2015年12月20日日曜日

2014 JAMA Effect of physical therapy on pain and function in patients with hip osteoarthritis a randomized clinical trial

  • 変形性股関節症に対しての保存療法が有用か?という疑問に徹底的なプロトコールを作成して臨んだ論文。
  • 個人的な感覚としても、リハビリを進めると痛みを訴える人が多くなる。
  • 運動機能は改善するだろうとおもっていただけにややびっくり。
  • THAの良好な予後を考えるといたずらに粘らずに手術を考慮したほうが良いのでしょうか。

  • オーストラリアメルボルンからの報告。
  • 今までに変形性股関節症に対する理学療法について充分なエビデンスはなかった。本研究の目的は変形性股関節症に対する理学療法についての効果を検証することである。
  • RCT.プラセボ二重盲検試験。102人の変形性股関節症の患者を対象。49例の運動療法群と53例のシャム療法群の2群に分けた。12週間の介入を行い、24週間経過を観察した。
  • 12週間で10回の診察、治療を行った。運動療法群は一般的指導、歩行の指導、マッサージ、可動域訓練、自宅での運動療法を指導。シャム群はジェルを塗られておしまい。24週後も運動療法群では指導された通りの運動を行うよう指導。シャム群は週に3回ジェルを自分で塗りこむよう指導された。
  • 13週で痛み、身体機能を聴取。36週で身体障害、パフォーマンス、変化、精神機能、QOLを取得した。
  • 結果13週間で96人、94%の患者が、36週で83人81%の患者がトライアルを完遂した。痛みの改善の具合は2群間で差がなかった。痛みについてVASで評価を行い、運動療法群では開始前が58.8ミリであったものが13週後には40.1ミリに、シャム群では58ミリであったものが13週後には35.2ミリと改善していた。平均の変化値はシャム群で有意に改善を認めた。運動機能は両群で差を認めなかった。運動機能は運動療法群で32.3から27.5へ、シャム療法群は32.4が26.4に改善した。この平均変化値もシャム群のほうが1.4良かった。36週の段階の評価では運動療法群では46症例中19例に何かしらの有害事象が報告されたものの、シャム群では49例中7例にとどまった。(P=0.003)
  • 痛みがあるような変形性股関節症の患者に対する運動療法の価値には疑問がある。
  • Introduction
  • 変形性股関節症のガイドラインでは疼痛、機能障害の程度に応じて非薬物療法を推奨している。しかしながら理学療法にもコストが掛かり、その効果については結論が出ていない。
  • 理学療法は関節可動域訓練、患者教育、杖の処方などが含まれる、しかしながらこれら全てを包括的に行った場合のエビデンスはない。また変形性関節症の患者におけるプラセボ効果は無視できない。そこで本研究ではシャム治療群を設定してリハビリについての検討を行った。12週間の包括的リハビリテーションを行い、その痛み、身体機能についての評価を行うことが本研究の目的である。
  • 方法
  • RCT。二重盲検。
  • 2010年から2012年。50歳以上。レントゲン写真上のOAが存在し、VASスケールで40ミリ以上の痛みがある患者。少なくとも中程度以上の活動量があること。THA、TKAの棋王があったり、腰椎の問題を抱えていたりする患者は除外。患者にはシャム療法よりも運動療法が有効であるかどうかを検討するとつたえ、どちらがどちらかを伝えることはしなかった。
  • 介入方法
  • 8人の理学療法患者。9つの整形外科クリニック。12週間で10のコースを受けた。最初の週は2回受診。その後6週間は週1回。その後2週に1回ずつの受診とした。1つのセッションは45−60分間のリハビリが行なわれた。リガウ療法の内容は股関節の可動域訓練、股関節、腰椎のマニュピレーション、深部筋マッサージ。自宅での運動療法を指導。関節可動域訓練、バランストレーニング、患者教育、杖の使用法の指導を行った。6ヶ月のフォローの間週3回の自宅での訓練を行うように指導された。
  • シャム療法群は股関節の前と後ろにジェルを塗りつけ、動いていない超音波装置を当てられた。特に運動療法などの指導は行なわず。6ヶ月の間週3回5分間その効果のないジェルを塗りつけるように指導された。
  • 13週で診察して評価、36週で評価表を郵送した。VASとWOMACを評価に用いた。その他HOOS,QOL評価表、Grobal rating Scale.万歩計、を用いた。
  • 13週の段階では関節可動域、筋力評価、階段昇降テスト、連続起立テスト、20m歩行試験バランステストが行われた。
