死亡率についての報告もなかった。結局労働時間の制限をすることがその目的を達成しているかは不明である。量依存で死亡率が変化するかを見なければならないし、さらに労働時間を制限することが有効であるかを検討しなければならない。
<論評>
アメリカでは研修医の就業時間制限(週80時間)が制度化され、かの国でもその是非が問われているようです。
整形外科領域では以前時間外手術で細かな合併症が増える、という報告がありました。
死亡率をアウトカムとすると整形外科疾患そのものが生き死にに直結しにくいと言うところもあり差が出なかったのかなあと感じています。
大きな病院で深夜遅く働いていらっしゃる先生もこういったデータを出して、国内で報告し続けることが重要でないかと思います。
背景
研修医の労働が週80時間に制限されてから、労働時間を削減することについてのさまざまな議論が行われてきた。労働時間を制限することの目的は長時間の労働をしない事で、医療ミスを予防し、また患者に対しておこる有害事象を防いだり、死亡率を下げたりすることができるのではないか、ということで始まった。しかしながら現在のところ労働時間の制限をおこなうことが医学上、または特に整形外科にかぎっても助けになったかどうかということは明らかにされていない。今回のsystematic reviewは労働時間を制限することが患者の死亡率、医療事故の防止、合併症の減少につながっているかということを検証することである。
方法
患者中心のアウトカムの改善や、医療者のミス、死亡率や合併症の発生について検討した報告をもとにsystematic reviewを行った。
結果
労働時間の制限前と後で患者の死亡率を比べると、そのオッズ比は1.12倍で制限前の方が高かった。この差には様々な要素が関わっている。このデータ上では術前後の合併症についてのデータが規制前と後で混在してしまっている。また、直接の医療事故の報告はほとんどなかった。臨床研修施設と比べてみると臨床研修施設の方が規制前後での死亡率の変化は小さかった。
考察
労働時間の制限を行うことで患者の死亡率については減少することが分かった。臨床研修施設での死亡率の変化は有意ではなかった。この理由は不明である。患者死亡率についての報告もなかった。結局労働時間の制限をすることがその目的を達成しているかは不明である。量依存で死亡率が変化するかを見なければならないし、さらに労働時間を制限することが有効であるかを検討しなければならない。
<論評>
アメリカでは研修医の就業時間制限(週80時間)が制度化され、かの国でもその是非が問われているようです。
整形外科領域では以前時間外手術で細かな合併症が増える、という報告がありました。
死亡率をアウトカムとすると整形外科疾患そのものが生き死にに直結しにくいと言うところもあり差が出なかったのかなあと感じています。
大きな病院で深夜遅く働いていらっしゃる先生もこういったデータを出して、国内で報告し続けることが重要でないかと思います。
2010年3月24日水曜日
臨床研修指導医講習会 3日目
研修終了までのプロセス
研修が成り立たない場合、中断、休止、未修了の3つがある。
中断しした場合には他所の病院で研修を。休止、未修了の場合には同じ病院で研修を繰り返す。
研修プログラムの責任者は指導医講習会養成講習会修了の医師
研修プログラムごとに1名配置。受け持つ研修医20名以内
形成的評価・総括的評価を行う。
研修プログラム改革のための行動計画
改革の必要性を認識する。
異なった観点を孤立させる。
関心を有する人で戦略を練る。
力野分析 マイナスの要因を省くように動くと改革は成功しやすい
メディカルサポートコーチング
コアスキル 聴くこと、質問すること、伝えること
人はその人の中に答えを持っているのでその人の中に眠っている答えを導き出して自発的行動を促して行くコミュニケーション法
聴くこと
ゼロポジション
ペーシング
頷きとあいづち
オウム返し
質問すること
open ended question
伝える
Iメッセージによる承認
マイゴールの設定。
アクションプランの設定。
ゴールまでの行動をサポート。
研修が成り立たない場合、中断、休止、未修了の3つがある。
中断しした場合には他所の病院で研修を。休止、未修了の場合には同じ病院で研修を繰り返す。
研修プログラムの責任者は指導医講習会養成講習会修了の医師
研修プログラムごとに1名配置。受け持つ研修医20名以内
形成的評価・総括的評価を行う。
研修プログラム改革のための行動計画
改革の必要性を認識する。
異なった観点を孤立させる。
関心を有する人で戦略を練る。
力野分析 マイナスの要因を省くように動くと改革は成功しやすい
メディカルサポートコーチング
コアスキル 聴くこと、質問すること、伝えること
