- 気がついたら3ヶ月投稿サボっておりました。
- 論文を読んでいないわけではないですが、なかなか皆様にお見せできるたぐいのものが少なくて。
良い論文だと思います。しっかりとしたスタディデザイン。仮説の設定もしっかりしていますし。
こういう論文が書けるようになるとイイなあと思いました。
- Abstract
- femoral offset(FO)とTHAの臨床成績との関連について一定の見解はない。今回患者立脚型評価、QOL、筋力測定を用いてFOと臨床成績との間の関連について検討を行った。
- 250例の片側性THAの患者を対象。術前にWOMAC,EQ5Dを測定。術後1年でWOMC,EQ5Dと外転筋力を測定した。222例の患者の測定が可能であった。222例の患者を術前よりFOが5mm以上大きくなった群、変わらなかった群、5ミリ以上小さくなった群の3例に分けて検討を行った。
- 結果3群とも臨床成績の改善が認められた。FOが小さくなった群でWOMACスコアの低下、外転筋力の低下、補装具使用の増加が認められた。交絡因子を調整した結果、FOの現象は外転筋力低下のみに関わっていた。痛みについて3群間に差はなかった。
- 5ミリ以上のFOの現象は患者の外転筋力に影響をおよぼすので避けたほうが良い。
- Introduction
- 小関節可動域、バイオメカニクスを考慮してカップとステムの設置は行なわれなければならない。FemoralOffseto(FO)は術中の重要な因子の1つとなる。FOは一般的に股関節正面像で大腿骨頭中心と大腿骨髄腔の長軸間距離と規定される。しかしながらこの距離はカップの位置を考慮に入れたものではない。カップの位置はまた別に考慮され、涙痕から大腿骨頭中心までの距離はカップオフセットと言われる。カップオフセットとフェモラールオフセットを足したものがグローバルオフセットとして定義される。
- THAのあとのオフセットが適切でないと、インプラントの不安定性、股関節のインピンジメント、関節合力の増加、ポリエチレンの摩耗などと関連する。一方、フェモラールオフセットを増加させると関節が安定しポリエチレンウエアが減少するとする報告がある。しかし、いずれのデータも幾つか問題がある。サンプルサイズが小さかったり、後ろ向き研究であったり、コントロール群が不適切であったり、レントゲン撮影が不適切であったりという問題がある。グローバルオフセットと患者の機能評価の間の評価は今までなかった。本研究の目的はスローバルオフセットの変化量と患者立脚型評価の間の関連を調べることである。
- 2010年から2013年。スエーデンの大学病院での単施設研究。前向き研究。片側OAにたいていTHAを施行された患者において検討。2次性のOA,脊椎、外傷後の患者は除外した。
- 評価項目はWOMAC。EQ5Dを用いた。また外転筋力を測定した。
- 術前、術後1年で上記評価を行った。
- レントゲン撮影については両下肢内旋15度として、115センチの高さから撮影を行った。図1のようにしてグローバルオフセットを測定した。健側とその値を比較した。測定の際には骨頭サイズでキャリブレーションを行った。
- その上で3群に分けた。5ミリ以上グローバルオフセットが減少した群、グローバルフセットが変わらなかった群、グローバルオフセットが5ミリ以上増加した群の3寸である。
- 術後12ヶ月の時点でWOMAC、EQ5Dを取得し、その他に杖歩行の有無、股関節の痛み、鎮痛剤の使用について聴取した。
- 筋力測定については2005年のあさやまの方法を参考にした。
- 統計学的にはSPSSを用いて行った。サンプルサイズも事前に計算し、各群65例が必要であるとした。
- hrier and Platt 2008の方法を用いて交絡因子についての再検討を行った。
- 結果
- 286例の患者を候補として採用した。21例の患者が反対側の股関節疾患、脊椎疾患のため除外された。15例の患者が研究への参加を拒絶。250例の患者にて研究を開始し、1年後に222例の患者で解析を行うことが出来た。79%の患者でセメントステムが用いられ、115例が男性患者であった。
- オフセット減少群が71例、変化なし群が73例、増加群が78例であった。術前のWOMACスコア、EQ5Dについて3群間に差を認めなかった。
- 交絡因子調節前の術後の結果では、オフセット減少群でWOMAC、EQ5D、外転筋力、杖歩行の割合が有意に多かった。交絡因子の解析を行うと外転筋力のみが有意な因子としてオフセット減少群で低下を認めた。
- 考察
- グローバルオフセットの減少はおおまかにQOLの低下、患者立脚型評価による成績の低下、外転筋力の低下、また杖歩行の割合の増加を認めた。オフセットが変化しない群、増加した群ではその成績に変化はなかった。女性、高齢者では臨床成績の低下を認めるので、交絡因子の調整を行うとグローバルオフセットの減少により外転筋力の低下を認めた。
- グローバルオフセットは術前計画をたてる際にも重要である。CTで測定するのが正しい測定方法であるが、単純レントゲン写真での測定でもその信頼性、妥当性は示されている。単なるステムオフセットよりも骨性インピンジメントなどの可能性を排除するにはこのグローバルオフセットが有効である。今回5ミリで群分けしたのは以前の報告で5ミリで群分けしていたためでそれを踏襲した。
- グローバルオフセットが減少しても外転筋力以外の項目は変化が認められなかった。WOMACの悪化はこの筋力低下を反映しているものと考えられる。オフセット量の保持と関節可動域、筋力との間には正の相関があることが他の研究でも示されている。一方、他の研究ではオフセットを減少したほうが術後の疼痛は少ないとする報告がある。また、6から12ミリのオフセットの減少で歩行に変化が出たとする報告もある。
- オフセットの変化はQOL、患者立脚型評価に影響を及ぼさなかった。
- 脱臼率にも変化はなかった。これはグローバルオフセットの減少が脱臼などには影響を及ぼさないことを示唆している。
- 本研究はグローバルオフセットの保持を手術の際に心がけることを目標としている。しかしながらこれを実際に実現するのは難しい。術中にイメージ、ナビを用いるのは良い方法である。しかし結局術者の技量、経験に依存する
- 本研究の限界は単純レントゲン写真のみでの評価を行っていること、WOMACスコアの天井効果があることなどである。しかしながら前向き研究。充分なN数のある研究であることが本研究の強みである。
- グローバルオフセットを減少させると外転筋力の低下を生じることがわかった。
- Abstract
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