高齢者における転位型大腿骨頸部骨折は、患者の生活の質に影響し、重篤な合併症または死亡を引き起こす重大な合併症である。以前の国のガイドラインとコクランレビューは高齢患者の股関節骨折を治療するための人工骨頭挿入術(BHP)にはセメント人工骨頭を使用するように推奨している。しかしながら、未だこれらのガイドラインが世界の多くの地域で十分に遵守されているとは言い難い。本研究の目的は、ノルウェーの国家レジストリーを用いて、BHPにおける固定法(セメント、セメントレス)の違いが再手術のリスクと関連するかどうか、死亡率と関連するか、患者立脚型評価の違いに影響するかを調査することである。ノルウェー国家レジストリーを用いた後ろ向き研究である。死亡の100%近くの追跡が可能なレジストリーである。2005年から2017年までに、104,993例の大腿骨頸部骨折が登録されていた。大腿骨頚部骨折以外の骨折と、骨接合術や全人工股関節置換術は除外した。合計7539例のセメントレスBHP(女性70%、平均年齢84±6歳)と22,639例のセメントBHP(女性72%、平均年齢84±6歳)についての検討が行われた。再手術と死亡率に関するハザードリスク比(HRR)を、年齢、性、併存症、認知機能、手術アプローチ、および手術期間で調整したCox回帰モデルで計算した。術後12か月で、患者の65%が疼痛と質に関するアンケートに回答し2群間での比較を行った。何らかの理由による再手術の全リスクは、セメントBHPよりもセメントレスBHPのほうが有意に高かった。(HRR,1.5;95%信頼区間,1.4-1.7;p<0 .001="" span="">。その原因は、人工関節周囲骨折(HRR,5.1。95%信頼区間、3.5-7.5;p<0 .001="" span="">と感染(HRR,1.2;95%信頼区間、1.0-1.5;p=0.037)だった。1年後の全死亡率に差は認められなかった。術後1年の患者の患者立脚型評価において、疼痛とEQ5Dを用いた生活の質の評価においては2群間で差を認めなかった。本研究では、ステムの固定様式がBHP後の疼痛、生活の質、または1年死亡率の差と関連しなかった。セメントレスBHPは、再手術リスクが増加するため、股関節骨折の高齢患者の治療には使用すべきではない。 0>0>
まだAbstractしか読めていませんが、ん?という結果と結論ですね。
今までいくつかの報告でなされてきたとおりの結果と結論として、セメントBHPのほうが人工関節周囲骨折が少ないことがあります。今までの報告と異なるのは死亡率、生活の質と関わりが無かったことです。人工関節周囲骨折を起こしているにも関わらずその死亡率と生活の質に影響がなかった理由として考えられることは、1)人工関節周囲骨折の症例数が少なかったこと。2)人工関節周囲骨折の治療が進化しており、十分な回復が得られるようになっている可能性が挙げられるのではないでしょうか。また、これだけセメントBHPの優位性が述べられているにも関わらずセメントレスBHPをおこなっている(セメントレスBHPの数がセメントBHPよりも少なくなっている)ことから、セメントレスBHP群のほうがより慣れた外科医によってなされているために改善している可能性があること、また反対に慣れていない外科医によるセメントBHPが行われているために予後が悪くなった可能性もあるのかもしれません。筆者らも記載しているように再骨折のリスクが高くなることからBHPはセメントで行うべきだと論者も考えます。