2011年6月29日水曜日

20110629 JBJS(Br) Patient-reported outcomes in Swedish Hip arthroplasty register

スウェーデンで行われた国家規模の前向き観察研究。

スウェーデンでは国家全体で人工関節の登録を行い、その経過観察を行っている。2,002年からはpatient reported outcomes measure(PROM)(患者申告型術後機能評価)を追加し、前向き研究を行って来た。
使用した方法としてはEQ-5D、Chanleyのカテゴリー分類、Visual analog scaleを用いて評価を行った。
34,960例を対象として術前、術後1年の時点でのPROMを測定した。
THAをうけた患者の術前に強い疼痛と低いQOLの状態にあった。年齢、性別による補正を行いEQ-5Dを解析したところQOLの向上が認められた。
男性、高齢、Chanleyのカテゴリー分類でA,Bに当てはまる人よりも女性、若年者、Chanleyのカテゴリー分類でCに当てはまる人のほうが術前のEQ-5Dが低い傾向にあった。多変量解析をおこなったところ男性、高齢、Chanleyのカテゴリー分類でCに当てはまるひとが術後の改善に乏しい傾向にあった。
国家規模で行うPROMの収集は有効である。患者からの反応もよい。今後は国家規模で生活、仕事にどれくらい復帰できたかを調査していくつもりである。

<論評>
スウェーデンで行われた国家規模での患者登録は、以前から知っていたのですが、合わせてPROMを実施していたと言うことがオドロキです。
患者立脚型機能評価は今後の整形外科領域の主要な評価方法になるのではないかと個人的に考えています。
本邦で国家規模で、というのは難しいですが、多施設共同研究のような形で様々な疾患に対しておkなっていけると良いのではないかと考えました。

2011年6月22日水曜日

20110622 JBJS(Am) Radiation exposure issues in orthopaedics




整形外科領域の被曝としてはCTとC-armによるものが問題となる。

C-armを使って仕事をしている整形外科医は病院内で放射線を利用している部署の5倍も癌死が多い。
FDAからも不要なCTの撮像、透視の使用を減らすこと、シンチグラムなどを減らすようにアナウンスしている。
実際の対応方法
どれくらいまでの被曝量なら大丈夫か、という点についてはいまだ議論の残るところであるが、被曝量を低減することやその方法について知っておくことは必要である。
被曝線量を減らすためには”DEBT”の4つの要素に気を配ることが重要である。
D:Distance ,E:Exposure, B:Bareer, T:technique
D:distance and positioning
まずは線源から距離をとることが重要である。放射線はほとんど直進するが、一部分散している。放射線量は距離の2乗ずつだけ減衰するので、2倍距離をとれば放射線量は1/4となる。昔から”6フィート(約2m)線源から離れなさい、こうすれば放射線のリスクはゼロになる”と言われているが、最近の研究によればその格言に従うと、20フィート(約6m)はなれた場合の40倍の放射線量を浴びているということとなってしまう。
道具の使い方をいくつか工夫するだけで放射線量の低減につながる方法がある。
放射線の発生する側をテーブルの下に回すこと。イメージインテンシファイアと患者側と同じ側に立つと劇的に被曝量が減少する。
この方法は容易に行うことができ、全身の被曝量低減には有効である。しかしながら体の保護されていない小さな部分ではかえって被曝量が上がることがある。そこで、適切なポジショニングを行うことでスタッフの被曝量を減らすようにしなければならない。
Carmの弧の中の放射線量は極めて高い。イメージインテンシファイアと透視部位との距離をなるべく近くすることで被曝量が減少する。

1センチでもいいので、放射線源から離れるような努力が必要である。古くから言われている先に記載した”6フィートルール”で、十分なほど線量の低減は得られるものの、全くゼロではないと言う事をキモに銘じておく必要がある。

E:Exposure
どの程度の時間被爆するとどれくらいの影響があるのか、と言う事については分かっていない。しかしながら透視の時間を減らすようにすると被曝量が低減するというのは本能的に理解できる。
そこでとりうる方法としては連続で透視を出しっ放しにするのではなく、スポットタイプのものに切り替えるとよい。アラームは5分ごとになるようなものを採用したほうが良い。オペレーターがイメージの画面を見ていないときにはスイッチを入れっぱなしにしない、という工夫だけで十分な放射線量の減少が得られる。

