Background:
臨床的な新生児の股関節スクリーニングは股関節の不安定性や脱臼・亜脱臼のリスクを同定するために行われる。しかし、両親や公共医療サービスに対するスクリーニングの費用に関する情報は限られている。この研究の目的は新生児の股関節不安定性の診断および管理における超音波の使用に関する費用を評価するものである。
Methods:
前向き経済的研究を股関節のRCTと共同で行った。UKおよびアイルランドの33施設629名を超音波検査群314名と臨床的評価群315名にランダムに割付けした。Outcomeの情報はカルテや股関節のtrialから得た。Resource情報はカルテや定期的な家族の横断的調査から得た。患者当たりの費用を得るために典型的な単価をresource情報に適応した。2群における平均費用を計算し、比較した。
Results:
患者あたりの公共医療サービスの全費用の平均は超音波検査群で1298$±2168、臨床評価のみの群で1488$±2912であり、差は190$であった。両親にかかる費用では、超音波検査群でsplintingに関する費用が有意に少なく、臨床評価のみの118$と比べて92$と平均26$少なかった。両親にかかる外科的治療に関連した費用と全費用についても、有意ではないが超音波検査群で僅かに少なかった。
Conclusions:
今回の結果より、臨床的に股関節に不安定性のある新生児の管理において超音波の使用は費用負担を増加させず、公共医療サービスと両親に対する費用の軽減をもたらすかもしれないことが示唆される。
Table Ⅰ
Primary-careの費用とこの研究の対象となったメインの臨床事項(splintingと外科手術)との関係について調査した回帰分析結果。
Table Ⅱ
ランダム化割付けによる医療資源の平均使用と医療費
Table Ⅲ
Splinting・外科手術と家族への費用負担の関係
Table Ⅳ
2群におけるsplinting・外科手術に関連した家族の費用負担
Discussion
医療計画の方針を立てる上での信頼の置ける経済的評価の重要性が今認識されてきており、ランダム化によりそのエビデンスのバイアスは最小となる。本研究は新生児の股関節不安定性の診断・管理における超音波に関する費用を調べた最初のtrialである。結果から新生児あたり43$以上超音波にかかるが、これはほかの医療費、特に入院費用などで相殺される。これらほかの医療費は超音波群でわずかではあるが少ない。経済的評価の標準的方法論と同様、先股脱に関連した過失へのclaimに関する費用は含めなかった。我々は2002年UKであったそのようなclaimを調べ、結果に影響を与えるほどではなかったと結論付けた。しかし、訴訟率の多い国では、その影響が出る可能性がある。
我々の研究では先股脱が疑われ治療された場合に、家族により高い費用がかかることを示し、超音波群と比較し臨床評価のみの群でより高いsplintingの費用がかかったことも示している。
システムの違いにより他国にそのまま結果を当てはめることはできない。しかし、今研究はこの国でエビデンスが欠けていたため行ったもので、他国でも超音波の役割による議論があれば興味がもたれるべきである。また、その国の発症率でも本研究との差が出るかもしれない。異なったスクリーニング方法での国の費用を評価したものはスウェーデンやドイツから以前に報告されている。しかし、我々の結果と一まとめにはできない。これらの結果は費用と利益のバランスを評価する費用対効果の分析の重要性が増していることを示している。
股関節エコーは多くの国で臨床手技として加えられているが、施行者によりきちんと使われているかについては不確定である。家族の不安などの非経済的費用の重要性は、股関節のtrialで解析され、別の研究で報告される。
《論評》
小児の股関節エコーなんて意味ない!!と言い続けながらイヤイヤやっていましたがそんなことはないんですね。重症例を早期に見つけたりするためにも必要な手技なのでスクリーニングとして行うことは必要だということがわかりました。
2010年1月28日木曜日
2010年1月13日水曜日
2010.1.16 up to date. Intraarticular and soft tissue injections: What agent(s) to inject and how frequently?
