2016年5月28日土曜日

20160528 CORR Does Teriparatide Improve Femoral Neck Fracture Healing: Results From A Randomized Placebo-controlled Trial

CORRから。
テリパラチドは骨形成型骨粗しょう症治療薬であることから、骨折治癒にも役に立つのでは無いかとするいくつかのpreliminalyな結果が散見されます。
本研究は大腿骨頚部骨折に対してのRCT。

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  • 大腿骨頚部骨折の治療はより改善されていかなければならない。テリパラチド(フォルテオ)は骨形成薬として知られており、骨粗鬆症の患者に対しての適応がある。幾つかの研究でフォルテオは骨癒合を促進するということが言われている。
  • この研究は対象は大腿骨頚部骨折の患者。介入方法はプラセボとテリパラチド。アウトカムは再手術の頻度、レントゲン写真上の骨折治癒の状態、疼痛、歩行速度、安全性について調べた。
  • 6ヶ月と24ヶ月の時点での骨折患者の治癒状況を確認することとし、各群1220例を必要とするところであったが、患者が全く集まらなかったので結局159例の患者を81例のプラセボ、78例のテリパラチドに割りつけた。とにかくn数がすくない。
  • 12ヶ月の時点での再置換術の割合は、プラセボ群が11例中の81例。テリパラチド群が13例中の78例であった。2群間に有意差を認めなかった。12ヶ月の時点での骨折治癒の状況はプラセボ群75%、テリパラチド群73%であった。痛みについてはプラセボ群対テリパラチド群で92%対91%であった。合併症発生割合はプラセボ群49%、テリパラチド群45%であった。
  • とにかくn数が限られていたのでこの結果は調査的なものである。テリパラチドは大腿骨頚部骨折の再手術を減らさない。安全性はプラセボと同様であった。機能予後を調べる必要があるのかもしれない。
  • はじめに
  • 大腿骨頚部骨折に対していーらいリリーのスポンサーシップを受けてその骨癒合について調べてみた。
  • 研究デザイン
  • 当初2012年にPhase3試験として二重盲検無作為割付多施設研究としてスタートした。当初のプライマリーアウトカムは骨癒合率の改善を見ることである。
  • 再手術なし、レントゲン写真上で骨折の治癒、歩行速度の改善、疼痛の改善が見られることをゴールとした。
  • とにかく患者が集まらなかった。当初の予定では10年以上かかってしまいそうであった。サンプルサイズを減らし、期間を短くして研究の達成を優先させた。
  • 対象
  • 50歳以上の大腿骨頚部骨折患者。受傷後7日以内。手術はプロトコールから外した。生命予後が2年以下のものは除外。
  • 骨粗鬆症以外の骨系統疾患、カルシウム値の異常があるもの、PTHが高値であるもの、ビタミンD低値であるものを除外。
  • 術後2週間以内に割りつけ。投与開始。
  • 6ヶ月間テリパラチドまたはプラセボを投与。その後6ヶ月間休薬。全期間にわたってビタミンDとカルシウム製剤の内服を継続していた。
  • 6か月、12か月の時点でアウトカムを確認。
  • 最終的に78例のテリパラチド群、81例のプラセボ群に分けた。
  • 結果は先の抄録に書いた通り。全く差なし。
  • 考察
  • とにかくいろいろな理由で患者の獲得に失敗し、小さなサンプルサイズとなってしまった。
  • 本研究の意義は、ネガティブなデータにも関わらずこうやって報告していることである。

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だいぶはしょりましたが、結論としては テリパラチド惨敗。ということでよいと思います。
その理由として、
1)コントロールがプラセボであること。プラセボコントロールはもっとも差が出やすい試験なのですが、コントロールをプラセボにしても差がでないということはこの研究の対象、もしくは観察項目に問題があったということでしょう
2)COIにいー◯いりりーが明記されている。
企業がバックアップして、行われているにもかかわらず「ネガティブデータでも出したんだぜ」と言われましても。ホントに差がないんだ。としか思えません。
3)患者をenrollできなかった理由が明記されていない。
とにかくいろいろな理由でサンプルサイズが小さくなったと4回位書かれています。その理由については全く明記されること無く終わっていました。なぜこれほど患者が集まらなかったのでしょう。気になります。

個人的には大腿骨頚部骨折の大事なポイントは反対側の骨折をいかに抑制するかだと思います。
本研究も再手術をプライマリーアウトカムにするのではなく、再骨折の抑制が可能であったかどうかを焦点とすべきであったものと思います。