  • 有害事象、鎮痛薬の内服状況などについては日記に記載するようにしてもらった。13週、36週の時点で自分がプラセボ群かどっちかということを記載してもらった。
  • 結果
  • 群分けについてフローチャートに示す。1441人の患者に参加希望を尋ねたところ1339人が参加を希望しなかった。102例の患者について群訳を行い、13週で94%、36週で81%の患者がトライアルの参加を完遂した。患者背景を表1に示す。脱落者は有意に若い患者で多かった。運動療法群、シャム療法群の間に差は認めなかった。
  • 2群間で痛みについての差は認めなかった。また運動機能についての差も認めなかった。これらの結果を表2に示す。2群とも疼痛について有意に改善していた。運動療法すんの改善は17.7ミリなのに対してシャム療法群は22.9ミリであった。機能について運動療法群が平均5.2ユニットであるが、5.5ユニット出会った。セカンダリーアウトカムについて13週、36週での違いを認めなかった。表3,4
  • 多重代入法を用いて検討を行った結果、疼痛、機能について2群間に有意な差を認めなかった。また完全に欠損の内データだけでの検討でも同様の結果が得られた。
  • ただし、運動療法軍の46例中19例で何かしらの有害事象が報告されたのに比較して、シャム療法群ではわずか14%、7例の報告に伴った。症状は痛みの増悪、腰痛の悪化であった。内服の使用などは2群間で差を認めなかった。
  • 盲検についての検討も行い、運動療法群では自分が介入群であることが36週ではよくわかってきているものの、受けている治療の正しさを信じることができる割合は低下していた。
  • 考察
  • 症状のある変形性股関節症の患者に対しての包括的リハビリテーションの効果はシャム治療法を超えない。理学療法士との接触時間、その内容、自宅での指導を含めても差がなかった。運動療法群、シャム両方群の2群とも疼痛、運動機能について有意な改善を認めた。比較的軽度な有害事象を運動療法軍に多く認めた。
  • 本研究の結果は統計で言うType2エラーの可能性が指摘される。しかしながらサンプルサイズの設計は統計学的に正しく行なわれており、また95%信頼区間をみても運動療法群にプラセボ以上の効果は認められない。
  • 運動療法群で自宅でまじめにホームエクササイズを行ったのが85%にのぼった結果を持ってしても、2群間に全く差がないので運動療法には本当に差がないといえる。
  • 包括的リハビリテーションはリハビリの基本である。本研究は過去にそれぞれ単独では有効であるとされた治療法を取り入れて包括的にリハビリを行った。しかしながら最近の研究では2つ以上のリハビリを組み合わせてもそれほど効果がないとする結果が出ている。またかえって有害事象が報告されることもあるとする報告も散見される。ひょっとしたら痛みがあり、関節可動域制限が出ているような患者では運動療法は意味を成さないのかもしれない。
  • 膝では運動の強度でそのリハビリ効果に差はなかったとする報告や、理学療法士との接触時間が多いと改善するとする報告がある。股関節で同様のことが言えるかどうかはわからない。
  • シャム療法群でも改善が得られた。これは変形性股関節症に有効な治療法がないことと、また同時にシャム療法が有効であることを氏名している。メタアナライシスでは変形性股関節症ではプラセボ効果が大きく見られることが知られている。このような効果を最大とするような運動療法、薬剤療法を検討する必要がある。今回のシャム療法では皮膚への刺激と手の接触があった。これらの行為が有効であることが示された。患者への配慮がこのプラセボ効果を大きくすることが知られている。保存療法ではプラセボ効果が大きな影響を持つ。
  • いままで変形性股関節症に対するプラセボと比較した二重盲検試験はなかった。いままでの研究は全く治療を市内軍を対象としていた。しかしながら非治療群を対象とすると治療効果が大きく出る可能性があること、また盲検化が困難となる。
  • 本研究の強みは統計家を交えたしっかりとした研究プロトコールの作成にある。本研究の限界は理学療法士が盲検化されていないことである。しかし、理学療法士が熱心にやったほうがよければ運動療法群のほうが良い結果となるため盲検化に失敗したと言うことは言えない。
  • 結論
  • 変形性股関節症に対する包括的リハビリテーションはむしろ有害事象を増やす。これらの患者に対してリハビリが必要かどうかは疑問である。

2015年11月8日日曜日

20151108 ActaOrtho Assocication between change in global femoral offset after total hip arthroplasty and function, quality of life, and abductor muscle strength