歴史
20世紀初頭にはホルマリン、石油、油、乳酸などを関節内に注射したがほとんど効果が得られなかった。しかしながらHollanderがハイドロコルチゾンと三臭化ブチルの投与比較試験を行ったがハイドロコルチゾンのほうが効果が高かった。
いかにその後に行われた研究について述べる。
・デポメドロールとケナログはほかの長時間作用性ステロイドに比べ注射後の再燃が少ない
・アリストスパンは水溶性で無いため長時間効果がある。
・軟部組織の萎縮や腱の断裂といった現象は局所麻酔薬と混濁させることによって減らすことが出来る。
・ステロイドの懸濁液は静菌効果を期待して局所麻酔薬として使われていた。
大規模なrandomised trial はない。1993のアメリカでのリウマチ学会に参加したメンバーで有効率が62%であったという報告だけである。
この報告の後、アメリカの臨床家たちは以下のような疑問を抱いた
・どのステロイドをどれくらいの量投与すべきであるか。
・ステロイドに局所麻酔薬は混ぜたほうがよいのか
・注射の後に安静は必要であるのか。
ケナログは欧米で好んで用いられ、デポメドロールは東洋で好んで用いられる。また、アリストスパンは中東で用いられることが多い。その濃度はさまざまであったが実際に膝の注射で用いられた量は1mlばかりであった。
1970年代中ごろからリドカインとステロイドを混ぜることが多くなった。(40%くらいの濃度にする)1985年以降にリウマチ医としてトレーニングを受けた医師の75%がリドカインとステロイドの混合を行っているという調査がある。しかしそのうちの9%しか、混合することで生じる生体活性での問題を深刻に考えていなかった。
このように注射が地理的背景や年代別の背景を持っていることは関節内注射が既に
風習と化してしまっているということである。本文で言えることは関節内注射は一部で局所にしか効かず、その効果も限定的である。またさまざまな副作用についての報告もなされているが関節内注射が人気のある手技である理由を説明することは難しい。合併症が起こることはきわめて少ない。表1にその合併症について記載する。
推奨
40mgを膝、肩のような大関節に。手関節、肘関節のような関節には30mgを、手の指の関節には10mgの注射を行う。
ステロイドに局所麻酔薬を混ぜるべきか
局所麻酔薬でステロイドを希釈することで、麻酔による一時的な疼痛軽減効果と共に以下のような効果が考えられている。
・ステロイドによる筋萎縮を減らすことが出来る。
・注射後の再燃を減らすことが出来る
・いい場所に注射できれば疼痛が速やかに改善することが知られている
これらの理由が個々の患者さんにとっては重要な事柄である。肩の腱板が痛んでいる
患者さんでは注射をすることで疼痛は取れるが筋の萎縮によって断裂する可能性が高くなる。
注射後の再燃はケナログを使ったときよりも懸濁剤を用いたときにより起こる。注射後48時間以内に起こるのでそれによって医原性の感染と鑑別する必要がある。結晶による炎症よりも感染による炎症のほうがすこし反応が遅いような感じがするというのが臨床上での違いである。注射後の再燃はどこでも起こりうるが感染の場合には関節内注射以外ではまずまれである。
肩の疼痛部位をはっきりとさせて打つ注射は適当に関節内に打つ注射よりも有効であったとする臨床研究がある。その注射が効いたかどうか調べることは診断の助けにもなる。外来で局所麻酔薬の効果が出て疼痛が取れたが、家に帰ってまた痛みが出てきたということであればそれは注射のみで治療することが困難な病態である可能性がある。
しかしながら局所麻酔薬による好ましい効果を除けば病態にかかわらず感覚を低下させている効果しかない。
リドカインをステロイドに混ぜることは大きく二つの問題がある。ひとつはいくつかのバイアルから混合するということと、もうひとつはリドカインによるステロイドの凝集効果である。
・多数のバイアルから採取することで感染のリスクが増す。感染のリスクを増してまで行うような行為ではない。
・リドカインによるステロイドの凝集によってどれほどその効果が減弱するかということは明らかではない。手根管症候群の手術で固まりになったステロイドが認められたという報告もある。すなわち半永久的にステロイドがその場所に残るかもしれない。