フォ◯テオは大腿骨頚部骨折の患者にルーチンにつかうことは現段階ではオススメ出来ません。ただ、優秀な薬であることは間違いありませんので、次の研究を待ちたいと思います。

2016年5月25日水曜日

20160525 JBJS(am) Percent Body Fat Is More Predictive of Function After Total Joint Arthroplasty Than Body Mass Index

人工関節置換術において、BMIが高いほうが手術成績に影響するということは言われていますが、BMIが高い、とひとくくりにせずにガッチリタイプなのかぽっちゃりタイプなのかでちがってくるのでは?という論文。

抄録
肥満は人工関節置換術に大きな影響を与える。しかし肥満の影響についてはいまだ議論のあるところである。本研究の仮説はBMIよりも体脂肪率のほうが術後成績に影響を与えているのでは無いかというものである。
方法
115例のTKAの患者、100例のTHAの患者。術後2年の成績を調査。術前患者データ。体脂肪率、入院期間、満足度、UCLAスコア、患者立脚型評価を取得。多変量解析を行った。
結果
体脂肪率が高い患者では術中、術後の合併症の発生率が高かった。オッズ比は1.58であった。その他にも術後満足度、UCLAスコアと関連していた。一方BMIは術後成績と関連していなかった。TKAについては患者立脚型評価についても体脂肪率は術前の予測因子となりうることがわかった。
結論
人工関節置換術に置いて、体脂肪率は術後2年の段階での臨床成績、機能回復の予測因子となりうる。患者の術前教育に今回の報告は役に立つ。

はじめに
肥満の患者は増加しており、アメリカでは人口の34.9%が肥満である。肥満は変形性関節のの原因である。肥満患者での人工関節置換術、特にTKAの需要があるため、現在人工関節置換術を受ける患者の半分が肥満である。しかしながら肥満が手術の実際に与える影響については議論がある。肥満が手術に与える影響としては、手術時間の延長、入院期間の延長、創部のトラブルの増加、人工関節感染、費用の増加などが言われている。また肥満と直接関連する合併症としては肥満、心血管イベント、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸、血栓症、低活動性などが言われている。しかしながら肥満の患者は人工関節の術後に痛みが取れるので、患者立脚型評価は改善する。目に見えない危険因子を明らかにすることと、術前に患者に説明をすることができるようになることは必須である。ひょっとすると患者のセレクションがしっかり行うことができればより治療成績の向上に繋がるかもしれない。
BMIは肥満の判断基準として広く受け入れられている。多くの基準がBMIを基準として考えられている。しかしながらBMIでは脂肪太りと筋肉との区別をつけることが出来ないので、元気な筋肉質の人もBMIが高いので肥満に分類されることがある。加えて肥満の形態(中心性、末梢性)というのはBMIでは分からない。中心性肥満のほうがリスクが高い。体脂肪率とは、体の筋肉量と脂肪量とをはっきりと区別するための指標である。したがってしたがって筋肉質の人などではBMIより正確にその患者さんの活動性の指標となる。
いままで体脂肪率と術後経過について評価した論文はなかった。体脂肪率はBMIよりも術後の経過を予測するのに良い指標となりうる可能性がある。そして人工関節置換術後の入院期間の延長や余計な治療を減少させることができるようになるのかもしれない。また、本研究は患者立脚型評価と肥満についての初めての報告である。
  本研究の目的は体脂死亡率と術側の下肢の重さと臨床成績と患者立脚型評価についての関連を調査することである。体脂肪率は術後のリスクファクターとなりうる可能性がある。

方法
2012年から2013年。TKA115例、THA100例の経過観察。2年間の経過観察。前向き研究。患者はすべて変形性関節症。18歳以下、24ヶ月間のフォローが出来なかった例は除外。その他内科疾患を有するもの、再置換例などは除外した。
肥満の評価
術前の慎重と体重を測定。Inbodyを用いて体脂肪率を測定した。この機会は自動で脂肪量や下肢の体重を測定してくれる。この方法は妥当性が評価された方法である。データの取得にわずか2分で結果がでるところがすぐれものである。アメリカで5760ドルでお買い求めできる。
調査項目は手術合併症、感染、再置換率。患者立脚型評価である。メールもしくは電話で問い合わせをした。その他活動性の評価としてUCLAスコアを取得した。膝と股関節に分けて平均値と標準偏差を求めその後多変量解析を行った。