B:using of Barrier
鉛入りのエプロンを使用することは有用である。1mmの鉛の暑さがあれば90%の散乱放射線を防ぐことができる。しかし鉛のエプロンですべて防護できるわけではない。
片付け方が悪かったり、折り曲げてしまってしまうとその防護効果は減少してしまう。AAOSの最近の報告では30‐60%程度しか被曝量が減少しなかった、と言う報告もある

Carmを操作する人が被曝量の低下では最も重要な役割を担う。鉛の板や、コリメーターと言った器械を使うことで少しでも放射線の減少に努めなければならない。散乱放射線がこのような機器を使うことで減少するため患者全体への被曝量も低減することが予想される。

T: Technique
既に分かっているところではイメージを使わないようにする。
倍率を上げる機能を使うと放射線量が多くなるのでできるだけ使わないようにする。




<論評>
少しの工夫でだいぶ被曝量は下がるようです。

この対策を実施する前と実施したあとでどれくらい被曝量が変化しているか調べてみると良いと思います。

また術中CTなどはものすごい被曝量になっているのではないでしょうか。一度ガイガーカウンターを持っておじゃましたいところです。笑

2011年6月9日木曜日

20110610 Mendeley使ってみました Mendeleyこんなトコロからも情報ゲットできるよ!

実は、今回のMendeley特集は”日本語文献だと読み込めない”というお題で書きこもうとしていたのですが、なんと読み込めてしまった!ので急遽お題を変更してお送りしたいと思います。

research tutorials Mendeley’s one click web importer

Mendeleyはこの上の図で示したサイトからなら、Web importerでその文献情報、URLを持ってきてくれます。

それは英語、日本語かかわりなく導入可能です。

日本語としては、医中誌さんにも頑張ってもらいたいものですが。。。。

そろそろ、自分の論文を書きながら実際にどのようにMendeleyを使うのか、などについても記していきたいと思います。


2011年6月8日水曜日

20110608 Mendeley使ってみました 実践編 その2 Web clipper(ウェブクリッパー)機能

大学院入学のお願いに行ったところ、知り合いにあって”ブログ見てますよ”といっていただき、少しやる気が増したがみたけです。

今僕の中で盛り上がっているMendeleyについての集中投稿第3弾です。
今日は”Web clipperを使って文献情報を取り込んじゃいましょう”です。

Mendeleyは文献管理ソフトです。僕が考えるに主な目的としては”論文を書いたときにその文献情報を過不足なく論文内に挿入すること”を目的として作られています。

紙で印刷された論文そのものだけがあって、その論文の基本情報を情報を自分の書いている論文の中に打ち込むのには一手間かかります。(論文を書いた経験がある人は結構この作業で挫折感、ひと手間感を感じられたと思います。)

そこで、論文の題名、著者、誌名、発行年月が挿入するというのは大事な機能では、と考えます。

このWeb clipperがあれば、ワンクリックで論文の基本情報がMendeley内に送信することが出来るのです。
あとはcitation機能を使って実際の論文に挿入するだけですが、そこはこの連載の続きで提示出来ればと思っています。

閑話休題。では、早速やって見ましょう。
まずは自分の使っているブラウザに、Web clipperを導入します。

僕はWindows Vista。インターネットブラウザはGoogle Chromeを使用しています。
(FireFox、Internet Explorerの方、Macのかたはスイマセン。ただ、同じ方法でできると思いますので参考にしていただければと思います。)

1,googleで”web importer mendeley Chrome”と検索


そうすると検索の一番上に”Chromeウェブストア”が出てきますので、早速訪れます。

2,Chromeウェブストアで、”Mendeley Web Impoter”を導入。




クリックすると、この上の図でも分かるように、ブラウザの右上にMendeleyのアイコンが導入されます。
分かりにくいので、拡大してみると



このようなボタンが導入されれば成功です。
では、早速使ってみましょう。

3,論文情報をWeb clipperを使って導入してみる。
"Pubmed"を使って論文を検索してみます。
ちょうど稀な撓手根関節脱臼の症例を診る機会があったので、Pubmedで検索してみます。