・リドカインですぐに痛みをとる必要がない。肩の注射が正しい位置に打たれていればそれはステロイドの効果である。
推奨
このような場合にはリドカインとステロイドを混ぜましょう。
・肩の注射でいろんなところに麻酔効果を期待する場合
・手の小さな関節に打つときには腱への悪影響を考慮して等倍に薄めたものを使用する
注射の頻度
いくつかの権威からステロイドの関節内注射は制限のもとで行われるべきとされている。変形性関節症の場合には一生のうち、4回。ひどいRAの場合には毎月1回。繰り返し関節内にステロイドを投与することは関節の変性を進行させることとなる。
・関節内へのステロイド投与での感染率は6人/100000人であるので、まず短期では安全な方法であるといえる。
・RAの患者では年間10回の関節内投与を行ったが関節軟骨の変性が少なかった。
関節軟骨の変性の程度も緩やかであった。
コラーゲン分解酵素などの働きを抑えることが報告されている。滑膜細胞の表面にあるサーファクタントを活性化し、関節軟骨にかかる力を分散するということが知られている。
これからするとステロイドの関節内注射は関節軟骨によい方向に働く。どうして関節注射の回数は制限するべきであるとされているのだろうか。
それの基礎となる臨床研究ではステロイドの注射を行っていた群でよりOAが進行したとするものである。しかしながらこの研究はランダム化されておらず、またOAの進行事態もその疾患、患者によるものであった可能性がある。
別の研究でもRAの患者にステロイドの関節内注射を行ったが関節の厚さには変化がなく、ステロイドは関節の保護にも破壊にも関与していない可能性が示唆された。
筆者らの研究では関節ない注射を行うことでRAで痛んでいく軟骨のスピードを遅らせることが出来たのではないかと推測している。
以上のことからステロイドの関節内注射は関節の炎症性の病変ではむしろその進行を抑制するように働くのかもしれない。
効果の持続期間は初期の報告では数ヶ月という報告があるが、現在では6週間間を空けるレジメで注射している。年に1,2回ということもある
OAのばあいにはこれに比べると効き難い。6週間ということもある。
推奨
3ヶ月おきの注射が望ましい。OAの場合には効果がはっきりとあるときにのみ行う。6週間ごとでステロイドの注射を継続的に行っていると皮膚にステロイドの副作用が現れてくる。
ヒアルロン酸
メタ解析で痛みを有意にとるとされているが実際の臨床ではたいしたことがない。OAの進行を抑制するかどうかについては不明である。
ヒアルロン酸もメチルプレドニゾロンも同程度の抗炎症効果がある。
物理的な作用よりもどちらかというと薬理的、化学的効果を期待されている。その粘張性によって滑膜保護作用がある可能性がある。
患者の選択
筆者らはステロイドの関節内注射を行って効果が無かった場合ヒアルロン酸の関節内注射を行っている。これはヒアルロン酸ときくとそういう自然なものが好きな患者さんの受けがよいからである。
推奨
ステロイドの関節内注射が効かない患者さんに膝にヒアルロン酸を打ってください。
20世紀初頭にはホルマリン、石油、油、乳酸などを関節内に注射したがほとんど効果が得られなかった。しかしながらHollanderがハイドロコルチゾンと三臭化ブチルの投与比較試験を行ったがハイドロコルチゾンのほうが効果が高かった。
いかにその後に行われた研究について述べる。
・デポメドロールとケナログはほかの長時間作用性ステロイドに比べ注射後の再燃が少ない
・アリストスパンは水溶性で無いため長時間効果がある。
・軟部組織の萎縮や腱の断裂といった現象は局所麻酔薬と混濁させることによって減らすことが出来る。
・ステロイドの懸濁液は静菌効果を期待して局所麻酔薬として使われていた。
大規模なrandomised trial はない。1993のアメリカでのリウマチ学会に参加したメンバーで有効率が62%であったという報告だけである。
この報告の後、アメリカの臨床家たちは以下のような疑問を抱いた
・どのステロイドをどれくらいの量投与すべきであるか。
