ブログの管理人です。
必要に迫られましたので読んでみました。(笑)
Summary and recommendation
・初期治療の目的は、蛇毒の全身への拡散を遅らせながら、一刻も早く病院へ連れてゆくことである。
・圧迫固定法は全身症状の出現や、壊死などの局所所見があるときにのみ用いたほうがよい
様々な臨床症状が問題となるが、主要な問題としては神経毒、ショック、凝固異常、横紋筋融解と腎不全の出現である。
その地方ごとに蛇の種類について知っておくことが重要である。もし蛇咬傷の治療経験に乏しいようであれば専門家に早めに相談するほうがよい。蛇の種類に応じて臨床症状、血液検査などをおこなってゆくとよい。
抗血清の使用についてはその益と害についてよく検討された上でなされなければならない。局所の症状が著しい場合や全身症状の出現など、投与したために生じる有益性が害を上回る際以外には投与しない。
専門のWebサイトで調べたり、聞いたりすることが重要である。
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・野外で行えること
できるだけ速やかに適切な医療機関に搬送することがもっとも重要である。
基本原則
-蛇の縄張りから傷病者を脱出させること
-受傷部位を心臓より低く保ち、安静を保つこと
-持っている薬剤などの情報提供ができるようにしておくこと
-もし可能であれば、デジカメなどで蛇体の一部でも写真に撮れるとよい。死んでいても決して蛇には触らない。(死んだ直後だと咬む反射が残っているため)
-とにかく早く病院へ運ぶことが重要
圧迫固定は全身症状が出現している場合、壊死などの重篤な局所所見が生じている場合に考慮すべきである。
口や、機械的に毒を排出することは推奨されない。ターニケットによる阻血も神経障害を悪化させるだけであるので行わない
・病院で行うこと
蛇の種類、それぞれの蛇毒によって起こりうる症状に応じて対応する
まず牙痕の確認。局所症状に乏しい場合もある。重症な全身症状が、嘔気、腹痛、頭痛などの非特異的な症状から発症することがあるので十分な注意が必要である。
各毒による特異的な症状
・神経毒:複視、眼瞼下垂、進行性の球麻痺
・凝固異常:凝固亢進、線溶系の低下ともいずれとも起こしうる。血液検査を継時的に行うことで評価可能である。
・血圧低下、ショック
・横紋筋融解:CK上昇、高カリウム血症の存在。尿検査で潜血反応が見られた時には注意が必要
・腎機能低下:蛇毒、血圧低下、横紋筋融解など様々な原因で腎機能低下が起こりうる。12歳以下、抗血清の投与が遅かった場合、CKが2000以上になった場合には腎機能低下をきたしやすい。90ml/h以上の補液を行う必要がある。
症状が乏しくてもとにかく慎重に経過観察が必要である。周囲の医療環境を勘案してそれぞれの医療施設ごとでの帰宅許可基準の作成が必要である。
酸素投与は神経毒による呼吸不全の症状をマスクしてしまう可能性があるので、ルーチンには行わない。
抗生剤のルーチンな投与は疑問がのこる。RCTでは感染、膿瘍の形成を低下させたというデータはない。
抗蛇毒血清についてはその投与については慎重でなければならない。(高い確率で何かしらのアレルギー反応をきたしうる)
・ショック、凝固異常のような明らかな全身症状が出現しているとき
・壊死などの重篤な局所障害が出現しているとき
にのみその使用を考慮
血清を使用したさいにおこる有害反応は下記の3つのパターンがある
・急性のアレルギー反応
・発熱反応
・血清病
これらの反応を予防するために1、ボスミンの事前皮下注。2、抗ヒスタミン剤の事前投与などにはその有効性はない。
ただ、何が起こってもよいようにボスミンを手元に準備しておいてから血清は投与すること。
それぞれの病変への対応
・局所
筋膜切開は明らかなコンパートメント症候群の兆候が表れるまでは行う必要はない。
・神経症状
呼吸筋麻痺に伴う症状が問題となる。呼吸数の低下などに注意が必要。挿管などの準備をしておく
・凝固異常
血清の使用なしには凝固異常の改善は望めない。発症したら血清をまず使用。そのうえで血漿交換などを考慮。ヘパリンの投与は有用ではない。
・血圧低下
必要に応じてIVHを確保
・横紋筋融解
しっかりと生食で補液を行う。マンニトールの使用は特に有用ではない。
・腎機能低下
循環血症量の保持。必要に応じて透析を考慮。
<追記>
ジャパンスネークセンター(㈶日本蛇族学術研究所)のHPの中にある”ヘビ百科”がよくまとまっているのでそちらも参考にしてください。電話しても詳細に教えてくださるそうですので日中であれば考慮すべき価値があるかと思います。