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2012年3月19日月曜日

20120319 JBJS(Am) Mortality and Morbidity in dialysis-dependent Pt undergoing spinal surgery:analysis of National Administrative database in Japan

このブログも199回目の投稿になりました。なんとか200回までは頑張りたいものですね。笑
引越、転勤でバタバタしておりますが今後も続けて参りますのでよろしくおねがいします。

普段外来やっていて困ることといえば、その患者さんの状態を評価しようと思っても手元にJOAスコアなどの表がないとなかなか調べきれないことです。
膝とか股関節は暗記しているのですけど、それ以外はぱっと出てこないです。
そのうちこのサイトのどこかにスマートフォン対応でチェックを入れるだけでその罹患部位特異性の高いスコアを表示して計算できるようなものも作りたいですね。

さて、表題のとおりです。
dialysis
抄録
透析中の患者における脊椎手術への影響は十分に知られているわけではない。本研究の目的は透析をしていると術中の危険性がどの程度かということを決定することと、破壊性脊椎関節症が存在するとより危険が増すか、という点について調査を行った。
方法
日本全国からのDPCデータの解析を行った。2007年から2008年までの間のデータを使用し、椎弓切除術、椎弓形成術、椎間板切除術、脊椎固定術を受けた患者について調査した。そしてサブグループ解析として破壊性脊椎関節症の有無についても調査した。
結果
51,648例についての調査を行った。うち869例が透析患者であった。この内の95名が破壊性脊椎関節症であった。
病院内死亡率は0.41%。透析群は非透析群よりも有意に死亡率が高かった。調整後で評価すると院内死亡率は非透析群の10倍となった。透析群は術後の合併症もまた有意に多かった。破壊性脊椎症がある患者では合併症発生率がない群に比べ65%高かったが、有意ではなかった。
結論
透析患者で脊椎手術を必要とする患者の術後院内死亡率は透析をしていない患者の10倍であった。また心血管イベント、敗血症、呼吸不全などの重大な合併症を多く起こす傾向にあった。また破壊性脊椎症の患者ではより高い確率で合併症が起こりうる。

考察
DPCデータを用いて、透析患者の脊椎手術についての調査を行った。以下の3点がわかったことである。
・透析患者は非透析患者に比べて術後院内死亡する確率が10倍である。
・透析患者は重大な術後合併症をおこす確率が高い。
・破壊性脊椎症がそんざいすると合併症を起こす確率が高くなる。
この研究の強みは、そのn数である。このような国レベルでの入院患者データベースは最近良く使われるようになってきている。
50000人規模での調査は透析患者に於ける研究の中で最大のものである。実際にどの程度合併症が起こっているかを調べるためにこの研究は行われた。
この研究で脊椎手術での院内死亡率は0.41%であった。これは頚椎術後の死亡率が0.57%、側弯症術後が0.3%、椎弓切除術後が0.17%である。
この研究ではまた破壊性脊椎症が存在する場合についても述べている。破壊性脊椎症の患者は全体の10.9%であった。破壊性脊椎症は長期間の透析の結果として生じる脊椎、椎間板、靭帯の脆弱化によって起こる。破壊性脊椎関節症がある患者ではその手術が大掛かりなものとなることが多い。Abumiらの報告でも固定術が必要がなることが多いと言われており、今回の研究も80%以上で固定術を必要とした。また、破壊性脊椎関節症の患者では手術時間の延長と麻酔時間の延長が認められた。神経学的予後にかんしては良好であるとAbumiらは述べているが、うち2例がフォロー中に死亡している。(16症例中)。破壊性脊椎関節症の患者では術後早期の死亡はそれほど珍しいことではない。この研究でもサブグループ解析をしたら術後合併症、死亡率は有意な差はなかったが高かった。
この研究はDPCデータによる研究なので、透析期間がどうなのか、神経学的にはどうだったのかということを評価することもできない。また入力ミスの可能性もありえる。入院期間が長いけれども、保険制度の違いだと思う。


【論評】
DPCデータを用いた大規模な検証結果です。なんとなく実感と一致するところがあります。
東大での研究ですけれども、田舎にいてDPCデータを持ってきて何かの研究がデキないかなんて考えてみました。厚労省のページを探してみたのですけど、欲しいデータがどこに有るかわかりません。。。。
そもそも僕のもってるPCでこんな大規模解析はムリでしょうけど。笑

あと同様の研究でやるとすれば透析患者の股関節、膝関節での同じような研究ですかね。

2012年1月4日水曜日

20120104 J spinal disord tech : Shortning osteotomy and sacral fixation for U-shaped Sacral fractures



(この写真はAmerican Journal of Roentogenelogy April 2010 vol. 194 no. 4 1065-1071 より引用しています)

抄録
仙骨のU字型骨折はそれほど多い骨折型ではないが、高所からの墜落のような高エネルギー外傷にてしばしば認められる。この骨折型について治療方法のコンセンサスは得られていない。手術を行うと決定した患者において、除圧をどうするのか、整復方法はどうするのか、固定方法はどうするのかということが問題となってくる。L5/Sの可動性は犠牲にしなければならないと言うことは多くの筆者が述べるところである。
今回この筆者はこの論文で仙骨短縮骨切り術についての手術方法などを明らかにする事を目的としている。
結果、この手術方法は安全でまた単純で効果的であった。
結論として短縮骨切りすることによって固定が用意になり、また腰仙椎部の可動性が確保された。


仙骨横骨折はU-shaped sacral fracturesとも呼ばれる。前仙骨骨折の3‐5%にみられ、高エネルギー外傷(特に墜落)の際によく見られる。
この骨折の分類にはRoy-Camilleらの分類が用いられる。(Transverse fracture of upper sacrum .Sucidal jumper's fractures.Spine 1985)
このような仙骨骨折に対しての手術適応は明らかとなっていない。ただ、除圧を行ったほうが神経学的な予後がよい、とする報告もある。
矢状断での機械的な問題がこの仙骨骨折では問題となる。仙骨骨折の骨接合については様々な方法が有ることが知られている。このような仙骨横骨折では牽引される力が加わるので、腰仙椎固定が必要であると述べているものも居る。またlong fusionを行ったのにもかかわらずインプラントの破損も報告されている。
整復せずに経皮的にペディクルスクリューを入れて固定するという方法も言われているが、この方法では除圧ができない。