・ステロイドに局所麻酔薬は混ぜたほうがよいのか
・注射の後に安静は必要であるのか。
ケナログは欧米で好んで用いられ、デポメドロールは東洋で好んで用いられる。また、アリストスパンは中東で用いられることが多い。その濃度はさまざまであったが実際に膝の注射で用いられた量は1mlばかりであった。
1970年代中ごろからリドカインとステロイドを混ぜることが多くなった。(40%くらいの濃度にする)1985年以降にリウマチ医としてトレーニングを受けた医師の75%がリドカインとステロイドの混合を行っているという調査がある。しかしそのうちの9%しか、混合することで生じる生体活性での問題を深刻に考えていなかった。
このように注射が地理的背景や年代別の背景を持っていることは関節内注射が既に
風習と化してしまっているということである。本文で言えることは関節内注射は一部で局所にしか効かず、その効果も限定的である。またさまざまな副作用についての報告もなされているが関節内注射が人気のある手技である理由を説明することは難しい。合併症が起こることはきわめて少ない。表1にその合併症について記載する。
推奨
40mgを膝、肩のような大関節に。手関節、肘関節のような関節には30mgを、手の指の関節には10mgの注射を行う。
ステロイドに局所麻酔薬を混ぜるべきか
局所麻酔薬でステロイドを希釈することで、麻酔による一時的な疼痛軽減効果と共に以下のような効果が考えられている。
・ステロイドによる筋萎縮を減らすことが出来る。
・注射後の再燃を減らすことが出来る
・いい場所に注射できれば疼痛が速やかに改善することが知られている
これらの理由が個々の患者さんにとっては重要な事柄である。肩の腱板が痛んでいる
患者さんでは注射をすることで疼痛は取れるが筋の萎縮によって断裂する可能性が高くなる。
注射後の再燃はケナログを使ったときよりも懸濁剤を用いたときにより起こる。注射後48時間以内に起こるのでそれによって医原性の感染と鑑別する必要がある。結晶による炎症よりも感染による炎症のほうがすこし反応が遅いような感じがするというのが臨床上での違いである。注射後の再燃はどこでも起こりうるが感染の場合には関節内注射以外ではまずまれである。
肩の疼痛部位をはっきりとさせて打つ注射は適当に関節内に打つ注射よりも有効であったとする臨床研究がある。その注射が効いたかどうか調べることは診断の助けにもなる。外来で局所麻酔薬の効果が出て疼痛が取れたが、家に帰ってまた痛みが出てきたということであればそれは注射のみで治療することが困難な病態である可能性がある。
しかしながら局所麻酔薬による好ましい効果を除けば病態にかかわらず感覚を低下させている効果しかない。
リドカインをステロイドに混ぜることは大きく二つの問題がある。ひとつはいくつかのバイアルから混合するということと、もうひとつはリドカインによるステロイドの凝集効果である。
・多数のバイアルから採取することで感染のリスクが増す。感染のリスクを増してまで行うような行為ではない。
・リドカインによるステロイドの凝集によってどれほどその効果が減弱するかということは明らかではない。手根管症候群の手術で固まりになったステロイドが認められたという報告もある。すなわち半永久的にステロイドがその場所に残るかもしれない。
・リドカインですぐに痛みをとる必要がない。肩の注射が正しい位置に打たれていればそれはステロイドの効果である。
推奨
このような場合にはリドカインとステロイドを混ぜましょう。
・肩の注射でいろんなところに麻酔効果を期待する場合
・手の小さな関節に打つときには腱への悪影響を考慮して等倍に薄めたものを使用する
注射の頻度
いくつかの権威からステロイドの関節内注射は制限のもとで行われるべきとされている。変形性関節症の場合には一生のうち、4回。ひどいRAの場合には毎月1回。繰り返し関節内にステロイドを投与することは関節の変性を進行させることとなる。
・関節内へのステロイド投与での感染率は6人/100000人であるので、まず短期では安全な方法であるといえる。
・RAの患者では年間10回の関節内投与を行ったが関節軟骨の変性が少なかった。
関節軟骨の変性の程度も緩やかであった。
