2011年7月9日土曜日

20110709 JBJS(Am) Reducing Perioperative Blood Loss and Allogeneic Blood Transfusion in Patients Undergoing Major Spine Surgery その2

術中の管理
・術中希釈式自己血輸血
希釈式自己血輸血は腰椎固定術、側弯症手術において有用であると言われている。この方法を行うと凝固能が30%上昇するという報告もあり、このために術中出血量の減少が得られるのかも知れない。この方法は患者の状態に左右され、またその性質から貯血型自己血輸血とは併用が困難である。

・術中赤血球回収(セルセーバー®か?)
術中の赤血球回収が同種輸血の回避につながるかどうかというのは議論の残るところである。有用である、とする報告はなされており、また、コクランを含めた様々なレビューが行われているが、研究の質が一定していないためはっきりとしたことは言えない。
Gauseらが行った後ろ向き研究では、術中赤血球回収を行うと輸血量が減らないばかりか術中出血量の増加すら認めている。この原因についてははっきりしないが、術者側の気持ちの問題や回収血では凝固能が低下するといった問題がひょっとしたらあるのかもしれない。
またコストの問題もあり、希釈式自己血輸血法の方が安価である。2単位以上の回収が見込まれる時にのみ、回収法のほうが安価となる。
また腫瘍、感染の手術、局所止血剤を使用した際には禁忌である。

・止血剤の使用
抗凝固線維融解素
コクランレビューでもAprotinin(トラジロール®)とtranexamic acid(トランサミン®)が側弯症手術の際の出血を減少させる、ということが報告されている。他のメタアナライシスでも脊椎手術においてトランサミンとepsilon-aminocaproic acidは血栓症などの有害事象を増やすことなく出血量を減少させたという報告がある。

・トラジオール
2000ml以上の出血をきたしたような脊椎の大手術でトラジオールを使用したところ出血量が少なかったという報告がある一方、輸血量に関しては変わらなかったとする報告もある。
また、心臓手術で使用された際に心筋梗塞、アナフィラキシー、腎障害をおこしたという報告や、脊椎の矯正手術で用いた際には急性腎不全の発症、血栓症の発症が報告されている。現在FDAでは使用中止を勧告している。
・トランサミン
抗線溶として働く。以前から人工関節置換術ではその効果について言われていたが、脊椎の分野では最近報告がなされるようになってきた。
明らかな合併症も無く安価で安全に使える薬剤であるとされてきつつある。
(高用量で使用している。)
・epsilon-aminocaproic acid
日本ではアミノカプロン酸として目薬のなかに入っているようですけども。。。すいません、商品名が分からないです。

・Recombinat factor Ⅶa(ノボセブン®)
重大な有害事象がおこったために中止された研究がある。後ろ向き研究ではその効果は証明されているが、血栓症のリスクがあること、また非常に高価な薬剤であるため適応外での使用を推奨しない。

・Desmopressin(バゾプレッシン)
von Willebrand病で使われることから脊髄手術にも応用してみた研究がある。出血量の減少を認めたがその効用を確立するには至っていない。

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