解剖学的、生物機能学的背景
S1,2の間で折れることが多く、近位側は脊椎と共に引っ張られ背側に転移し、尾側側の骨片は腹側に残存することが多い。(仙骨-腸骨の強靭な靭帯の影響)

手術の実際
Judetの手術台で伏臥位とする。両下肢の牽引を必要とする場合にもあるのでそのように準備をしておく。正中切開で進入。椎弓切除を行う。
馬尾神経を慎重に剥離。この時点での神経障害の程度を記録しておく。
短縮骨切りを行う。神経を避けながら、左右それぞれから骨切りを行う。神経の可動性の回復、整復が容易になると行った効果が得られる。2枚の普通のロッキングプレートで無いプレートで固定。近医はS1の椎弓根に挿入する。遠位のスクリューは尾側の骨片の中央に置く。
術後6週間のベッド上での安静を必要とする。

<論評>
比較的珍しい骨折に出会う機会が会ったため、勉強を含めて読んで見ました。
この骨折についてディスカッションして挙がった内容を幾つか列挙しておきます。

・保存治療 VS 手術治療のどちらがよいか
神経障害があれば、末梢神経障害扱いになるので、手術治療のほうが望ましいのではないか?転位した仙骨をそのままにしておくと褥瘡のリスクも高くなる可能性あり。

・皮切
正中切開が推奨されていますが、これに骨盤輪骨折を合併しているような場合には腸骨スクリューをもちいて腰仙椎固定を行うこともあるかもしれません。この時大きな皮切では感染などの危険が高くなるのでMISテクニックを用いたほうが良いのかもしれません。

・神経障害
この論文でも少数例ですが術後回復した、ということが述べられていますので、ひょっとしたら改善が認められるかもしれないですね。

2011年11月11日金曜日

20111111 JBJS(Am) revision surgery following op. for LSCS

抄録
腰部脊柱管狭窄症の患者で、注意深く診察されたうえで手術に臨んだ患者は保存療法よりも除圧術の方がよりよい臨床成績を得ることができる。しかしながらいく人かの患者は合併症や持続する症状のため再手術を受けることになる。今回の研究は再手術にいたる因子として患者の年齢、合併症、以前の手術、手術方法との関連を調べた。
方法
Medicarewp用いた後ろむき調査。2004年に行なわれた31543例を対象とし、2008年まで追跡した。手術方法は除圧術のみ、2椎間までの単純な固定術、2椎間以上の固定または前後方固定術のような複雑な固定術の3つに分類した。再手術率は各々の年毎に計算し、ハザードモデルを用いて解析した。
結果
患者の年齢が高くなる、または合併症が多くなるほど再手術率は高くなった。年齢ごとに層別化して以前に手術したことがあるかどうかで分けてみると、以前に手術を受けている人は17%、以前手術を受けていない人は10%と有意に手術をうけた人は多数回手術をうける傾向にあることがわかった。
術後1年以内であれば除圧術のみ受けた人の再手術率が高いが、術後4年では除圧術のみ、単純な固定術の群はほぼ再手術率が同じになり、複雑な固定術を受けたひとの再手術率が有意に高くなった。
固定術後に再手術になった例で、デバイスによるとらぶるは29.2%にのぼった。
結論
年齢が高くなり、合併症を有すると再手術になることが多くなり、これが大きなリスクになりうると考えられた。最大のリスク因子は以前に手術の経験があるかどうかであった。術後1年の段階では固定術は再手術のリスクとはなりえないが、術後4年の段階では複雑な固定術を行なうことは再手術のリスクになるものとかんがえられた。 

考察
LSCSの再手術例は11~13%と報告されている。リスク因子としては年齢と合併症が考えられ、最も再手術にいたる因子は以前に手術をうけているかどうかであった。
黒人群で白人群よりも再手術率が低かったが、この理由については不明である。ただ社会的な要因、保険の内容、医師患者関係なども影響しているのかもしれない。
手術方法による違いはあまりなかった。多椎間手術で術後1年の時点で差が出なかった理由についてはわからない。
後ろ向き研究であるので、バイアスはかかっているので注意が必要である。
今後は一度再手術をうけた患者だどうしてまた再手術に臨むのかということについて調べることである。また、固定術の基準についても明らかにしていく必要がある。

<論評>
そもそもの再手術の多さに驚きました。アメリカだから、ということは影響しているのでしょうか。
他の因子についても検討してもらえるとおもしろかろうなあ。と思いました。

2011年10月23日日曜日

20111023 JBJS(Am) AAOS clinical practice guideline : Treatment of osteoporotic spinal compression fractures

毎度おなじみAAOSのクリニカルガイドラインです。
今回は骨粗鬆性の脊椎圧迫骨折についてです。

余談ですが、診療ガイドラインは日本でも多く発売されるようになって来ました。診療ガイドラインに書いてあることは診療を行なっていくうえでの最大公約数、にすぎないと感じています。
ガイドラインに書いてあることは熟知していて、最低限医療者として提供すること。そしてその患者さんの個別性に合わせて必要な医療が提供できること。が僕の考えるEBMです。

閑話休題。

(エビデンスレベル:strong)
・神経学的な欠損がなく、画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状がある患者にたいして椎体形成術を行なうことを推奨しない。

(エビデンスレベル:moderate)
・神経学的な欠損がなく、画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状がある患者に対して4週間連続でカルシトニンを投与し治療することは勧められる。

(エビデンスレベル:weak)
・Ibandronateとストロンチウムの投与は画像上の圧迫骨折と一致する臨床症状のある患者に対して一つのオプションとして考慮されてもよい
・L3、4の圧迫骨折に対してL2の神経根ブロックを考慮してもよい
・kyphoplastyであれば考慮してもよい

(エビデンスレベル:inconclusive)
・ベッド上での安静が推奨できるかできないかをいうことはできない。
・装具による治療方法を推奨するかどうかはいうことをできない。
・急性期の運動療法が有効かどうかをいうことはできない。
・電気療法をおすすめできるかどうかをいうことはできない。
・後弯変形を矯正したほうがよいかどうかはいうことはできない。
・特別にこの治療法が効果がある、ということを腰椎圧迫骨折ではいうことができない。