コラーゲン分解酵素などの働きを抑えることが報告されている。滑膜細胞の表面にあるサーファクタントを活性化し、関節軟骨にかかる力を分散するということが知られている。
これからするとステロイドの関節内注射は関節軟骨によい方向に働く。どうして関節注射の回数は制限するべきであるとされているのだろうか。
それの基礎となる臨床研究ではステロイドの注射を行っていた群でよりOAが進行したとするものである。しかしながらこの研究はランダム化されておらず、またOAの進行事態もその疾患、患者によるものであった可能性がある。
別の研究でもRAの患者にステロイドの関節内注射を行ったが関節の厚さには変化がなく、ステロイドは関節の保護にも破壊にも関与していない可能性が示唆された。
筆者らの研究では関節ない注射を行うことでRAで痛んでいく軟骨のスピードを遅らせることが出来たのではないかと推測している。
以上のことからステロイドの関節内注射は関節の炎症性の病変ではむしろその進行を抑制するように働くのかもしれない。
効果の持続期間は初期の報告では数ヶ月という報告があるが、現在では6週間間を空けるレジメで注射している。年に1,2回ということもある
OAのばあいにはこれに比べると効き難い。6週間ということもある。
推奨
3ヶ月おきの注射が望ましい。OAの場合には効果がはっきりとあるときにのみ行う。6週間ごとでステロイドの注射を継続的に行っていると皮膚にステロイドの副作用が現れてくる。
ヒアルロン酸
メタ解析で痛みを有意にとるとされているが実際の臨床ではたいしたことがない。OAの進行を抑制するかどうかについては不明である。
ヒアルロン酸もメチルプレドニゾロンも同程度の抗炎症効果がある。
物理的な作用よりもどちらかというと薬理的、化学的効果を期待されている。その粘張性によって滑膜保護作用がある可能性がある。
患者の選択
筆者らはステロイドの関節内注射を行って効果が無かった場合ヒアルロン酸の関節内注射を行っている。これはヒアルロン酸ときくとそういう自然なものが好きな患者さんの受けがよいからである。
推奨
ステロイドの関節内注射が効かない患者さんに膝にヒアルロン酸を打ってください。
2010年1月7日木曜日
2010.1.7 BJSM videos(from Youtube) shoulder exam inspestion and palpation
肩の診察方法の動画です。
全て英語なので,listening trainingをかねて…。笑
http://www.youtube.com/watch?v=Xf52jbNA7wg&feature=related
視診,触診の重要さを伝える動画です。
肩峰を後方から触るとSLAP損傷が分かると言えるのがオドロキ!!
全て英語なので,listening trainingをかねて…。笑
http://www.youtube.com/watch?v=Xf52jbNA7wg&feature=related
視診,触診の重要さを伝える動画です。
肩峰を後方から触るとSLAP損傷が分かると言えるのがオドロキ!!
2010年1月4日月曜日
2010.1.4 JBJS(Br) Cemented versus uncemented hemiarthroplasty for intracapsular hip fractures
要旨
400人の転位した大腿骨頚部骨折の患者に対して,Austin-Mooreのセメントレスタイプの人工骨頭とThompsonのセメントタイプの人工骨頭との比較をするための無作為割付試験を行った.盲検化した状態で2年後、5年後の臨床評価を看護師によって行った。患者の平均年齢は84歳(61歳から104歳).308人(77%)が女性.
術後3ヶ月での疼痛の残存はセメントタイプの人工骨頭のほうが有意に少なかった.術後6ヵ月後での歩行能力の獲得の程度はセメントタイプのほうが有意に優れていた.術後の合併症については両群に差を認めず,また死亡率にも差を認めなかった.
セメントを用いた人工骨頭置換術は合併症を増やすことなく,Austin-Moore式の人工骨頭よりも術後の痛みが少なく、また有意に移動能力の低下を起こさないようにすることが出来る.
