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2011年12月10日土曜日

20111210 JBJS(Am) A prospective RCT : nonoperative treatment w/ volar locking plate fixation for displaced distal radial fractures over 65

A Prospective Randomized Trial Comparing Nonoperative Treatment with Volar Locking Plate Fixation for Displaced and Unstable Distal Radial Fractures in Patients Sixty-five Years of Age and Older

抄録
拝啓
高齢者の橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートの有用性は言われているものの、手術治療が保存治療に勝る、とした適切なRCTに基づいた研究は勿った。今回は転位のある不安定型の橈骨遠位端骨折を受傷した65歳以上の患者に対して、掌側ロッキングプレートに対する治療とギプスによる保存療法との間でその臨床成績を比較することを目的とした。

方法
73人の65歳以上の橈骨遠位端骨折の患者。うち36人に掌側ロッキングプレートによる治療を。37人にギプスによる治療を行なった。治療判定にはpatient-related wrist evaluation(PRWE)、DASHスコア、疼痛のレベル、手関節可動域、合併症発生率、レントゲン写真上での評価を行なった。

結果
観察期間中に両者の間の疼痛レベルには優位な左派認められなかった。術後早期で手術群の方がPRWE、DASHスコアにて低い値を示したが、6ヶ月以降は両者間に差を認めなかった。握力の回復は手術群の方が良好であった。レントゲン写真上の評価は橈骨の短縮、背側へのtilt、radial inclinationの全てで手術群の方が優れていた。手術群の方が有意に合併症の発生率が高かった。

結論
12ヶ月間の経過肝s夏において、関節可動域、疼痛レベル、PRWE、DASHスコアの何れでも手術群と保存療法軍の間には有意な差を認めなかった。手術群の方が握力の回復では優れていた。この研究では解剖学的に整復、固定することが必ずしも患者のADL、関節可動域の改善につながらないと言うことがわかった。

考察
ロッキングプレートの導入以来、撓骨遠位端骨折は手術されることが多くなってきている。若年の患者においては手術治療によって機能予後の改善が認められ、また変形治癒にともなう変形性手関節症は機能予後を悪化させ、痛みのある手関節としてしまう。若い患者においては撓骨の長さを保つこと、関節適合性の改善が必要となる。
しかしながら高齢者について、解剖学的整復が必要かどうかと言う研究は殆ど無い。
Jupiterらは背側転位型の撓骨遠位端骨折に対してORIFを行い、治療成績を報告している。術後の矯正損失、撓骨神経障害、長母指屈筋の断裂、背側の疼痛による抜釘を経験している。Jupiterらは保存的治療を行い、その結果が好ましくないものに対して手術治療を行うべきであると結論づけている。
Beharrieは平均71歳の18人の患者に対して手術治療を行っい、その良好な成績を報告し、高齢者でも手術を行ったほうがよい、と結論づけている。
Youngらは60歳以上で高度の手関節機能を必要としない患者での撓骨遠位端骨折に対して保存療法を行った。そこでわかったことはレントゲン写真上での解剖学的整復の程度と臨床成績との間に相関がないことである。10人中6人が手関節OAとなったがウチ二人だけがOAの症状を訴えた。神経学的症状が残ったのは12%。明らかな臨床的な変形は56%に見られたが、手関節の見た目について不満を述べる患者は居なかった。Gartlandのスコアリングシステムでは88%で優、もしくは良の成績が得られた。
Rouemenらは55歳以上の撓骨遠位端骨折の患者に対して前向き研究を行った。すべての患者にたいして非観血的整復を行い、ギプス固定とした。2週間後に再度整復。43%の骨折で再転位が認められた。50%の患者が創外固定で治療され、50%の患者がギプス固定を続行した。創外固定群のほうが解剖学的整復位を得られていたが、臨床成績はギプスて治療した群と変わるものではなかった。
Egolらは後ろ向き研究で65歳以上に対してギプス固定群、手術治療群に分けて調査を行った。24週の時点で、手関節背屈について手術群が優っていたが、一年後の両群の成績に差はなかった。手術群の方が握力に関して優っていたが、疼痛、機能評価で両群に差を認めなかった。
我々の研究でも2群に臨床成績の差が出なかった。当然、OA変化をみるのに6.7年は短いという議論もある。しかしながらOAが存在したからといってソレがすぐ手関節機能の低下につながるわけではない。今回も53%の患者でOA変化を生じているが、一人も症状を訴えていない。
掌側ロッキングプレートは優れた手術方法である。しかしながらその臨床成績はギプスで治療した群と大きく変わるものではない。


<<論評>>
とにかく手術のほうがすぐれているのだ!とする最近の骨折治療に対する一つのアンチテーゼであると思いました。
現在田舎の小病院に勤務しているブログ主の実感にも一致する所があります。