最後の一文がすべてかも知れませんね。笑
エルシトニンの注射の話とかは全く出てきませんねええ。

2011年10月22日土曜日

20111022 JOS Thoracolumbar injury classification and severity score: a new paradigm for the treatment of thoracolumbar spine trauma

Abstract
胸腰椎骨折のメカニズム、自然経過、治療方法などは徐々に明らかになってきているものの、胸腰椎骨折の分類は単純すぎるかもしくは複雑すぎて実用に供しにくい。
そこでSpineTraumaGroupが胸椎骨折の新たな分類を考案し、治療方針の決定に用いてみた。
Thoracolumbar injury classification and severity score(TLICS) を作成した。
受傷形態、神経学的損傷、後方要素の破綻の三つの要素に対してそれぞれポイントを与え、合計点数で治療方針の決定を行なえるようにした。
今後この評価方法の妥当性と再現性。術後の長期予後についての評価が行なわなければならない。

TLICS:5点以上で手術、3点以下で保存的治療。4点であれば施設、術者の判断による。

TLICS


骨折型


(ともにhttp://www.springerimages.com/より引用)

2011年9月14日水曜日

20110915 JBJS(Am)  Risk factor for postoperative infection following posterior lumbar instrumented arthrodesis

抄録

脊椎手術の創部感染は術後の重篤な合併症である。後方アプローチ、固定術、インストゥルメントの使用、年齢、肥満、糖尿病、喫煙歴、手術室の環境、術中出血などが今まで感染のリスクとしてあげられていた。今回の研究の目的は脊椎のインストゥルメントを用いた後方固定術における個々のリスクファクターについて明らかにすることである。

方法
3218人の患者。2000‐2006年までに脊椎の後方固定術を受けた患者の後ろ向き研究。2.6%(84人)の患者で感染が認められた。多変量ロジスティック解析を用い、脊椎手術の危険性について個々の因子について検討した。

結果
肥満、術中の出血量、手術中に10人以上が出入りするような手術室、硬膜損傷、糖尿病の既往、COPDの既往、冠動脈疾患、骨粗鬆症の患者であることが脊椎手術での創部感染のリスクであることがわかった。肥満とCOPDの存在が脊椎手術後の感染において最も大きな要因であることが明らかとなった。感染の原因菌で最も多かったのはMRSAで34.5%を占めた。


考察
今回の研究で新たに明らかになったことはCOPDの存在と骨粗鬆症、硬膜損傷が脊椎手術後の感染のリスクファクターとして明らかになったことである。今後はこれらの分野の研究調査も必要となる。

<論評>
時代はmass study と 多変量解析の時代に突入したのかなあ。と感じさせました。
PCの性能が向上して、いままで大きなPCでしかできなかった多変量解析を例えば僕のPCのような誰もが持っているPCでもできる様になってきたことがこの変化の一要因だと思います。
そのためには大規模なデータベースが必要で、そのデータベースに権利をもった人が誰でもアクセスできるようにすることが重要かと思いました。
さて、論文の内容ですが、術後感染のように多様な因子が関わるような出来事は何か一つを改善したからと行って劇的な改善が得られるわけではありません。
やれることを少しずつ改善することで初めて効果が現れてくるものだと思います。
まずは、手術中にBCRに出入りする人間の数を減らしますか。笑

2011年9月8日木曜日

20110908 Up to date: cervical spondylotic myelopathy

Summary and recommendation
・頸椎症性脊髄症は椎体と椎間板の加齢による変性、神経・血管の圧迫によって引き起こされる病態である。
・頸椎症性脊髄症に特異的な決まった臨床症状はない。徐々に進行する歩行障害ではじまり、感覚障害、筋力低下、頚部から上肢に疼痛を伴った手の筋肉の萎縮。その他頸髄症に特異的な診察所見で明らかとなる
・頸髄症はALSやその他の頸髄疾患と鑑別されなければならない
・頸椎症性脊髄症は特異的な臨床症状とMRIなどで認められる脊髄の圧迫所見を認め、脊髄症に特異的な臨床所見を伴った時に診断される。
・頸椎症性脊髄症の臨床変化、予後についてははっきりとしたものはない。徐々に症状が悪化し、長期間まったく安定していたところから階段状に悪化することもある。また軽微な頚部の外傷で症状を急激に悪化させることがある。
・治療方針を決定づけるうえでの大規模な無作為化試験は存在しない。神経学的予後を保つために、悪化する前に軽度の圧迫があるような患者では手術を行ったほうがよいとする報告がある。手術を行わずに経過をみる場合にはより細かに神経学的な変化に注意を払いながら外来でのフォローを行わなければならない。保存療法としては頸椎装具、疼痛コントロール、危険なスポーツへの参加の禁止などがある。より深刻な脊髄症がみられる患者では除圧術を考慮すべきである。
・急速な症状の進行、急性発症した脊髄症では神経学的救急の対応が必要となる。MRIを撮像した後に速やかに脊椎外科医へのコンサルトを必要とする。このような場合にはメチルプレドニゾロン大量投与療法を行うほうがよいかもしれない。

<論評>
頸髄症についてのまとめを読んでみました。
頸髄症はその鑑別がまず問題になる、ということが分かります。
脊髄炎、脊髄梗塞、血管奇形、亜急性連合症候群、脊髄空洞症、髄膜へのがんの転移、多発性硬化症、ALSが鑑別となります。
次に、頸髄症の治療についてです。どのタイミングで治療を行うとよいか、ということはまだ議論の対象である、と理解しました。
明らかな痙性が出ているもの、歩行障害が強い例では手術治療をおすすめしますが、手の使いにくさ、しびれを訴えるような例ではどうするか?高齢者や合併症が多い例で手術に踏み切ることができないときにどう対応するか?というのは悩みどころです。
最後にメチルプレドニゾロンの大量投与療法(いわゆるNASCIS2)が推奨されていますが。。。最近アメリカの脳神経学会でその有効性には疑問がつけられているはずです。
 

