2012年1月18日水曜日

20110118 日本リウマチ学会からのACR/EULAR新分類基準の検証結果について

日本リウマチ学会からACR/EULAR新分類基準の検証結果について

日本リウマチ学会 ACR/EULAR新分類基準の検証結果について

新分類基準が用いられるようになって、リウマチ診断の感度は上昇しましたが、特異度が低下したそうです。
つまり、診断基準を満たしていてもリウマチではない病気が増えた。ということです。

そこで、今回公表されたのは、あわせて問診票を用いることで新分類基準でリウマチであるを満たすがリウマチではない疾患を除外すると言う試みです。
鑑別疾患まで載っている所が親切だなあと思います。笑

鑑別疾患

自分がどこで診療しているか、によって診察前確率は変わります。
大学病院の膠原病科であれば当然膠原病などの合併率があがると思いますし、私のように場末の整形外科で診療していると膠原病である確率はぐっと下がって変形性関節症、リウマチ性多発筋痛症などが鑑別の最初の方に上がってくると思います。
ただそのようなときにも別の病態が隠れていないか、ということをチェックする目的でこの問診票を使用してみるというのも面白いかと思いますし、地域の小さな病院で使ってみてその感度、特異度をあきらかにすることも大事な仕事ではないかと思いました。

個人的にはTSH、肝炎ウイルス、補体も含めてもよいのではないかと。

2012年1月14日土曜日

20120114 JBJS(Am) Ijuries associated with traumatic anterior gulenohumeral dislocations


肩関節脱臼によって生じる合併損傷について述べた論文

3633例(男性2250例、女性1383例、平均47.6歳)の肩関節脱臼の調査。肩関節脱臼によって生じる合併症として超音波で証明できる程度の腱板損傷、大結節骨折、神経障害の頻度について調べた
結果
神経障害を13.5%に認めた。33.4%に腱板損傷もしくは大結節骨折を認めた。神経障害のみ生じた例は210例(5.8%)であったが、腱板損傷もしくは大結節骨折を伴ったのは933例(25.7%)に認めた。神経障害とこっせち/腱板損傷を合併した例は7.8%に認めた。60歳以上の女性の患者では、低エネルギー外傷によって受傷し、腱板損傷もしくは大結節骨折を伴うことが多かった。腱板損傷、または大結節骨折を伴うと相対危険度は1.9と神経損傷の危険性が高まった。
結論
腱板損傷、大結節骨折、神経障害の罹患率は以前の報告よりも高かった。これらの合併損傷は単独、もしくは混合型のいずれでも起こりうるものであった。神経障害の起こる可能性はどの年代でも同じようなものであったが、腱板損傷、大結節骨折、混合型損傷は60歳以上で多くなった。神経障害を認めた患者では腱板損傷についての評価も慎重に行うべきであり、またこの逆もしかりである。

考察
神経障害は腋窩神経単独損傷が多かった。そのほかの神経損傷は多くなかった。比較的若い患者に起こることが多かった。逆に腱板損傷、大結節骨折、混合型損傷は高齢者に起こることが多かった。年齢に比例して増加した。また低エネルギー外傷で女性に起こることが多かった。それぞれ独立した危険因子として取り扱った。
過去には神経障害と大結節骨折、腱板損傷を合併する例は珍しいものと考えられ、症例報告もなされているが、全体の7.8%にみとめそれほど珍しいことではないということが分かった。
整復後に大結節骨折がない例でも腱板損傷が合併している可能性は高い。神経障害に伴う機能障害を減らすためにも、腱板損傷については評価し、治療を行うことが重要であろうと考えた。

<<論評>>
肩関節前方脱臼に合併する損傷についての大規模コホート研究。JBJSに載せようと思うのであれば、コレくらいのn数は必要なのだなあと本題に関係無い所で感心しておりました。
さて、肩関節脱臼は若年男性に多いイメージが強かったのですが、上腕骨近位端骨折を伴った脱臼は高齢者に多いですね。
この研究は超音波で腱板損傷の有無を確認しておりますので、臨床的に腱板損傷に伴う症状がどれだけ会ったのか、ということはわかりません。
この時にどこまで評価して、腱板の治療はどこまで行うのかと言うのが議論になっていくのではないかと思います。