  • 気がついたら3ヶ月投稿サボっておりました。
  • 論文を読んでいないわけではないですが、なかなか皆様にお見せできるたぐいのものが少なくて。

良い論文だと思います。しっかりとしたスタディデザイン。仮説の設定もしっかりしていますし。
こういう論文が書けるようになるとイイなあと思いました。

    • Abstract
      • femoral offset(FO)とTHAの臨床成績との関連について一定の見解はない。今回患者立脚型評価、QOL、筋力測定を用いてFOと臨床成績との間の関連について検討を行った。
      • 250例の片側性THAの患者を対象。術前にWOMAC,EQ5Dを測定。術後1年でWOMC,EQ5Dと外転筋力を測定した。222例の患者の測定が可能であった。222例の患者を術前よりFOが5mm以上大きくなった群、変わらなかった群、5ミリ以上小さくなった群の3例に分けて検討を行った。
      • 結果3群とも臨床成績の改善が認められた。FOが小さくなった群でWOMACスコアの低下、外転筋力の低下、補装具使用の増加が認められた。交絡因子を調整した結果、FOの現象は外転筋力低下のみに関わっていた。痛みについて3群間に差はなかった。
      • 5ミリ以上のFOの現象は患者の外転筋力に影響をおよぼすので避けたほうが良い。
    • Introduction
      • 小関節可動域、バイオメカニクスを考慮してカップとステムの設置は行なわれなければならない。FemoralOffseto(FO)は術中の重要な因子の1つとなる。FOは一般的に股関節正面像で大腿骨頭中心と大腿骨髄腔の長軸間距離と規定される。しかしながらこの距離はカップの位置を考慮に入れたものではない。カップの位置はまた別に考慮され、涙痕から大腿骨頭中心までの距離はカップオフセットと言われる。カップオフセットとフェモラールオフセットを足したものがグローバルオフセットとして定義される。
      • THAのあとのオフセットが適切でないと、インプラントの不安定性、股関節のインピンジメント、関節合力の増加、ポリエチレンの摩耗などと関連する。一方、フェモラールオフセットを増加させると関節が安定しポリエチレンウエアが減少するとする報告がある。しかし、いずれのデータも幾つか問題がある。サンプルサイズが小さかったり、後ろ向き研究であったり、コントロール群が不適切であったり、レントゲン撮影が不適切であったりという問題がある。グローバルオフセットと患者の機能評価の間の評価は今までなかった。本研究の目的はスローバルオフセットの変化量と患者立脚型評価の間の関連を調べることである。
      • 2010年から2013年。スエーデンの大学病院での単施設研究。前向き研究。片側OAにたいていTHAを施行された患者において検討。2次性のOA,脊椎、外傷後の患者は除外した。
      • 評価項目はWOMAC。EQ5Dを用いた。また外転筋力を測定した。
      • 術前、術後1年で上記評価を行った。
      • レントゲン撮影については両下肢内旋15度として、115センチの高さから撮影を行った。図1のようにしてグローバルオフセットを測定した。健側とその値を比較した。測定の際には骨頭サイズでキャリブレーションを行った。
      • その上で3群に分けた。5ミリ以上グローバルオフセットが減少した群、グローバルフセットが変わらなかった群、グローバルオフセットが5ミリ以上増加した群の3寸である。
      • 術後12ヶ月の時点でWOMAC、EQ5Dを取得し、その他に杖歩行の有無、股関節の痛み、鎮痛剤の使用について聴取した。
      • 筋力測定については2005年のあさやまの方法を参考にした。
      • 統計学的にはSPSSを用いて行った。サンプルサイズも事前に計算し、各群65例が必要であるとした。
      • hrier and Platt 2008の方法を用いて交絡因子についての再検討を行った。
      • 結果
      • 286例の患者を候補として採用した。21例の患者が反対側の股関節疾患、脊椎疾患のため除外された。15例の患者が研究への参加を拒絶。250例の患者にて研究を開始し、1年後に222例の患者で解析を行うことが出来た。79%の患者でセメントステムが用いられ、115例が男性患者であった。
      • オフセット減少群が71例、変化なし群が73例、増加群が78例であった。術前のWOMACスコア、EQ5Dについて3群間に差を認めなかった。
      • 交絡因子調節前の術後の結果では、オフセット減少群でWOMAC、EQ5D、外転筋力、杖歩行の割合が有意に多かった。交絡因子の解析を行うと外転筋力のみが有意な因子としてオフセット減少群で低下を認めた。
      • 考察
      • グローバルオフセットの減少はおおまかにQOLの低下、患者立脚型評価による成績の低下、外転筋力の低下、また杖歩行の割合の増加を認めた。オフセットが変化しない群、増加した群ではその成績に変化はなかった。女性、高齢者では臨床成績の低下を認めるので、交絡因子の調整を行うとグローバルオフセットの減少により外転筋力の低下を認めた。
      • グローバルオフセットは術前計画をたてる際にも重要である。CTで測定するのが正しい測定方法であるが、単純レントゲン写真での測定でもその信頼性、妥当性は示されている。単なるステムオフセットよりも骨性インピンジメントなどの可能性を排除するにはこのグローバルオフセットが有効である。今回5ミリで群分けしたのは以前の報告で5ミリで群分けしていたためでそれを踏襲した。
      • グローバルオフセットが減少しても外転筋力以外の項目は変化が認められなかった。WOMACの悪化はこの筋力低下を反映しているものと考えられる。オフセット量の保持と関節可動域、筋力との間には正の相関があることが他の研究でも示されている。一方、他の研究ではオフセットを減少したほうが術後の疼痛は少ないとする報告がある。また、6から12ミリのオフセットの減少で歩行に変化が出たとする報告もある。
      • オフセットの変化はQOL、患者立脚型評価に影響を及ぼさなかった。
      • 脱臼率にも変化はなかった。これはグローバルオフセットの減少が脱臼などには影響を及ぼさないことを示唆している。
      • 本研究はグローバルオフセットの保持を手術の際に心がけることを目標としている。しかしながらこれを実際に実現するのは難しい。術中にイメージ、ナビを用いるのは良い方法である。しかし結局術者の技量、経験に依存する
      • 本研究の限界は単純レントゲン写真のみでの評価を行っていること、WOMACスコアの天井効果があることなどである。しかしながら前向き研究。充分なN数のある研究であることが本研究の強みである。
      • グローバルオフセットを減少させると外転筋力の低下を生じることがわかった。

