2018年12月23日日曜日

20181223 CORR No Increase in Survival for 36-mm versus 32-mm Femoral Heads in Metal-on-polyethylene THA: A Registry Study

背景 
32ミリ骨頭がTHAでは標準となりつつある。そして36ミリ骨頭の使用も増加している。しかしながら32ミリ骨頭と36ミリ骨頭のいずれが28ミリ骨頭と比較してTHAでの再置換のリスクを減少させるかはわかっていない 北欧の国家レジストリーを使用。メタルオンポリエチレンTHAで28ミリ、32ミリ、36ミリ骨頭のいずれの患者が再置換が多いかを検討した。 同一レジストリー内で、骨頭を大きくした場合の脱臼の危険性は減少するかの検討を行った。
方法 
デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンのレジストリーを統合したレジストリーを用いた。28ミリ、32ミリ、36ミリで人工股関節が行われたものが用いられた。2003年から2014年までのデータ。デュアルモビリティがもちいられた患者は除外された。186,231例の検討。全患者の366,309股関節の半分が該当した。101,094例の患者が28ミリ骨頭、57,853例の患者が32ミリ骨頭、27,284例の患者が27,284例の患者が36ミリ骨頭が用いられていた。あらゆる理由による再置換術をエンドポイント。脱臼による再置換をセカンダリーエンドポイントとして用いた。ほとんどの患者のフォローアップが可能であった。THAの生存率をカプランマイヤー方で計算した。32ミリ骨頭を基準として28ミリ、36ミリ骨頭との比較を行った。
結果
コックス回帰分析において、28ミリ骨頭と32ミリ骨頭の愛大に再置換率の違いがない一方、36ミリ骨頭では再置換のリスクが高くなった。(HR1.14)。28ミリ骨頭の患者は32ミリ骨頭の患者よりも脱臼リスクが高かった。(ハザード比1.67)。一方32ミリと36ミリ骨頭の間には脱臼リスクの違いは認めなかった。
結論
交絡因子を調整すると、再置換という点では28ミリと32ミリ骨頭の間には違いを認めなかった。しかしながら32ミリのほうが脱臼リスクは低く、よりよいオプションと考えられた。32ミリ骨頭と36ミリ骨頭を比較した場合には、脱臼率が低下しないだけでなく、32ミリ骨頭よりも何かしらの理由による再置換率が増加することがわかった。32ミリ骨頭の使用がメタルオンポリエチレンTHAでは最も安定しているものと考えられた。

<論評>
国家レジストリーを用いた骨頭径による再置換率の違いです。
ポリエチレンライナーの改善により、薄いポリエチレンライナーを用いることが可能となり、手術の際に大径骨頭が選択されることが増えてきたと思います。
今回の結果で衝撃的なのは36ミリ骨頭のような大径骨頭とすると何かしらの原因による再置換が増加していると言うことです。ただ、この原因は無菌性のゆるみによるものだそうです。なぜ無菌性のゆるいが増えたかまでは本研究ではわかりません。
28ミリ骨頭の使用が圧倒的に多いのも結論に影響している可能性はありそうです。たくさんの示唆に富んだ良い論文だと思います。

2018年12月2日日曜日

20181202 OTSR Is there a role for femoral offset restoration during total hip arthroplasty? A systematic review

THAにおいてfemoral offsetを確保することは、摺動面Wearの減少、インプラントルースニング、脱臼と関連すると言われている。オフセットを変えることのできるModularネックステムは接合部での腐食が問題となり、ときに破壊的な問題を引き起こすことがある。femoral offset を確保することの効果を実証した論文やModularネックステムを積極的に用いたほうが良いかのエビデンスが必要である。本研究では1)摺動面のウエアとfemoral offsetの関連 2)インプランのゆるみとfemoral offsetの関連、3)脱臼とfemoral offsetの関連についてシステマティックレビューを行った。これらについての論文を抽出。10編の論文が抽出された。femoral offset とポリエチレンのゆるみとの間には優位な相関が認められた一方、脱臼とインプラントのゆるみとの間には相関を認めなかった。Hard on Hardの摺動面の使用、またはハイリークロスリンクポリエチレンの使用によってFemoral offsetを確保することの優位性は失われる。また台形骨董の使用によってモジュラーネックを使用することでのfemoral offsetの確保の重要性は減少する。筆者らはTHAにおいてfemoral offsetを確保することの臨床的な意義を見いだせなかった。筆者らはModularネックをもちいてまでのfemoral offsetの再建の必要はないと考える。 Introduction femoral offsetは股関節のバイオメカニカルな再建に必須の項目である。femoral offset(FO)は大腿骨髄腔を通る線と大腿骨頭中心を通る垂線の距離で表される。FOは中殿筋のモーメントアームとも関係しており、中殿筋の筋力、歩行とも関連する。体重と外転筋の力点の中心となり、関節にかかる力は股関節中心から分散することがわかっている。 古くからあるものブロックのステムでは、三分の二の症例で適切なFOを再建できなかったという報告がある。また、生来のFOというのはバラエティに富んでいる。そのために外側にオフセットをもったステムが開発された。modularステムはこのような力学的な問題を解決することができるかもしれない。Modularステムは術中にオフセット、前捻、脚長をステムサイズから独立して補正することが可能である。FOの確保も可能である。しかしながらModularステムが本当に股関節の力学的環境を再建できるかどうかは現在議論されている。オフセットを正常に近づけることで理論的な優位性はあるものの、実際には嵌合部の腐食が問題となるとする論文が散見される。 バイオメカニカルの観点で、FOの確保が重要であることは明らかであるが、まだ十分検討されたとは言い難い。本研究の目的は摩耗、インプラントの緩み、脱臼率についてFOとの関連を調査した。 方法 論文を検索し、1086篇がまず抽出。症例対照研究を対象とした。48篇が残った。その後内容を精読し10篇の論文を抽出した。 結果 FOと摩耗 3篇の論文があった。FOが再建されているもののほうが優位に摩耗量が少なかった。 FOと脱臼 5篇、1830例の検討。FOと脱臼はほとんど関連しなかった。 FOとインプラントルースニング 2篇の論文。FOとの関連を認めなかった。 考察 歴史的にFOの重要性は言われ続けている。FOと中殿筋の関連についても議論の余地はない。Modularステムによってより正確に股関節の力学的環境を再建できるようになった。前捻の調整はモノブロックステム(ワグナーコーン)でも可能であるので、Modularの優位性はFOの再建である。しかしながら、臨床的にFOを再建するメリットがステム嵌合部の腐食よりもまさることが明らかとされなければならない。本研究ではFOを確保することは摩耗には効果があったものの、脱臼やインプラントの緩みには影響しないことが示された。 本研究ではいくつかのLimitationがある。RCTがない。論文感の異質性が高い。 最近のHighlyクロスリンクポリエチレンの登場によってFOを確保することの意味がまた変わってくるのかもしれない。 本研究からはFO確保の臨床的な意味を十分には見いだせず、FO確保を理由としたModularステムの使用はあまり進めることができないと結論する。