人はその人の中に答えを持っているのでその人の中に眠っている答えを導き出して自発的行動を促して行くコミュニケーション法
聴くこと
ゼロポジション
ペーシング
頷きとあいづち
オウム返し
質問すること
open ended question
伝える
Iメッセージによる承認
マイゴールの設定。
アクションプランの設定。
ゴールまでの行動をサポート。
2010年3月19日金曜日
2010.3.19 臨床研修指導医講習会 1日目
卒然教育の新しい流れ
この10年間で医学部の教育は大きく変わっている。
・コアカリキュラム、問題基盤型学習(PBLチュートリアル)、基本的技能実習(スキルラボ)、共用試験(CBT、OSCE)、クリニカルクラークシップ
医学教育・歯学教育のりかたに関する調査研究者会議報告(2001)
1患者中心の医療を実践できる医療人
2コミュニケーション能力の優れた医療人
3倫理的問題を真摯に受け止め適切に対処出来る人材
4幅広く質の高い臨床能力を身につけた医療人
5問題発見・解決型の人材
6生涯にわたって学ぶ習慣を身につけ根拠に立脚した医療を実践できる医療人
医学知識の量が膨大となってきた。
・学習目標の厳選→コアカリキュラム
・知識を与えるよりも学び方を教える→PBLチュートリアル
・経験を通して問題解決能力・技能・態度を習得→クリニカルクラークシップ
以上から
今後研修医としてくる人の特徴は
1、想起レベルの知識はかなりあるはず。応用力は不十分
2、コミュニケーションに関する基礎教育、医療面接法の基礎教育は受講済み。
3、身体診察技法の基礎は身につけている
4、プレゼンテーションもできるはず。
5、学習姿勢、態度についてのトレーニングは受けていない
研修プログラム
研修目標、研修方略、研修評価の3つ
研修医が目指すより良い状態が研修目標
目標を立てることの意義
モチベーションの維持
指導医、研修医間の情報交換が用意となる
限られた時間の有効利用
評価が容易
多施設との共同評価にも転用可能
一般目標と行動目標
一般目標は研修医を主語としてどういう医療者になって欲しいかと言うことを知識、態度、技能をもちい述べる
行動目標具体的な目標。行動目標がすべて達成できればその総和として一般目標に到達できると言う関係になる。
この10年間で医学部の教育は大きく変わっている。
・コアカリキュラム、問題基盤型学習(PBLチュートリアル)、基本的技能実習(スキルラボ)、共用試験(CBT、OSCE)、クリニカルクラークシップ
医学教育・歯学教育のりかたに関する調査研究者会議報告(2001)
1患者中心の医療を実践できる医療人
2コミュニケーション能力の優れた医療人
3倫理的問題を真摯に受け止め適切に対処出来る人材
4幅広く質の高い臨床能力を身につけた医療人
5問題発見・解決型の人材
6生涯にわたって学ぶ習慣を身につけ根拠に立脚した医療を実践できる医療人
医学知識の量が膨大となってきた。
・学習目標の厳選→コアカリキュラム
・知識を与えるよりも学び方を教える→PBLチュートリアル
・経験を通して問題解決能力・技能・態度を習得→クリニカルクラークシップ
以上から
今後研修医としてくる人の特徴は
1、想起レベルの知識はかなりあるはず。応用力は不十分
2、コミュニケーションに関する基礎教育、医療面接法の基礎教育は受講済み。
3、身体診察技法の基礎は身につけている
4、プレゼンテーションもできるはず。
5、学習姿勢、態度についてのトレーニングは受けていない
研修プログラム
研修目標、研修方略、研修評価の3つ
研修医が目指すより良い状態が研修目標
目標を立てることの意義
モチベーションの維持
指導医、研修医間の情報交換が用意となる
限られた時間の有効利用
評価が容易
多施設との共同評価にも転用可能
一般目標と行動目標
一般目標は研修医を主語としてどういう医療者になって欲しいかと言うことを知識、態度、技能をもちい述べる
行動目標具体的な目標。行動目標がすべて達成できればその総和として一般目標に到達できると言う関係になる。
2009年12月7日月曜日
2009.12.7 JBJS(Am) Dec.2009 Assesment of technical skills of orthopaedic surgery residents perfoming open carpal tunnel releas surgery
要旨
背景
手が上手に動くかどうかということは妥当性のある手術技量に対する能力評価の重要な一部分を占める。手術技量を評価し、点数づけることが重要だと認識されていてもその評価方法はいまだ定義づけられておらず、またその妥当性も明らかにはなっていない。今回の研究の目的は整形外科レジデントに向けて行った4つの試験の妥当性と再現性について手根管開放術を行うことで判定をした。
方法
