2015年4月25日土曜日

20150423 Plos one Real-Time Visualization of Joint Cavitation

まあ、俗にいうお馬鹿論文です。

指がぽきぽきなる原因はなに?という論文です。
歴史的に指がぽきぽきなる原因については2つの学説が有りました。
一つは真空状態になるとそれで音がなるとするもの。もう一つは気泡ができてそれが破裂することで音がなるよ。というものでした。

今回の研究ではreal timeMRIを撮影して、指の関節がぽきっと鳴る瞬間をとらえたところ気泡が破裂する様子が見られなかったので、真空状態になることで音がなるという学説が支持された。という内容になります。

ちなみに指をぽきぽき鳴らすと変形が進むか?という議論がありますが、これは進まなさそうというのが科学的に示されております。
1971、1991年にそれぞれぽきぽき鳴らす人と鳴らさない人を比べても変形の程度に差がなかったよ。とする論文が出ております。
また1981年にはArthritis and rheumatisumのletterに60年間自分の手をぽきぽき片手だけ鳴らし続けたが右手と左手の変形に差はなかったとするレポートが掲載されております。

ネットで「指 ぽきぽき鳴らす」と引くと、カイロプラクティックの方が「死につながるぽきぽき」「変形が進行」などといろいろ書いています。いずれも根拠のないデマです。
ネットで情報を集めるときにはその二次情報まで当たらないとデマに踊らされるというよりリテラシーのための教材として本ブログに掲載しました。

指に関してはポキポキ鳴らしたところで人生に影響を与えないということでいいのではないでしょうか。ハイ。



抄録
指のポキポキ音は関節表面が離れる時にできる空間に気泡ができそれが破裂することでできるのではないかと歴史的に考察されてきた。しかしながら気泡の破裂は関節のぽきぽき音として物理的に矛盾するのではないかとも言われてきた。今回リアルタイムMRIを用いて関節のポキポキ音は気泡の破裂ではなく空洞の形成によってできることを示すことを目的とした。ChineseFingerTrapを用いて長軸方向に牽引をかけた。牽引の様子を1.5テスラのMRIT1にて評価を行った。1秒間に3.2フレーム撮影を行った。ポキっとなったら撮影を終了とした。牽引力を強めると関節面が離れて空洞が形成される様子が撮影された。空洞が形成された時に音が聴取された。本研究によりぽきぽき音の原因は気泡が潰れることではなくて空洞が形成されることによって生じることがMRIによって明らかになった。この減少はTribonucleationという表面同士が離れるときにはできるだけひっついているが、離れる瞬間には気泡を形成して離れるという現象で説明が可能である。いままでVitroでのTribonucleationの証明はなされていたが本研究は初めてのVivoでの研究である。本研究は関節がぽきぽきなることが健康問題になっている人の問題の解決に一役買うかもしれない。

背景
人の関節はよくポキポキ鳴る。このぽきぽき音は解剖学的に関節表面がどこかと擦れ合うことによって起こるものである。反対にぽきぽき音を再び鳴らすためには少し時間がかかる。いくつかの仮説が考えられてきたが、このぽきぽき音の音源についての解明は未だなされていなかった。

1947年にWheelerRostonがぽきぽき音についての最初の論文を上梓した。彼らはこの論文の中で関節のぽきぽき音が関節面で生じていることを連続レントゲン写真を用いることで証明した(J anatomy)。関節面が完全に接触している休止期。そこに牽引力をかけ、一気に力を入れると関節面が離れる瞬間に音が鳴ることが観察された。音がなった後20分間は回復区が必要でこれをrefractory timeと名づけた。音がなる時にレントゲン上ではclear spaceが認められた。彼らはこのガスは液体外から牽引によって圧が下がることで侵入してきた気泡であると考えた。この気泡の形成によって音が発生しているとWeelerRostonは考えた。
1971年まで同様の研究は行なわれなかったが、1971年にUnsworthらは指がぽきぽき鳴ることの原因について異なる見解を発表した(ARD)。彼らは全く同様の研究を行い、気泡ができるだけでは音は鳴らずに、その気泡が破裂瞬間に音がなっているのだ、と報告した。
1971年以降Roston派とUnsworth派による論争が行なわれてきた。しかし両派とも決定的な証拠を提出するまでには至らなかった。
本研究ではリアルタイムMRIを用いることで音のなる原因を明らかにすることを目的とした。

本研究はアルバータ大学の倫理委員会の承認を得ている。
1のように牽引で音を鳴らしながらMRIが撮像できるような準備を行った。
撮影は1.5TMRIを用いて1秒間に3.2フレームで撮像した。
実験者が紐をぐっと引っ張り、音がなるところまでの力で引いた。音がなった後も5秒間そのままの体勢を保つようにした。
撮影した写真はImageJで再構築を行い動画になるようにした。

結果
正常関節内に気泡が存在しないことがわかる。牽引によって関節の間にT1lowのスペースが形成されることがわかる。
3に関節が開く経過を図に示す。

考察
本研究はMRIを用いてリアルタイムで音がなる経過を示した初めての報告である。渉猟し得た限り本研究のようにMRIを用いて指の関節が鳴ることを示した論文は他に見当たらなかった。
本研究で関節が離れる瞬間に音が鳴る事が示された。T1imageT1lowの部分が音がなっても残っていることがら気泡の破裂が音の原因ではないと推測された。
この現象はTribonucleationという物理現象で証明ができる。今までに観察されたclear spaceはガスなどではなく、牽引力によって生じた空間でそこで音が生じたものと考えられる。
本研究によりRostonWheelerの学説が正しいことが明らかとなった。Unsworthらは羊の変形した関節を用いて研究を行っていたが、実際にガスが潰れた瞬間を見たわけではない。彼らは誤った観察を行ったのではないだろうか。
本研究の限界はMRIで関節全体の観察ができたわけではないことである。またMRIの解像度の問題もある。また牽引力が適切であったかもわからない。
本研究の最大のLimitationMRIの音のせいで音がなったことを聴取できていない。音がなったことは本人の申告だけである。Tribonucleationという現象で音がなることは説明できそうであるが空洞形成のどのタイミングでなっているかという研究が必要となる。


本研究は空洞形成によって音が鳴ることを支持する論文である。気泡が潰れるという現象はまったく観察されなかった。牽引、真空になることで関節軟骨に掛かる力は非常に大きいものと推測される。しかしながら現在までに関節を鳴らすことでOAが進行するという論文は存在しない。今後ぽきぽき鳴らすことがなにか新しい関節の治療につながるかもしれないしそうでないかもしれない。