2015年8月26日水曜日

20150826JBJS(Br) A patient's recollection of pre-operative status is not accurate one year after arthroplasty of the hip or knee

今自分がやっている研究に関連する論文です。
患者アンケートは1年たったところで集めないといけませんよという話。


  • もしTHA、TKAの術後に術前の状態を思い出すことができるのであれば臨床、研究の両方の点において有用である。本研究はTHAまたはTKAを受けて1年たった患者を対象に1年前の状態を思い出して記載してもらった。実際に1年前に記載した内容と、1年後に思い出して記載した無いように有意差は認められなかったものの絶対値の違いは大きかった。また相関係数は小さく、OHS、OKSの回答で一致していたものはOHSで半分、OKSで2/3であった。術後に術前の状態を思い出させて記載させた患者立脚型評価の内容はあてにならない。
  • THA、TKAとも良い手術で年々その数は増加傾向にある。臨床成績評価のためにPROMが用いられる。その中でOHS、OKSを今回は用いた。これらの評価は患者の状態を表しているものの、術前にPROMが取得されて居ないこともある。そのため経時的な評価が困難なことがある。術者は術後の状態に興味があり、術前の状態を重視しないということもある。術前のデータがないと横断研究または後ろ向き研究となってしまう。そこで、術前のデータを術後にとることが出来ないかということを考えた。もしそれが可能であれば術後に術前のデータを取得することもできるようになる。記憶をさかのぼって記録をとることにはいくつかのバイアスが存在し、それらはrecall biasと呼ばれる。患者は痛みを強く訴え、機能がより良かったと報告する傾向にある。年齢、精神状態などにも影響される。recall biasはアウトカムにも影響を与える。本研究の目的はOHS,OKSのような疾患特異性患者立脚型評価がTHA、TKAを受けたような患者で思い出して記載すると実際にどうなるかを示した研究である。
  • 対象と方法
  • 2011年から2013年までにTHAまたはTKAを受けた患者のうち、本研究への参加を希望した患者。術後1年の段階で術前の状態を思い出して書いてくださいとお願いした。
  • 英語ができない患者、術後に影響するような疾患に罹患したような患者を除外。
  • 146例の患者。79例THA、67例TKA。術後1年で外来受診した45例の患者、外来受診しなかった101例の患者においては郵送にて質問票を送付。8例の患者で郵便が届かず、21例の患者が研究への参加を拒否した。76.4%の患者で回答を得た。また回答を得た患者の中で質問への回答が不十分だった4例を除外し全体で113例の患者で検討を行った。THAの平均年齢は63歳、TKAの平均年齢は68.5歳であった。MDSはOHSで5点、OKSで4点であった。
  • また患者がどの程度自身をもって思い出せたかを4段階に評価してこれも評価した。
  • 統計的にはまず、相関係数を用いて検討を行った。またそれぞれの評価項目についての検討ではΚ係数を計算した。最期に多変量解析を行いどの程度思い出せるのかの検討を行った。
  • 結果 図1 OHS、OKSの術前との点数の違い
  • 表1で図1の説明。Recall difference は Actual スコア-Recall スコア。
  • Absolute differenceは絶対値。
  • Recall differenceでは有意差はないものの、絶対値にすると有意差が出た。これがまたMDSより大きな値であった。ピアソンの相関係数も0.7、0.61と低かった。
  • 表2 各設問に対するκ係数を示す。0.4以下であると一致率が低い設問である。
  • McNemars Index biasは0であればあるほどよい。図2に実際の回答の正答の割合をしめす。多変量解析を行った結果では自分の記憶に自信があると答えたかどうかと術前のOxfordスコアが有意な関連因子であった。