6つのレベルにある28人の整形外科研修医に対して死体標本を用いて手根管開放術を行ってもらった。資格を判定するのに4つの測定方法が用いられた。その1、web上で解剖、手術適応、手術の手順、手術レポートの口述、手術の合併症と入院適応についてテストを行った。その2、OSATSに参加したレジデントに対して権威ある手の外科医が2人で詳細なチェックリストスコア、global
rating scale、可か不可かを判定した。個々の評価はレジデントのレベルと同様にほかのものと関連を認めた。
結果
有意な違いを認めたのは経験年数とテストの点数、経験年数とチェックリストスコア、経験年数とglobal rating
scale、経験年数とと合格率であった。経験年数手術時間との間には有意な差を認めなかった。
考察
この結果から言えることは知識量のテストと死体標本を用いたテストでは優秀で教養のあるレジデントが抽出できるということだ。しかしながたら、知識量のテストの結果が悪かったことは実際の手術でも失敗につながったが、知識があっても上手に手術ができるわけでないということが分かった。知識のテストと実技のテストは別で行われる必要がある。
図1 試験のプロトコール 知識のテストとOSATSを別に行った。OSATSは3段階で行っている。
表1 参加者の成績。経験年数が増えるほど成績が良くなる
表2 このテストを受けるまでの参加者の手根管開放術の経験数
表3 OSATSテストの再現性 チェックリストとglobal rating scaleはテストとして妥当である。
図2 座学のテストが悪かったものは実技でもよい成績を得られなかったが座学のテストがよくても手術実技で合格点に達するわけでない。
考察
この研究は手術手技を評価する方法が妥当性があるかどうかを検討するために行われた。知識量のテスト、global rating
scale、詳細なチェックリストに基づいたテスト、合否判定のいずれの方法も経験年数に基づいた成績が得られた。このことからこれらのテストはいずれも妥当であると考えられる。知識のテストの成績が悪いことはOSATSの成績が不良であることを示唆するものの、知識のテストで合格してもOSATSで必ずしも良好な成績が得られるとは限らない。
今回の研究では一般的な手術全体で以前妥当性があるとされた方法を手根管開放術に用いて行ってみた。global rating
scale、詳細なチェックリスト、合格、不合格判定のいずれもレジデントのレベルと強い関連性を示した。知識量は卒後1年目から2年目に。合格、不合格のレベルに達するのは2年目と3年目の間に。すべての研修医は卒後3年目までに手根管開放術は成し遂げられるようになっていた。卒後2年目までの10人中9人がそのレベルには達していなかった。研究が行われた病院では手の外科を卒後3年目にローテーションするようになっている。なので卒後3年目になると手根管開放術ができるレベルに達する人数が増えるのであろう。
死体標本を用いたテストはそれぞれと関連を認めたものの、4人のレジデントでは知識量を問う試験では合格したものの、実技試験では不合格であった。知識量を問うテストでは実技がどれくらいできるかは分からない。しかしながら知識量を問うテストは手術技量を評価する前提条件として認知するための領域として重要な役割を担っている。知識量を問うテストは手術技量を評価する準備ができているか判定するためのスクリーニングツールとして有用である。しかしこのテストだけでは実技が上手にできるかどうかを判定するには実技テストの代わりになるものではない。
あらゆる方法は技術を評価する上で妥当性と再現性があることが分かった。以前の研究で言われていた一般的な手術の評価で行われるOSATS法のうちの二つが特に有用であるということがこの研究で分かった。OSATSが手根管開放術に修正されて用いられるときにそれらはよく似た結果であった。MatinらはOSATSのテストのうち3つの方法(global
rating scale、詳細なチェックリスト、可、不可判定)を用いたと記述している。global rating
scaleはたくさんの研究者によって用いられている。この方法は手術の技術評価の質的評価としてつかわれる。global rating
scaleはもっとも多くの手術の質を評価する際に使われている。この方法では安全性の測定やいかなる悪い評価をするようなところは起こらなかった。そこで筆者らは起きうる悪化する事態を記載したチェックリストをつくり、それを検者にもたせ合否の判定基準とした。
最後に手術の時間を測定したものの、この手術時間は経験年数とは関連がなかった。これは若い医者では素早く行えることができたが、専門性に欠けていたことと関連しているのかもしれない。
この研究の強みは評価項目の妥当性を評価しただけでなく、価値の高いテストのフォーマットとしてつかわれる厳格さがあると示したことです。すべての研修医は同じ2人の医師によって評価されており、言葉による助言は与えられず、同じ手術環境がつかわれたことである。
