2009年9月28日月曜日

JBJS September 2009 Resident Duty-Hour Reform Associated with

背景
2003年1月からアメリカでは卒後の研修のあり方が変わった。(就業時間の制限)。今回の研究は就業時間の制限が大腿骨頚部骨折の患者の死亡率、合併症率にあたえる影響について関連を調べたものである。
方法
就業時間制限前(2001-2002年)と後(2004-2005年)で48,430人の患者について研修医教育病院とそうでない病院とでロジスティック解析を行った。
結果
両方の群で2004-2005年のほうで合併症の発症率が高かった。これは患者全体が重症化していることを示唆している。術後の肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった。死亡率には関連が認められなかった。
考察
研修医の就業時間制限は患者の合併症の発生率の増加と関連があった。更なる研究を要する。

2003年からの制限事項
・週80時間以上の勤務禁止
・7日間のうち1日は完全に業務から離れる日を作る
・日常業務と自宅待機の間は10時間以上の間を置く。自宅待機は3日間のうち1日以上になってはならない。6時間以上の残業の後は24時間は自宅待機をしてはいけない。

表1 Deyoのindex 患者にある既往歴を重み付けとして点数化。
表2 肺炎、血腫、輸血、腎不全、予期しない退院、費用、入院期間が就業時間制限後の教育病院で有意に高かった
図1 肺炎の発生率。就業制限後の教育病院で有意に発生率が増加している。

考察
2003年の研修医の就業制限については結果的に懐疑的な結論が出た。今回の改訂の目的は睡眠不足や疲労が患者のケアや学習に悪影響を与えるのではということで制定された。今回の改訂が患者のケアの質を上げたというエビデンスはない。これは整形外科の手術については言える。研修医教育病院で患者の合併症が多くなるということが今回のキモである。
今回の就業時間制限が患者の死亡率と関連がないというとは他の報告でも言われている。平行して行った研究ではメディケア、退役軍人の群では死亡率が上昇するというエビデンスはなかった。術後の患者の死亡率は変わらないがサブグループ解析を行うと相対的に改善することがわかっている。
別の研究では就業時間制限によって死亡率が減少したとしているがわれわれの研究ではむしろ上昇した。これは有意さがないものの3.7%の上昇を認め今後も研究する必要がある。
研修医が呼ばれてもすぐ来ないと患者の入院期間が増える。
働く時間が減れば整形外科の手術のことを勉強できる時間が短くなる。手術の数も減る。疲労を取るということが仕事が増えることで相殺される。
上級医が呼ばれる割合が増えているはずだがそれについて記載された報告はない。
患者が数日間ほったらかしの状態になることもある。
結局境域病院で研修医の就業時間制限後から合併症が増えた。この研究は関連性があるということを述べただけで原因だとはいっていない。就業時間の制限と臨床成績との間の研究を進めるべきである。