数年前、富山で行われた骨折治療学会で同様のテーマでお話がありましたが、その時は”手術をしなければばOAで、手の専門医が困る!”という意見がありました。
日本の場合は65歳どころか80歳以上でも積極的に手術しているのではないでしょうか。

高齢化が進み、医療費も右肩上がりで増加している現在、何でもベストの治療を無制限に考えなしに提供するのはいかがなものかと考えています。
特に人生の先がある程度決まってきている、手関節機能を多く求めないような患者さんに対しては今回の論文の結果を参照としていただいて治療方針を決定しても良いのではないでしょうか。

もし、優れているとするのであればそれなりの研究デザインを組んで優れている、と主張することが科学者でもある医師の勤めではないかと考えます。

2011年10月19日水曜日

20111019 JBJS(Am) A prospective RCT Comparing OT w/ independent exercises after volar plate fixation of a fracture of distal parts of radius

橈骨遠位端骨折術後にOccupational therapy(OT)によるリハビリと自分でリハビリを行った場合を比較したRCT

Abstract
橈骨遠位端骨折術後のOTの関与によるリハビリの効果ははっきりとしていない。今回はOTにリハビリを依頼した群と自律でリハビリを行った2群に分けて比較を行った。

方法
不安定型橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートにて手術治療を行った94例。OTによるリハビリ群と自律リハビリ群の2群に分けて6か月後の手関節機能を評価。評価項目は掌背屈の覚悟、握力、Gartland and Werleyのスコア、Mayoの手関節機能評価、DASHスコアを用いた。

結果
掌背屈でOTによるリハビリ群で118度、自律リハビリ群で129度と有意な差を認めた。術後3か月の時点で平均ピンチ力、握力、Gatland and Werleyのスコアでも自律リハビリ群が有意に良好な成績であった。術後6か月の時点で背屈、尺屈、回外、握力が自律リハビリ群で良好であった。DASHスコアでは差を認めなかった。

結論
橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレートを用いた症例に対してOTによるリハビリは効果が見込めない。

考察
橈骨遠位端骨折術後の患者にOTによるリハビリテーションをおこなってもあまり有効でない、という結論となった。これは橈骨遠位端骨折の保存的治療を行われた患者でも同様の結論が前に報告されている。
他の研究では物理療法を行った群よりも自律でリハビリテーションを行った群のほうが良好な成績を得たとする報告もある。他の研究ではあまり差を認めていない。
今回の研究で興味深いところは、自律のリハビリテーションでより良好な成績を得たことである。その原因として考えられることは(1)術後は患者自身でリハビリを行ったほうが有効なリハビリとなりえるのではないか(2)OTはトラブルにならないように丁寧にリハビリをしすぎているのではないだろうか。ということである。
今回の研究では19%の患者の追跡が行えなかった。治療方針に不満を持っていた可能性がある。EPBの断裂を起こし、抜釘をおこなった患者がいるため成績に大きな差が出た可能性。症例が少なくαエラーの可能性がある。術者がかなり”痛みなしでは得られるものはない”ときついことを言ったことも影響しているのかもしれない。
今回の結果からはリハビリテーションについて術者が正しく介入できればOTの関与は不要であるということである。よりよいコーチングの方法がより良好な臨床成績を得るために必要となるかもしれない。


<論評>
アメリカからの論文です。医療体制が大きく違うので一概には言えないかなあとも思いますが、面白い結果だと感じました。
手術をやりっぱなしでいいよ、リハビリにおまかせでいいよということではなく、より良い機能を回復するためにはどうしたらよいかということを術者自身が患者さんに丁寧に伝えることが必要ですよ。ということが伝えたい論文なのではないかと感じました。
一昔前にはやったビリーズブートキャンプのようにだいぶスパルタでリハビリを進めるのだなあというのはすこしほほえましくも感じました。笑

2011年2月3日木曜日

20110202 JBJS(Br) What are the radiological predictors of functional outcome following fractures of the distal radius?

抄録
撓骨遠位端骨折は整形外科医がもっともよく遭遇する骨折のうちの一つであるが、その術前術後のX線上での”許容される”指標については今までしっかりとしたコンセンサスが得られていなかった。これはX線上での整復位が多くの場合臨床成績に影響しているとされているので、X線上でのどの測定値が臨床成績の予測因子となりうるかを調べた。結果、高い機能予後をえることが必要とされる患者においては関節面のズレは2mm以内、撓骨の長さが正常と比べて2mm以内の短縮に収まっていること、手根骨のアライメントが正常であること、が必要であることがわかった。治療の究極の目標は全く疼痛がなく可動域制限のない手関節を再建することである。