この研究の問題は二人の検者ということでバイアスがかかることである。また、検者はレジデントの経験年数を知っていた。将来的にはそのようなことをブライドとして行いたい。ほかの問題としては卒後1年目の研修医が2人しかいなかったことだ。そのうえ、行った手術が手根管開放術という容易な手術であった。もっと難しい手術の方が差が大きく出てよかったのではないだろうか。最後に、OSATSは一般的な手術に用いられる方法であるが、これを手根管開放術に用いたものは今までの研究ではなかったことだ。
OSATSの発展は整形外科教育、手術の教育の進歩の上で重要でまた必要である。腹腔鏡のようなほかの手術ではレジデントの教育で手術手技のテストが必要であるというようになっている。腹腔鏡手術では知識、周術期管理、テストにかかる時間で手先の器用さを判定している。今回の研究では手根管開放術でその評価を行った。今後整形外科手術全般で同様の評価が行われるときのフレームワークとなるでしょう。
≪論評≫
OSCIIの手術バージョンであるOSATSについての話でした。手根管開放術でOSATSで評価してみた。という方法です。教育、感染などさまざまな分野で一般外科の先生方はいろいろ考えて実行されているんだなと実感。
今後手術手技の評価は日本でも必要とされてくると思いますがOSATSという言葉を覚えておいても損はないかと。
背景
手が上手に動くかどうかということは妥当性のある手術技量に対する能力評価の重要な一部分を占める。手術技量を評価し、点数づけることが重要だと認識されていてもその評価方法はいまだ定義づけられておらず、またその妥当性も明らかにはなっていない。今回の研究の目的は整形外科レジデントに向けて行った4つの試験の妥当性と再現性について手根管開放術を行うことで判定をした。
方法
6つのレベルにある28人の整形外科研修医に対して死体標本を用いて手根管開放術を行ってもらった。資格を判定するのに4つの測定方法が用いられた。その1、web上で解剖、手術適応、手術の手順、手術レポートの口述、手術の合併症と入院適応についてテストを行った。その2、OSATSに参加したレジデントに対して権威ある手の外科医が2人で詳細なチェックリストスコア、global
rating scale、可か不可かを判定した。個々の評価はレジデントのレベルと同様にほかのものと関連を認めた。
結果
有意な違いを認めたのは経験年数とテストの点数、経験年数とチェックリストスコア、経験年数とglobal rating
scale、経験年数とと合格率であった。経験年数手術時間との間には有意な差を認めなかった。
考察
この結果から言えることは知識量のテストと死体標本を用いたテストでは優秀で教養のあるレジデントが抽出できるということだ。しかしながたら、知識量のテストの結果が悪かったことは実際の手術でも失敗につながったが、知識があっても上手に手術ができるわけでないということが分かった。知識のテストと実技のテストは別で行われる必要がある。
図1 試験のプロトコール 知識のテストとOSATSを別に行った。OSATSは3段階で行っている。
表1 参加者の成績。経験年数が増えるほど成績が良くなる
表2 このテストを受けるまでの参加者の手根管開放術の経験数
表3 OSATSテストの再現性 チェックリストとglobal rating scaleはテストとして妥当である。
図2 座学のテストが悪かったものは実技でもよい成績を得られなかったが座学のテストがよくても手術実技で合格点に達するわけでない。
考察
この研究は手術手技を評価する方法が妥当性があるかどうかを検討するために行われた。知識量のテスト、global rating
scale、詳細なチェックリストに基づいたテスト、合否判定のいずれの方法も経験年数に基づいた成績が得られた。このことからこれらのテストはいずれも妥当であると考えられる。知識のテストの成績が悪いことはOSATSの成績が不良であることを示唆するものの、知識のテストで合格してもOSATSで必ずしも良好な成績が得られるとは限らない。
今回の研究では一般的な手術全体で以前妥当性があるとされた方法を手根管開放術に用いて行ってみた。global rating
scale、詳細なチェックリスト、合格、不合格判定のいずれもレジデントのレベルと強い関連性を示した。知識量は卒後1年目から2年目に。合格、不合格のレベルに達するのは2年目と3年目の間に。すべての研修医は卒後3年目までに手根管開放術は成し遂げられるようになっていた。卒後2年目までの10人中9人がそのレベルには達していなかった。研究が行われた病院では手の外科を卒後3年目にローテーションするようになっている。なので卒後3年目になると手根管開放術ができるレベルに達する人数が増えるのであろう。