表1 患者の選定基準と除外基準
表2 移動能力の判定基準 3点満点 自力歩行が出来れば3点
図1 今回の研究のフローチャート
表3 患者背景
表4 手術と入院期間の詳細について セメントタイプのほうが麻酔時間、手術時間とも有意に長い。術中骨折がセメントレスタイプで14例ある。
表5 周術期合併症 セメントレスタイプのほうが肺炎が多い以外には差が無い
表6 晩期合併症 両群に差は無い
図2 生命予後は両群で差は無い
表7 術後の疼痛の残存の程度.術後3ヶ月目の時点においてのみセメントタイプ人工骨頭のほうが優れる
図3 疼痛の変化のグラフ 優位な差は出ないものの術後早期からセメントタイプ人工骨頭のほうが痛みが少ない
表8 術後の移動能力の減少の程度 6ヶ月,1年の時点でセメントタイプ人工骨頭のほうが優れる
考察
この研究は盲検化された無作為割付研究としてはもっとも大規模な報告である。今まで小規模な研究で言われてきた術後の痛みが少ないとか、術後の復帰率がよいということをはっきりと示すことが出来た。また、セメントを用いることで手術時間が延びるということが患者の不利益につながらないということもわかった。この研究の強みはより多くの患者が参加できるようにinclusion
criteriaを広げてあること,フォローアップ中の脱落が少ないこと、一般的な治療を行っていること、盲検化した状態で評価を行っていることである。最重要の評価事項として死亡率、術後の疼痛、移動能力を測定した。最初の外来でChanleyのVASスケールを用いた。これは高齢の患者に対しては簡便であるということと電話でのフォローアップを可能とするからである。今までほかの研究ではChanleyの痛みのVASスケールを用いた研究は無いが、簡便で信頼性の置ける方法であると考える。
今回の研究では50項目にも及ぶさまざまな項目について調査を行った。結果としてαエラーがP<0.05とすると出現してしまうのでBonferroniの校正を用いた。これで補正を行っても術後の疼痛については有意な差が得られた。だからこの研究の最大の目的のひとつであるセメントを用いると術後の痛みが減少するということが統計学的な誤差であることはほとんどないものと考えられる。
再置換術についてはセメントレス群で多い傾向にあったものの統計学的に有意な差は得られなかった。再置換にいたらなかったのは被験者が高齢であることで、疼痛があってもそのまま見ていることが考えられる。オーストラリア国立人工関節登録センターのデータによればAustin-MooreタイプよりもThompsonタイプのほうが再置換率が低いと報告されている。(6%対4%)。われわれの研究では6%対3%であった。
以前1982年の報告ではセメントタイプでもセメントレスタイプでも死亡率に差は無く、歩行能力と疼痛の2点でセメントタイプが優れるという報告がある。以後の多数の研究でも同様な結果がえられることが多い。
この研究は英国で普段使われるAustin-MooreとThompsonタイプを比較したが、今後セメントレスタイプとして用いられているHydroxyapatite-coatedのセメントレスタイプとの比較は行ってもよいのかも知れない。
今後人工骨頭置換術はセメントで行うべきであると考える。
《論評》
ハイ、イギリスの先生ならこの論文のようにおっしゃると思います。(笑)。この結果は自分の経験と照らし合わせても妥当な結果であると思います。
セメントタイプの人工関節置換は正しい手技、洗練されたチームで行われれば安定した結果を得ることの出来る優れた方法であると考えます。
しかしながら筆者らが書いてあるように手術時間の延長の問題はあると思います。また慣れていないチームでセメント人工関節を行うことはストレスで危険を伴いますし。
日整会にきていたマサチューセッツの先生なんかセメントは遠からず駆逐されるだろうと言い切ってましたし。
セメント、セメントレスは術者の哲学で、何を手術に求めるかじゃ無いでしょうか。
400人の転位した大腿骨頚部骨折の患者に対して,Austin-Mooreのセメントレスタイプの人工骨頭とThompsonのセメントタイプの人工骨頭との比較をするための無作為割付試験を行った.盲検化した状態で2年後、5年後の臨床評価を看護師によって行った。患者の平均年齢は84歳(61歳から104歳).308人(77%)が女性.
術後3ヶ月での疼痛の残存はセメントタイプの人工骨頭のほうが有意に少なかった.術後6ヵ月後での歩行能力の獲得の程度はセメントタイプのほうが有意に優れていた.術後の合併症については両群に差を認めず,また死亡率にも差を認めなかった.
