2010年1月28日木曜日

2010.1.27 JBJS(Am) 2005 Economic Evaluation of Ultrasonography in the Diagnosis and Management of DDH in the United Kingdom and Ireland

Background:

臨床的な新生児の股関節スクリーニングは股関節の不安定性や脱臼・亜脱臼のリスクを同定するために行われる。しかし、両親や公共医療サービスに対するスクリーニングの費用に関する情報は限られている。この研究の目的は新生児の股関節不安定性の診断および管理における超音波の使用に関する費用を評価するものである。

Methods:

 前向き経済的研究を股関節のRCTと共同で行った。UKおよびアイルランドの33施設629名を超音波検査群314名と臨床的評価群315名にランダムに割付けした。Outcomeの情報はカルテや股関節のtrialから得た。Resource情報はカルテや定期的な家族の横断的調査から得た。患者当たりの費用を得るために典型的な単価をresource情報に適応した。2群における平均費用を計算し、比較した。

Results:

 患者あたりの公共医療サービスの全費用の平均は超音波検査群で1298$±2168、臨床評価のみの群で1488$±2912であり、差は190$であった。両親にかかる費用では、超音波検査群でsplintingに関する費用が有意に少なく、臨床評価のみの118$と比べて92$と平均26$少なかった。両親にかかる外科的治療に関連した費用と全費用についても、有意ではないが超音波検査群で僅かに少なかった。

Conclusions:

 今回の結果より、臨床的に股関節に不安定性のある新生児の管理において超音波の使用は費用負担を増加させず、公共医療サービスと両親に対する費用の軽減をもたらすかもしれないことが示唆される。
Table Ⅰ

 Primary-careの費用とこの研究の対象となったメインの臨床事項(splintingと外科手術)との関係について調査した回帰分析結果。

Table Ⅱ

ランダム化割付けによる医療資源の平均使用と医療費

Table Ⅲ

 Splinting・外科手術と家族への費用負担の関係

Table Ⅳ

 2群におけるsplinting・外科手術に関連した家族の費用負担

Discussion

 医療計画の方針を立てる上での信頼の置ける経済的評価の重要性が今認識されてきており、ランダム化によりそのエビデンスのバイアスは最小となる。本研究は新生児の股関節不安定性の診断・管理における超音波に関する費用を調べた最初のtrialである。結果から新生児あたり43$以上超音波にかかるが、これはほかの医療費、特に入院費用などで相殺される。これらほかの医療費は超音波群でわずかではあるが少ない。経済的評価の標準的方法論と同様、先股脱に関連した過失へのclaimに関する費用は含めなかった。我々は2002年UKであったそのようなclaimを調べ、結果に影響を与えるほどではなかったと結論付けた。しかし、訴訟率の多い国では、その影響が出る可能性がある。

 我々の研究では先股脱が疑われ治療された場合に、家族により高い費用がかかることを示し、超音波群と比較し臨床評価のみの群でより高いsplintingの費用がかかったことも示している。

 システムの違いにより他国にそのまま結果を当てはめることはできない。しかし、今研究はこの国でエビデンスが欠けていたため行ったもので、他国でも超音波の役割による議論があれば興味がもたれるべきである。また、その国の発症率でも本研究との差が出るかもしれない。異なったスクリーニング方法での国の費用を評価したものはスウェーデンやドイツから以前に報告されている。しかし、我々の結果と一まとめにはできない。これらの結果は費用と利益のバランスを評価する費用対効果の分析の重要性が増していることを示している。

 股関節エコーは多くの国で臨床手技として加えられているが、施行者によりきちんと使われているかについては不確定である。家族の不安などの非経済的費用の重要性は、股関節のtrialで解析され、別の研究で報告される。

《論評》
小児の股関節エコーなんて意味ない!!と言い続けながらイヤイヤやっていましたがそんなことはないんですね。重症例を早期に見つけたりするためにも必要な手技なのでスクリーニングとして行うことは必要だということがわかりました。

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