2019年5月1日水曜日

20190501 CORR Individual Patient-reported Activity Levels Before and After Joint Arthroplasty Are Neither Accurate nor Reproducible

抄録
背景
患者は人工関節の術前術後に自分自身の歩行距離について回答することがあるが、今までに患者の活動性がどの程度正確かということを示した研究は殆どない。本研究の目的は万歩計を用いて、患者の報告する歩行距離がどの程度正確かということを明らかにすることである。
方法
16ヶ月間に渡ってTHAまたはTKAを受ける患者121例のうち66患者(55%)を抽出した。年齢、膝または股関節、性別において抽出された患者と抽出されなかった患者の間には差を認めなかった。FitBitと呼ばれる歩数が見えない万歩計を1週間装着した。患者は毎日自分の歩いた距離を記録した。トレッドミルで距離と万歩計はバリデーションされた。データは術前、術後6週と8週で収集された。報告された距離と測定された距離との間で誤差が50%以内かどうかの検討を行った。
結果
患者の報告する距離は正確ではなかった。術前、術後とも誤差は50%を越えた。平均の違いは術前が69%、術後が93%であった。
結論
患者が歩いたと感じている距離は歩数計で測定した距離と違いを認めた。医療者は患者の運動療法を指導する際には注意が必要である。


はじめに
人工股関節置換術(THA)、人工膝関節置換術(TKA)を行うと、患者の歩行を含めた日常生活機能が改善する。Harris Hip ScoreやKSSといった機能評価にも、どの程度の歩行制限があるかを患者に尋ねる質問がある。しかしながらこれらの歩行能力の制限などについて正確な根拠に基づいて行われた研究はない。本研究ではトレッドミルで患者の自覚する歩行距離と万歩計で測定される歩行距離とを合致させた上で、日常生活において患者の自覚する歩行距離と実際の歩行距離との差を比較した。
方法
18歳から85歳までのTKAまたはTHAを受けた患者を対象とした。認知機能に問題がある症例については除外した。16ヶ月間の間に862例のTHAまたはTKAが行われた。この内の121例を対象とした。この内の66例が対象となった。55例が除外されたが、その理由としては24例が研究への参加を拒否し、13例が十分なデータが得られなかった。13例がコーディネータによる面談が行われず、4例がインフォームド・コンセントが不十分であった。1例が85歳以上で除外となった。これら除外された群と研究に参加した群との間に年齢、性別、THA、TKAの実施数の間に差を認めなかった。これらのうち、術前45例、術後35例が解析の対象となり、29例が術前後のデータが両方共揃っていた。合計51例の患者が対象となった。33例がTHAの患者、28例がTKAの患者であった。測定にはFitBitを用いた。この装着時間が75%以下であった15例の患者は除外した。結局45例の患者が術前、術後のデータから除外された。
術前1ヶ月の段階、術後6週または8週の段階でFitBitを渡され、ベルトに装着した。
50%以下の誤差であれば良いとして統計解析を行った。
結果
術前術後とも実際の測定値と患者の申告した距離との間には差を認めた。術前には自分の歩行能力を少なめに見積もる患者が多かったが、術後はやや過剰に自分の歩行能力を自覚することがわかった。実際の歩行距離は術前1.8マイルが2.0マイルに有意に伸びた。
考察
患者に歩行距離を訪ねても、術前術後ともその距離が正確であるとは言えないことがわかった。
本研究にはいくつかのLimitationがある。参加した患者のコンプライアンスが低いことである。装着時間が75%以下の患者を除外し、適切なデータを得るようにした。また、患者の疲労感が考慮されていないことも問題である。モニタリングしていることによる患者の日常生活の変化も問題である。

<論評>
結論には同意できます。術前術後で歩行能力は向上します。また単なる聴取による歩行能力は医師側のバイアスもかかりますが、今回の報告で患者側のバイアスもあることがわかりました。
研究の手法、解析方法については疑問が残ります。そもそも800例以上の報告で100例少ししか対象にしないとか、そのうちの50%程度しか解析対象にしないとか。
CORRにこれでも載るんだな。というのが正直な感想です。