ここで、おもむろに、先ほど導入したボタン(下図①)をクリックしてみると。。。


しばらく時間が経つと上図②のウインドウが立ち上がってきます。
図をクリックして拡大していただければ分かりますが、”Import Successful”と出ていますので、Mendeleyのホームページに行って確認してみると。。。。



こんな感じで論文がよみこまれたことが分かります。

便利ですねえ。

これでWeb clipperを用いた論文の導入はオシマイです。
最初の導入は手間ヒマがかかりますが、苦労するだけの価値はあるかと思ってオススメさせていただきmす。

次回は”日本語論文をどう取り扱うか”を投稿したいと思います。

2011年6月6日月曜日

20110606 Mendeley使ってみました 実践編 その1 基本的な使い方?

一つ書き忘れていたことがあって、Mendeleyは英語対応のみなんですねえ。
(日本語でも使えますが、限界があるよ。ということについて次々回くらいに記載したいと思います)

日本人のユーザーが増えると、Mendeleyの中の人達も”日本語のインターフェースをつくろう”という気分になってくれるかもしれません。笑
僕がこのブログに投稿している目的でもあります。笑

さて、Mendeleyをダウンロードしたら早速使ってみましょう。

今回は実践編 その1と言うことで、ダウンロードしてきた文献のPDFファイルをMendeleyに落としこむ、というところまでやってみたいと思います。

先程のデスクトップ上のアイコンをクリックしてみてください。

こんな画面が出てきます。

さて、早速使ってみましょう。

自分のPC上に保存してあるPDFファイル(JBJSなどの公式サイトからダウンロードした文献に限る)をドラッグ & ドロップしてみてください。


するとどうでしょう!(テレビ朝日系 ビフォー・アフター風に)

論文の題名、誌名、発行年、著者が自動に認識されます。
(Mendeleyが自分で探してきてくれるのです。Abstractまで付けてくれることも)

ここで右クリックをして”Copy Citation”を選ぶと、文献が”View”→”Citation Style”で設定したとおりに貼りつけられます。

また、文献をダブルクリックすればPDFファイルに蛍光ペンで色をつけたり、付箋をつけたりといったPDF編集機能がついてくるではありませんか!!



タグで並列にならべて、論文書くときなんかには同時にPDFをいくつもみることが可能になってきます。
(Chromeを使っている人には違和感なくいけるかもしれないですね。)

次回は”Mendeley使ってみました 実践編 その2 ウェブクリッパーすごいなあ”
をお送りしたいと思います。


20110606 Mendeley使ってみました! 準備編

いつもとは少し違う感じの記事を載せてみたいと思います。

              


”Mendeley”という文献管理ツールを使ってみたら、コレが結構良かったのです。
そこで皆様にもその使用感をお伝えしようと思いブログにアップして見たいと思います。


まず、”Mendeley”とは、オンラインで配信されている、無料の文献管理ツールです。

文献管理ツールとしては”EndNote”,"Papers"などが他にもあります。
またPDF管理ツールとしては”Evernote”があります。

ここらへんについては、
  -科学者のつぶやき-
”最強の文献管理ソフトはコレだ!”
http://www.chem-station.com/blog/2010/04/post-155.html
によくまとめられていますので、そちらをご参考ください。

僕の場合
”Evernote” と ”Mendeley” を使い分けています。

今回は”Mendeley”の使用感について述べていきたいと思います。

Mendeleyはまずダウンロードして、登録する必要があります。
この手順については

  -水の中が落ち着く”
”Mendeleyの使い方”
を参考に登録してください。

登録すると、デスクトップ上に


のようなアイコンが出てきますので、コレで準備は完了です。


2011年6月3日金曜日

20110604 JBJS(Br) The Canadian orthopaedic society

JBJS(Br)の6月号に載っていたAnnotationです。

僕自身の意見として、
”手術を行うような医療機関は集中されるべき。地方の小病院で術者がそれぞれの経験のみで治療を行うことは決してベストな方法とは思えない。”
”小さな成功体験ばかりを集めた学会なんかは意味が無い。たくさんの症例を多施設で集めて予後調査を行いすこしでも良い方法、妥当な方法を患者さんに提供すべき”