2012年1月11日水曜日

20120111 JBJS(Am) Procedural sedation w/ Propofol for painful orthopaedic manipulation in the ER compared w/ a Midazolam/ketamine regimen

Procedural sedation with propofol for painful orthopaedic manipulation in the emergency department expedites patient management compared with midazolam/ketamine regimen

U.S. Army Graduate Program in Anesthesia Nursing

この10年で救急外来で疼痛を伴う整形外科的な処置を行うときに、鎮静をかけることが普通となってきた。propofol(ディプリバン®)もmitazolam/ketamine(ドルミカム®/ケタラール®)はそれぞれ救急外来でよく用いられる薬剤である。本研究ではpropofolのほうがmitazolam/ketamienよりも救急外来で迅速に行えるのではないかという仮説を立ててみた。この研究では覚醒までの時間。鎮静にかかった全時間、鎮静に伴う有害事象について調査を行った。
方法
前向き無作為研究を行った。大学付属の高次救急医療センターというセッティングである。鎮静についてはトレーニングされた整形外科のレジデントとナースによっておなじプロトコールで行われた。鎮静時間と有害事象について記録した。
結果
60人の患者。平均年齢45±17歳。30人ずつの調査を行った。覚醒までの時間はpropofolが7.8±3.7分、mitazolam/ketamineが30.7±10.1分であった。(P<0.001)。総鎮静時間はpropofolが16.2±3.8分、mitazolam/ketamineが41.6±10.7分であった。(p<0.001)。呼吸抑制と血圧低下がpropfolで20%に認められ、mitazolam/ketamineは10%であった。
結論
propofolを用いたほうが救急外来では迅速に疼痛をともなう整形外科的処置を行うことができる。

考察
propfolを用いた方が迅速な鎮静、早期覚醒の点で有効であった。
ただ、両方共呼吸抑制がかかることがあるので経験の有るナースとチームを組んで行うことが必要である。血圧低下については今回の研究では起こらなかった。呼吸抑制が行ったときにはすぐに挿管できるような準備をしておくことも必要である。
この研究では比較的全身状態のよい患者ばかりを扱っているので、もともとの呼吸器疾患があるような患者では注意が必要である。

<<論評>>
最近の麻酔はすべてディプリバンで行われているのをみても、非常に優れた薬剤なのだろうなあと思います。
僕が麻酔の研修を受けた頃がちょうど過渡期でありました。。。
ぼくはドルミカムやイソゾールを使って鎮静をかけています。これはひとえに”使い慣れているから”ですね。
鎮静のかかりが悪かった時でもどれくらい薬剤を追加すればよいかを肌でわかっているというのがこれらの薬剤を選択している大きな要因です。
何かトラブルが起こったときにその対処方法を把握している方法を用いるべき、というのが僕の手技に対するスタンスですので、現在のところカエルつもりはありません。そんなに急いで鎮静からさます必要もないですし。
ただ、麻酔科の先生のご指導をいただけるのであればチャレンジしてみたいとも思いました。

2012年1月8日日曜日

20120108 JBJS(Am) Conflict of interest in the assessment of thromboprophylaxis after Total Joint Arthroplasty

Drug Money

抄録
人工関節置換術後に血栓予防薬を使用するかどうかと言うことはいまだ議論のあるところである。この問題を解決するためにエビデンスに基づいて以前の研究を調査を行った。エビデンスレベルがどのようにその結論に影響を与えうるか?利益供与(COI)がその研究に大きな影響をあたえ得ると言うことは良く知られている。本研究の目的は人工関節置換術後に血栓予防薬を使うかという研究と産業界にどれくらいスポンサードされているかをしらべ、その産業界からの関連を調べることである。
方法
pubmedにて2004-2010年までの人工関節と血栓予防薬についての論文を検索。検索された論文についてその金銭的な補助がどこから行なわれているのか、ということについて調べ、またその研究の結論が人工関節後の血栓予防薬の使用について”好ましい””中立的””好ましくない”の3つに分けた。
結果
71本の論文が渉猟された。うち52本が産業界からの資金援助を受けており、14本が受けていなかった。その他5本についてはCOIについて記載されていなかった。結論の質と、資金援助との間には相関があった。52本中わずか2本だけが人工関節後の血栓予防薬の使用について好ましくない、とするものであった。これに内して産業界からの資金援助を受けていない14本の論文ではうち3本(21.4%)人工関節後の血栓予防薬の使用について好ましくない、効果としてあきらかでないとする結論であった。
結論
人工関節術後の血栓予防についての論文の多くが産業界からの資金援助を受けていた。またその結論は多くがその薬剤の使用を推奨するものであった。