結果
TKA115例、THA100例の検討を行った。平均フォロー期間は24ヶ月。男性105例、女性110例。平均年令62.8歳。手術になった主な原因は変形性関節症であった。平均BMIは31.平均体脂肪率は36.4%、下肢重量は8.7kg。ASAスコアは2または3であった。 患肢重量は多変量解析の結果、手術時間のみの予測因子であった。2.2kg下肢体重が増えるたびに5%手術時間がのびるという結果であった。BMIは入院期間と関連しなかったが、BMIと体脂肪率は両方共退院先(自宅又はケア用のホテル)に違いがあった。体脂肪率は周術期合併症と関連があった。また術直後の合併症によって手術室で再手術となる割合が高かった。これらの指標とBMIとの関連は低かった。最終的に体脂肪率は術中合併症と関連したが、下肢重量、BMIはこれらと関連しなかった。
患者立脚型評価においても、体脂肪率のみが唯一術後結果の予測因子となった。一方BMI,下肢重量は関連しなかった。手術に関する満足度については、THAはTKAよりも満足度が高かった。体脂肪率はBMI、下肢重量と比較して患者満足度と関連している割合が高かった。体脂肪率はBMI、UCLAスコア、術後の疼痛スコアの予測因子であった。体脂肪率はTKAにおいて術後成績、術後の膝の疼痛、ADLと関連していたが、THAとは関連していなかった。BMIは術後ADLと関連していた。下肢重量はいずれの成績とも関連していなかった。
追加の検討として術後成績との関連と、臨床成績の体格の予測因子としてのBMI,体脂肪率のカットポイントの解析を行った。手術時間について、下肢の重量が少ないほど手術時間が短くなることがわかった。ただし、その特性は低い。体脂肪率が上昇すると術後合併症が増加する。また退院後の追加のケアは体脂肪率が33%以上でそのオッズ比が2,15となる。BMIが33以上でOdd比が2.06となる。最終的に患者立脚型評価も体脂肪率に相関して低下していた。

考察
患者の肥満に対する術者側の関心は高くなっている。患者立脚型評価は手術の成績評価に重要となってきている。いままで術後の成績評価は生存率、合併症、失敗率などに焦点が当てられてきた。一方QOL、痛みの変化、活動性などの情報もより優れたものとなってきている。しかしながら術者は患者のニーズと期待の両方に答えられるようなケアの透明性のあるプロセスを容易にするために、両方のようなアウトカム指標を満たすことが求められる。本研究で体脂肪率は術後の患者立脚型評価に影響する。ということが明らかとなった。
臨床的にBMIが30以上、または病的肥満BMI40以上では周術期合併症、入院期間、医療費に影響することが知られている。以前の研究でBMI、体脂肪率の増加は周術期合併症と関連すると報告されてきた。本研究で下肢重量は手術時間と関連する。体脂肪率、またはBMIは退院後の追加のケアが必要になることと、術後の合併症のリスクを上昇させることがわかった。体脂肪率はBMIよりもより術後合併症の予測因子として関連していることがわかった。体脂肪率はまた患者立脚型評価と関連した。TKAにおいては体脂肪率術後ADL、術後疼痛の原因となった。これらの結果はBMIよりも体脂肪率のほうがTKAに関しては術後成績に影響するということである。これらは患者教育に反映されても良い結果であると考える。
本研究の限界はサンプルサイズが小さいこと、合併症を周術期の局所の合併症に限ったことである。このInbodyの測定は体内水分量で測定するのでその時の患者の脱水状態によって影響を受けるかもしれない。しかしそのようなことを検討した報告はない。
以上から体脂肪率は術後の成績に影響すると言える。そしてそれを肥満の患者たちに術前から伝えておくことは重要なことである。
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肥満がダメよといわれてきていましたが、本研究はその中でも体脂肪率に着目して検討を行っています。
この論文の優れているところは患者立脚型評価、満足度が体脂肪率と関連しているということを明らかとしたことです。
体脂肪率は術前に術者が介入しうる因子の一つですから、体重管理だけでなく、合わせて体脂肪率管理もできると良いのかもしれません。
僕も体重だけでなく、体脂肪率も測定するか。。。。最近安いし。笑