”整形外科医のための英語ペラペラ道場”の中でも、杉本先生がOSGについていくつかpostしていらっしゃいます。
こう行ったコミュニティを整形外傷の分野でも出来ないかな、というのがいまのところの僕の目標です。

最大の問題は、そのための方法も仲間も何もいまはもっていない、という現実ですかね。笑
少しでも実現できるようにこう言った内容の文献を読み続けて、仲間が増えればいいなと考えています。

以下論文の要約です。

カナダ整形外傷学会(COTS)は骨折に関して、十分な症例数と共に最高レベルの調査を行なっている。無作為化のみならず術者、研究者間の開かれたディスカッション、また長期間にわたるフォローアップ率など世界の研究の中でもリーダーとなりつつある。このような素晴らしい調査チーム、コミュニティをつくるために必要なもの、について今回は語ってみる。

Key to success
COTSのプロジェクトがうまく入ったのにはいくつかの理由がある。
1.カナダの健康保険システムが完全に公的負担となっているので治療のオプションが少ない。このおかげで多くの術者がコンセンサスに基づいた治療を行うことが可能となる。
2.カナダの教育機関が優秀な研究コーディネーターが確保しやすい状態となっている。コーディネーターのおかげでグループ間のコミュニケーションが可能となったり情報の共有が可能と成っている。
3非常に優秀な仲間を集めることができたこと。たくさんの優秀な研究者が参加することで同時に症例数の増加もあった。
4.患者の地域間移動が比較的少ないためにフォローアップが比較的容易である。
5.カナダ整形外科学会からの後押しがある。
6.カナダ整形外科基金からの資金の提供があった。
7.企業からも制限の掛からない資金の提供がある。
8.チームが分裂しないように心をくだいた。誰がauthorになるかなど。論文はCOTSグループの業績と言う形で雑誌に投稿し、その業績は同時に個人の職務経歴書に記載が可能である、という規定とした。



どこまで参考になるかは分かりませんが、情報発信を続けていくことで日本からのエビデンスの発信が出来ればと考えています。

2011年6月2日木曜日

20110602 JBJS(Br) Annotation: Multicentre randomised clinical trials in trauma care

外傷に対する他施設共同研究は今後質の高いエビデンスを構築するために重要となってくると考えている。

エビデンスに基づいた治療を行うためには、まずは質の高いエビデンスの構築が必要となる。そのためには無作為割付試験(RCT)がバイアスを排除するためには必要となってくるのであるのだが、整形外傷領域の研究でRCTを行った研究は殆ど見当たらない。(外傷領域がRCTには不向きであると言うことも関連しているのであろう。)
90%が観察研究である。

整形外科領域で質の高いエビデンスを構築することが求められている。
とくに必要とされている一つの領域は脆弱性骨折の分野、もうひとつの領域は多発外傷を含んだ重症外傷分野である。
脆弱性骨折の分野は年々その数が増加し、医療資源を逼迫しつつある。
多発外傷を含んだ重症外傷分野では、多くの医療資源を必要とし、各医療機関ごとの治療方針に左右されることが多い。
イギリスではこれら二つの分野について新しい機関が設立され、研究が始まっている。

ProFHER trial:Handoll H, Brealey S, Rangan A, et al. Protocol for the ProFHER (PROximal Fracture of the Humerus: Evaluation by Randomisation) trial: a pragmatic, multi-centre
randomised controlled trial of surgical versus non-surgical treatment for proximal
fracture of the humerus in adults. BMC Musculoskelet Disord 2009;10:140.

United Kingdom Clinical Research Network. Portfolio database. http://public.ukcrn.org.uk/Search/Portfolio.aspx (date last accessed 18 January 2011).

無作為割付研究も行われているが、単施設ではどうしてもサンプルサイズが小さくならざるを得ない。
そこでより妥当な研究を行うために多施設共同研究が必要となるのである。