2009年9月17日木曜日

Current othop.Achilles tendon injury.527-529

アキレス腱損傷

アキレス腱の異常はきわめて多く、特に30-50代の活動性の高い男性に多い。最も多いのはアキレス腱炎とアキレス腱断裂である。腱炎は踵部痛の項で述べる。
Ahilles Tendon Rupture
Pathogenesis
 メカニズムは通常三頭筋へエキセントリックで過剰な負荷がかかることによる。これは急に起こり、三頭筋が引っ張られるように足部が強く背屈される。付着部の3-6cm近位の血流の乏しい部位で起こる。時々間欠的に腱の痛みがあるのは、以前の腱炎の既往を示唆する。典型的には30-50歳台のレクリーエーションレベルのアスリートで起こる。これは十分でない状態の筋腱が損傷の原因であることが示唆される。バスケットボール、ラケットスポーツ、サッカー、フットボールで多い。
Cliinical findings
Symptoms And Signs
 患者は蹴り出し動作を試みようとした後の突然のふくらはぎ痛を訴え、通常ポップ音を聴取する。急に患肢の力が弱くなる。身体所見では、腱のdefectがしばしばある。足の底屈が健側と比べ明らかに弱くなる。Thompson testを完全断裂の診断のため、腹臥位にして患側膝90度屈曲で行う。ふくらはぎのsqueezeで底屈が起きれば、正常か部分断裂であり、完全断裂では底屈しない。
Imaging Studies
 単純レントゲンは、通常あまり起こらない踵骨の剥離骨折の検出には有用であるものの、アキレス腱断裂の診断には有用ではない。MRIは感度が極めて高く、いくらか腱成分の連続性があるか確認するのによい。しかし、断裂の診断は身体所見で通常つけられるので、必要となることは少ない。
Treatment
 治療は観血的に開けるか、経皮的に行うか、またはギプスである。外科的治療は活動性の高い患者、再断裂、2週以上経過した症例で勧められる。
 ギプスによる治療はデスクワークの多い患者、創部の問題が起こるリスクが高い場合、外科的ハイリスク患者で勧められる。ギプス治療のリスクには再断裂率の高さがある。ほとんどの患者ではどちらの治療でも良好な成績を得ることができる。
Nonsurgical Treatment
 診断がついたら、重力による尖足位でギプス固定する。信用できる患者には膝下のギプスがよい。腱の断端がきちんと並んでいるか不安な場合は、ルーチンにではないが、MRIを行う。4週後に半分の角度にしたギプスに交換する。さらに4週後に中間位にする。中間位までいったら、取り外し可能な歩行用ギプスを4週行う。監視下の筋力訓練も開始する。
Surgical Treatment
 アプローチは腱の内側から。ボロボロになった腱断端はデブリする。足は尖足位とする。Bunnell法かKessler法で2本の太い非吸収糸を用いて、断端から3-4cmのところから縫う。より細い吸収糸で断裂部を補強する。足底筋腱がintactなら採取し、補強に用いる。
 術後は3週間ギプス。その後は取り外し可能な、足関節の動きが調節できるものを用いる。さらに2-3週後、徐々に尖足位から戻す。そして荷重を許可し、ROM訓練を始める。6-8週でギプス終了とし、筋力訓練を監視下に行う。
 手術のリスクは、創部治癒の問題であり、5%に起こる。経皮的な縫合の方法は文献に載せてある。
Treatment of Chronic Ruptures or Reruptures
 6週間以上前の慢性断裂と以前治療を受けた再断裂は、腱断端が引っ張りこまれて、変性しているので、再建する必要がある。沢山の手法が、人工物の挿入も含めて紹介されている。
 小さな欠損では三頭筋筋膜のstripを折り返して遠位断端に縫いつける。大きな欠損ではV-Yで延長した腱膜を用いて治療する。V-Yでは足りないときは、FHLを移植する。FHLは足の遠位で横切し、遠位部はflexor digitorum longsに腱固定し、第1趾の屈曲を維持する。近位は踵骨にドリルホールを通して吸収性のアンカーかスクリューを用いて固定する。アキレス腱のcentral slipはギャップをつなぐため前進させ、FHLに固定する(?)。
 術後は6週免荷、3か月ギプスである。

論評
後療法が少し長いように感じました。
補助縫合として足底腱膜を使うというのは昔だけ?それとも今でもやっているところはあるのでしょうか。
ちなみにトンプソンテストの感度96%。まず見逃しようがない疾患であるということがいえるでしょう。

2009年9月14日月曜日

JBJS Sptember 2009,Is After-hours orthopaedic surgery associated with adverse outcomes?