  • 考察
  • 本研究は1年後に思い出した患者立脚型評価の回答が正しいかどうかの検討である。思い出した値そのものに有意差はなかったものの、実際の会いたいと思いだした値との間には有意な差を認め、その値はMDSよりも大きく、相関係数も小さかった。またOHSの設問のうち半分で、OKSの設問の2/3でその一度は低かった。以上から術後に術前の状態を思い出してデータを回収するとその値は不正確になると考えられる。その値は大体10%ほど乖離することがわかった。
  • 以前の状態を思い出してそのデータを使用する、という問題についてはいくつかの異なる見解がある。Howellら、MarshらはOHS、WOMAC、SF12を用いて術後3ヶ月、6週の段階ではそのICCは極めて高く、臨床の現場でも後ほど思い出して書いてもらっても良いのではないかと結論づけている。また反対にTKAの患者では術後3ヶ月ではModerateな一致率を、術後2.5年の段階ではFairな一致率しかなかったと報告しているものもある。
  • THAについて最低1年後にフォローを行うというのは一般的で推奨される方法である。術前のデータが必要となる場合には当然術前にとるべきであるが、術後3ヶ月程度までは許されるのかもしれない。
  • 本研究の強みは各設問ごとについての一致率を検討したことである。ここまで細かく検討した研究は初めてであり、こうすることで全体の一致率で有意差が出なかったものの、詳細な検討によって差が出ることがわかった。
  • 患者の正確や社会的な背景が結果に影響を与えうる。75歳以上、もともと運動能力が低かった人は思い出して行った回答でより低い値が出た。性別などは影響しなかった。患者の状態は回答を思い出し回収するときには検討項目に入れた方が良いのかもしれない。
  • 痛みが強く、動きのよい患者ではSystemicBiasがかかる。思い出した際になぜ痛みが出るのかはよくわからない。TKAの患者でこの問題がより多く出ているのはTKAのが術後1年でも痛みの程度に差があるからであろう。
  • いくつかのLimitationがある。OHS,OKSのみで評価し、認知機能の評価は行っていない。術前の状態をAnchorとして記録していくことが必要である。多くのデータが誘導で行なわれたので思い出し具合には違いが出ているのかもしれない。
  • 術前にしっかりとPROMは聴取することが必要である。

2015年7月24日金曜日

20150724 JBJS(Am)Does Zolendronate Prevent femoral head collaps from osteonecrosis


  • 抄録
  • 特発性大腿骨頭壊死症は若年者の人工関節置換術の主要な原因の一つである。ビスフォスホネート製剤により圧潰の発生を遅らせることができるとする論文がある。今回はRCTにてゾメタがTHAの率を減らすことが出来るかを検討した
  • 壊死範囲が30%を超えるような症例を対象。ゾメタ群とコントロール群に分けた。2ミリ以上の圧潰の発生をエンドポイント。2年間の観察を行った。
  • 110例の患者をランダム化。55例にゾメタの投与、55例を観察群とした。2年間でゾメタ群の29例、コントロール群の22例で圧潰が認められた。ゾメタ群の19例、コントロール群の20例がTHAへ移行した。
  • 比較的大きな壊死範囲をもつ大腿骨頭壊死症の患者に対してゾメタの投与は有用でない。
  • 方法
  • 2008-2010年。韓国で行われた9つの施設による多施設RCT。ほとんどの患者がアルコール性の大腿骨頭壊死
  • 考察
  • BP剤の投与が有効かもとする報告は、2006年の西井先生の報告、2005年のAgarwalaさんの報告がある。
  • アレンドロネートが有効でないとする報告は2012年にChenさんがしている。
  • 2年の経過でゾメタは有効でなかった。
  • 本研究はノバルティスの提供で行われています。

