2020年3月16日月曜日

20200316 CORR Cemented or Uncemented Hemiarthroplasty for Femoral Neck Fracture? Data from the Norwegian Hip Fracture Register


高齢者における転位型大腿骨頸部骨折は、患者の生活の質に影響し、重篤な合併症または死亡を引き起こす重大な合併症である。以前の国のガイドラインとコクランレビューは高齢患者の股関節骨折を治療するための人工骨頭挿入術(BHP)にはセメント人工骨頭を使用するように推奨している。しかしながら、未だこれらのガイドラインが世界の多くの地域で十分に遵守されているとは言い難い。本研究の目的は、ノルウェーの国家レジストリーを用いて、BHPにおける固定法(セメント、セメントレス)の違いが再手術のリスクと関連するかどうか、死亡率と関連するか、患者立脚型評価の違いに影響するかを調査することである。ノルウェー国家レジストリーを用いた後ろ向き研究である。死亡の100%近くの追跡が可能なレジストリーである。2005年から2017年までに、104,993例の大腿骨頸部骨折が登録されていた。大腿骨頚部骨折以外の骨折と、骨接合術や全人工股関節置換術は除外した。合計7539例のセメントレスBHP(女性70%、平均年齢84±6)22,639例のセメントBHP(女性72%、平均年齢84±6)についての検討が行われた。再手術と死亡率に関するハザードリスク比(HRR)を、年齢、性、併存症、認知機能、手術アプローチ、および手術期間で調整したCox回帰モデルで計算した。術後12か月で、患者の65%が疼痛と質に関するアンケートに回答し2群間での比較を行った。何らかの理由による再手術の全リスクは、セメントBHPよりもセメントレスBHPのほうが有意に高かった。(HRR,1.5;95%信頼区間,1.4-1.7;p<0 .001="" span="">。その原因は、人工関節周囲骨折(HRR,5.195%信頼区間、3.5-7.5;p<0 .001="" span="">と感染(HRR,1.2;95%信頼区間、1.0-1.5;p=0.037)だった。1年後の全死亡率に差は認められなかった。術後1年の患者の患者立脚型評価において、疼痛とEQ5Dを用いた生活の質の評価においては2群間で差を認めなかった。本研究では、ステムの固定様式がBHP後の疼痛、生活の質、または1年死亡率の差と関連しなかった。セメントレスBHPは、再手術リスクが増加するため、股関節骨折の高齢患者の治療には使用すべきではない。

【論評】

まだAbstractしか読めていませんが、ん?という結果と結論ですね。
今までいくつかの報告でなされてきたとおりの結果と結論として、セメントBHPのほうが人工関節周囲骨折が少ないことがあります。今までの報告と異なるのは死亡率、生活の質と関わりが無かったことです。人工関節周囲骨折を起こしているにも関わらずその死亡率と生活の質に影響がなかった理由として考えられることは、1)人工関節周囲骨折の症例数が少なかったこと。2)人工関節周囲骨折の治療が進化しており、十分な回復が得られるようになっている可能性が挙げられるのではないでしょうか。また、これだけセメントBHPの優位性が述べられているにも関わらずセメントレスBHPをおこなっている(セメントレスBHPの数がセメントBHPよりも少なくなっている)ことから、セメントレスBHP群のほうがより慣れた外科医によってなされているために改善している可能性があること、また反対に慣れていない外科医によるセメントBHPが行われているために予後が悪くなった可能性もあるのかもしれません。筆者らも記載しているように再骨折のリスクが高くなることからBHPはセメントで行うべきだと論者も考えます。


2020年3月8日日曜日

20200308 CORR Are Lipped Polyethylene Liners Associated with Increased Revision Rates in Patients with Uncemented Acetabular Components? An Observational Cohort Study

Abstract THA後の繰り返す脱臼は、再置換を必要とする重篤な合併症である。以前の研究では、セメントレス寛骨臼コンポーネントにおけるリップ付きポリエチレン(L-PE)ライナーの使用により脱臼率が低下することが示されているが、インピンジメントのため摩耗が増加し、長期的に無菌性の緩みにつながる可能性と考えられている。L-PEライナーの総合的なメリットがその使用に伴うリスクを上回るかどうかについては議論の余地がある。本研究の目的は、ニュージーランドの国家レジストリーからのデータを用いて、 (1) Kaplan‐Meier生存率の比較、 (2) ニュートラルPE(N-PE)-ライナーおよびL-PEライナー間の脱臼に対する再置換率、および (3) 無菌性緩みに対する再置換率を比較した。1999年から2018年までに最も一般的に使用されたセメントレスカップ4種類について検討。31,247例のPrimaryTHAの検討を行った。L-PE群は男性49%nN-PE群は42%で性別で有意差を認めた。また疾患についてもOA患者がL-PE群96%、N-PE群95%で有意差をみとめた。年齢(平均66.9年)、BMI(平均29±6kg/m2)およびASAなど他の患者特性に差はなかった。平均追跡期間は5.1年(SD 3.9)で、最長追跡期間は19.3年であった。20,240例のL-PEライナーと11,007例のN-PEライナーの間で比較した。高架橋ポリエチレンはリップライナカップの99%と中性ライナカップの85%であった。関連ハザード比はKaplan‐Meier無修正推定プロットによるCox回帰分析を用いて計算した。L-PEライナーの10年でのKaplan‐Meier生存率は96%(95%信頼区間95.4から96.2)、N-PEライナーでは95%(95%信頼区間94.7から95.9)であった。年齢、性別アプローチ、大腿骨頭サイズの調整した後、全原因の再置換リスクは、L-PEライナーよりもN-PEライナーで大きかった(HR 1.17[95%信頼区間1.06から1.36];p=0.032)。L-PEライナーを有する患者よりもN-PEライナーを有する患者で脱臼による再置換のリスクが高かった。(HR 1.84[95%信頼区間1.41から2.41];p<0.001)。無菌性ゆるみでの再置換率に差はなかった(HR 0.85[95%信頼区間0.52から1.38];p=0.511)。L-PEライナーの使用は、N-PEライナーと比較して、ProimaryTHAを受ける患者での無菌性弛緩率と関連していなかった。LーPEライナーは、全原因、早急による再置換率をていかさせ、また無菌性ゆるみによる再置換術の率には関連しなかった。 <論評> 正直意外な結果ですね。 自分の臨床的経験からもリップ付きライナーを用いることで摩耗をきたした症例を経験したことがあり、リップ付きライナーはゆるみにつながるかなと思い普段から使用していませんでした。またその設置方向によっては帰ってインピンジメントの原因となった例も経験し、以上からリップ付きライナーについては否定的な立場です。 そもそも西洋人で一次性OAが多く変形の程度が少ないのであろうと思うところでのリップ付きライナー仕様の頻度が高いこと、(全体の70%でリップ付きライナーを使用)またクロスリンクポリエチレンの使用がリップなしライナー群で少ないことから何かしらの施設間、術者感のバイアス、また手術年次でのバイアスが掛かっているのではないかと考えます。 Letter書いて見ようかな。