要旨【背景】骨折の治療はいつも日中の医療資源の整った時に行えるわけではない。大腿骨骨折、脛骨骨折についてその治療成績について評価した。【方法】203人の大腿骨骨折と脛骨骨折の患者。この患者を日中群と残業群の2群に分けた。6時から16時までが日中群。16時から翌朝6時までが残業群である。残業群での大腿骨骨折が45例。脛骨骨折が48例。日中群の大腿骨骨折が44例。脛骨骨折が56例であった。患者背景はよく似通っている。治療方法も同じ様にした。骨折の治癒、合併症、手術時間、放射線透視時間を後ろ向きに集めた。【結果】治癒率は日中群、残業群とも同じであった。単変量解析を行ったところ残業群のほうが大腿骨骨折、脛骨骨折の手術時間が短かった。回帰分析では手術時間が有意であると断定はできなかった。残業群で再手術率が高かった。痛みのために抜釘を行う率も残業群のほうに多かった。(27%:3%)。残業時に手術を行うことは痛みのために抜釘をする率が高くなることと有意に関連していた。【結論】癒合不全率、感染率、放射線透視時間は差がなかった。残業時間に大腿骨骨折の手術をすると痛みのためにインプラントを抜去することが多くなることがわかった。これはひょっとしたら理想的な環境でないことや手術時間が短いこととも関連しているのかもしれない。日中に外傷手術を行えることは髄内釘での小さな合併症を減少させる可能性がある。
表1 患者背景。すべての群はよく似た群となっている表2 骨折の分類表3 骨折の受傷機転 いずれもよく似た傾向にある。表4 開放骨折の率。日中も夜間もよく似たような状況にあった。表5 合併症 スクリューの抜去率が残業群で高かった。
考察骨折の治療はしばしば残業帯に行われる。手術が遅くから行われるのにはいくつかの隠れた理由がある。手術がどうしても夜に必要となってしまったという場合。またほかの原因としては手術室の医療資源が足りずに手術が遅く始まるといったことがある。残業帯に行われる手術はどうしても理想的な状況とはいえないようなところがある。夜間の手術はどうしても日中の仕事をすべて行ったあとから始める。一般的な睡眠時間に手術をしていることもある。術者の疲労が大きくなっている。術者の疲労は手術の悪い結果を導くことがある。ほかにも夜間の手術は有害な点がある。手術のチーム全体がなれないチームで行われるためその手術自体に慣れていないことがある。このような理想的な状況ではないところで手術をするとどうなるかということを今回は調査した。今までに術後の合併症について手術のタイミングの影響ということは調査されてきていた。しかしこれらの調査は早く手術をするべきかそれとも待機的に手術をするかという違いについて述べられていた。そこで私たちが調査したのは手術をどの時間から行ったかということであった。今回午後4時から残業帯としたのはナースの勤務帯に合わせた。今回の研究で特記すべきことは日中と夜間帯の骨折型、患者背景が似通っていたことであった。もっと夜間帯に開放骨折の患者が多いと思っていた。脛骨骨折で夜間帯に38%、日中に25%であったがこれは有意差がなかった。大腿骨骨折はより似通っていた。骨折の治癒過程に合併するような有害事象は夜間帯であるということと関係がなかった。骨折の重傷度、軟部損傷の程度が骨折の治癒に影響を及ぼすが、夜間帯に手術をするということはわれわれの研究では関係なかった。反対に手術の技量と直接関係するところは手術環境が悪化することで影響を受けるものと考えられる。スクリューを入れたり、ネイルを入れたりといったことは手術の技量と直接かかわっており、骨折型や軟部組織の程度とは関係がない。今回再手術でスクリューの抜去が多かったということは手術のタイミングとかかわっているものと思われる。このことは手術時間が夜間帯で短くなっていることからもわかる。この手術時間の短縮は術者の要因がある。Bhattacharyyaらが言うには夜間帯の手術は合併症が多い。この研究は限界がある。午後4時という早い時間から夜間帯としてよいのかという問題がある。また、夜間のメンバーは日中よりも強力になっていたかもしれない。結論として、大腿骨骨折の治療についていえばインプラントのマイナートラブルが起こるので日中の手術のほうが望ましい。

論評
アメリカならではの早期固定術に対する一つのアンチテーゼでしょう。これを書いた先生は少し疲れているのかもしれません。(笑)日本だとけん引、創外固定でお茶を濁すことも多々あると思うので同じ結果にはならないと思います。
大腿骨頚部骨折で手術室、麻酔科の都合で夜スタートになったものの成績を調べるとおんなじような研究ができるのかもしれません。

