THE PATIENT
37歳整形外科医が会議に参加していた。午後のスキーのsessionで転倒し、利き手ではない左手の中指と環指を受傷した。夕方の講義形式のsessionにも戻った時に、透視で中指・環指の骨性マレットを確認した。中指は末節骨関節面の約33%の骨片と僅かな亜脱臼を呈しており、環指は亜脱臼なく関節面の25%を含んでいた。Splintingを行ったが、どの治療がbestか活発な議論が行われた。
THE QUESTION
非開放性の骨性または腱性マレットの最も良い治療法は何か。
CURRENT OPINION
ほとんどの手の外科医は亜脱臼や大きな関節内骨折がなければ、非観血的治療が最も良いと考えている。Splintの好みはかなり意見が分かれる。観血的治療はピンからの感染、不完全な整復、皮膚の欠損、固定力不足などから、あまり好まれない。
THE EVIDENCE
Studies comparing splints
KinninmouthとHolburnは54名のランダム化前向き試験で貫通型のsplintとStack splint(既成のmoldされたポリエチレンのsplint)を比較。貫通型のほうがコンプライアンスに優れていたが、治療者が作らなくはいけない。
MaitraとDoraniはアルミニウム合金の形を変えられるsplintとStack splintを比較。Stack splintで皮膚障害が多かったが、outcomeとしては同等であった。
WarrenらはAbouna splint(ゴムでコーティングされたワイヤsplint)とStack splintを比較。Abouna splintで皮膚の問題があり、患者満足度が低かったが、outcomeは同等であった。
Splint versus surgery
Niechalevは10年間の、非ランダム化前向きコホート研究を150名のマレット指に行った。82名は腱性、68名が骨性であった。平均3年観察。腱性または小骨片(非関節面の剥離骨折)92名はsplintで治療。関節面の骨折43名中、26名で観血的治療を行い、12名はsplint、5名は固定しなかった。非観血的治療はアルミニウムsplintを背側か掌側につけて行い、観血的治療はpinningとpull-out法で行った。結論としては末節骨の亜脱臼があるか関節面1/3以上または3mm以上の骨片があれば観血的治療を考慮するとしていた。
SternとKastrupは123のマレット指をretrospectiveにreviewした。関節内骨折が45、剥離骨折が37、腱性が39であった。Splintを行ったのが78指、観血的手術が39指、両方行ったのが6指であった。手術の合併症発生率は53%(そのうち長期に及ぶのが76%)であり、内訳は感染20%、爪の変形18%、関節面のずれ18%、固定不良13%、骨隆起11%であった。結論としてはほぼすべてのマレット指でsplintingによる治療のほうがよいとしていた。
WehbeとSchneiderはマレット指患者160名をretrospectiveにreviewした。骨性は44名(28%)であった。骨性患者のうち21名は最低6カ月、平均3年以上フォローしていた。手術した9名中2名で合併症があり、1名は整復位が失われ、もう1名はpull-outのボタンが取られてしまった。変性について観血的治療と非観血的治療を比較、筆者らは骨性であれ腱性であれsplintingが安全で信頼性の置ける治療法だと結論付けた。
Lubahnは観血的手術またはsplintingで治療したマレット指30指について前向きコホート研究を報告した。関節の亜脱臼または関節面1/3以上の骨折のある患者11名に外科的治療を行い、残る11名はsplintで治療した。かなり短いコホート研究ではあるが、観血的整復と細いK-wireの使用で、症例によっては整容的にも機能的にも優れた結果を得られることを論じている。
Auchinclossはpinningまたはsplintで加療した50名のマレット指を前向きランダム化試験で調べた。3名のsplintによる皮膚刺激と2名のピンからの感染があった。観血的治療と非観血的治療で結果は同等であったが、受傷後2週目なら観血的治療がよいと勧めている。
Geymanらは1966-1998年に出された研究をメタ解析したが、ランダム化試験は1つだけであった。Poolした論文のreviewから、関節面1/3までの骨折を含めほとんどのマレット指はsplintで治療できると結論付けた。伸筋腱の30%までのlagならほとんどの患者で許容範囲であり、観血的治療は複雑な損傷か再発の場合に選択すべきである。
HandollとVoghelaによる最近のメタ解析では、4つの論文を調べ、うち3つはsplinting、1つはsplintingとK-wire固定の組み合わせであった。著者らはどのsplintが最も良いかを決めるにはevidenceが不足しているが、splintは毎日の使用に耐えうる強度がなくてはいけないと結論付けた。また、厳格なプロトコールの順守が重要である。観血的治療に関しては、適応を決めるにはevidenceが不足していた。
O’Farrellらの論文ではレクリエーション中に非開放性のマレット指を受傷した3名の外科医について報告している。一人も観血的治療を望まなかったが、執刀は継続したいと考えていた。そのため滅菌された術中に使えるsplintを用いて管理し、執刀のスケジュールは崩さなかった。筆者らは20年以上この方法で外科医・歯科医を治療し、良好な成績であると述べている。
SHORTCOMINGS OF THE EVIDENCE AND DIRECTIONS FOR FUTURE RESERCH
マレット指に関するたくさんの原著論文が出ているが、ほとんどがuncontrolled studyである。マレット指はcommon diseaseなので、その管理の面でのさまざまな前向きランダム化比較試験を行っていくべきである。
MY CURRENT CONCEPTS
最近の論文のreviewによると、大多数のマレット指に対するsplint治療を支持する質の高いevidenceがある。Splintの種類よりコンプライアンスが重要である。観血的治療は関節の亜脱臼があるか、大きな関節面の骨片の転位(1/3以上)がある場合のみ考慮される。観血的治療を行ったら合併症を注意深くみていかなくてはいけない。治療法の選択によらず、患者は治療後わずかな伸筋腱のlagや背側の骨隆起の可能性があることを理解しなくはいけない。
たくさんの手の外科医の長い議論の末、大多数がsplintがよいと考えていることがわかった。しかし、痛みのため中指の亜脱臼は戻せず、また執刀予定を全うするにはpinningが最もよいと本人が考えていたので、K-wire 1.4mmで経皮的pinningして皮内に埋めることを選択した。Splintは日中つけておき、手術時外した。無理なく手術スケジュールは全うし、現在もROMの異常なく働いている。
《論評》
クリアカットで一定のコンセンサスが得られる内容であると思います。外科医が手術を受けたがらなかったというところがオチですかね。笑
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