<論評>
ノバルティスの後援があるにもかかわらず有意差が出なかったということでホントに差が出なかったのだと思います。
研究終了してから3年間も陽の目を見ない理由はDisclosureの問題があったからのようですね。
とりあえず、大きな大腿骨頭壊死症にたいして内服治療は無効で、何かしらの手術治療が必要であることは間違いなさそうです。

こういった多施設共同研究、RCTなどは韓国がだいぶ先に行っているという思いを拭えません。悔しいですね。

本邦では厚生省の特発性大腿骨頭壊死研究班があります。
日本の名だたる施設が多数参加しています。
手術、内服治療などのの多施設RCTを手術治療で検討すればよいのになあと感じた次第です。

20150724 JBJS(Am) Management of hip fractures in Elderly

  • AAOSから大腿骨頚部骨折/転子部骨折ガイドラインが出てました。
  • ガイドライン策定の元になった論文は明らかではありません。

  • 術前術後の疼痛管理の必要性とリハビリについて以前のガイドラインよりは踏み込んだ内容となっていると思いました。
  • 研究のタネもそこら辺かなあと思いました。

  • AAOS 大腿骨頚部/転子部骨折ガイドライン
  • recommendation: Strong
    • 周術期のしっかりとした局所の疼痛コントロールが必要
    • 手術の麻酔は全身麻酔、腰椎麻酔でも術後成績に差はない
    • 転位のある頚部骨折には人工骨頭が適応になる
    • 転子下骨折、逆斜型転子部骨折は髄内釘が適応となる。
    • 輸血はHb8g/dlを閾値として。症状がなければ投与の適応なし。
    • 退院後もしっかりとしたリハビリの介入は有効
    • 認知症があった場合には多方面からのケアプログラムの策定が有効
    • 術後の多剤併用疼痛緩和は有効
  • recommendation: Moderate
    • レントゲンではっきりしない骨折はMRIを撮像すると判明する
    • 術前のルーチンの牽引を指示するエビデンスはない。
    • 手術は入院後48時間以内に行った方がよい。
    • 転位のない頚部骨折でも手術をした方がよい。
    • UnipolarでもBipolarでも術後成績に差はない
    • 高齢者に対しては症例を選んでTHAを考慮してもよい
    • セメントステムの方がよいかもしれない。
    • 後方アプローチの方が脱臼が多い
    • 安定型の転子部骨折であればCHS、ネイルのどちらでもよい
    • 不安定型の転子部骨折はネイルの方がよいかもしれない
    • リハビリによるアドバイスは術後の機能、QOLを改善するかも知れない
    • 適切な栄養の介入は死亡率を減らすかもしれない
    • 術後はビタミンDの投与とカルシウムの投与を行う。
    • 術後に骨粗鬆症の検査、治療をおこなう。
  • recommedation: Mild
    • 抗凝固療法中の患者の手術のタイミングは遅らせた方がよいかどうかは不明
    • 術前にアルブミンやクレアチニン値で患者のリスク評価を行うことが妥当かどうかは不明

2015年7月13日月曜日

20150713 JBJS Am Association between orthopaedic outpatient satisfaction and non modifiable patient factors

  • Abstract
    • 患者満足度を測定することが重要だといわれているものの、患者満足度とそれに関する研究は少ない。本研究の目的は外来患者満足度を評価することである。2010年から2013年までの3年間。ユタ大学を受診した12,177人の患者を対象に行った。年齢、性別、就労状況、保険、病名、整形外科サブスペシャリティについての評価を行った。満足群と不満足軍に分けた。不満足群について多変量解析を行った。結果、年齢が患者満足度においてもっとも重要な因子であった。若い患者ほど満足度が引く方。18歳から20歳までの患者は80歳以上の患者に比べてオッズ比で2.78不満であった。病院までの距離も満足度と関係していた。遠くに住んでいる患者ほど満足していた。50マイル以上離れたところに住んでいる患者の満足度はオッズ比1.18であった。結論 外来患者の満足度について評価した。
  • <論評>
    • 患者満足度についての論文ですが、読もうとしてやめました。
    • 1万人もの満足度を調べたのはすごいことですけど、あまり実臨床で使えることはないような。
    • 若い人は不満であるといわれても、年齢は介入できない因子ですし。遠くからきた人が、ってありますけど、50mile 80kmといったら名古屋ー浜松、名古屋ー下呂、名古屋ー草津 ですよ。
    • 遠くから来る人はそれだけそこの治療にかけてくるわけであって、満足しないわけがないわけで。ということで、むやみにたくさん集めればそれはそれで勝負ができるという論文のご紹介でした。