まだこれからの大規模な臨床研究に期待。という分野ではないかと考えます。

2011年8月7日日曜日

2010807 Up to date Lumber spinal stenosisの続き

手術治療
LSSに大して手術治療は症状を軽減し、機能の回復の面で有効な手段の一つである。手術治療は保存治療が限界となったところで行なわれる。LSSを保存治療を行なうと約30%の患者が手術治療を希望する。
緊急手術は神経外科学的欠損、膀胱直腸障害が出現した場合に行なわれる。腰椎の変性でおこることは稀で腫瘍や脊髄円錐症候群として起こる。手術後の予後は手術までの時間と麻痺の程度によって決まる。
手術治療としては椎弓切除が考慮される。固定術は腰椎の側弯がある場合に考慮される。側弯がない場合には固定をしない方が合併症の発生率が少ないため、旧来の椎弓切除の方が好ましい。

椎弓切除術
LSSに対して手術治療が有効であるとするシステマティックレビューがある。
60―90%の患者で術後症状が改善していることが様々なコホート研究で言われているが、疾患の性質上試験の再現性に乏しく、また患者個々の状態が違うため比較、評価することは困難である。

棘突起拡大インプラント
最近開発されたインプラントで、MISの一つといわれている。
良好な成績も報告されているがその長期成績、副作用についてはまだまだ不明な点も多い。

側弯をともなったLSS
何かしらの固定を用いられる。
インプラントを用いることで骨癒合率の改善を認めたが、そのことによる臨床成績の影響を調べた報告はない。
合併症を集めた報告では全体の13%に血腫を含めた合併症が生じる。

また非常に高価な手術となることが多い

患者の選定
LSSの手術に関してはそのメリット、デメリットについてよくお話しておく必要がある。
15―25%の患者で再手術を受けることになる、ということも同時にお話しておくべきであろう。

手術による合併症での死亡率は0.5―2.3%
感染、深部静脈血栓症などの重大な合併症が起こる可能性は12%
患者の年齢、併存症が手術の危険性と関連。インプラントを用いるか、手術する脊椎高位、数が合併症率に影響する。
術後成績に影響する因子はシステマティックレビューでえられている。

手術成績に負の影響を与える因子
・うつ病の既往
・歩行能力に影響をあたえる併存疾患の存在
・心血管系の合併症を有する
・側弯症の存在

手術成績に正の影響を与える因子
・男性
・若年
・歩行能力が保たれている
・自らの健康に対して自信があるタイプの性格
・併存症が少ない
・狭窄が画像上でも明らか

喫煙はいかなる場合でも術後の成績不良因子として挙げることができる。

2011年8月4日木曜日

20110804 Up to date. Lumber spinal stenosis: treatment and prognosis

Summary and recommendations
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰椎の変性のために起こり、60歳以上で罹患することが一般的である。

・腰部脊柱管狭窄症の神経学的な予後自体は良好である。多くの患者さんが数年のフォローアップの間は特に症状の悪化なく経過する。しかし、一部の患者さんでは症状のためADLの低下が見られることがある。
・進行性に悪化する神経学的症状のないLSSの患者さんでは、保存療法を行なうべきである。理学療法や、鎮痛剤が用いられることが多いが、その効果について確固たるエビデンスはない。
・手術治療は適切な保存療法を行なったにもかかわらず症状の軽快が認められない患者、進行性に悪化する神経症状を認めた場合に考慮される。
側弯を認めない場合、何かしらの固定法を用いいない椎弓切除術は,インプラントを用いた他の方法より好んで行なわれることが多い。
・進行性の馬尾症状、脊髄円錐症候群、新規に生じた膀胱直腸障害を稀に生じることがあるが、このような場合には緊急手術の必要性についてコンサルトすべきである。

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LSSの予後
32人の患者を49ヶ月間フォロー、70%の患者で症状は変化せず。15%の患者で改善。15%の患者で症状の悪化をきたした。症状が不変であってもLSSによる不快感のためにADLが低くなった患者さんもいた。
(Johnsson KE The natural course of lumber spinal stenosis. Clin orthop relat Res 1992)

LSSの保存療法
理学療法、薬物療法、硬膜外ブロックなどがあげられる。

理学療法
理学療法は保存療法としてよく行なわれるが、その根拠は不明である。運動療法のレジメもないが、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動などがよく勧められる。治療の目標は筋力の改善と姿勢の改善である。
腰椎の可動域の回復と腰椎の前弯の解消を主たる目的とする。体幹コルセットによって腰椎の前弯の解消に役立つものの帰って腹筋などの筋力低下につながるのではないかと危惧されている。
(Willner S effedt of a rigid brace on back pain Acta orthop scand 1985)
無作為試験でトレッドミルによる歩行訓練と腰椎のストレッチを行なった群との比較では歩行群の方が改善が良かった。(1年後には両群に差はなかったが。)
(Whitman JM A comparison betmeen two physical therapy treatment program for patinet w/ LSS ,RCT Spine 2006)

決まったレジメはないものの、これらの報告を参照して患者指導に用いると良いか。

薬物療法
NSAIdsなどが使われるが、その効果効能、副作用についての詳しい調査はない。また神経学的予後にどう影響するかという報告もない。

硬膜外ブロック
LSSに対する硬膜外ブロックの効果について確固たるエビデンスは存在しない。いくつかの限定的なエビデンスがあるのみである。(後ろ向き研究では効果があるとするものもあるが、小規模のRCTでは1ヵ月後にはプラセボと変わらない効果とされている。)


<論評>
腰部脊柱管狭窄症についてのUp to dateの記載です。
まだまだ分かっていないことがほんとに多いことを実感。
保存療法についても多施設でプロトコールを組んでやれると面白そうですね。

2011年7月13日水曜日

20110711 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その5

・MIS
MISを行うことで術中の出血量は減少する。(MEDでもインプランテーションでも。)
しかしながらMISが万能なわけではなく、昔ながらの方法に比べて明らかに難易度が高くなっている。ラーニングカーブもあるので、慎重に適応を検討すべき。

