2018年8月29日水曜日

20180829CORR No Clinically Important Difference in Pain Scores After THA Between Periarticular Analgesic Injection and Placebo: A Randomized Trial 

背景
術後鎮痛を目的とした関節周囲への鎮痛剤の注射は様々な整形外科手術で行われている。しかしながらTHA術後でそういった関節周囲への鎮痛剤注射(PAI)が有用かどうかは不明である。
目的
二重盲検無作為割付試験。一期的両側THAの患者を対象。プラセボとPAIを比較。1)VASを用いて鎮痛効果を調べる。2)プラセボ側、PAI側で合併症率を比較した。
方法
単施設。1年間で45症例の一期的両側THAの患者を対象。3例が除外、2例が研究参加を拒否。40例、80関節について調査を行った。一方の股関節に対してプラセボを、反対側の股関節に対してPAIを注射。PAIの内容はロピバカイン、モルヒネ、メチルプレドニゾロン、ケトプロフェン、エピネフリンの混合剤とした。24時間での疼痛をVASを用いて評価。20ミリを臨床的に有用なVASの変化と定義した。全患者の評価が可能であった。注射による合併症は生じなかった。
結果
PAIの注射、またはプラセボによる臨床的な違いは認められなかった。ただし24時間後のVASはPAIで有意に低い値を示した。リカバリールーム、術後3時間でもVASはPAIのほうが低かったものの臨床的に差があるとは言えなかった。合併症に差はなかった。
結論
PAIはTHA術後の鎮痛に臨床的に有意な違いが出るというほどのものではなかった。とくに推奨できるようなものではないものと筆者らは考える。他の内容であれば差が出る可能性があるのでさらなる研究が必要である。

<論評>
スタディデザインが秀逸ですね。得られた結論の評価の方法もMCIDを用いるなどよく考えられていると思います。PAIはTKAでは有用だと思いますが、THAだとどうかな?と思っていたのでまたさらなる研究が必要だと思います。

2018年8月15日水曜日

20180814 CORR Does the Alpha-defensin Immunoassay or the Lateral Flow Test Have Better Diagnostic Value for Periprosthetic Joint Infection? A Systematic Review

背景
関節液内のアルファディフェンシン量の測定は人工関節感染(PJI)の診断の一助となる。関節内中のアルファディフェンシン量を測定するためのキットは、24時間で結果の出る酵素結合免疫吸着型アッセイベースのSynovasureアルファディフェンシンイムノアッセイと20分で結果のでるSynovasureラテラルフローテストの2種類が上市されている。どちらのテストが有用かと言うことを検討した文献はない
臨床上の疑問
イムノアッセイとラテラルフローテストのどちらがPJIの診断に有用か
方法
PRISMAガイドラインに沿って2017年4月までの文献を渉猟した。1578編の論文が渉猟されたが、除外基準に従って除外したところ7編の論文のみが残った。(4編のイムノアッセイと3編のラテラルフローテスト)。アルファディフェンシンイムノアッセイでは482症例、ラテラルフローテストは119例であった。QUNDAS2による論文の質の検討を行い、異質性の調査を行った。感度、特異度、陽性尤度比、陰性尤度比、ROCカーブをそれぞれ計算した。
結果
アルファディフェンシンイムノアッセイはラテラルフローテストよりも優れた診断能力を示した。感度96%対71%。特異度96%対90%。ROCカーブでは0.98対0.75であった。
結論
関節液内のアルファディフェンシンの測定において、ラテラルフローテストより逸無のアッセイテストがより正確な診断が得られた。ラテラルフローテストの感度は低く、感染の除外診断には薬に立たない。一方、特異度が高く即座に結果が得られるため、術中の感染の確定に役立った

<論評>
世の中を席巻?しているアルファディフェンシンの測定についての感度特異度に関するシステマティックレビューです。
ラテラルフローテスト(インフルエンザの診断キットのように関節液を垂らして診断する。本邦でも発売中)の感度は低く、特異度は高いとの結果でした。つまり、陰性だからといって感染が否定できるわけではなく、陽性であれば、検査前確率が十分に高ければほぼ感染と確定診断できるというわけですな。

2018年8月8日水曜日

20180808 J arthroplasty Does Dexamethasone Reduce Hospital Readiness for Discharge, Pain, Nausea, and Early Patient Satisfaction in Hip and Knee Arthroplasty? A Randomized, Controlled Trial.