タニタ 体組成計 BC-754-WH(ホワイト) 乗るピタ機能で簡単測定





2016年5月23日月曜日

20160523 人工股関節置換術の絵





お手製の人工股関節全置換術の説明用シェーマです。
著作権はがみたけに所属します。
ご利用希望の方はgamitake1919あっとまーくgmail.comまでご連絡ください。

しばらくしたら有料化しよう。笑

2016年5月21日土曜日

本の紹介「変形性股関節症ガイドライン2016」

変形性股関節症診療ガイドライン2016(改訂第2版)


本日の本のご紹介。

たんなるガイドラインと侮ることなかれ。
股関節業界のコクランといえば言い過ぎでしょうが、編集された先生方の仕事のクオリティの高さには脱帽です。

変形性股関節症は、本邦では臼蓋形成不全にともなう二次性の変形性股関節症が多いです。その実情を踏まえて英文だけでなく日本語論文でも査読に耐えられそうなものをピックアップしています。

特に骨切り、股関節温存手術についてはMeta-analysisまでおこなってあり、一読の価値があります。

今後股関節の研究を始めたい、という若手の先生はまずこのガイドラインを熟読してからどこまでわかっているのか。何がわかっていないのかをはっきりさせてから研究を始められると良いと思います。


2016年5月20日金曜日

20160529 BJJ The rate of dislacation is not increased when minimal precations are used after total hip arthroplasty using the posteolateral approach

後方アプローチによる人工股関節全置換術では脱臼が一つの問題となります。脱臼を防ぐために、いわゆる『患者教育』を行っています。
具体的には、股関節を曲げた状態で内旋しない、お姉さんずわりをしない。といったところでしょうか。
さて、本研究はそのような患者教育が有効か?という論文です。

  • アブストラクト
  • THAの主要な合併症として脱臼がある。本研究の仮説はそれほど厳しく脱臼指導をしなくても脱臼率は上がらないのではないか。というものである。
  • ヒストリカルコントロール。以前に厳しく患者教育していた109例。ある時点から注意事項の緩和をした108例の比較検討。両群間に脱臼危険因子の有意差を認めず。大腿骨頭は28ミリから36ミリを使用した。カルテで脱臼の有無を調べた
  • 両群間に差を認めなかった
  • 経験ある術者によって行われるTHAでは28ミリ以上の骨頭を用いれば術後に厳しく肢位についての指導をする必要がない
  • 両群間の指導の比較
    • 厳格群
    • 6週間寝返り禁止。外転枕を入院期間中は装着。90度以上屈曲位、内旋内転禁止。高めの椅子を使用。6週間杖を使用。6週間車の運転禁止
    • 緩和群
    • 睡眠時の体位指導なし。外転枕は麻酔後のみ。最大屈曲、内旋、内転許可、退院後車の運転許可。椅子は普通の高さで良い
    • 両群とも足の交差禁止。後ろ向きに動く時には股関節屈曲位で動くよう指導
  • 考察
    • 両群間に差を認めなかった。この事から脱臼に対する中止事項は緩和してよいと考えられる。ただ、もう少し大きなサンプルサイズが必要である。
    • 脱臼の注意事項についての研究は少ない。Shmidtらが6週間の注意期間を4週間に減らしても脱臼率は上がらなかった事を報告している。
    • 脱臼の危険肢位の指導は広く行われているものの、その効果については疑問が残る。Mikkelsenらは有意差がないものの、厳格に指導を行った群で脱臼が減少したことを報告しているが、この報告では有意差がない。
    • これらの指導は1960年代から変わっておらず、現在のような短期入院が当たり前となった時代には見直されるべきだと考えられる。
    • 我々の研究では脱臼率が低かった。(218例中1例)
    • どれくらい厳しい指導を守っていたかの評価は行っていない。また明らかに危険な患者には指導を厳しく行っている
    • 脱臼した一例は前方脱臼であった。
    • いくつかの研究の問題がある。一つはサンプルサイズが小さいこと。一つは患者満足度を測定していないこと、
    • 本研究の強みは、危険な症例を除外している事、また術後3ヵ月の段階で全例フォローしていることである。
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はい。ダメな研究です。笑

着目点は非常にシャープだと思います。確かに漫然と行われている『患者教育』によって患者さんのADLが阻害されていることは臨床上経験します。

本研究では、指導を緩和しても脱臼率は上がらないという仮説なので、研究デザインとしては非劣性試験にしなければなりません。
両群間に有意差がない、ということは同じように有効であったということを証明しているわけではない。というのは研究の基本です。