・術後赤血球回収
脊椎手術の分野ではほとんど報告がないため、評価が困難である。
ある報告では同種輸血の量を30%減らしたとする報告がある。
細胞のカス、骨髄脂肪、フィブリン、など有害な物質が紛れ込むことがあるかもしれないが40マイクロのフィルターでこの問題を解決している。
この方法がどの程度費用に見合うのかも不明である。

・輸血基準の厳密な設定を行うこと
近年は輸血の基準が厳格化しており、輸血をどのタイミングで行うかと言うのは議論に成っている。
カナダの集中治療ガイドラインでの輸血に関しての研究では、Hbが7g/dlまで輸血しない群と、いつでも輸血して良い群の2群で死亡率に差がなかったと報告している。
イギリスでは7g/dl以下で、アメリカでは6g/dl以下で強く輸血を推奨。ともに10g/dl以上では輸血は不要と結論づけている。6‐10g/dlでは心筋梗塞などのリスクファクターがある場合には輸血を行うこととしている。
脊椎手術での基準は定められていないが、同様の基準で行えば良いのではないだろうか

2011年7月11日月曜日

20110711 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その4

術中の対応
・患者の体位
硬膜外静脈叢が下大静脈と弁のない経路で交通していることはよく知られている。伏臥位では腹圧の上昇が下大静脈の厚上昇につながり、そのために硬膜外静脈叢の循環血漿量を増加させ、出血量の増加につながる。古くはHallフレームが腹圧の低下につながり、出血量を有意に減少させたとする報告がある。最近ではWilsonフレームで広いパッドか狭いパッドのいずれが有効かという研究が行われ広いパッドの方がより出血量が少なかったとする報告がある。術中の出血量と腹圧との間には密接な関係がある。

・手術方法
皮切部からのウージングを抑えるために50万倍のボスミンの局注を行うことがある。傍脊柱筋への栄養血管は脊椎のすぐ近傍を通っているため骨膜下で剥離するようにするとこの血管を損傷せずに出血量を減らすことができる。適切な手術手技を習得することで出血量は減らすことができる。
固定術ではしばしばデコルチケーションを行わなければならない。この時には骨の表面から出血してしまう。そこでこの手技を一番最後にすると出血量は抑えられる。そして創部をwatersealする程度まできつく縫合し、タンポナーデ効果が得られるようにすることが必要である。熱凝固で出血を止めたり、骨蝋も骨からの出血を止めるために少量使うことも差し支えない。硬膜外出血はバイポーラで止める。もし、下大静脈圧が十分に低ければ、創部に生食を満たせばその圧だけでも硬膜外出血のコントロールは可能である。

・局所止血剤の使用
様々な注意を払っても止血困難な出血はある。そのような場合には止血剤の使用が考慮されることとなる。
これらの止血剤は大きく二つのタイプに分けられる。passiveなタイプと、activeなタイプの二つがある。
passiveなタイプは血小板凝集を促進するタイプの製剤である。activeなタイプとは凝固系を促進してフィブリン塊を形成するようなもののことをいう。
passiveなタイプにはコラーゲン性、ゼラチン性、セルロース性のものがある。
いずれの商品も多くの症例で10分以内で止血を得ることができる。
局所止血剤は有用であるがいくつか有害な点を潜在的に有していることには注意が必要である。passiveな止血剤では神経の圧迫のリスクがある。また異物反応、慢性の炎症、感染のリスクもある。
局所止血剤は必要最低限の使用にするほうが良い。

20110709 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その3

・モルヒネの髄内投与
全身麻酔に硬膜外麻酔や脊髄麻酔などを追加すると術中の出血が減少するということがメタアナライシスで示されている。このことは局所麻酔の追加で低血圧麻酔のような状態になるために出血量が減少するためと考えられている。また、局所麻酔の追加とは別に髄腔内にオピオイドを投与することで低血圧を惹起することなく出血量の減少が得られることが知られている。3つの無作為試験でそのことが示されているにもかかわらず、機序については全く不明である。

・低血圧麻酔
低血圧麻酔は整形外科手術で昔から使われてきた方法である。動脈圧を下げることで全体の出血を減少させる効果があるとされている。しかしながら、硬膜外静脈叢、骨髄内の血圧は動脈圧と全く関連していないため、脊椎手術の手技に関わるデコルチケーションなどでは低血圧麻酔にすることがどれほど意味があるかは不明である。
低血圧麻酔が危惧される一つの理由としては、術後の失明の可能性があることである。その発症率は0.09%程度であるが脊椎手術では腹臥位であること、貧血の進行が脊椎の大手術では予想されること、血液が希釈されることなどからそのリスクは高くなる。
また低血圧麻酔による脊髄神経そのものに対する影響も考えられる。神経が低酸素状態となることから何かしらの影響があるのかもしれない。今のところの研究では、普通に低血圧麻酔を行う限りでは神経に影響はないとされているが、さらなる研究が必要である。

・体温保持
低体温は凝固系の異常をきたしうることが知られている。この凝固系の以上は血小板機能が失われることが主体であり、凝固因子の影響はわずかである。
軽度の低体温は輸血の必要性を増加させることが知られている。THAでも同様の結論が得られている。
あらゆる手術で、体温が1度下がるごとに出血量が16%増加し、輸血の可能性が22%増加することが分かっている。
脊椎手術で体温を保持することがどれほどの意味があるかはまた研究がなされていないが、検討に価するものである。

2011年7月9日土曜日

20110709 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その2

術中の管理
・術中希釈式自己血輸血
希釈式自己血輸血は腰椎固定術、側弯症手術において有用であると言われている。この方法を行うと凝固能が30%上昇するという報告もあり、このために術中出血量の減少が得られるのかも知れない。この方法は患者の状態に左右され、またその性質から貯血型自己血輸血とは併用が困難である。

・術中赤血球回収(セルセーバー®か?)
術中の赤血球回収が同種輸血の回避につながるかどうかというのは議論の残るところである。有用である、とする報告はなされており、また、コクランを含めた様々なレビューが行われているが、研究の質が一定していないためはっきりとしたことは言えない。
Gauseらが行った後ろ向き研究では、術中赤血球回収を行うと輸血量が減らないばかりか術中出血量の増加すら認めている。この原因についてははっきりしないが、術者側の気持ちの問題や回収血では凝固能が低下するといった問題がひょっとしたらあるのかもしれない。
またコストの問題もあり、希釈式自己血輸血法の方が安価である。2単位以上の回収が見込まれる時にのみ、回収法のほうが安価となる。
また腫瘍、感染の手術、局所止血剤を使用した際には禁忌である。