考察
”許容される”という言葉は衝突を生む言葉である。当然受傷機転は様々であるし、また治療方法も違っている。治療の究極の目標は疼痛のない機能障害のない手関節を再建することであるが、日常生活で常に手関節を使うような患者であればその要求されるところは高くなるであろうし、また逆に虚弱高齢者であれば多少の変形治癒も許容される。 Grewalらは216人の関節外骨折の患者をフォローしてdorsal tilt が10度以上、radial inclinationが15度以下、ulnar variantが3mm以上の場合にはその変形は許容されない。と定義している。患者は年齢で層別化された。X線上での変形の残存によって手関節昨日の低下がみとめられたが、そのインパクトは年令と共に減少した。
関節面の不適合性は将来的なOAの発生リスクに関連している。しかし不適合性では機能に影響を及ぼさないということも言われている。それゆえに高い機能予後を必要とする患者においては2mmの関節面のズレまでが許容されるものと考えられる。
撓骨の短縮、またはulnar varianceの存在はもっとも機能予後に影響を及ぼすと言う事でコンセンサスが得られている。このような変形が残存すると手関節の疼痛や、握力の低下が生じる。撓骨の長さを保つことがまずもっとも重要である。正常から2mm以内の変形に収めるべきである。
dorsal tiltが及ぼす影響については撓骨の短縮よりも小さいのでは、と考えられている。手根骨のアライメントが正しい位置にあることが重要であるので、そのことが同時にdorsal tiltが重要であるということを示唆する。しかし、まず重要なのは手根骨のアライメントであり、その次にdorsal tiltとなると考えられる。手根骨の配列以上があって、dorsal tiltが正中を超えているようであれば処置したほうが良い。手根骨の位置が正しく配列していればdorsal tiltは許容されることがある。
最近の研究では尺骨茎状突起骨折の処置を加えることは不要であると言う事になってきている。(撓骨の安定は最低条件。)



<論評>
最近高齢者のとう骨遠位端骨折をみることがおおく、また皆さん手術を嫌がるので、変形が残存することが多かったのが苦になっていました。ただ、変形していても皆さんあまり症状が無いのも特徴かなと感じました。
高齢であればある程度まで許容されるのかなと思って読んだのがこの論文です。
これからの高齢化社会、”ずれた骨折→すぐ手術”ではなく、その患者さんの状況をよく勘案してその適応を考えるべきかなと思います。

2010年2月4日木曜日

2010.2.4 JHS 2009 Mallet finger

THE PATIENT

 37歳整形外科医が会議に参加していた。午後のスキーのsessionで転倒し、利き手ではない左手の中指と環指を受傷した。夕方の講義形式のsessionにも戻った時に、透視で中指・環指の骨性マレットを確認した。中指は末節骨関節面の約33%の骨片と僅かな亜脱臼を呈しており、環指は亜脱臼なく関節面の25%を含んでいた。Splintingを行ったが、どの治療がbestか活発な議論が行われた。

THE QUESTION

 非開放性の骨性または腱性マレットの最も良い治療法は何か。

CURRENT OPINION

 ほとんどの手の外科医は亜脱臼や大きな関節内骨折がなければ、非観血的治療が最も良いと考えている。Splintの好みはかなり意見が分かれる。観血的治療はピンからの感染、不完全な整復、皮膚の欠損、固定力不足などから、あまり好まれない。

THE EVIDENCE

Studies comparing splints

 KinninmouthとHolburnは54名のランダム化前向き試験で貫通型のsplintとStack splint(既成のmoldされたポリエチレンのsplint)を比較。貫通型のほうがコンプライアンスに優れていたが、治療者が作らなくはいけない。

 MaitraとDoraniはアルミニウム合金の形を変えられるsplintとStack splintを比較。Stack splintで皮膚障害が多かったが、outcomeとしては同等であった。

 WarrenらはAbouna splint(ゴムでコーティングされたワイヤsplint)とStack splintを比較。Abouna splintで皮膚の問題があり、患者満足度が低かったが、outcomeは同等であった。

Splint versus surgery

 Niechalevは10年間の、非ランダム化前向きコホート研究を150名のマレット指に行った。82名は腱性、68名が骨性であった。平均3年観察。腱性または小骨片(非関節面の剥離骨折)92名はsplintで治療。関節面の骨折43名中、26名で観血的治療を行い、12名はsplint、5名は固定しなかった。非観血的治療はアルミニウムsplintを背側か掌側につけて行い、観血的治療はpinningとpull-out法で行った。結論としては末節骨の亜脱臼があるか関節面1/3以上または3mm以上の骨片があれば観血的治療を考慮するとしていた。

SternとKastrupは123のマレット指をretrospectiveにreviewした。関節内骨折が45、剥離骨折が37、腱性が39であった。Splintを行ったのが78指、観血的手術が39指、両方行ったのが6指であった。手術の合併症発生率は53%(そのうち長期に及ぶのが76%)であり、内訳は感染20%、爪の変形18%、関節面のずれ18%、固定不良13%、骨隆起11%であった。結論としてはほぼすべてのマレット指でsplintingによる治療のほうがよいとしていた。