背景 術後の疼痛、吐き気などがしっかりコントロールされれば早期の退院が可能となり、医療費の削減にもつながる。本研究の目的は周術期にデキサメタゾンを投与することで術後の疼痛、吐き気に与える影響とそれによって早期退院が可能となるかの検討を行うことである。
方法 164例のTHAまたはTKAをおこなった患者を対象。RCT。86例の患者にデキサメタゾン、78例の患者にプラセボを投与した。第一の評価項目は入院期間。第二の評価項目は吐き気、痛みのVAS、吐き気止めの使用、血糖値、患者満足度である。
結果 デキサメタゾン投与群のほうが早期に退院可能であった。痛みのVASは20%減少し、またモルヒネの使用が27%減少した。吐き気に関しては二群間で同様の結果であった。しかし吐き気止の使用についてはデキサメタゾン使用群のほうが少なかった。術後6州の満足度はプラセボ群よりデキサメタゾン群のほうが高かった。合併症率は同等であった。
結論 周術期にデキサメタゾンの静脈内注射を行うと疼痛の軽減、モルヒネ使用量の減少が可能となり早期退院が可能となる。

<論評>
結局なにに効いているかわかりませんが、疼痛コントロールを容易にしたということなんでしょう。そのためにモルヒネの使用量が減り、それに伴う吐き気止めの使用も減ったということなのかもしれません。
周術期に加わる侵襲がステロイドによってカバーされているのかもしれません。
頚部骨折など高齢者でやってみても面白いかもしれませんね。

2018年8月4日土曜日

20180804 BJJ A randomized controlled trial of cemented versus cementless arthroplasty in patients with a displaced femoral neck fracture

目的
本研究の目的は大腿骨頚部骨折の患者に対してセメントステムもしくはセメントレスステムのいずれが有用であるかを比較することである。
患者と方法
141例の患者に対する無作為割付試験。4年間の経過観察。大腿骨頸部骨折の患者を対象。67例のセメントステム、74例のセメントレスステム。THAが58例。BHPが83例。
結果
Harris Hip Score、Musculoskeletal functional assessment score とEQ5Dを用いて比較を行った。48ヶ月間に渡ってこれらの評価項目について、2群間での差を認めなかった。セメントステム群の2例3%、セメントレスステム群の5例6.8%で周術期の人工関節周囲骨折を認めた。P値は0.4であった。その他感染、不安定性などで追加手術を必要とした例はなかった。死亡率、レントゲン評価も両群間で同等であった。
結論
大腿骨頚部骨折にたいしてセメントステム、セメントレスステムの2群間で臨床成績、合併症に差を認めなかった。しかし短期間での評価においてセメントレスステムのほうが臨床評価が低かったので、本研究の見解としてはセメントレスステムは高齢者の大腿骨頸部骨折に対するルーチンの使用を推奨しない。

<論評>
ちょっと本文まであたれていませんが、セメントステム、セメントレスステムで2群間で差がなかったということであれば、そのとおりなので、この結論はややこじつけかなと思います。
レジストリー、他の観察研究からセメントステムの有用性は言われていますが、本研究ではセメントレスステムとの差はなかったというのが正しい結論だと思います。
セメントレスステム、何使ったんやろ。また詳細は後日アップします。

2018年8月1日水曜日

20180801 J arthroplasty Current Trends in Patient-Reported Outcome Measures in Total Joint Arthroplasty: A Study of 4 Major Orthopaedic Journals.

背景
患者立脚型評価(PRO)に注目が集まっている。たくさんのPROがあり、そのPRO間での比較は困難である。今後レジストリーが確立していくなかで最もよりPROとは何かを検証する必要がある。
方法
2004年、2009年、2014年、2016年にJBJS、BJJ、CORR、J Arthroplastyに掲載されたすべての抄録を検索。人工関節手術についてPROで評価が行われたかどうかを検討した。時間による傾向はCoChraneのAmitageテストを用いた。
結果
644編の研究において1073回にわたり、42種類のPROが使われていた。2004年には97編だったものが2016年には228編と増加していた。一つ以上のPROが用いられている研究の割合も2004年には20.6%であったものが、2016年には47.8%と増加していた。KSS、Harris Hip Score、Oxford Knee Scoreの使用頻度が高かった。
考察
どのPROを用いるかは出版されている割合などを考慮して使用しないといけない。将来的にはPRO間の比較を行う必要がある。

<論評>
え、Harris Hip scoreって、PROだったの。。。とびっくりしました。Harris Hip scoreは関節可動域を測定しますので、これは患者立脚型評価ではないですよね。
大丈夫かいなこの筆者。股関節だとWOMACが最多だとおもいますが、WOMACは有料です。
今後股関節の研究を行われる先生に置かれましてはぜひJHEQをご使用下さいませ。笑