2009年9月10日木曜日

2009.9.10 Current Orthop. Spinal injury (sports)

アスリートにおける頚椎の損傷は比較的まれであるが、重大な神経系の損傷が隠されている可能性がある。疑われたら、診断がきちんと下るまで厳重な注意が必要。これが修復可能な病態から悲惨な転機にならないように予防する最良の方法である。多いのは衝突によるもので、時に頭部外傷も合併する。すぐに頭部と頚部は固定し、呼吸の状態と意識レベルを直ちに確かめる。
Brachial Plexus Neurapraxia
(neurapraxia:Waller変性を生じない、損傷部中枢では電気刺激に対し反応せず、末梢では伝導性が保たれている、機能回復の速度は早い状態)
 もっとも一般的な頚椎損傷はrootや腕神経叢のpinchまたはstretchによるneuropraxiaである。損傷は短時間で、患者は痛みなしで可動域制限を認めない。「stinger」や「burner」と呼ばれる。肩の沈み込みと同時に起こる頭部または頚部の側方への衝撃により起こる。腕神経叢のpinchやstretchが起こり、焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などがかたから腕や手まで広がる。よく症状が出るのはC5・C6である。自然に受傷後数分で改善する。
 肩・上腕のintrinsic muscle(内在筋)の筋力に問題なく、ROMが問題なければ、復帰が可能。筋力低下や無感覚が残存すれば、競技復帰は許可されない。頚部痛は症状として含まれないことがあるので、注意が必要。
 Paresthesiaや筋力低下が持続すれば競技に戻る前に精査が必要。神経学的検査、筋電図、放射線により行われる。通常4-6週間、筋力の完全回復と筋電図での改善があるまではコンタクトスポーツへの復帰は許可されない。
 Stinger injuryを予防するには、頭や頚部のテクニックを身につけ、頚部の筋力強化を図る。加えて頚の回転を使うことが衝撃を避けさせる。
Cervical strain
 頚部の筋のstrain(筋挫傷)はもっともアスリートで頻度が高い。Strainは筋肉の損傷を指し、Sprainは靭帯の損傷を指す。筋腱への過剰な負荷や伸ばされることにより起こる。全ての筋腱の損傷で臨床像は共通である。頚部を動かすと痛みがあり、数時間後から翌日にピークがある。NSAIDs、温めること、マッサージなどは効果がある。
Cervical sprain
 Sprainはfacetや椎体間の靭帯や関節包の損傷である。Strainとの鑑別は難しい。可動域制限と痛みが受傷部位に沿ってある。靭帯組織の損傷は神経系に関する不安定性を引き起こす。レントゲンは必要。可動域制限と痛みのある場合は前後屈でとり、不安定性を評価する。
 治療は固定、安静、支持療法、抗炎症療法である。筋力と可動域が正常化したら復帰を許可。
Cervical spine cord Neurapraxia with transient tetraplagia
 一過性四肢麻痺を伴う頚髄のneuropraxiaが一つの病型としてある。感覚系では焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などの症状がある。運動系は筋力低下または完全な麻痺が一過性にあり、通常10-15分、長くて36-48時間で改善する。運動機能の完全な回復と痛みのない可動域が回復する。レントゲンでは骨折や脱臼は認めない。時に脊柱管の狭窄などを認める。
 一過性の四肢麻痺を起こしたアスリートは持続的な四肢麻痺が起こるリスクについて知らない。一度これを起こしたアスリートはコンタクトスポーツへの参加はさせるべきではない。狭窄だけなら個別に治療を行う。
 より重大な骨折や脱臼を伴う場合もある。その場合には競技場で固定などの治療を開始する。フェイスマスクを着けていれば、カッターで切る。全脊柱固定後、ボードに移す。砂袋は頭頚部の固定に用いる。その後地域の救急病院でさらなる評価や治療を受けることになる。骨折や脱臼があれば他の脊椎疾患と同様に治療する。

2009年9月9日水曜日

今日の手術

THAのrevision.cement cup,cemtented stem。central migration
臼蓋はIBG.(KTプレートも準備。)臼底が薄いときには打ち抜かないように細心の注意を。
リムをメッシュ。細かく骨を詰める。メッシュは端っこは必ず止める。スクリューは1センチ間隔。ただし端っこは密に。どこにカップを置くかをよく考える。
ステム。セメントインセメントは圧が高くなるのでやや早めに圧入。
古いセメントと新しいセメントの間のせん断力は90%以上。