2015年6月12日金曜日

20150612 JBJSAm Weight changes After THA or TKA

  • THAまたはTKAの術後に体重が減少するかどうかというエビデンスには乏しい。本研究の目的はTHAまたはTKA術後の患者さんでの術後体重の変化について調査し、THA,TKAの手術に与える影響について調べることである。国家規模のレジストリーを用いてOAでTHAまたはTKAの手術を受けた患者さんのBMIを測定した。5%以上の変化があったものを有意な変化があるとした。結果 3893例のTHAの患者、3036例のTKAの患者について検討をおこなった。THAの73%の患者、TKAの69%の患者で体重の変化を認めなかった。TKAの患者の方がTHAの患者よりも体重の減少を認める患者数が多かった。体重減少群では臨床成績がよかった。体重増加と臨床成績の低下の間には相関を認めた。肥満、TKA、女性は体重減少と関連があった。術前の機能の良さは術後の体重増加と関連があった。多くの患者がTHA,TKA術前後で体重の変化を認めなかった。もともと太っているTKAを受ける女性患者では術後痩せる可能性が最も高い
  • 考察 人工関節置換術後で体重が増減するかどうかについては今までいくつかの報告がある。多くの研究はサンプル数が少なく、術前、術後の体重がどう変わったかだけを示しているものであった。本研究では690例の人工関節置換術を受けた患者を対象として、臨床的に意味がある体重の変化のみを観察対象としている。またその体重減少が臨床成績にどのように影響したかを検討した。本研究にはいくつかの限界がある。まず患者が自己申告した身長体重がまちがっている可能性がある。特に太った患者では自分の体重を過少申告されることが多い事が報告されている。本研究ではそのような間違いを出来るだけ減らすためにICCを計測し、そのICCが0.95と高かったため自己申告による体重で問題ないものと考えた。また別の問題としてアメリカの都会にある大病院での単施設研究である為人種、教育に偏りがあった。本研究ではTHAを受けた患者の73%、TKAを受けた患者の69%が体重が変化しなかった。ただし太った女性でTKAを受ける患者さんでは有意な体重減少を認めた。また高度の肥満がある群の方が術後体重減少し易かった。これらの結果は他の研究とも一致する結果であった。逆にやせた男性でTHAを受けた患者では体重は全く増えなかった。TKAの方がTHAよりも体重が減る事が多かった。女性の方が体重減少する事が多かった。また体重の変化と臨床成績の間には相関がみられた。THAでは体重が減ると成績が良く、また体重増加している群では成績が不良であった。TKAでは体重増加が臨床成績の悪化と関連していた。


<論評>
4000というn数を出されたらかないませんわ。 この論文を書いている当人たちも『本研究の強みはnが最大であること』とのたまわっておられますし。
体重増加したから臨床成績がわるいのか。手術がうまくいかなくて太ったのかは分かりませんが、n数の多さでここら辺の議論を封殺しております。
日本で同様な研究をしても勝ち目はないですね。
さて、自分が勝負する分野はどこにしようか。。考えないと。。。


2015年5月11日月曜日

20150511 BJJ Can the pre-operative Western Ontario and McMaster score predict patient satisfaction following total hip arthroplasty?


人工関節を受ける患者さんの術後の満足度を向上させるために。

術後満足度と関連する術前の因子が明らかになれば術前からその満足度に関わる因子に介入することでより患者さんが満足できる医療を提供できるだろうということです。

結論は術前に患者立脚型評価を取ってみたけど、術後の満足度とは関係ないし、また術後のWOMACスコアも患者満足度を評価するには不十分だよ。ということになりました。
これはOxford Hip Scoreでも同様な結論が報告されています(2011年BJJ)

