2016年5月25日水曜日

20160525 JBJS(am) Percent Body Fat Is More Predictive of Function After Total Joint Arthroplasty Than Body Mass Index

人工関節置換術において、BMIが高いほうが手術成績に影響するということは言われていますが、BMIが高い、とひとくくりにせずにガッチリタイプなのかぽっちゃりタイプなのかでちがってくるのでは?という論文。

抄録
肥満は人工関節置換術に大きな影響を与える。しかし肥満の影響についてはいまだ議論のあるところである。本研究の仮説はBMIよりも体脂肪率のほうが術後成績に影響を与えているのでは無いかというものである。
方法
115例のTKAの患者、100例のTHAの患者。術後2年の成績を調査。術前患者データ。体脂肪率、入院期間、満足度、UCLAスコア、患者立脚型評価を取得。多変量解析を行った。
結果
体脂肪率が高い患者では術中、術後の合併症の発生率が高かった。オッズ比は1.58であった。その他にも術後満足度、UCLAスコアと関連していた。一方BMIは術後成績と関連していなかった。TKAについては患者立脚型評価についても体脂肪率は術前の予測因子となりうることがわかった。
結論
人工関節置換術に置いて、体脂肪率は術後2年の段階での臨床成績、機能回復の予測因子となりうる。患者の術前教育に今回の報告は役に立つ。

はじめに
肥満の患者は増加しており、アメリカでは人口の34.9%が肥満である。肥満は変形性関節のの原因である。肥満患者での人工関節置換術、特にTKAの需要があるため、現在人工関節置換術を受ける患者の半分が肥満である。しかしながら肥満が手術の実際に与える影響については議論がある。肥満が手術に与える影響としては、手術時間の延長、入院期間の延長、創部のトラブルの増加、人工関節感染、費用の増加などが言われている。また肥満と直接関連する合併症としては肥満、心血管イベント、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸、血栓症、低活動性などが言われている。しかしながら肥満の患者は人工関節の術後に痛みが取れるので、患者立脚型評価は改善する。目に見えない危険因子を明らかにすることと、術前に患者に説明をすることができるようになることは必須である。ひょっとすると患者のセレクションがしっかり行うことができればより治療成績の向上に繋がるかもしれない。
BMIは肥満の判断基準として広く受け入れられている。多くの基準がBMIを基準として考えられている。しかしながらBMIでは脂肪太りと筋肉との区別をつけることが出来ないので、元気な筋肉質の人もBMIが高いので肥満に分類されることがある。加えて肥満の形態(中心性、末梢性)というのはBMIでは分からない。中心性肥満のほうがリスクが高い。体脂肪率とは、体の筋肉量と脂肪量とをはっきりと区別するための指標である。したがってしたがって筋肉質の人などではBMIより正確にその患者さんの活動性の指標となる。
いままで体脂肪率と術後経過について評価した論文はなかった。体脂肪率はBMIよりも術後の経過を予測するのに良い指標となりうる可能性がある。そして人工関節置換術後の入院期間の延長や余計な治療を減少させることができるようになるのかもしれない。また、本研究は患者立脚型評価と肥満についての初めての報告である。
  本研究の目的は体脂死亡率と術側の下肢の重さと臨床成績と患者立脚型評価についての関連を調査することである。体脂肪率は術後のリスクファクターとなりうる可能性がある。

方法
2012年から2013年。TKA115例、THA100例の経過観察。2年間の経過観察。前向き研究。患者はすべて変形性関節症。18歳以下、24ヶ月間のフォローが出来なかった例は除外。その他内科疾患を有するもの、再置換例などは除外した。
肥満の評価
術前の慎重と体重を測定。Inbodyを用いて体脂肪率を測定した。この機会は自動で脂肪量や下肢の体重を測定してくれる。この方法は妥当性が評価された方法である。データの取得にわずか2分で結果がでるところがすぐれものである。アメリカで5760ドルでお買い求めできる。
調査項目は手術合併症、感染、再置換率。患者立脚型評価である。メールもしくは電話で問い合わせをした。その他活動性の評価としてUCLAスコアを取得した。膝と股関節に分けて平均値と標準偏差を求めその後多変量解析を行った。