 WehbeとSchneiderはマレット指患者160名をretrospectiveにreviewした。骨性は44名(28%)であった。骨性患者のうち21名は最低6カ月、平均3年以上フォローしていた。手術した9名中2名で合併症があり、1名は整復位が失われ、もう1名はpull-outのボタンが取られてしまった。変性について観血的治療と非観血的治療を比較、筆者らは骨性であれ腱性であれsplintingが安全で信頼性の置ける治療法だと結論付けた。

 Lubahnは観血的手術またはsplintingで治療したマレット指30指について前向きコホート研究を報告した。関節の亜脱臼または関節面1/3以上の骨折のある患者11名に外科的治療を行い、残る11名はsplintで治療した。かなり短いコホート研究ではあるが、観血的整復と細いK-wireの使用で、症例によっては整容的にも機能的にも優れた結果を得られることを論じている。

 Auchinclossはpinningまたはsplintで加療した50名のマレット指を前向きランダム化試験で調べた。3名のsplintによる皮膚刺激と2名のピンからの感染があった。観血的治療と非観血的治療で結果は同等であったが、受傷後2週目なら観血的治療がよいと勧めている。

 Geymanらは1966-1998年に出された研究をメタ解析したが、ランダム化試験は1つだけであった。Poolした論文のreviewから、関節面1/3までの骨折を含めほとんどのマレット指はsplintで治療できると結論付けた。伸筋腱の30%までのlagならほとんどの患者で許容範囲であり、観血的治療は複雑な損傷か再発の場合に選択すべきである。

 HandollとVoghelaによる最近のメタ解析では、4つの論文を調べ、うち3つはsplinting、1つはsplintingとK-wire固定の組み合わせであった。著者らはどのsplintが最も良いかを決めるにはevidenceが不足しているが、splintは毎日の使用に耐えうる強度がなくてはいけないと結論付けた。また、厳格なプロトコールの順守が重要である。観血的治療に関しては、適応を決めるにはevidenceが不足していた。

 O’Farrellらの論文ではレクリエーション中に非開放性のマレット指を受傷した3名の外科医について報告している。一人も観血的治療を望まなかったが、執刀は継続したいと考えていた。そのため滅菌された術中に使えるsplintを用いて管理し、執刀のスケジュールは崩さなかった。筆者らは20年以上この方法で外科医・歯科医を治療し、良好な成績であると述べている。

SHORTCOMINGS OF THE EVIDENCE AND DIRECTIONS FOR FUTURE RESERCH

 マレット指に関するたくさんの原著論文が出ているが、ほとんどがuncontrolled studyである。マレット指はcommon diseaseなので、その管理の面でのさまざまな前向きランダム化比較試験を行っていくべきである。

MY CURRENT CONCEPTS

 最近の論文のreviewによると、大多数のマレット指に対するsplint治療を支持する質の高いevidenceがある。Splintの種類よりコンプライアンスが重要である。観血的治療は関節の亜脱臼があるか、大きな関節面の骨片の転位(1/3以上)がある場合のみ考慮される。観血的治療を行ったら合併症を注意深くみていかなくてはいけない。治療法の選択によらず、患者は治療後わずかな伸筋腱のlagや背側の骨隆起の可能性があることを理解しなくはいけない。

 たくさんの手の外科医の長い議論の末、大多数がsplintがよいと考えていることがわかった。しかし、痛みのため中指の亜脱臼は戻せず、また執刀予定を全うするにはpinningが最もよいと本人が考えていたので、K-wire 1.4mmで経皮的pinningして皮内に埋めることを選択した。Splintは日中つけておき、手術時外した。無理なく手術スケジュールは全うし、現在もROMの異常なく働いている。

《論評》
クリアカットで一定のコンセンサスが得られる内容であると思います。外科医が手術を受けたがらなかったというところがオチですかね。笑

2009年10月5日月曜日

JBJS(Am).2009 October. Patients with wrist fractures are less likely to be evaluated and managed for osteoporosis

背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。

表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。

考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ勧告では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの上方を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。

論評
日本でも術者が術後のフォローは受け持つ。また、以前、家庭医にまかせるよりも整形外科の専門医がフォローしたほうが骨粗鬆症の治療がうまくいくとの報告がJBJSにあった。(たぶん2008年)どうしても忙しい外来の中骨粗鬆症の説明を加え、治療を開始するというのは相当の強い気持ちがないといけない。ぜい弱性骨折の棋王があるとFRAXで試しに計算してみると約2倍に危険率が上がる。骨粗鬆症の認識を上げるとこから始めていかなければならない。