考察
人工関節術後に血栓予防薬を使うという研究の79%が産業界からの後援を受けていた。またその結論は全体にその使用が好ましいとするものが多かった。
これはまずひとつに出版バイアスがかかっている可能性がある。利益相反の有無に関らず、前向きな結果が出たものの方がそうでないものよりも採択されやすいということがある。第二に企業が直接的にその研究のプロトコールの作成や、アウトカム評価について関っていることもあるのかもしれない。
第3に研究者自身も無意識のうちに影響を受けてしまっているのかもしれない。
本研究にはいくつかの問題がある。まず、あきらかな利益相反だけを取り上げたことである。有形無形の様々な企業からの影響があり、それら全てを明らかにすることは非常に難しい。
また多種多様な血栓予防薬が使われている。
三番目にこれらの研究の主たるアウトカムに、症状をきたさない深部静脈血栓症の有無も含まれてしまっていることである。
4番目に企業からの後援を受けていない研究はいずれもその規模が小さく、誤差の可能性を否定しきれないものもある。
いくつかの雑誌ではCOIの有無がはっきりしないが、しっかりと記載するようにした方が良いと思われる。
いろいろ問題はあるかも知れないが、ガイドライン作成においては企業からの後援によってより先鋭的な結果が出ていることを踏まえるべきであろう。
企業からの後援があろうとなかろうと、これらの研究はしっかりと組み立てられており、今後の診療態度を決めるのには差支えがないものと考えられる。ただし常にCOIにも考慮することが必要であろう。


<<論評>>
利益相反(Conflict of interest:COI)は日本の学会での発表、論文でもこの数年でしっかりと記載するようになってきました。
この論文がおもしろいのは、今まで誰もCOIがどれくらい明らかになっているかなんていうことを調べるひとはいないところで調べたことですね。
確かに、血栓予防薬の使用について、僕自身も前向きな結論が良く出ているなあと感じていました。それを裏付ける結果でありました。
しかしながら、エビデンスが言われるこのご時勢。
一般にエビデンスレベルが高い研究(研究におけるバイアスができるだけ排除されている研究)としてもっとも有名なのが無作為割付二重盲検試験です。しかしながらこの試験のプロトコールを作成し、その被験者となる患者さんをノミネートし、全く研究と関係がない人にその評価をしてもらうと言うことを研究者個人、一医療機関で行なうことは現代医療では不可能です。それこそ症例数が足りない、というレビューを受けて日の目を見ない研究となってしまうでしょう。
このジレンマをどう解決するかというのは非常に難しい問題です。
ですので、本研究でも言われていたように、COIを明らかに記載することを義務付けることが必要です。
また、今回の研究結果は研究者だけでなく、研究結果を用いる臨床家がその研究結果に対してどのような態度をとって実際の診療行動に結びつけるのか?ということを同時に問われているのだと思います。
自分が普段エビデンス、と呼ばれるものに対してどういう態度で臨んでいて、そのエビデンスを患者さんに適応するときにどう扱っているかということを意識下において診療に臨むことが必要なのかな。と考えました。

2012年1月6日金曜日

20120107 JBJS(Am) Intra-articular injection of HA is not superior to saline solution inj. for ankle arthritis




足関節炎に対してヒアルロン酸の関節内注射は時々行なわれることがあるが、その有効性は証明されていない。さまざまな用量のヒアルロン酸の注射によって改善したと言う報告があるが、妥当性の高い研究は少ない。本研究の目的は足の変形性関節症に対してヒアルロン酸と生食とで比較したものである。
方法
対象は64人のクライテリアを満たした患者。2.5mlの低分子量のヒアルロン酸の注射もしくは2.5mlの生食の注射を行なった。二重盲検としてある。主たるアウトカムは6週後、12週後のAOFASの臨床評価とした。二次アウトカムとして変形性足関節スコアとヴィジュアルアナログスケールによっての疼痛評価を行なった。
結果
8人の患者が脱落。1.6%の患者に有害事象が起こった。AOFASの平均値は6週、12週の時点で二つの群に有意差は認められなかった。
結論
変形性足関節症に対して低分子のヒアルロン酸関節内注射は生食の関節内注射よりも有効であるといえない。