・止血剤の使用
抗凝固線維融解素
コクランレビューでもAprotinin(トラジロール®)とtranexamic acid(トランサミン®)が側弯症手術の際の出血を減少させる、ということが報告されている。他のメタアナライシスでも脊椎手術においてトランサミンとepsilon-aminocaproic acidは血栓症などの有害事象を増やすことなく出血量を減少させたという報告がある。

・トラジオール
2000ml以上の出血をきたしたような脊椎の大手術でトラジオールを使用したところ出血量が少なかったという報告がある一方、輸血量に関しては変わらなかったとする報告もある。
また、心臓手術で使用された際に心筋梗塞、アナフィラキシー、腎障害をおこしたという報告や、脊椎の矯正手術で用いた際には急性腎不全の発症、血栓症の発症が報告されている。現在FDAでは使用中止を勧告している。
・トランサミン
抗線溶として働く。以前から人工関節置換術ではその効果について言われていたが、脊椎の分野では最近報告がなされるようになってきた。
明らかな合併症も無く安価で安全に使える薬剤であるとされてきつつある。
(高用量で使用している。)
・epsilon-aminocaproic acid
日本ではアミノカプロン酸として目薬のなかに入っているようですけども。。。すいません、商品名が分からないです。

・Recombinat factor Ⅶa(ノボセブン®)
重大な有害事象がおこったために中止された研究がある。後ろ向き研究ではその効果は証明されているが、血栓症のリスクがあること、また非常に高価な薬剤であるため適応外での使用を推奨しない。

・Desmopressin(バゾプレッシン)
von Willebrand病で使われることから脊髄手術にも応用してみた研究がある。出血量の減少を認めたがその効用を確立するには至っていない。

20110709 JBJS(Am) Redusing perioperative blood loss and allogeneic blood transfusion in patients undergoing major spine surgery その1

JBJSのCurrent Concept Review
"脊椎の大手術を受けた患者で同種輸血を回避する方法"



術前の準備

・術前の休薬など
アスピリンや、clopidogrel(プラビックス®)は心血管疾患を合併している患者でよく処方されている。
これらの薬剤を中止するかどうかは術前のリスク評価を行って決めなければならない。抗血小板剤の投与によって10.2%の血管系のイベントが予防できていると考えられている。しかしながら、これらの薬を継続しながら行う手術では出血にともなう有害事象はあまり増加しない、と言われている。
Chassotらは、7日前からのアスピリンの中止を基本としているが、6週間以内に心筋梗塞の既往がある場合、または12か月以内に薬剤溶出型冠動脈ステントを留置した場合にはアスピリンを中止せずに手術を行うこととしている。
アスピリンと脊椎手術における出血量の関連を調べた研究はない。
ちなみに脊椎外科医にアンケートをとって見たところ、アスピリンを飲んでいると聞くと2/3の脊椎外科医が術中出血量が多くなると感じ、また半分以上の術者が出血のトラブルに遭遇したと回答した。
clopidogrelの場合には術中出血量、輸血の割合が増加したものの、死亡率、合併症率には変化が見られなかった。
整形外科医がよく処方するNSAIDsもアスピリンとほぼ同等の抗血小板作用がある。ただし休薬して24時間以降であればその効果は消失している。血小板機能評価装置などを使って術前に評価をしておくほうが妥当であろう。

・自己血貯血
自己血貯血は確立された安全な方法である。腰椎固定術や側弯症手術で同種輸血を回避するのに効果的であるとされている。
しかしながらBrookfieldらの676例の後ろ向き研究によれば自己血貯血を行った群と行っていない群では輸血の行った率に差は見られなかったとする報告もある。
鉄剤の投与、エリスロポエチンの使用は必須である。

2011年4月11日月曜日

20110411  Cochrane reviews : spinal manipulative therapy for chronic low back pain

慢性腰痛に対する整体、カイロプラクティックについて

spinal manipulative therapy (SMT) は世界的にいろいろな方法で、様々な人によって行われている方法である。この方法が効果があるかどうかは議論の余地がある。

腰痛では一般的に疼痛により日常生活が傷害され、個々もしくは社会に経済的損失を与えうる。QOLの低下をもたらし、失業に至ったり、さらなる医療費の支払いあが必要となる。
この研究の目的は12週以上にわたる腰痛を慢性腰痛と定め、はっきりとした原因に基づいた腰痛は除外した。腰痛は狭義の背部痛だけでなく、臀部、下肢への放散痛があるものも含む。

SMTは脊椎を”手で押したりする”ことによって行われる治療として知られている。整体、カイロプラティックなようなものである。セラピストが患者の脊椎の可動域を広げるような運動を行う。セラピストがゆっくりと他動的に徐々に関節可動域をひろげていくイメージである。マニュピレーションはセラピストが可動域の最後に直接的にぐっ、と力を加えるような運動である。この際によく”ポキッ”とした音が聞こえる。

26のRCT、6070例についてこのreviewでは調査を行った。様々な整体師、カイロプラクティターによって治療が行われた。9つの研究だけが十分にバイアスが除去されていると判断された。

結果
運動療法、内服/外用、物理療法と同様に改善が得られる。という結果が得られた。しかしながらほとんどでどのようにプラセボと介入を区別したかについてははっきりと描いては居なかった。研究の2/3がバイアスがかかっているので、今回の結果を完全に受け入れられるものにはできなかった。あきらかな有害事象はSMTでは認められなかった。

まとめると、SMTはいまある治療法と比べて良くもなければ悪くもない。

<論評>
コクランに載っていたので読んでみました。

結果は妥当であると考えました。
よく、整体やカイロプラテックに対するその効用の有無が問われますが”わからない”が正しいのでしょう。

まあ、有害事象がないので、薦めても罪はないのかと。
ただ、エビデンスがない以上保険診療が用いられてはならない。と思います。
自費で患者さんが受けられるのであればいいのかなと思います。

