2014年7月28日月曜日

20140728 Bogunovic, Ljiljana, et al. "Activity Tolerance After Periacetabular Osteotomy." The American journal of sports medicine (2014)

JOSKASが先週末に広島で開催されました。
開催期間中、私はシコシコと代務に勤しんでおりましたが。。。熱い議論が繰り広げられた様子がfacebookなどからも伝わってまいりました。

スポーツと股関節といえば股関節鏡が花盛りですね。
一時は何でも関節鏡でいけるんやで!みたいな風潮もありましたが、それも一段落。
スポーツの世界からでてきたFAIという概念が股関節の変性疾患の常識も変えつつあります。

さて、骨切りとスポーツはどうなっているのかなと見渡した時にそういう議論は今までなされて来なかったのですね。。。
これではイカン!と思ったら、研究していらっしゃる先生がおりましたので早速読んでみました。

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抄録
PAOは症状のある形成不全性股関節症に対して有用な方法である。しかし術後のスポーツ参加、アクテビティレベルの報告は皆無である。
後ろ向き研究。36症例の検討(15例が男性、21例が女性)。15歳から45歳。平均25歳。BMIは24±3.5。平均フォロー期間は33ヶ月。平均CE角は14度、AHIは21%。Tonnisgradeは0-1であった。1例がTHAに置換された。71%の患者が活動性が向上したまたは変わらなかったと報告した。またUCLAスコアを測定したところ術前9.2が術後8.8と変化を認めなかった。HarrisHipScore,WOMACスコアはそれぞれ術前よりも回復している。97%の患者が手術に対して満足していた。4例11%の患者が術後股関節痛のために日常生活動作に制限を加えていた。
PAOの術後の多くの患者が術後も高いアクティビティレベルを保っていた。

FAIがアスリートの股関節痛の原因のひとつであると認識されてきているが、古くから臼蓋形成不全はエッジローディングによる関節唇、関節軟骨の損傷に伴う疼痛を生じることが知られている。臼蓋形成不全の治療法は変形の程度に依存する。GanzのPAOは臼蓋形成不全に対して有効な治療方法のひとつである。
関節温存療法は患者が求めるアクティビティレベルまで回復する可能性があることである。
関節鏡の一つのメリットは侵襲が小さいことが挙げられる。股関節鏡の回復までの期間は4から26ヶ月後で有ることが報告されている。
PAO術後はアクティブなスポーツへの復帰が困難かもしれないとする報告が幾つかある。(2つ報告、ともにPhillipon先生の報告)本研究の目的はPAO後の実際のスポーツ復帰率を調査することである。

方法
2007年から2011年までにPAOを受けた151例。全症例で術前のUCLAスコアが7以上であった。術前18ヶ月間はUCLAスコアが7を超えているような患者を活動的な患者として本研究では対象とした。inclusion criteriaに合致したのは45症例であった。プロフェッショナルレベルの患者は居なかった。全症例がレクリエーションれべるから大学スポーツレベルの患者であった。
手術の対象となったのは少なくとも3ヶ月間の疼痛が持続。運動制限、理学療法を行い内服治療を行っても改善しなかった症例のうち、レントゲン写真上で明らかな臼蓋形成不全を認める症例とした。

術後後療法
4週間は20ポンド荷重制限。CPM0-60度。4時間から6時間を毎日。18歳以上ではDVT予防でアスピリンを6週間内服。90度以上の股関節屈曲は禁止。
術後4週を越えたところで荷重制限なし。可動域制限なく他動的関節可動域訓練を開始。エアロバイクを4週から9週の間で開始。4ヶ月でスポーツ復帰を許可した。

術後評価
UCLAスコア、HHS,HOOSを用いて評価をおこなった。

結果
15%の患者でPAOの前に何かしらの手術治療が加えられていた。以前に大腿骨骨切り、臼蓋骨切り、骨移植をおこなったあとの18歳男性にPAOをおこなったが27ヶ月後にTHAにコンバージョンした。
35患者38関節で術前術後のPAOは9.2から8.8と変化がなかった。すべての診療評価で改善が認められた。71%の患者で術前よりも活動性がました(51%)または変化がなかった(20%)という結論であった。
89%の患者が痛みがなくなったために運動を再開するようになったと報告する一方、11%の患者で痛みのために運動を差し控えるようになった。
97%の患者が手術に満足していると回答した。35歳以上の7患者については全患者が手術について満足していると述べた。5例が活動性が改善し、1例が変化なし、1例で活動性の低下を認めた。

考察
PAOは疼痛、機能を改善させ、術前のスポーツレベルにまで改善させることができる。71%の患者が術後の元のスポーツレベルまたはそれ以上のスポーツレベルにまで復帰することが出来た。11%の患者ではPAOの術後にスポーツレベルが落ちた。
DDHが有るような患者の治療方針の決定は未だに議論のあるところである。中程度から高度の臼蓋形成不全があるような患者では寛骨臼骨切り術が有効である。中程度から軽度の臼蓋形成不全の患者ではいまだ最適な治療方法というものは決定していない。PAOの術前に関節内操作を行うことでそれが成績の改善に結びつくこともあるが、関節鏡が痛みの原因となったり機能障害の原因となることもある。
アスリートのPAO術後の機能についての報告はほとんどない。2002年のJBJSの報告、2013年のCORRの報告で痛みがとれると活動性がますとした報告のみである。
本研究では11%の患者を除いて競技に復帰し、97%の患者が満足していたということがポイントである。
本研究の強みは男女取り混ぜて研究していること、様々なスポーツレベルの患者がいることである。
本研究の限界は後ろ向き研究であること、UCLAで7以上と設定したが、これの設定では活動性の定義がクリアにならなかったこと、WOMAC,HOOSではceiling effectのために改善具合がわからなくなったことが挙げられる。
PAOは活動性の高い患者に対しても充分耐えられる術式であり、71%が競技に復帰することがわかった。

<論評>
骨切り術後のような大きな手術のあと、気になるのは筋力低下ですがそこについての言及はありませんでした。
またプロレベルのアスリートで適応できるのかは不明です。
骨切り術は復帰までの時間が長くかかるということが言われていますが、うちだ先生の関節鏡下棚形成術をおこなった患者でも4ヶ月かかって荷重開始と書かれていましたので、骨切り術でもそんなに不利はないのかもしれないと考えるようになりました。
逆に、骨切り術の成績をあげるためには関節鏡の技術(関節唇形成、cam lesionの切除)を追加べきでは無いかと考えるようになったのがこの週末の収穫です。