また、もともと危険な人たちは研究から外す。という暴挙。笑。

この研究がBJJという老舗のジャーナルに掲載されていることに驚きを禁じえません。

やるのであれば非劣性試験のためにサンプルサイズを大きくする。厳格な患者指導でADLが損なわれていることを示す、などが必要では無いかと思います。

2016年5月19日木曜日

本の紹介 『THE 整形内科』 白石吉彦先生編


THE 整形内科
 日本整形外科学会 売れ行きNo.1 ということで買ってまいりました。
まず、この表紙の与えるインパクト。南山堂さんの編集さんの有能さが伺えます。

 さて、以下感想です。
 買うべき度 ★★☆☆☆

買ったほうが良い人:
・へき地で整形外科診療を余儀なくされる総合診療系の先生。
・開業されている整形外科の先生。今まで病院の外来では得られなかったスパイスをお求めの先生。

小生が全体にオススメしないのは、内容の偏りが大きすぎるからです。
約10年前に、『整形外科プライマリーケアハンドブック』という書籍が販売されておりました。(現在は取り扱いがないようです。)
前半が骨折の保存療法。後半がAKA博田法についての記載でした。
骨折の保存療法については、石黒先生を中心に読むべきところの多い本でありましたが、腰痛の治療法は、AKA、を学べとなっており、どうなのか?と感じた記憶があります。
AKA博田法は腰痛の治療法の一つでありますが、全てではありません。
しかし、プライマリーケアハンドブックではこれが全てのように書かれてしまっていたことが非常に残念でした。

さて、本書『整形内科』でありますが、このAKA博田法を全て『エコー』『筋膜リリース』と置き換えている内容になります。
エコー、筋膜リリースは有効な方法ですが、全てではありません。

また、書いてある内容のエビデンスに乏しいのが問題です。自分の診療の良い、悪いがわかっていない若い先生がこの本に書いてある内容を鵜呑みにして実臨床を行うのは危険だと考えます。
(股関節を取り扱う人間として骨盤疾患で股関節の病気ではなく仙腸関節の病気が書いてあるのがどうかと思いましたし、また骨粗鬆症でいきなりテリパラチドをオススメするのはどうでしょうか?あと、介護者負担を減らすために社会的入院をすすめるというのは地域特異性の問題であって、一般に勧めるのはいかがなものかと。)

この本の良い所はエコーの可能性と、鍼灸の先生たちとの連携について書かれているところです。
エコーは今後整形外科診療で広がっていくのは間違いないでしょうし、整形外科医が取り扱えきれない痛みに対処していただくために鍼灸の先生との連携は必要ですので、そこに着目されているのは流石だと思いました。

やや斜にかまえて読んでいただくと良いかとおもいます。以上。







本のご紹介 ”ただいま留学準備中” 大谷隼一先生 著


先日『医師のキャリア革命』でお会いした大谷先生の著書です。

ブログをほそぼそと続けていてよかったことは、自分が予想しなかったような人との出会いを持ってきてくれることです。
大谷先生もその1人です。

日本人の留学といえば基礎分野での留学が主ですが、大谷先生は臨床で留学されてきたとのこと。しかも単なる見学におわらず彼の地でリサーチまでやり遂げてきた剛のものです。

本書は、留学をしたい!けど周りに誰も聞くことができないという人でもこの一冊があれば大丈夫です。それほど必要十分にまとまっています。

なんか留学したい気分になってきたなあ。。。。



2016年5月16日月曜日

20160516 CORR Does Previous Pelvic Osteotomy Compromise the Results of Periacetabular Osteotomy Surgery?

股関節温存手術後の失敗例に対するPAOの成績を出した論文です。
当然、Primaryよりは悪い。ということです。それ以上読む必要はありません。
本論文のトピックスは、アメリカでは骨切りの多施設共同レジストリーをすでに走らせているということです。
日本ではアメリカの数倍に渡る骨切り術が行なわれていますが、多施設で動こうという話はついぞ聞いたことがありません。今ならまだアメリカに勝てると思うのですが。。。。

