2012年1月6日金曜日
20120107 JBJS(Am) Intra-articular injection of HA is not superior to saline solution inj. for ankle arthritis
足関節炎に対してヒアルロン酸の関節内注射は時々行なわれることがあるが、その有効性は証明されていない。さまざまな用量のヒアルロン酸の注射によって改善したと言う報告があるが、妥当性の高い研究は少ない。本研究の目的は足の変形性関節症に対してヒアルロン酸と生食とで比較したものである。
方法
対象は64人のクライテリアを満たした患者。2.5mlの低分子量のヒアルロン酸の注射もしくは2.5mlの生食の注射を行なった。二重盲検としてある。主たるアウトカムは6週後、12週後のAOFASの臨床評価とした。二次アウトカムとして変形性足関節スコアとヴィジュアルアナログスケールによっての疼痛評価を行なった。
結果
8人の患者が脱落。1.6%の患者に有害事象が起こった。AOFASの平均値は6週、12週の時点で二つの群に有意差は認められなかった。
結論
変形性足関節症に対して低分子のヒアルロン酸関節内注射は生食の関節内注射よりも有効であるといえない。
考察
変形性膝関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射は1997年にFDAに認可された。以後いくつかの質の高い研究が行なわれ、変形性膝関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射はその効果と安全性が確かめられている。
しかしながら現在まで変形性足関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射についての研究はほとんど無かった。
他の研究者が行なった変形性足関節症に対するヒアルロン酸の関節内注射の研究でもその有効性を示すことができていない。(無作為試験でない、もしくは盲検化していないと言う条件だと有意差がでる)
本研究で有意差が出なかった原因としては、投与したヒアルロン酸量が十分でなかった可能性。生食のプラセボ効果が大きく出た可能性、ヒアルロン酸がそもそも効いていない可能性がある。
膝と足関節の違いとしては、膝が一次性の変形であるのに対し、足関節は外傷後の二次性変形の結果であることが影響しているのかもしれない。また膝の軟骨面積が1120平方ミリメートルなのにたいし、足関節は350平方ミリメートルに過ぎない。これも影響しているのではないだろうか。
投与方法のレジメをかえるともっと効果が出るのかも知れない。年齢による影響もあるのかと考え年齢調整を行なったが差が出なかった。
結論として変形性足関節症に対してヒアルロン酸の関節内注射は生食の関節内注射よりも有効であるとはいえない。
<<論評>>
ヒアルロン酸の関節内注射は効くのか?というお話です。
なぜ膝に効いて足関節に効かないのかというところで軟骨面積がでていました。肩関節、肘関節などでも同じように調べてみても面白いのかも。
僕個人としては、年齢による差がでるのか?と言うのが気になりました。膝でも65歳以上、65歳未満で分けて調べてみても面白いのかも知れません。
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足関節は膝とくらべて、その関節の安定性、というか構造そのものが大きく症状を左右するのかな、とか思いました。
返信削除膝と比べて、「これ大丈夫かな」という関節でも、結構愁訴なくあるけたりしている方もいて、大抵自然にarthrodesis になってるのに近いのかなと思うのですが。
関節運動や可動域がADLや症状に大きく関わらないのかもしれないなとか。
>foobirdsさま
返信削除確かにご指摘のごとく、ひどいOAにも関わらずその訴えが少ない方もいらっしゃいますね。逆に、足関節骨折術後で解剖学的整復位を回復しているのにも関わらず症状が残ってしまう方もいらっしゃいますし。
この論文でも関節のbiomechanicalな部分についての考察は全くなされていませんでしたので、その評価を行うと面白いですよね!