死体標本を用いたテストはそれぞれと関連を認めたものの、4人のレジデントでは知識量を問う試験では合格したものの、実技試験では不合格であった。知識量を問うテストでは実技がどれくらいできるかは分からない。しかしながら知識量を問うテストは手術技量を評価する前提条件として認知するための領域として重要な役割を担っている。知識量を問うテストは手術技量を評価する準備ができているか判定するためのスクリーニングツールとして有用である。しかしこのテストだけでは実技が上手にできるかどうかを判定するには実技テストの代わりになるものではない。
あらゆる方法は技術を評価する上で妥当性と再現性があることが分かった。以前の研究で言われていた一般的な手術の評価で行われるOSATS法のうちの二つが特に有用であるということがこの研究で分かった。OSATSが手根管開放術に修正されて用いられるときにそれらはよく似た結果であった。MatinらはOSATSのテストのうち3つの方法(global
rating scale、詳細なチェックリスト、可、不可判定)を用いたと記述している。global rating
scaleはたくさんの研究者によって用いられている。この方法は手術の技術評価の質的評価としてつかわれる。global rating
scaleはもっとも多くの手術の質を評価する際に使われている。この方法では安全性の測定やいかなる悪い評価をするようなところは起こらなかった。そこで筆者らは起きうる悪化する事態を記載したチェックリストをつくり、それを検者にもたせ合否の判定基準とした。
最後に手術の時間を測定したものの、この手術時間は経験年数とは関連がなかった。これは若い医者では素早く行えることができたが、専門性に欠けていたことと関連しているのかもしれない。
この研究の強みは評価項目の妥当性を評価しただけでなく、価値の高いテストのフォーマットとしてつかわれる厳格さがあると示したことです。すべての研修医は同じ2人の医師によって評価されており、言葉による助言は与えられず、同じ手術環境がつかわれたことである。
この研究の問題は二人の検者ということでバイアスがかかることである。また、検者はレジデントの経験年数を知っていた。将来的にはそのようなことをブライドとして行いたい。ほかの問題としては卒後1年目の研修医が2人しかいなかったことだ。そのうえ、行った手術が手根管開放術という容易な手術であった。もっと難しい手術の方が差が大きく出てよかったのではないだろうか。最後に、OSATSは一般的な手術に用いられる方法であるが、これを手根管開放術に用いたものは今までの研究ではなかったことだ。
OSATSの発展は整形外科教育、手術の教育の進歩の上で重要でまた必要である。腹腔鏡のようなほかの手術ではレジデントの教育で手術手技のテストが必要であるというようになっている。腹腔鏡手術では知識、周術期管理、テストにかかる時間で手先の器用さを判定している。今回の研究では手根管開放術でその評価を行った。今後整形外科手術全般で同様の評価が行われるときのフレームワークとなるでしょう。
≪論評≫
OSCIIの手術バージョンであるOSATSについての話でした。手根管開放術でOSATSで評価してみた。という方法です。教育、感染などさまざまな分野で一般外科の先生方はいろいろ考えて実行されているんだなと実感。
今後手術手技の評価は日本でも必要とされてくると思いますがOSATSという言葉を覚えておいても損はないかと。
2009年9月28日月曜日
JBJS September 2009 Resident Duty-Hour Reform Associated with
背景
2003年1月からアメリカでは卒後の研修のあり方が変わった。(就業時間の制限)。今回の研究は就業時間の制限が大腿骨頚部骨折の患者の死亡率、合併症率にあたえる影響について関連を調べたものである。
方法
就業時間制限前(2001-2002年)と後(2004-2005年)で48,430人の患者について研修医教育病院とそうでない病院とでロジスティック解析を行った。
結果
両方の群で2004-2005年のほうで合併症の発症率が高かった。これは患者全体が重症化していることを示唆している。術後の肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった。死亡率には関連が認められなかった。
考察
研修医の就業時間制限は患者の合併症の発生率の増加と関連があった。更なる研究を要する。
2003年からの制限事項
・週80時間以上の勤務禁止
・7日間のうち1日は完全に業務から離れる日を作る
・日常業務と自宅待機の間は10時間以上の間を置く。自宅待機は3日間のうち1日以上になってはならない。6時間以上の残業の後は24時間は自宅待機をしてはいけない。