余談になりますが、こういった研究は難しいのはたしかに事実かと。
マッサージでRCTをやるとすれば、
施術前に”今からマッサージをします。あなたが受けるマッサージは①上手な施術者か、②素人かのどちらかが行うものです。どちらがやるかは無作為に決まります”と言われてからうけるマッサージは①、②のどちらに行われても、少なくとも気持ちよくはないだろうと想像されます。苦笑
プラセボの効果と言うものは全くバカにできない。
患者さんが”これ、気持いいなあ”といっているものに大して、医療者側から”それはエビデンスがありませんよ”と言うものは野暮である、と考えます。

まあ、患者さんが”気持ちいい”といっているのなら”良かったねえ。よく効いて”といってあげるのがあるべき姿かと思います。

ただ、僕自身の意見として、このプラセボ効果を悪用し、”このレメディーがきく”、”このグ◯コサミンがよく効く”と言っている業者には強い怒りを感じていることはハッキリと言っておきます。


最後にサイモン・シンが書いた”代替医療のトリック”という本を紹介しておきます。
ありとあらゆる代替療法に対して一つづづエビデンスの有無を調べ、それを物語として提示しています。
EBMってなにかなあと疑問に思ったときには最も端的に答えてくれる一冊であることは保証しますが、かなり厚い本ですので注意が必要です。

またご希望があればこの本の内容について抜粋して提示しますので、コメント欄にご記入ください。

http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:5vT7ERcbzCQJ:www.amazon.co.jp/%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF-%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3-%E3%82%B7%E3%83%B3/dp/4105393057+%E4%BB%A3%E6%9B%BF%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&source=www.google.co.jp

2010年12月19日日曜日

20101219 JBJS Clinical impression vs. standard questionnaire : the spinal surgeon's ability to assess psychological distress

抄録
精神疾患は脊椎手術の術後成績に影響を及ぼす。一般的な脊椎外科医は精神疾患の一般的な評価方法を使用せずに自分の感覚にたよるところがある。今まで脊椎外科医が精神疾患をもった患者を適切に評価できるかどうかと言うことについて調べた報告はない。今回脊椎外科医は正しく精神疾患を評価できないのではないか、という仮説を検証してみた。
方法
8人の脊椎外科医、うち4人は手術を普段行なっている医師で、4人は脊椎を専門としているが手術をしない医師に対して400人の患者の診察を行ってもらって評価をしてみた。すべての患者にDRAM(Distress and risk management)を行い、これを対照とした。8人の脊椎外科医にはこの結果を知らせずにいつもと同じように診察を行ってもらい、患者の精神疾患のレベルについて評価してもらった。その上でDRAMとその脊椎外科医の評価を比較してみた。
結果
400人の患者のうち、64%が精神疾患を抱えていることがわかった。全体の24%ではその精神疾患はより重度なものであった。重度な精神疾患に対する脊椎外科医の診断の感度は28.7%で、陽性的中率は47.2%であった。手術をしない脊椎外科医の診断の感度は41.7%で、普段手術をしている脊椎外科医の診断感度が19.6%であることの間には有意な差が認められた。
経験の長い医師と短い医師との間には優位な差は認められなかった。
結論
脊椎疾患を訴えて専門医を受診する患者の64%が精神疾患を抱えていることがわかった。質問紙法と比べてみると脊椎外科医の感じている精神疾患の頻度は低いことがわかった。精神疾患を適切に判断するためには質問紙法を用いたほうが良い。

考察
ヒトのこころと体はつながっていて、体調や精神状態は病気の状態や社会的な背景に左右されると言うことはよく知られている。患者の精神状態は同様に治療の結果に影響を及ぼし、治療の結果も病態生理にかかわらず患者の生活に影響を及ぼす。これらは治療成績に精神的な要素が影響すると言う事を指し示す。精神疾患があると脊椎の術後成績に影響を及ぼすと言うことも今までいくつか報告されている。その影響についてはDRAM法によって調査することができるが、多くの脊椎外科医はその潜在的なリスクに対しての認識が少ない。
今回の研究では脊椎外科医の”感覚”がどれくらい患者の抱えている精神疾患を判定することが可能か、ということを明らかにするものである。その結果は、DRAMで評価されたものよりも脊椎外科医の感覚は正確ではない、と言う事である。とくに高度の精神疾患を抱えている患者に対しての正確性が低くなった。精神疾患を抱えていない群での正確性は高かった。結局脊椎外科医の感覚では高度の精神疾患を抱えているヒトを少なく見積もり、精神疾患を抱えてないとするヒトを多く見積もる傾向があることがわかった。
今回高度な精神疾患を抱えているヒトの割合が22%という事であったが、他の報告でも23%ー29%であり、決して高い数字ではなかった。
手術を普段しているか、していないかで評価した場合、手術を普段していない医師の方がより正確に精神疾患を診断できた。これは手術をしない医師のほうが精神疾患の有り様について深く考察するからではないだろうか。手術をする脊椎外科医はうつ領域と、身体領域の二つに分類しがちであることもわかった。ただ、陽性的中率は手術をする、していないでは差が出なかった。
医師の経験の差では差は出てこなかった。どちらかというと個々の医師に依存している傾向があった。
DRAM法はあくまでも精神疾患のスクリーニング法で病気のすべてを理解する方法ではない。また脊椎の状態と精神疾患をつなぐものでもない。ただ精神疾患と脊椎疾患のいずれにもアプローチすることは必要である。治療方針の決定には何らかの方法でのスクリーニングを行ったほうがよい。

<論評>
脊椎疾患に精神疾患が合併しやすいのは事実である。と言うことが一つ。精神疾患の状態を正しく見極めて
適切な治療が提供できるようにする。時には手術よりも投薬の方が良いかもしれない場合を念頭におくと言うことでしょう
ただ良心的な医者ほど自分の手術でなんとか出来れば、と考えてしまうために重症の精神疾患があっても低く見積もるのではないかとも思います。
一人当たりにかける時間が日本の数倍のアメリカの外来でもやれるかどうかわからない、と書いてあるので、多分忙しすぎる日本の外来で実施することは非常に困難ではないかとも思います。