患者満足度っていったいなんなんでしょう。。。。


以下抄録

術前のWOMACスコアがTHA術後の満足度を反映するかどうかについてコホートで調査を行った。2つの大病院で手術された446人の患者が対象。満足度は改善したか悪化したかで調べた。術前のWOMACスコアと術後のWOMACスコア、満足度で散布図を書いて相関関係を求めた。満足度と術前、術後のWOMACスコア、またWOMACスコアの変化量でROCカーブを書いた。
術前WOMACスコアと術後WOMACスコア、満足度の間には全く関連がなかった。相関係数は0.16から0.05にとどまった。満足度を対象としたROCカーブも術前WOMAC0.54、術後WOMAC0.67WOMAC変化量で0.43に過ぎなかった。術前のWOMACスコアは術後のWOMACスコア、満足度を予想することは出来ない。以上の結果から患者の優先順位を決定するのにWOMACスコアを用いることは適切ではない。

はじめに
THAは整形外科領域のなかでもっともうまく言っている手術の一つである。しかし術後の状態がどうなるかということを予想することは未だに困難である。患者立脚型評価は最近ルーチンに取得されるようになってきていて、手術がうまく言ったのか、手術の限界点はどこかということを決定することが試みられている。インプラントの生存率などからPROMに評価ポイントが変わってきている。
WOMAC24の質問からなる質問指標で100点が最高に悪い状態であるとされている。
術前に行なわれる患者立脚型評価で手術する患者の順位付けをしようとする試みは未だに議論のあるところである。近年行なわれたTKATHAの患者で術前のOxfordHipスコア Kneeスコアを用いて術後の状態を予想しようという試みが行なわれたが、ほとんど相関せず、術前に患者の優先順位を決めるのには適していないという報告がなされている。本研究はWOMACスコアで同様の手法を用い、術前のWOMACスコアが術後のWOMACスコア、満足度を予想することが可能かを検討することである。

カナダで2007年から2010円までの間に行なわれた多施設研究。446人のTHAの患者から術前と1年後のWOMACを聴取。217人(49%)の患者が男性であった。平均年齢は63歳。平均BMI30。セメントレスTHA88%、ハイブリットTHA11%、セメントTHA1%に行なわれた。摺動面は84%がMOP8%がCOP8%がMOM0.2%がCOC0.2%がMOCであった。リハビリはすでて同様のプログラムで行なわれた。WOMAC、満足度は独立したリサーチャーが取得した。

結果
12人の患者がアンケートに完全回答できなかったため除外された。
1に術前、術後のWOMACスコアを示す。
1が術前のWOMACスコアと満足度である。相関係数は0.0065と相関していない
2が術前のWOMACスコアと術後のWOMACスコアである。相関係数0.041とこれも相関していない。
満足度の改善をy軸によってROCカーブを作成した。
3が術前のWOMACとの関係、図4が術後WOMACとの関係。図5が術前後のWOMACスコアの変化である。
それぞれAUC0.540.670.43であった。

考察
本研究の結果から術前のWOMACスコアが術後の状態を予想することが出来ないことが明らかとなった。
 人工関節の目的は疼痛の除去、機能改善、患者の満足度向上である。患者立脚型評価はこれらの評価を定量化することができる。今までWOMACは術後の評価にしか用いられて来なかった。今までに多くの研究で術後の満足度と術前の状態が関連しないという報告があるにもかかわらず、明らかなエビデンスがないにもかかわらずPROMの点数の高低によって患者の優先順位を決めることさえあった。
以前にJBJSBrにてJudgeらがOxfordHip scoreで報告した結果と同じようにWOMACでも同様に術前の状態は術後の満足度を予想することは出来なかった。
ROC曲線を描画したものの、術後満足度を予想する術前、術後の満足度の閾値を明らかにすることは出来なかった。術後のWOMACスコアでさえ、満足度の感度は64%、特異度は66%にすぎなかった。WOMACスコアで術前に階層化するという目的にも使えなかった。
多くの患者がTHAに満足している一方、ある一定数の患者は手術に満足していない。そしてそのような患者を同定することは困難である。
術前の精神状態が術後の状態に関わっているとする報告もある異イプ、関係ないとする報告もある。また年齢、性別、合併症は患者満足度と関連しないとする報告がある。ある研究のみでTHAは年齢が高くなるほど満足度が低くなり、TKAは若い患者で満足度がより低いとする報告がある。

多方面から患者の満足度、機能疼痛を評価することは必要である。患者の不満足に係る因子がなにかということを明らかにすることはまた重要なことである。そしてその不満足に係る因子に術前から介入できることが目標となる。WOMACOxfotdhipスコアがともに満足度を評価するスコアとしては不十分であることがわかった。