2009年9月3日木曜日

BetterProphylaxisagainstSurgicalSitelnfbctionwithLocalasWellasSystemicAntibiotics、AninVivoStudyJBoneJointSurgAm、2009;91:1907-1912.August20,2009Background抗生剤の予防的全身投与は有意に術後感染のリスクを減ずる。創内に直接抗生剤を注射する方法がより効果的であることが分かってきた。本研究では、創閉鎖後に創内への直接的な抗生剤注射の効果について、単独使用と全身投与との組み合わせ両方につき調査した。私達の考えでは術前の抗生剤全身投与と術後の創内への局注が最も効果的な方法だと仮定した。MethodsRatを6つの治療グループに分けた。無治療、ゲンタマイシン局所治療、セファゾリン全身投与、セファゾリン局所治療、セファゾリン全身投与十ゲンタマイシン局所治療、セファゾリン全身投与十セファゾリン局所治療の6グループである。創腔は大腿骨に沿って開き、インプラントを留置、2.5×108CFU(コロニー形成単位)のStaphylococcusaureusを植えた。抗生剤全身投与は最初の皮切の30分前に皮下注して行った。抗生剤局所投与は創閉鎖後、創腔に経皮的に注射した。Ratは術後48時間で殺され、定量培養を行った。Results抗生剤治療を受けた全グループで無治療群と比べて有意に細菌数は少なかった。ゲンタマイシン局所治療群はセファゾリン全身投与群と比べて100倍、対照群と比べて10万倍CFUの数を減じた。セファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせでは、対照群の1000万倍細菌数を減じ、ゲンタマイシン局所治療より細菌数を減らす。Conclusions仮定した通り、セファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせが最も効果的なregimenであることがわかった。ゲンタマイシンの局所注射はセファゾリン全身投与より効果的であるが、抗生剤の組み合わせよりは劣る。初期の高い抗生剤局所濃度と2つの異なった種類の抗生剤を使うことが、この効果に寄与した可能性がある。ClinicalRelevance臨床試験でもこの結果が示唆されれば、SSIに対する抗生剤予防投与のregimenとしてケンタマイシン局所治療とセファゾリン全身投与の組み合わせを評価することができる。ResultsFigl術後48時間でのCFU数それぞれの治療群におけるCFU平均数が対数値で標準誤差とともに表示されている。全ての抗生剤治療群で対照と比べて有意に減少している、セファゾリン全身投与群よりゲンタマイシン局所治療群で有意に低く、ゲンタマイシン局所治療単独よりセファゾリン全身投与との組み合わせの方が有意に少なかった。Discussionセファゾリン全身投与とゲンタマイシン局所治療の組み合わせは対照群の1000万倍細菌数を減じた。仮定した通り、この組み合わせが最も効果的で、その次に効果のあったケンタマイシン局所治療の100倍近く創内の細菌数を減らした。ゲンタマイシン局所治療はセファゾリン全身投与の100倍、対照群の10万倍CFU数を減らした。セファゾリン全身投与とセファゾリン局所治療に有意差は見られなかったが、全身投与群は100mg/kg用いたのに比べ、局所治療群は14mg/kgであった。以前の我々の研究室での研究で、同様の方法を黄色ブドウ球菌8.0×105CFUを創腔内に植え、ゲンタマイシン局所治療の効果を調べるために行った。今回の研究では、さらに多くの2.5×108CFUの細菌を創腔内に植え、対照群ではさらに多くの細菌数を認めた。以前の研究では創閉鎖後のゲンタマイシン局所注射は対照群と比べ10万倍創内の細菌数を減らした。この結果は今回と同様であった。今回用いたのはよく使われるMSSAであったが、MRSAを用いると結果は異なっていたと思われる。我々が用いたMSSAは感染力が強く、治療されないと48時間以内に死亡する。今回のratは死ななかったが、瀕死であった、現代の整形外科手術患者に対する抗生剤予防投与のスタンダードは術前のセファロスポリン、典型的にはセファゾリンだが、19投与である。このような抗生剤全身投与は毛細血管床を浸透し、創腔に広がるが、そこでは低濃度になっている。創内にできる血腫内に抗生剤が含まれることになる。