2010年12月8日水曜日

20101208 Up to date: Evaluation of the patient with neck pain and cervical spine disorders

Summary and recommendation

・頸部痛、または放散する上腕痛(神経学的所見の有無を問わず)の原因として頸椎がかかわっている場合にはC4から7、とくにC5,6,7の神経根がかかわっていることが多い。
・頸部の捻挫、は睡眠中の姿勢や、習慣などと関連があるとされ、慢性化することはほとんどない。
・頸椎椎間板症による疼痛が頸部痛の最も多い原因とされている。神経学的には正常であるが、頸部の多動による不快感を訴える。
・頸椎症、という用語は頸椎の骨棘や椎間関節の変形を指示しているだけである。レントゲン写真上では頸椎の年齢による変化を指摘することができるが、別にその変形自体が臨床症状とのかかわりはない。
・頸椎椎間関節症候群(むちうち)は頸椎の屈曲進展外傷によって引き起こされる。筋肉、神経、靭帯などがかかわっている、と考えられているが病理学的には明らかになっていない。またそれを評価するための検査もない。
・頸椎症性脊髄症は頸椎の脊柱管の狭窄によって脊髄神経が圧迫を受けている状態である。筋力低下、巧緻運動障害、歩行障害、膀胱直腸障害、勃起障害などが症状として現れる。手術治療(除圧術)が必要である。
・頸椎症性神経根症は別に述べさせてもらう。
・身体所見では動作、頸椎の可動域、圧痛、神経学的所見、誘発テストを行う。
・頸椎のレントゲン写真が必要なのは、外傷、50歳以上の初発の頸部痛、持続する頸部痛の場合である。
・CT、MRIが必要なのは、神経学的な欠損が認められる場合、動作時が極端に制限されるようなひどい頸部痛がある場合、保存療法を6週間にわたって行っても効果がない場合である。
・電気生理学的検査は頸椎病変よりも末梢神経障害を見つけるのに役立つ。頸部痛に対する血液検査はルーチンに行う必要はない
・救急の現場では、頸椎を安静に保つ、神経学的評価を行い、脊椎の圧痛のうむを確認する、そしてレントゲンを撮影する。神経学的な異常が認められた場合には脊椎外科医にコンサルトを行う。レントゲンを撮ったほうがよいかどうかはCanadian spine ruleもしくはNEXUSルールに従うこと。

2010年12月2日木曜日

20101202 European spine journal : Surgical treatment of coccygodynia: an analytic review of the literature

尾骨部痛は脊椎末端の疼痛、不快感として定義される.その病因、程度は様々である.外科的手術が治療に有効であろうとは言われている.
尾骨部痛についてのsystematic reviewを行った.
”尾骨部痛ー尾骨切除術”とPubmedで検索し、1980年から2010年までの報告を渉猟した。671例の尾骨部痛にたいして尾骨切除を行った報告があった。
男女比は1:4.4と女性に多かった。直接の外傷に伴うものが270例であった。504例の患者においてその手術成績は優または良、であった。
9例の深部感染症、47例の表層感染症を認めた.他には2例の血腫形成、6例の創治癒不全、9例の創離開をみとめ全体の11%に何かしらの合併症を生じていた.
特発性、何かしらの訴訟を抱えているような症例ではその治療成績は外傷によるもの、出産後からの疼痛にくらべその治療成績は不良であったが、全体の85%で症状の軽減がえられていた.合併症としては手術創に関するトラブルが頻発していた.

<論評>
読んでいただいたとおりです.
手術を行う前にキシロカインテストなどで疼痛が取れることを確認してから行うべきでしょう.

2010年9月12日日曜日

20100911 12th JOTS(日本整形外傷セミナー) その4

--脊椎・脊髄損傷--
Misseed injuryが3-25%。けっこう見逃しあり.読影出来ていないのが主な原因.

Spinal shockとNeurological shockの違いをしっかり理解。

シーソ^呼吸.
四肢や体幹の刺激反応がなく、鎖骨より上位の刺激で反応  脊髄損傷を示唆

正常な近くが残っている最も尾側のレベルが損傷高位となる
横位診断. sacral sparingが歩かどうかで完全麻痺かどうか.Anal tone.

Frankel分類=>ASIA

頚椎の診断にはCTが最も有用(レントゲンと組み合わせれば感度100%)

呼吸合併症を減らすための早期座位獲得が目標となる.

NASCISはガイドラインではClass3(主治医の判断で慎重に行う)になっている

頚椎脱臼
”超早期に脱臼整復することが神経学的予後を改善する可能性”これが一番アツかった(笑)

意識がある状態で非観血的整復.場合によっては鎮静剤の使用も可。
20kgまで
30分以上粘らない
3時間以内の整復を目標
MRIは整復したあと、または手術決定後に行う.

強直性脊椎炎とchanse骨折 大血管損傷の可能性あり.極めて危険。

胸髄損傷による完全麻痺はまずもどることがない.
神経学的予後の改善のためには24時間以内
生命予後改善のためにははやく座位を取る.(72時間以内)

頚椎損傷の20-50%、脱臼にいたっては75%にVAの損傷が合併.
脳幹梗塞のリスクあり.
頚椎損傷があった場合には脳梗塞の危険性について早めにお話しておく必要がある。

2010年7月9日金曜日

2010.7.9 JBJS(Br) The prevalence and radiological findings in 1347 elderly patients with scoliosis

Abstract
高齢者における側弯症の有病率とその症状との関連を調べるために1347人の患者に対して調査を行った.615人の男性と732人の女性.平均年齢73.3歳。平均cobb角7.55度。
cobb角10度以上を側弯症と定義したときにその有病率は35.5%であった。
年齢と性別それぞれで有病率に有意に差が出た.
高齢になればなるほど側弯の程度は悪化した.それは女性でより顕著であった。
女性では年齢との相関がより強かった.また健常群にくらべ症状が強く出ていた.
側方辷り、椎体の回旋、前弯の消失、感情面でのバランスの消失がある時に側弯症と症状との関連が見られた.
その部位はL4/5であった。

<論評>
まあ、そうなんですよね.と普段自分がレントゲンをみて感じていることをまとめていただいた感じです.