考察
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射は1997年にFDAに認可された。以後いくつかの質の高い研究が行なわれ、変形性膝関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射はその効果と安全性が確かめられている。
しかしながら現在まで変形性足関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射についての研究はほとんど無かった。
他の研究者が行なった変形性足関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射の研究でもその有効性を示すことができていない。(無作為試験でない、もしくは盲検化していないと言う条件だと有意差がでる)
本研究で有意差が出なかった原因としては、投与したヒアルロン酸量が十分でなかった可能性。生食のプラセボ効果が大きく出た可能性、ヒアルロン酸がそもそも効いていない可能性がある。
膝と足関節の違いとしては、膝が一次性の変形であるのに対し、足関節は外傷後の二次性変形の結果であることが影響しているのかもしれない。また膝の軟骨面積が1120平方ミリメートルなのにたいし、足関節は350平方ミリメートルに過ぎない。これも影響しているのではないだろうか。
投与方法のレジメをかえるともっと効果が出るのかも知れない。年齢による影響もあるのかと考え年齢調整を行なったが差が出なかった。
結論として変形性足関節症に対してヒアルロン酸の関節内注射は生食の関節内注射よりも有効であるとはいえない。

<<論評>>
ヒアルロン酸の関節内注射は効くのか?というお話です。
なぜ膝に効いて足関節に効かないのかというところで軟骨面積がでていました。肩関節、肘関節などでも同じように調べてみても面白いのかも。
僕個人としては、年齢による差がでるのか?と言うのが気になりました。膝でも65歳以上、65歳未満で分けて調べてみても面白いのかも知れません。



2012年1月4日水曜日

20120104 J spinal disord tech : Shortning osteotomy and sacral fixation for U-shaped Sacral fractures



(この写真はAmerican Journal of Roentogenelogy April 2010 vol. 194 no. 4 1065-1071 より引用しています)

抄録
仙骨のU字型骨折はそれほど多い骨折型ではないが、高所からの墜落のような高エネルギー外傷にてしばしば認められる。この骨折型について治療方法のコンセンサスは得られていない。手術を行うと決定した患者において、除圧をどうするのか、整復方法はどうするのか、固定方法はどうするのかということが問題となってくる。L5/Sの可動性は犠牲にしなければならないと言うことは多くの筆者が述べるところである。
今回この筆者はこの論文で仙骨短縮骨切り術についての手術方法などを明らかにする事を目的としている。
結果、この手術方法は安全でまた単純で効果的であった。
結論として短縮骨切りすることによって固定が用意になり、また腰仙椎部の可動性が確保された。


仙骨横骨折はU-shaped sacral fracturesとも呼ばれる。前仙骨骨折の3‐5%にみられ、高エネルギー外傷(特に墜落)の際によく見られる。
この骨折の分類にはRoy-Camilleらの分類が用いられる。(Transverse fracture of upper sacrum .Sucidal jumper's fractures.Spine 1985)
このような仙骨骨折に対しての手術適応は明らかとなっていない。ただ、除圧を行ったほうが神経学的な予後がよい、とする報告もある。
矢状断での機械的な問題がこの仙骨骨折では問題となる。仙骨骨折の骨接合については様々な方法が有ることが知られている。このような仙骨横骨折では牽引される力が加わるので、腰仙椎固定が必要であると述べているものも居る。またlong fusionを行ったのにもかかわらずインプラントの破損も報告されている。
整復せずに経皮的にペディクルスクリューを入れて固定するという方法も言われているが、この方法では除圧ができない。

解剖学的、生物機能学的背景
S1,2の間で折れることが多く、近位側は脊椎と共に引っ張られ背側に転移し、尾側側の骨片は腹側に残存することが多い。(仙骨-腸骨の強靭な靭帯の影響)

手術の実際
Judetの手術台で伏臥位とする。両下肢の牽引を必要とする場合にもあるのでそのように準備をしておく。正中切開で進入。椎弓切除を行う。
馬尾神経を慎重に剥離。この時点での神経障害の程度を記録しておく。
短縮骨切りを行う。神経を避けながら、左右それぞれから骨切りを行う。神経の可動性の回復、整復が容易になると行った効果が得られる。2枚の普通のロッキングプレートで無いプレートで固定。近医はS1の椎弓根に挿入する。遠位のスクリューは尾側の骨片の中央に置く。
術後6週間のベッド上での安静を必要とする。

