2009年9月10日木曜日

2009.9.10 Current Orthop. Spinal injury (sports)

アスリートにおける頚椎の損傷は比較的まれであるが、重大な神経系の損傷が隠されている可能性がある。疑われたら、診断がきちんと下るまで厳重な注意が必要。これが修復可能な病態から悲惨な転機にならないように予防する最良の方法である。多いのは衝突によるもので、時に頭部外傷も合併する。すぐに頭部と頚部は固定し、呼吸の状態と意識レベルを直ちに確かめる。
Brachial Plexus Neurapraxia
(neurapraxia:Waller変性を生じない、損傷部中枢では電気刺激に対し反応せず、末梢では伝導性が保たれている、機能回復の速度は早い状態)
 もっとも一般的な頚椎損傷はrootや腕神経叢のpinchまたはstretchによるneuropraxiaである。損傷は短時間で、患者は痛みなしで可動域制限を認めない。「stinger」や「burner」と呼ばれる。肩の沈み込みと同時に起こる頭部または頚部の側方への衝撃により起こる。腕神経叢のpinchやstretchが起こり、焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などがかたから腕や手まで広がる。よく症状が出るのはC5・C6である。自然に受傷後数分で改善する。
 肩・上腕のintrinsic muscle(内在筋)の筋力に問題なく、ROMが問題なければ、復帰が可能。筋力低下や無感覚が残存すれば、競技復帰は許可されない。頚部痛は症状として含まれないことがあるので、注意が必要。
 Paresthesiaや筋力低下が持続すれば競技に戻る前に精査が必要。神経学的検査、筋電図、放射線により行われる。通常4-6週間、筋力の完全回復と筋電図での改善があるまではコンタクトスポーツへの復帰は許可されない。
 Stinger injuryを予防するには、頭や頚部のテクニックを身につけ、頚部の筋力強化を図る。加えて頚の回転を使うことが衝撃を避けさせる。
Cervical strain
 頚部の筋のstrain(筋挫傷)はもっともアスリートで頻度が高い。Strainは筋肉の損傷を指し、Sprainは靭帯の損傷を指す。筋腱への過剰な負荷や伸ばされることにより起こる。全ての筋腱の損傷で臨床像は共通である。頚部を動かすと痛みがあり、数時間後から翌日にピークがある。NSAIDs、温めること、マッサージなどは効果がある。
Cervical sprain
 Sprainはfacetや椎体間の靭帯や関節包の損傷である。Strainとの鑑別は難しい。可動域制限と痛みが受傷部位に沿ってある。靭帯組織の損傷は神経系に関する不安定性を引き起こす。レントゲンは必要。可動域制限と痛みのある場合は前後屈でとり、不安定性を評価する。
 治療は固定、安静、支持療法、抗炎症療法である。筋力と可動域が正常化したら復帰を許可。
Cervical spine cord Neurapraxia with transient tetraplagia
 一過性四肢麻痺を伴う頚髄のneuropraxiaが一つの病型としてある。感覚系では焼けるような痛み、無感覚、ヒリヒリ感などの症状がある。運動系は筋力低下または完全な麻痺が一過性にあり、通常10-15分、長くて36-48時間で改善する。運動機能の完全な回復と痛みのない可動域が回復する。レントゲンでは骨折や脱臼は認めない。時に脊柱管の狭窄などを認める。
 一過性の四肢麻痺を起こしたアスリートは持続的な四肢麻痺が起こるリスクについて知らない。一度これを起こしたアスリートはコンタクトスポーツへの参加はさせるべきではない。狭窄だけなら個別に治療を行う。
 より重大な骨折や脱臼を伴う場合もある。その場合には競技場で固定などの治療を開始する。フェイスマスクを着けていれば、カッターで切る。全脊柱固定後、ボードに移す。砂袋は頭頚部の固定に用いる。その後地域の救急病院でさらなる評価や治療を受けることになる。骨折や脱臼があれば他の脊椎疾患と同様に治療する。

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