英語が英語が母国語のひとが書いたとは思えないほどの酷さでした。


  • はじめに
  • PAOは後方要素を保ちながら大腿骨頭の被覆を改善することができる手技として行なわれる手技である。DDHに対する治療方法として、PAOは76%から89%の成功率であるとする多数の報告がある。しかしながら多くの報告があるものの、その術前に何かしらの手術が行なわれていた場合にその治療成績がどうなるかは不明である。
  • PAOの術前に臼蓋または大腿骨の骨切りが行なわれていた場合の治療成績はいくつかのケースシリーズで報告されている。しかし、それらがどれほどPAOの治療成績に影響を与えたかは不明である。
  • 本研究ではマルチセンターの成績として、次術前に何かしらの矯正手術を受けていた場合のPAOの臨床成績について報告することを目的とした。
  • 臨床成績、QOL、レントゲンでの治療程度、合併症について術前に何かしらの手術が行なわれていた群と手術が行なわれていなかった群での比較を行った。
  • 対象と方法
  • ANCHOR(骨頭温存臨床成績リサーチグループ)の患者を対象とした。11の施設のうち、7つの施設で39例39関節の患者が抽出された。2008年から2012年までの間で34症例34関節。平均2.5年でフォローが可能であった。
  • 術前に治療を受けていない78例の患者をマッチングした。78関節のうち71関節のフォローが可能であった。10関節が「いわゆるDDHではない」として除外された。
  • 大腿骨近位骨きり術が12例30%、股関節鏡が5関節12%、骨軟骨形成術が1例2%。男性4例、女性35例。平均年齢19歳。
  • PAOを行ったANCHORに登録されたデータベースから同時期に手術が行われた253例を抽出。年齢、性別を一致させて1:2で症例を抽出した。
  • 以前の手術の既往があってもリハビリに変更は加えなかった。
  • 臨床評価を取得し、AC角、CE角、Sharp角を測定した。TonnisGradeもチェックした。
  • PROとしてはUCLA,SF12、HOOSを測定した。HOOSは手術経験の有無にかかわらず使うことができる。
  • 除外されたのはCharcot-Marie-tooth,脳性まひ、大腿の短縮、ぺるてす様変形であった。
  • 2群で比較するとCE角が既術群で大きかった。
  • 以前の手術のために関節可動域が小さくなっており、PAOの本来の適応でない患者もいた。
  • 術後合併症についてはSinkらのあClaviden-DIngo分類を用いた。
  • 結果
  • 表4を参照。痛み、ADL、レクリエーションへの参加のいずれの項目においてもPrimaryPAOに比べて既術群では改善に乏しかった。
  • 表5mHHS、UCLAスコア、SF12のすべてで有意差はないものの既術群のほうが改善が乏しかった。
  • 表3術後レントゲン評価でもAC角、Sharp角では2群で差を認めた。
  • 既術群では2例が早期にTHAに移行した。合併症は表7で2群に有意差はなかった。
  • 考察
  • PAOは症状のある臼蓋形成不全に対して有効な治療方法である。DeLaRochaらが以前に既術例でのPAOについての報告をしている。その報告では股関節の屈曲がPrimaryPAO群よりも悪化したと報告している。Czubakは以前に骨きりをしている患者では痛みの改善が得られるとし、Mayoらはレントゲン上、HHSもほぼ同様の成績が得られる。と報告している。本研究では臨床成績評価、合併症の発生率、レントゲン評価を行った。本研究でわかったことはPAOは既術群でも安全に行えるが、その臨床成績の改善は乏しいということである。
  • 本研究のLimitationは後ろ向き研究であるということ、第2に術者によって手術適応が異なり、リハビリのプロトコールが異なるということである。それでも多施設からのデータを収集していることが強みである。第3にレントゲンの測定の困難さがあるが、本研究では10年以上の経験のあるリサーチアシスタントを採用した。また第4にフォローアップ期間が短いことがあげられる。フォロー期間は短いが、手術はうまくいっているので急に再置換ということはないものと考えられる。
  • AC角の改善がいまひとつであったが、これはスミスピーターソンの前方アプローチを使っていないせいかもしれない。。
  • 合併症率は7%と他の研究よりも高かかった。しかしながらコントロール群では合併症を生じていなかった。これおはPAOのやり直しが難しいということを示している。
  • 本研究では既術例に対するPAOは予定通りに行きにくいということを示した。

20160516 医師のキャリア革命に出て感じたこと。

こんにちは、管理人です。
http://peatix.com/event/138613
医師のキャリア革命
という杉本先生主催の講演会に参加してきました。

一応匿名のブログですが、多くの整形外科の先生がこのブログの存在を知ってくださっていたことに本当に感激しました。

また論文、書籍などのレビューを続けていきたいと思います。

応援いただけるとハゲみになります。
今後ともよろしくお願い申し上げます。