2010年1月13日水曜日

2010.1.16 up to date. Intraarticular and soft tissue injections: What agent(s) to inject and how frequently?

歴史
20世紀初頭にはホルマリン、石油、油、乳酸などを関節内に注射したがほとんど効果が得られなかった。しかしながらHollanderがハイドロコルチゾンと三臭化ブチルの投与比較試験を行ったがハイドロコルチゾンのほうが効果が高かった。
いかにその後に行われた研究について述べる。
・デポメドロールとケナログはほかの長時間作用性ステロイドに比べ注射後の再燃が少ない
・アリストスパンは水溶性で無いため長時間効果がある。
・軟部組織の萎縮や腱の断裂といった現象は局所麻酔薬と混濁させることによって減らすことが出来る。
・ステロイドの懸濁液は静菌効果を期待して局所麻酔薬として使われていた。

大規模なrandomised trial はない。1993のアメリカでのリウマチ学会に参加したメンバーで有効率が62%であったという報告だけである。
この報告の後、アメリカの臨床家たちは以下のような疑問を抱いた
・どのステロイドをどれくらいの量投与すべきであるか。
・ステロイドに局所麻酔薬は混ぜたほうがよいのか
・注射の後に安静は必要であるのか。

ケナログは欧米で好んで用いられ、デポメドロールは東洋で好んで用いられる。また、アリストスパンは中東で用いられることが多い。その濃度はさまざまであったが実際に膝の注射で用いられた量は1mlばかりであった。

1970年代中ごろからリドカインとステロイドを混ぜることが多くなった。(40%くらいの濃度にする)1985年以降にリウマチ医としてトレーニングを受けた医師の75%がリドカインとステロイドの混合を行っているという調査がある。しかしそのうちの9%しか、混合することで生じる生体活性での問題を深刻に考えていなかった。

このように注射が地理的背景や年代別の背景を持っていることは関節内注射が既に
風習と化してしまっているということである。本文で言えることは関節内注射は一部で局所にしか効かず、その効果も限定的である。またさまざまな副作用についての報告もなされているが関節内注射が人気のある手技である理由を説明することは難しい。合併症が起こることはきわめて少ない。表1にその合併症について記載する。

推奨
40mgを膝、肩のような大関節に。手関節、肘関節のような関節には30mgを、手の指の関節には10mgの注射を行う。

ステロイドに局所麻酔薬を混ぜるべきか
局所麻酔薬でステロイドを希釈することで、麻酔による一時的な疼痛軽減効果と共に以下のような効果が考えられている。
・ステロイドによる筋萎縮を減らすことが出来る。
・注射後の再燃を減らすことが出来る
・いい場所に注射できれば疼痛が速やかに改善することが知られている

これらの理由が個々の患者さんにとっては重要な事柄である。肩の腱板が痛んでいる
患者さんでは注射をすることで疼痛は取れるが筋の萎縮によって断裂する可能性が高くなる。

注射後の再燃はケナログを使ったときよりも懸濁剤を用いたときにより起こる。注射後48時間以内に起こるのでそれによって医原性の感染と鑑別する必要がある。結晶による炎症よりも感染による炎症のほうがすこし反応が遅いような感じがするというのが臨床上での違いである。注射後の再燃はどこでも起こりうるが感染の場合には関節内注射以外ではまずまれである。

肩の疼痛部位をはっきりとさせて打つ注射は適当に関節内に打つ注射よりも有効であったとする臨床研究がある。その注射が効いたかどうか調べることは診断の助けにもなる。外来で局所麻酔薬の効果が出て疼痛が取れたが、家に帰ってまた痛みが出てきたということであればそれは注射のみで治療することが困難な病態である可能性がある。
しかしながら局所麻酔薬による好ましい効果を除けば病態にかかわらず感覚を低下させている効果しかない。

リドカインをステロイドに混ぜることは大きく二つの問題がある。ひとつはいくつかのバイアルから混合するということと、もうひとつはリドカインによるステロイドの凝集効果である。

・多数のバイアルから採取することで感染のリスクが増す。感染のリスクを増してまで行うような行為ではない。
・リドカインによるステロイドの凝集によってどれほどその効果が減弱するかということは明らかではない。手根管症候群の手術で固まりになったステロイドが認められたという報告もある。すなわち半永久的にステロイドがその場所に残るかもしれない。
・リドカインですぐに痛みをとる必要がない。肩の注射が正しい位置に打たれていればそれはステロイドの効果である。

推奨
このような場合にはリドカインとステロイドを混ぜましょう。
・肩の注射でいろんなところに麻酔効果を期待する場合
・手の小さな関節に打つときには腱への悪影響を考慮して等倍に薄めたものを使用する

注射の頻度
いくつかの権威からステロイドの関節内注射は制限のもとで行われるべきとされている。変形性関節症の場合には一生のうち、4回。ひどいRAの場合には毎月1回。繰り返し関節内にステロイドを投与することは関節の変性を進行させることとなる。

・関節内へのステロイド投与での感染率は6人/100000人であるので、まず短期では安全な方法であるといえる。
・RAの患者では年間10回の関節内投与を行ったが関節軟骨の変性が少なかった。
関節軟骨の変性の程度も緩やかであった。

コラーゲン分解酵素などの働きを抑えることが報告されている。滑膜細胞の表面にあるサーファクタントを活性化し、関節軟骨にかかる力を分散するということが知られている。
これからするとステロイドの関節内注射は関節軟骨によい方向に働く。どうして関節注射の回数は制限するべきであるとされているのだろうか。

それの基礎となる臨床研究ではステロイドの注射を行っていた群でよりOAが進行したとするものである。しかしながらこの研究はランダム化されておらず、またOAの進行事態もその疾患、患者によるものであった可能性がある。
別の研究でもRAの患者にステロイドの関節内注射を行ったが関節の厚さには変化がなく、ステロイドは関節の保護にも破壊にも関与していない可能性が示唆された。
筆者らの研究では関節ない注射を行うことでRAで痛んでいく軟骨のスピードを遅らせることが出来たのではないかと推測している。

以上のことからステロイドの関節内注射は関節の炎症性の病変ではむしろその進行を抑制するように働くのかもしれない。

効果の持続期間は初期の報告では数ヶ月という報告があるが、現在では6週間間を空けるレジメで注射している。年に1,2回ということもある
OAのばあいにはこれに比べると効き難い。6週間ということもある。

推奨
3ヶ月おきの注射が望ましい。OAの場合には効果がはっきりとあるときにのみ行う。6週間ごとでステロイドの注射を継続的に行っていると皮膚にステロイドの副作用が現れてくる。

ヒアルロン酸
メタ解析で痛みを有意にとるとされているが実際の臨床ではたいしたことがない。OAの進行を抑制するかどうかについては不明である。
ヒアルロン酸もメチルプレドニゾロンも同程度の抗炎症効果がある。
物理的な作用よりもどちらかというと薬理的、化学的効果を期待されている。その粘張性によって滑膜保護作用がある可能性がある。

患者の選択
筆者らはステロイドの関節内注射を行って効果が無かった場合ヒアルロン酸の関節内注射を行っている。これはヒアルロン酸ときくとそういう自然なものが好きな患者さんの受けがよいからである。

推奨
ステロイドの関節内注射が効かない患者さんに膝にヒアルロン酸を打ってください。

1 件のコメント:

  1. ≪論評≫
    関節内注射についてまとめたレビュー。ステロイド注射について一般に言われていることを大きく覆す内容になっていて興味深い。関連する文献を読んで早速今後の方針について検討してみよう。

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