表1 Deyoのindex 患者にある既往歴を重み付けとして点数化。
表2 肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった
図1 肺炎の発生率。就業制限後の教育病院で有意に発生率が増加している。
考察
2003年の研修医の就業制限については結果的に懐疑的な結論が出た。今回の改訂の目的は睡眠不足や疲労が患者のケアや学習に悪影響を与えるのではということで制定された。今回の改訂が患者のケアの質を上げたというエビデンスはない。これは整形外科の手術については言える。研修医教育病院で患者の合併症が多くなるということが今回のキモである。
今回の就業時間制限が患者の死亡率と関連がないというとは他の報告でも言われている。平行して行った研究ではメディケア、退役軍人の群では死亡率が上昇するというエビデンスはなかった。術後の患者の死亡率は変わらないがサブグループ解析を行うと相対的に改善することがわかっている。
別の研究では就業時間制限によって死亡率が減少したとしているがわれわれの研究ではむしろ上昇した。これは有意さがないものの3.7%の上昇を認め今後も研究する必要がある。
研修医が呼ばれてもすぐ来ないと患者の入院期間が増える。
働く時間が減れば整形外科の手術のことを勉強できる時間が短くなる。手術の数も減る。疲労を取るということが仕事が増えることで相殺される。
上級医が呼ばれる割合が増えているはずだがそれについて記載された報告はない。
患者が数日間ほったらかしの状態になることもある。
結局境域病院で研修医の就業時間制限後から合併症が増えた。この研究は関連性があるということを述べただけで原因だとはいっていない。就業時間の制限と臨床成績との間の研究を進めるべきである。
2003年1月からアメリカでは卒後の研修のあり方が変わった。(就業時間の制限)。今回の研究は就業時間の制限が大腿骨頚部骨折の患者の死亡率、合併症率にあたえる影響について関連を調べたものである。
方法
就業時間制限前(2001-2002年)と後(2004-2005年)で48,430人の患者について研修医教育病院とそうでない病院とでロジスティック解析を行った。
結果
両方の群で2004-2005年のほうで合併症の発症率が高かった。これは患者全体が重症化していることを示唆している。術後の肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった。死亡率には関連が認められなかった。
考察
研修医の就業時間制限は患者の合併症の発生率の増加と関連があった。更なる研究を要する。
2003年からの制限事項
・週80時間以上の勤務禁止
・7日間のうち1日は完全に業務から離れる日を作る
・日常業務と自宅待機の間は10時間以上の間を置く。自宅待機は3日間のうち1日以上になってはならない。6時間以上の残業の後は24時間は自宅待機をしてはいけない。
表1 Deyoのindex 患者にある既往歴を重み付けとして点数化。
表2 肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった
図1 肺炎の発生率。就業制限後の教育病院で有意に発生率が増加している。
考察
2003年の研修医の就業制限については結果的に懐疑的な結論が出た。今回の改訂の目的は睡眠不足や疲労が患者のケアや学習に悪影響を与えるのではということで制定された。今回の改訂が患者のケアの質を上げたというエビデンスはない。これは整形外科の手術については言える。研修医教育病院で患者の合併症が多くなるということが今回のキモである。
今回の就業時間制限が患者の死亡率と関連がないというとは他の報告でも言われている。平行して行った研究ではメディケア、退役軍人の群では死亡率が上昇するというエビデンスはなかった。術後の患者の死亡率は変わらないがサブグループ解析を行うと相対的に改善することがわかっている。
別の研究では就業時間制限によって死亡率が減少したとしているがわれわれの研究ではむしろ上昇した。これは有意さがないものの3.7%の上昇を認め今後も研究する必要がある。
研修医が呼ばれてもすぐ来ないと患者の入院期間が増える。
働く時間が減れば整形外科の手術のことを勉強できる時間が短くなる。手術の数も減る。疲労を取るということが仕事が増えることで相殺される。
上級医が呼ばれる割合が増えているはずだがそれについて記載された報告はない。
患者が数日間ほったらかしの状態になることもある。
結局境域病院で研修医の就業時間制限後から合併症が増えた。この研究は関連性があるということを述べただけで原因だとはいっていない。就業時間の制限と臨床成績との間の研究を進めるべきである。
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