結果
TKA115例、THA100例の検討を行った。平均フォロー期間は24ヶ月。男性105例、女性110例。平均年令62.8歳。手術になった主な原因は変形性関節症であった。平均BMIは31.平均体脂肪率は36.4%、下肢重量は8.7kg。ASAスコアは2または3であった。 患肢重量は多変量解析の結果、手術時間のみの予測因子であった。2.2kg下肢体重が増えるたびに5%手術時間がのびるという結果であった。BMIは入院期間と関連しなかったが、BMIと体脂肪率は両方共退院先(自宅又はケア用のホテル)に違いがあった。体脂肪率は周術期合併症と関連があった。また術直後の合併症によって手術室で再手術となる割合が高かった。これらの指標とBMIとの関連は低かった。最終的に体脂肪率は術中合併症と関連したが、下肢重量、BMIはこれらと関連しなかった。
患者立脚型評価においても、体脂肪率のみが唯一術後結果の予測因子となった。一方BMI,下肢重量は関連しなかった。手術に関する満足度については、THAはTKAよりも満足度が高かった。体脂肪率はBMI、下肢重量と比較して患者満足度と関連している割合が高かった。体脂肪率はBMI、UCLAスコア、術後の疼痛スコアの予測因子であった。体脂肪率はTKAにおいて術後成績、術後の膝の疼痛、ADLと関連していたが、THAとは関連していなかった。BMIは術後ADLと関連していた。下肢重量はいずれの成績とも関連していなかった。
追加の検討として術後成績との関連と、臨床成績の体格の予測因子としてのBMI,体脂肪率のカットポイントの解析を行った。手術時間について、下肢の重量が少ないほど手術時間が短くなることがわかった。ただし、その特性は低い。体脂肪率が上昇すると術後合併症が増加する。また退院後の追加のケアは体脂肪率が33%以上でそのオッズ比が2,15となる。BMIが33以上でOdd比が2.06となる。最終的に患者立脚型評価も体脂肪率に相関して低下していた。

考察
患者の肥満に対する術者側の関心は高くなっている。患者立脚型評価は手術の成績評価に重要となってきている。いままで術後の成績評価は生存率、合併症、失敗率などに焦点が当てられてきた。一方QOL、痛みの変化、活動性などの情報もより優れたものとなってきている。しかしながら術者は患者のニーズと期待の両方に答えられるようなケアの透明性のあるプロセスを容易にするために、両方のようなアウトカム指標を満たすことが求められる。本研究で体脂肪率は術後の患者立脚型評価に影響する。ということが明らかとなった。
臨床的にBMIが30以上、または病的肥満BMI40以上では周術期合併症、入院期間、医療費に影響することが知られている。以前の研究でBMI、体脂肪率の増加は周術期合併症と関連すると報告されてきた。本研究で下肢重量は手術時間と関連する。体脂肪率、またはBMIは退院後の追加のケアが必要になることと、術後の合併症のリスクを上昇させることがわかった。体脂肪率はBMIよりもより術後合併症の予測因子として関連していることがわかった。体脂肪率はまた患者立脚型評価と関連した。TKAにおいては体脂肪率術後ADL、術後疼痛の原因となった。これらの結果はBMIよりも体脂肪率のほうがTKAに関しては術後成績に影響するということである。これらは患者教育に反映されても良い結果であると考える。
本研究の限界はサンプルサイズが小さいこと、合併症を周術期の局所の合併症に限ったことである。このInbodyの測定は体内水分量で測定するのでその時の患者の脱水状態によって影響を受けるかもしれない。しかしそのようなことを検討した報告はない。
以上から体脂肪率は術後の成績に影響すると言える。そしてそれを肥満の患者たちに術前から伝えておくことは重要なことである。
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肥満がダメよといわれてきていましたが、本研究はその中でも体脂肪率に着目して検討を行っています。
この論文の優れているところは患者立脚型評価、満足度が体脂肪率と関連しているということを明らかとしたことです。
体脂肪率は術前に術者が介入しうる因子の一つですから、体重管理だけでなく、合わせて体脂肪率管理もできると良いのかもしれません。
僕も体重だけでなく、体脂肪率も測定するか。。。。最近安いし。笑


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