<論評>
比較的珍しい骨折に出会う機会が会ったため、勉強を含めて読んで見ました。
この骨折についてディスカッションして挙がった内容を幾つか列挙しておきます。

・保存治療 VS 手術治療のどちらがよいか
神経障害があれば、末梢神経障害扱いになるので、手術治療のほうが望ましいのではないか?転位した仙骨をそのままにしておくと褥瘡のリスクも高くなる可能性あり。

・皮切
正中切開が推奨されていますが、これに骨盤輪骨折を合併しているような場合には腸骨スクリューをもちいて腰仙椎固定を行うこともあるかもしれません。この時大きな皮切では感染などの危険が高くなるのでMISテクニックを用いたほうが良いのかもしれません。

・神経障害
この論文でも少数例ですが術後回復した、ということが述べられていますので、ひょっとしたら改善が認められるかもしれないですね。

2012年1月3日火曜日

20120103 謹賀新年。

あけましておめでとうございます。
だいぶブログの更新にもムラが出ていますが、ご容赦下さいませ。

さて、今後もこのブログはJBJSやUp to dateなど、管理人がその時に気になった内容を逐次アップしてまいります。

当初始めたときには、せっかく勉強会で勉強した内容を埋もれさすのは勿体ない、くらいの軽い気持ちではじめていました。
今後このブログでは、整形外科領域に関る医学的な問題について、研究のアイディアを提供できるような文献を読んでいきます。

今後の僕がこのブログ内でとっていくであろう姿勢について述べます。

僕は『整形外科の医者は、良くも悪くも専門バカである』という認識を持っています。

脊椎外科医が頚椎のpedicle screwを数ミリの単位でミスなく挿入したり、関節鏡医がまるで目の前にあるかのごとくモニターで病変の処置をしていくさま、また、日本古来の宮大工のような無駄のない手順で股関節周辺の骨切を行なう諸先輩方の手術を拝見するたびにそのすごさに圧倒されます。

しかし、専門性の高度化は同時に裾野のカバーをしきれない状況を生んでいるのではないでしょうか。

2011年のBMJのクリスマスジョークで揶揄されていたように
『整形外科医は雄牛の2倍賢い』
http://www.bmj.com/content/343/bmj.d7506


一般外科医にくらべ、内科疾患に興味が全くないことがどうしても多くなります。
本物のexpertとなっていれば、excuseされるかも知れませんが、多くの整形外科医はある程度なんでも屋として外傷からリウマチ性疾患まで幅広く見なければなりません。

今まで、骨・関節の分野は内科疾患と大きく離れている、という印象を僕自身はもっていました。
しかし、例えば骨粗鬆症。
老化だけでなく内分泌疾患としての一面。臨床疫学の理解が求められます。
また、リウマチ性疾患は生物学的製剤の導入で大きく治療が変わりました。
ある整形外科では、生物学的製剤は使います。だけどもその副作用についてはあとはしらんもんね。ということもあると聞いたことがあります。
これでは他科との円滑なコミュニケーションは望めないと考えます。

内科でも整形外科との丁度狭間にある分野についてアプローチしていけたらと考えています。

腰痛についてもその原因についてわかっていることはほんとに少ないです。
腰部脊柱管狭窄症ガイドラインが出ましたが、腰部脊柱管狭窄症という疾患概念すらもまだ完全には定義されていないような状態です。
整形外科領域はどの疾患をとっても内科にくらべ、まだまだその病態全体が明らかになったものが少ないと、僕は感じています。
大学などではその専門性を先鋭化させ、その病態に迫っています。
僕は同じ手法をとらず、わからないことに対して、全く別の角度からのアプローチができればと考えています。


また、論文を読むことで、整形外科分野の論文はRCTが組みにくく、比較的エビデンスの低い論文が多いことがわかりました。
逆に言えば、どんな研究でも整形外科内のトップジャーナルに載る可能性がある、ということがいえるのではないでしょうか。
どういった論文ならトップジャーナルに載せることができるのか?世界は今どんなことに興味をもっているのか?と言うことを知っていくということでもこのブログは続けて行きます。


よりよい治療を提供するために、もっといろいろ勉強していきます!!