この研究ではratの研究に基づいた100mg/kg程度の用量でセファゾリン全身投与が行われ、人の血液中のpharmacokineticsのシミュレーションにより、術前予防投与として典型的には19静脈内ボーラス投与としている、抗生剤入りの洗浄を行う術者もいるが、吸引により除去されてしまい、これらの抗生剤と細菌との接触時間が短い、今回の研究で、創閉鎖後に創腔に直接抗生剤を局注することで、感染の可能性がある場所に抗生剤が拡散以外で除去されることなく高濃度で届く。さらに、高濃度のため、通常抵抗性があると考えられていた細菌にも効果が出る可能‘性がある。局所治療は創腔内を高濃度に保ち、全身的には安全域に保つ。研究によるとバンコマイシンの局所投与により局所は中毒域の20倍に達するが、全身的には安全域を保つ。しかしこれに関しては局所の正常細胞に毒性をもたらしうる。抗生剤の骨芽細胞やその一連の細胞に対する抑制効果については様々なstudyで調査されている。IsefUkuらによると、ゲンタマイシンは10伽g/mLを超えると骨芽細胞の代謝を減少させ、70伽g/mLを超えると抑制細胞を増殖させる。我々の研究での創腔容積は3.38cm3、ゲンタマイシンは2.0mgを注射したc、よって創腔内は約600鰹g/mLとなり、IkefUkuらの抑制細胞の増殖闘値よりも低い。Edinらはセファゾリン濃度が100伽g/mLを超えると骨芽細胞の増殖は止まり、10000似g/mLを超えると骨芽細胞の細胞死が起こる。我々は創内の濃度が210伽g/mLになるような局所投与量を選択した。Invitroの研究を上に述べたが、組織培養の骨芽細胞での抗生剤濃度は数日間維持される。我々は単回の局所注射は初期の高い局所濃度を得るが、速やかに全身循環に吸収されてしまうのではないかと予想した。これはHumphreyらによって示され、彼らはウサギの2×2cmの創にゲンタマイシン3mg/kgを含んだ牛のコラーゲンスポンジを植えた。4時間後局所のゲンタマイシンの濃度は600jug/mL、24時間後はく7似g/mLであった。このように、どのような抗生剤による局所の毒性も一過‘性である。TKAやTHAで抗生剤入りのセメントが用いられる。このような「貯蔵庫」のような投与方法は抗生剤濃度が高濃度で持続するので、この方法をとるときは局所的に毒性を示すより低くなるようによく用量を考えた方がよい。以前の我々の局所抗生剤予防投与の研究で、我々は創部へ焼き石膏のパウダー状にしたものを用いることについて評価した。これは数日かけて抗生剤を溶出し、アクリルと違って、関節置換術以外の患者で除去する必要がない。焼き石膏からの溶出は効果的であるが、水溶性のゲンタマイシンの注射のみ程は効果がないため、この方法については探究をしなかった。局所投与は全身投与と同じような分布の予測ができず、創の閉鎖に水漏れがあると、leakが起こることを注意しなくてはいけない。しかし、いくらか失っても極めて効果的である。この研究の問題点は、創部の洗浄が非常に少なかったことである。我々は洗浄に生食0.5mlしか用いなかった。これは以前の研究で感染を成立するのに有用であった量であったからである。しかし、我々が用いたより多い適正量での洗浄は依然として大切な感染のコントロール方法であり、創部感染予防における非常に重要な役割を果たしている。さらに、我々は1種類の細菌と2種類の抗生剤しか調べていない。今回のモデルではこれらの抗生剤は極めて有効であったが、他の細菌叢や人体では有効でないかもしれない。また、治療の容易さのためセフアゾリンを皮下注したが、ratにおける様々な投与方法を行った後のセフアゾリンの分布をしめすpharmacokineticなデータはほとんどない。加えて、ゲンタマイシン全身投与群を研究に含めなかったので、局所投与群と比較できなかった。ゲンタマイシン全身投与群を研究に加えたら、細菌を減らした機序についての'情報が得られたかもしれないが、その毒性のためルーチンに整形外科の予防投与で用いられてないため、研究に含めなかった。以前の研究で、ゲンタマイシン全身投与の100倍局所投与で細菌数を減らしたことを示している。人での研究でこの結果を確認する必要がある。

(論評)
抗生剤の局所投与の有用性については議論のあるところであるが感染人工関節などに対しては経験的に使われていることがある。今回Ratの研究であるが局所投与の有用性を示したものとしては面白いのかもしれない。ゲンタマイシンの人での適切な濃度がどれくらいかなど考えなければいけない。
ただ、創部感染というのは多因子がかかわって成立するものであるのでこれだけやればよいというものでもないだろう。