2010年5月30日日曜日

2010.5.28-30 日本整形外科学会復命

5/28-5/30 東京国際フォーラムで行われた日本整形外科学会に参加してまいりました。

骨粗鬆症の治療とその効果。
WHOからFRAXが発表されている。骨密度を測定しなくても将来的な骨折の危険性について評価してくれるシステム。
日本人の場合には15%以上の危険性がある場合には治療介入した方がよい。
ただしいくつかの欠点として75歳以上では使えないこと、脊椎骨折の危険性を測定するものではないのでそこの評価が不能であることが欠点。
実際の治療
第一選択はBisphosphonate。欠点として顎骨壊死の危険性。頻度はまれ。日本歯科医師会からポジションペーパーあり。抜歯する際などは休薬するなど。”drug
holiday”
5年以上継続して内服している例は危険。一旦休薬もあり。
SERM、VitDの使用方法。
糖尿病合併例。骨密度はあっても骨強度が不足していると考えられる例にはSERMが適当。高齢者で低骨密度、低骨強度が危惧されるような例ではVitDとビスフォスフォネートの併用が効果的と。ViTDはバランスの改善にも期待。
薬物療法にあわせて運動療法の処方を。特に背筋の筋力トレーニングとストレッチ。両手を壁に当てて背中を伸ばす。うつ伏せで背筋を鍛えるなど。outcomeはサロゲイトされているがやってみる価値はあるかも

撓骨遠位端骨折
DRUJをふくめた新しい分類。DRUJが破綻しているかどうかというのは本邦ではあまり臨床成績には影響しないと考えるが。。
骨粗鬆症が疑われる場合にはピンニングではなくさいしょからプレート設置を。
ギプスを含めた保存療法の価値が下がりつつあることが今後の課題

脳血管障害のリハビリテーション
疾患でそのリハビリの処方が変わるわけではない。
どんな状態であれ関節可動域訓練はできるだけ早期から始める。筋力強化訓練を行うと痙性がアップするという誤解があるがそういうことはないので筋力強化訓練は行って全く差し支え無い。座位、立位はできるだけ早くからとらせる。血圧180未満、JCS一桁、全身状態安定であれば早速体を起こしていきましょう。
PNFをふくめた様々なテクニックがあるがやって悪いことは何もないがやらなければならないというものでもない。

私の発表。目の付けどころがよいとお褒めいただいた。如何わしいという日本語の表現が悪いと突っ込まれた。内容については特に指摘されなかったので、早速論文にして提出したいと思います。
運動器検診の話もチェック。資料を贈っていただくよう交渉した。

人工膝関節
アライメント、軟部組織バランス、インプラントの形状が重要。
アライメントはどこを基準とするか自分の基準を作る。内旋、内反位で設置されるとその人工関節の寿命は短い。
インプラントの形状はどこも似たり寄ったり。mobile bearingについてはまだその有用性を証明出来ていない。
人工関節の性質上どうしても評価が10年後、20年後となってしまう。
これを回避するためにコンピュータによるシミュレーションを行っているが精度はまだまだ。
人工関節はやはり確立された方法をとっていくべきなのかもしれない。

義肢装具の処方。
自由度を制限するための装具処方という考え方が斬新でした。シューホーン装具は回旋不安定性が強いのでDAタイプの装具のほうが好ましい。
介助と補助の違い。介助では患者はあるけるようにはならない。如何に補助していくかがポイント。
最初は長下肢装具、平行棒からというようにして徐々に難易度を上げていかなければならない。
最初から高い難易度では成功しないし、簡単なままでも目標に達しない。
歩いている姿を常にチェックしてやっていかなければならない。
次号の総合リハに今回の話がでるとのこと。早速チェック。

慢性腰痛と肩こり
椎間板の変性に全ての原因を求めるのは無理。なで肩で肩こりになるというのもウソ。
心理社会的な問題を抱えていることが多い。
腰痛も肩こりも何かしらの同様の発症機序、病態を抱えている可能性あり。
プラセボ効果をばかにしてはいけない。手術も70%がプラセボ効果。
ナロキソンで拮抗するとプラセボ効果が消える。
医師患者関係が構築されていると治療効果は最大に。
運動療法をふくめ処方する医師も強い信念をもって運動療法を処方することが大事。
今後オピオイドの貼付薬が発売される。(レペタンのシップ)
どのように使うか、その副作用をふくめ検討していくことが求められる。

2010年5月13日木曜日

2010.5.13 JBJS(Am) Immobilization in an External or Internal Rotation Brace Did Not Differ in Preventing Recurrent Shoulder Dislocation

背景
肩関節前方脱臼に対して外旋位で固定を行うと内旋位固定よりも再脱臼の危険性を減少させるのかどうかを検証した。
方法
無作為割付試験。4年間のフォロー。イスラエルの救急外来を受診した患者。17歳から27歳までの51人の患者(全員男性、78%が軍人)。交通事故、大結節骨折を合併したものは除外。27名外旋位固定、24名を内旋位固定。4週間固定したのち通常のリハビリテーションプログラムに沿ってリハビリを開始。再脱臼の有無をprimary
endpointとした。
結果
2群の間に有意な差は認められなかった。再脱臼までの期間はおおよそ12ヶ月であった。
結論
肩関節前方脱臼後に内旋位固定をしても外旋位固定を行っても再脱臼についての有意な差はない。

<論評>
外旋位固定を行うことで肩甲下筋によって前方の関節包が圧迫されるので、外旋位固定の方が前方脱臼後の固定には有用であろうという報告が数年前にされておりましたが、無作為割付試験の結果としては変わらなかったようです。Bankert lesionはやはり外科的に整復されないと脱臼の高リスク群では再脱臼を防ぐことは難しいのかも知れません。

2010年5月5日水曜日

2010.5.1 JBJS(Am) The Risk of Revision After Primary Total Hip Arthroplasty Among Statin Users

要旨
スタチンは骨代謝とその炎症の抑制に効果があると言うことが知られているが、THAを行った患者に対してその効果がどのようなものであったかと言うことを調べた報告は今までない。
方法
1996年から2005年までにデンマーク股関節登録センターに登録されたプライマリーTHAが行われた2349例についての検討。propensity score matchingという手法を用いて、同様の背景をもつ2349例をコントロール群として多変量解析を用いてスタチンを使っていることが有意に再置換のリスクを減らすかどうかを検討した。
結果
57581例のTHA患者のうち、8.9%が10年積算で再置換を要した。術後にスタチンを用いた群での再置換に対する相対危険度は0.34であった。この他、感染、ゆるみ、脱臼、人工関節近傍骨折の危険性も低かった。
結論
スタチンはプライマリーでTHAが行われた症例に対してその再置換を減らす効果がある。しかしながらそのメカニズムが明らかになるまでは健康な成人に対して人工関節の延命を目的としてスタチンを投与することが適当であると言う事は言えない。

<論評>
propensity scores matchingという方法を用いた解析によってスタチンがTHAの長期生存に有効に働くのではないかと言う事を示唆した文献。
この解析方法が面白いと思いましたし、また同様に日本でもregitration systemを作って同じような発表ができればと願います。