・モルヒネの髄内投与
全身麻酔に硬膜外麻酔や脊髄麻酔などを追加すると術中の出血が減少するということがメタアナライシスで示されている。このことは局所麻酔の追加で低血圧麻酔のような状態になるために出血量が減少するためと考えられている。また、局所麻酔の追加とは別に髄腔内にオピオイドを投与することで低血圧を惹起することなく出血量の減少が得られることが知られている。3つの無作為試験でそのことが示されているにもかかわらず、機序については全く不明である。
・低血圧麻酔
低血圧麻酔は整形外科手術で昔から使われてきた方法である。動脈圧を下げることで全体の出血を減少させる効果があるとされている。しかしながら、硬膜外静脈叢、骨髄内の血圧は動脈圧と全く関連していないため、脊椎手術の手技に関わるデコルチケーションなどでは低血圧麻酔にすることがどれほど意味があるかは不明である。
低血圧麻酔が危惧される一つの理由としては、術後の失明の可能性があることである。その発症率は0.09%程度であるが脊椎手術では腹臥位であること、貧血の進行が脊椎の大手術では予想されること、血液が希釈されることなどからそのリスクは高くなる。
また低血圧麻酔による脊髄神経そのものに対する影響も考えられる。神経が低酸素状態となることから何かしらの影響があるのかもしれない。今のところの研究では、普通に低血圧麻酔を行う限りでは神経に影響はないとされているが、さらなる研究が必要である。
・体温保持
低体温は凝固系の異常をきたしうることが知られている。この凝固系の以上は血小板機能が失われることが主体であり、凝固因子の影響はわずかである。
軽度の低体温は輸血の必要性を増加させることが知られている。THAでも同様の結論が得られている。
あらゆる手術で、体温が1度下がるごとに出血量が16%増加し、輸血の可能性が22%増加することが分かっている。
脊椎手術で体温を保持することがどれほどの意味があるかはまた研究がなされていないが、検討に価するものである。
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