よくまとまっていると思いますが、TOHとONFHが関連ある。というところは受け入れがたいかんじもあります。ひょっとしたらひょっとするかもしれませんが。
またほそぼそと続けてゆきます。
以下要約
- Introduction
- Transient osteoprosis of hip (以下TOH)は、良性で自然軽快し得る原因不明の疾患である。骨髄浮腫の所見をきたすが、骨髄浮腫の要因は不明である。TOHは一般的に中年男性に見られる。ときに妊娠後期に見られる。TOHは脆弱性骨折の原因となる。二次性のTOH(外傷、炎症、虚血など)もときに見られる。レントゲン写真上で一次性のTOHかそうでないかを鑑別することは極めて困難である。
- 1959年にCurtissが妊娠後のTOHの3例を初めて報告した。出産後しばらくして自然軽快した。1988年にWilsonが骨髄浮腫症候群としてMRIの所見を報告した。1993年にSolomonは骨壊死の有無で予後が違うことを報告し、これらのうち、Osteonecrosisを伴ったものでは圧潰が進むが、Necrosisがないものでは自然軽快することを報告した。
- TOHの報告のいずれもサンプルサイズの小さなCaseSeriesばかりである。表1に1959年から2014年までに報告されたTOHの論文を示す。最終的に97編の論文で437例の報告をこのReviewではまとめることとする。
- 疫学と病態
- TOHは3つの段階に分けられる。第一段階では股関節痛が発症。第2段階では骨吸収。最終段階で改善が認められる
- TOHは、6ヶ月程度の免荷、日常生活動作制限などで自然軽快する股関節痛であるということで鑑別可能である。疼痛は骨髄内圧の上昇、静脈圧の上昇、部分的な骨回転の異常な増加、微小骨折、骨膜への刺激が原因ではないかと考えられている。あまり一般的ではないが、これらの影響で虚血が起こるとONFHになるとする報告もある。
- ONFHとTOHの初期を臨床像、レントゲン写真などで診断することは困難である。ONFHとTOHの治療方針は異なる。TOHだけであれば外科的治療の必要はない。TOHの痛みは突然発症することが多い。いたみの程度も漠然とした痛みから入院が必要となるようなキツイいたみまで様々である。
- 妊娠はTOHの危険因子である。それでも女性よりも男性のほうが多い。発症の危険因子としては外傷、アルコール摂取、喫煙、ステロイド内服、血管損傷、炎症、薬物使用、骨形成不全症が関連すると言われている。平均年齢は40歳。DEXAではいくつかの症例では骨粗鬆症の所見が診られる。ただ、骨粗鬆症が微小骨折のリスクとは言えない。一方、微小骨折は骨髄浮腫の原因となり、DXAで骨粗鬆症と診断される原因となりうる。骨生検をおこなうと局所での幾つかの骨吸収マーカーの上昇が見られる。血液検査上では明らかな上昇は認めない
- TOHの病因は未だ不明である。TOHの初期がONFHと鑑別できるかもわかっていない。外傷、感染、炎症、虚血性疾患、ガン、神経疾患などがある場合にはTOHを考える。妊娠はTOHの危険因子である。似た病気にはMigratory Osteoporosisがあり、局所的に破骨細胞の活動が活性化する。他のリスクにはステロイド、喫煙、甲状腺異常、低リン血症、骨形成不全症、低テストステロン症、低ビタミンD血症が挙げられている
- 診断
- MRIは骨髄浮腫を診断するためにもっとも有用な方法である。TOHでは早ければ48時間でMRIの所見が出現する。TOHはT1でLow.T2でHighになる。STIRや脂肪抑制像がもっともはっきりとした所見がでる。局所の欠損がなく、びまん性に骨髄浮腫が認められる。不整なT1バンド像はストレス骨折を示唆している。TOHの浮腫像は大腿骨頭から大腿骨頸部にかけて認められる。
- TOHの進行と予後については議論がある。Malizosらは浮腫の大きさと症状の持続期間には関連がないことを示した。しかし、軟骨下の病変は比較的速やかに改善が認められる。一方、Ergunらは浮腫が大きさ、軟骨下骨折の存在が回復までに関連すると報告している。
- 発症後6週間程度でX線でも大腿骨頭萎縮の所見がはっきりとしてくる。軟骨下骨折がないことがTOHであることを示している。
- 骨シンチでは3つの段階のいずれでも高い集積をしめし、症状軽快したあとも数週間持続する。局所移動性の骨粗鬆症(RMO)がTOHとよく似た所見を示すが、RMOでは骨密度の低下の進行が認められる。
- 経過と治療
- TOHの治療は骨吸収の抑制や骨形成の促進を考える。ただし、骨折やONFHと診断を間違えないようにしなければならない。TOHは自然軽快する疾患である。ときにONFHに施行するような場合もあると報告している論文もある。
- たしかに、骨髄浮腫による連続性の骨へのダメージがさまざまな症候を引き起こすのかもしれない。
- ONFHとTOHのリスクファクターはアルコール、ステロイド使用など重複するものもある。TOHはONFHの前段階だと報告しているものもある。しかし、TOHは自然回復する疾患なのにたいしてONFHは進行性の疾患であるというちがいがある。
- TOHで骨髄浮腫が起こる機序は不明である。骨髄圧の上昇がみられたとする報告もあり、幾つかの報告では破骨細胞の活性化が認められている。
- TOHの回復までの期間を短くするための方法としてはビスフォスホネート製剤の投与、カルシトニンの投与、テリパラチドの投与などが行なわれているが、コントロールがいずれもない。表3,4,5に各治療についてまとめてみた。ビスフォスホネートではアレディアの静脈内投与は治療期間を短くしたものの、アレンドロネートの内服では今までと変わらなかった。カルシトニン、テリパラチドなどは回復までの時間を1ヶ月程度短くした。妊娠中のビスフォスホネートの内服は胎児に影響するので、カルシトニンの投与のほうが好ましい。
- 手術治療としてのCore decompressionはONFHの治療として存在する。しかしながらTOHに有効かは不明である。
- 合併症と予後
- 軟骨下骨折、大腿骨頸部骨折などはTOHのまれな合併症として知られている。男性、女性とも軟骨下骨折のリスクは同じ程度と知られている。男性の2例は骨形成不全症に発症した。大腿骨頸部骨折は24例で報告され、22例が女性でああった。骨折は妊娠中または出産後におこった。これらの骨折は免荷などの保存療法が行なわれる前に起こった。保存療法の指導は重要であろう。
- TOHがONFHに進行するというのは極稀な合併症であろう。ONFHとTOHの鑑別は極めて重要である。