セメントを用いた人工骨頭置換術は合併症を増やすことなく,Austin-Moore式の人工骨頭よりも術後の痛みが少なく、また有意に移動能力の低下を起こさないようにすることが出来る.
表1 患者の選定基準と除外基準
表2 移動能力の判定基準 3点満点 自力歩行が出来れば3点
図1 今回の研究のフローチャート
表3 患者背景
表4 手術と入院期間の詳細について セメントタイプのほうが麻酔時間、手術時間とも有意に長い。術中骨折がセメントレスタイプで14例ある。
表5 周術期合併症 セメントレスタイプのほうが肺炎が多い以外には差が無い
表6 晩期合併症 両群に差は無い
図2 生命予後は両群で差は無い
表7 術後の疼痛の残存の程度.術後3ヶ月目の時点においてのみセメントタイプ人工骨頭のほうが優れる
図3 疼痛の変化のグラフ 優位な差は出ないものの術後早期からセメントタイプ人工骨頭のほうが痛みが少ない
表8 術後の移動能力の減少の程度 6ヶ月,1年の時点でセメントタイプ人工骨頭のほうが優れる
考察
この研究は盲検化された無作為割付研究としてはもっとも大規模な報告である。今まで小規模な研究で言われてきた術後の痛みが少ないとか、術後の復帰率がよいということをはっきりと示すことが出来た。また、セメントを用いることで手術時間が延びるということが患者の不利益につながらないということもわかった。この研究の強みはより多くの患者が参加できるようにinclusion
criteriaを広げてあること,フォローアップ中の脱落が少ないこと、一般的な治療を行っていること、盲検化した状態で評価を行っていることである。最重要の評価事項として死亡率、術後の疼痛、移動能力を測定した。最初の外来でChanleyのVASスケールを用いた。これは高齢の患者に対しては簡便であるということと電話でのフォローアップを可能とするからである。今までほかの研究ではChanleyの痛みのVASスケールを用いた研究は無いが、簡便で信頼性の置ける方法であると考える。
今回の研究では50項目にも及ぶさまざまな項目について調査を行った。結果としてαエラーがP<0.05とすると出現してしまうのでBonferroniの校正を用いた。これで補正を行っても術後の疼痛については有意な差が得られた。だからこの研究の最大の目的のひとつであるセメントを用いると術後の痛みが減少するということが統計学的な誤差であることはほとんどないものと考えられる。
再置換術についてはセメントレス群で多い傾向にあったものの統計学的に有意な差は得られなかった。再置換にいたらなかったのは被験者が高齢であることで、疼痛があってもそのまま見ていることが考えられる。オーストラリア国立人工関節登録センターのデータによればAustin-MooreタイプよりもThompsonタイプのほうが再置換率が低いと報告されている。(6%対4%)。われわれの研究では6%対3%であった。
以前1982年の報告ではセメントタイプでもセメントレスタイプでも死亡率に差は無く、歩行能力と疼痛の2点でセメントタイプが優れるという報告がある。以後の多数の研究でも同様な結果がえられることが多い。
この研究は英国で普段使われるAustin-MooreとThompsonタイプを比較したが、今後セメントレスタイプとして用いられているHydroxyapatite-coatedのセメントレスタイプとの比較は行ってもよいのかも知れない。
今後人工骨頭置換術はセメントで行うべきであると考える。
《論評》
ハイ、イギリスの先生ならこの論文のようにおっしゃると思います。(笑)。この結果は自分の経験と照らし合わせても妥当な結果であると思います。
セメントタイプの人工関節置換は正しい手技、洗練されたチームで行われれば安定した結果を得ることの出来る優れた方法であると考えます。
しかしながら筆者らが書いてあるように手術時間の延長の問題はあると思います。また慣れていないチームでセメント人工関節を行うことはストレスで危険を伴いますし。
日整会にきていたマサチューセッツの先生なんかセメントは遠からず駆逐されるだろうと言い切ってましたし。
セメント、セメントレスは術者の哲学で、何を手術に求めるかじゃ無いでしょうか。
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