2010年3月25日木曜日

2010.3.25 JBJS(Am) Thrombosis Prevention After Total Hip Arthroplasty A Prospective, Randomized Trial Comparing a Mobile Compression Device with Low-

Thrombosis Prevention After Total Hip Arthroplasty

A Prospective, Randomized Trial Comparing a Mobile Compression Device with Low-Molecular-Weight Heparin

Background:

血栓塞栓症はTHAの合併症としてよく知られている。この研究の目的は新しいmobile compression deviceと低分子ヘパリンとを安全性・静脈血栓塞栓症に対する効果について比較することである。

Methods:

THAを施行された患者を10日間mobile compression deviceの群と低分子ヘパリン群にランダムに割りつけた。Deviceは術中より開始し、この群の患者ではアスピリン81mg/日も術後投与できるようにした。低分子ヘパリンは術後12-24時間後に開始。10-12日後全ての患者で両下肢のエコーを行い腓腹部、大腿部に深部静脈血栓がないかスクリーニングした。いかなる肺塞栓の症状でも肺のスパイラルCTで評価した。出血やコンプライアンスなどの使用上の問題は両群とも見られなかった。臨床的な深部静脈血栓や肺塞栓の検索的評価は術後12週で行われた。

Results:

410患者414股が割付けされ、392名395股が介入的治療の安全性を評価され、386名389股がその効果について評価された。背景は両群で差がなかった。大きな出血のイベントはcompression群で0%、低分子ヘパリン群で6%であった。遠位および近位の深部静脈血栓の発生率はそれぞれcompression群で3%と2%、低分子ヘパリン群で3%と1%であった。肺塞栓はcompression群、低分子ヘパリン群ともに1%であったが、fatalなものはなかった。12週のフォローアップ期間内で、深部静脈血栓1件、肺塞栓1件の2件がcompression群の1人の患者で起きたが、術後12日目のエコーではnegativeであった。両群間で静脈血栓塞栓症の発生率に差はなかった。

Conclusions:

低分子ヘパリンと比較して、mobile compression deviceをTHA後の静脈血栓塞栓症の予防に用いることは、大きな出血のイベントを有意に減らすことができる。
Fig. 1

研究への登録のシェーマ

Table Ⅰ

患者背景。両群間に差はなし。

Table Ⅱ

大きな出血イベント、輸血単位数、Bleeding index(全輸血単位数+(術後最初のHb-退院時のHb))、ヘモグロビンの変化

Table Ⅲ

両群の各々の麻酔法における静脈血栓症と出血イベントの数
Discussion

 我々の携帯型のcompression deviceはTHA後の出血に対して低分子ヘパリンより安全であるという仮説を証明した。ヘパリン群の出血イベント6%という結果は5つの研究の結果の5.3%と同等であった。今回、効果の評価よりも安全性の評価を強調したのには2つの理由がある。1つ目は、整形外科医は予防的投与の薬による出血の問題を深く考えているためである。2つ目は、低分子ヘパリンは静脈血栓のイベントを減らすことが様々な報告からも知られているが、それと効果が同等であると証明するには各群1480名は必要であったためである。

 我々の静脈血栓に対する結果も以前の報告に相違がない。GelferらのTHAとTKA患者で旧型のcompression deviceを血栓予防にエノキサパリン40mgと同様に用いた報告では、THA後の患者の深部静脈血栓を有意に減らし、エノキサパリン群で40名中13名が合併症を認めたのに比べ、compression群では33名中合併症は0であった。


 この研究の問題点は2群間の効果の違いを説明するには患者数が適切でないことである。Compression deviceを用いているため、盲検が困難であったことも問題であった。大きなランダム化前向き試験で、エンドポイントを静脈造影所見としていたため、我々のエコーによる方法は問題があったかもしれないが、エコーはアメリカで診断のスタンダードとなっており、リアルタイムの評価がより可能である。

 結論としては、THA患者においてcompression deviceは低分子ヘパリン予防的投与と同等の静脈血栓イベントの発生率でありながら、大きな出血イベントを有意に減少した。

<論評>
術後の出血量については差があるということがわかった。間欠的圧迫法でも十分有用であると言うことが言える?のかしら?有意差のでない研究というのは本当に難しい。
しかし海外はわずか3日間でTHA後に退院させられるのね。

2010年3月24日水曜日

臨床研修指導医講習会 3日目

研修終了までのプロセス
研修が成り立たない場合、中断、休止、未修了の3つがある。
中断しした場合には他所の病院で研修を。休止、未修了の場合には同じ病院で研修を繰り返す。
研修プログラムの責任者は指導医講習会養成講習会修了の医師
研修プログラムごとに1名配置。受け持つ研修医20名以内
形成的評価・総括的評価を行う。

研修プログラム改革のための行動計画
改革の必要性を認識する。
異なった観点を孤立させる。
関心を有する人で戦略を練る。
力野分析 マイナスの要因を省くように動くと改革は成功しやすい

メディカルサポートコーチング
コアスキル 聴くこと、質問すること、伝えること

人はその人の中に答えを持っているのでその人の中に眠っている答えを導き出して自発的行動を促して行くコミュニケーション法

聴くこと
ゼロポジション
ペーシング
頷きとあいづち
オウム返し

質問すること
open ended question

伝える
Iメッセージによる承認

マイゴールの設定。
アクションプランの設定。
ゴールまでの行動をサポート。

2010年3月20日土曜日

臨床研修指導医講習会 2日目

指導医のあり方
”魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなさい”
指導医は研修医のロールモデルとなることが必要。
必要なときに必要な知識を短時間で入手、活用するテクニックを伝えることの方が重要。

EBMとquality indicator
ジャーナルクラブの手順
研修医自らが抱いた疑問について検索の手順と検索結果を明記し、選んだ文献を批判的に吟味(特にmethod)について。
文献を実際の患者に適応出来るか考える.

quality indicator
EBMをもちいた診療プロセス改善の動機づけ。ベンチマーキング→自分の立ち位置を知る。

臨床研修のための6つの小技
1、主体的な意見を尋ねる ”先生はどう考えるの”
2、考えの根拠を探る ”なぜそう考えたのかな”
3、広く応用可能な原則を教える。 ”ここで大事なことは”
4、正しくできたことを強化する ”特に~は良かったね”
5、間違いを修正する ”今度は~しようね。”
6、次の学習段階を明らかにする ”もっと勉強するとしたら~”

経験学習のサイクル
経験ー省察的ー概念化ー試行

reflective practice
学習の中に意識的に省察をとりいれる学習方法。
SEAなど

研修方略
learning strategy
研修医が各SBOsに到達するために必要な研修方法の種類と順序を具体的に示し必要な資源を選択して準備する。

2010年3月19日金曜日

2010.3.19 臨床研修指導医講習会 1日目

卒然教育の新しい流れ
この10年間で医学部の教育は大きく変わっている。
・コアカリキュラム、問題基盤型学習(PBLチュートリアル)、基本的技能実習(スキルラボ)、共用試験(CBT、OSCE)、クリニカルクラークシップ

医学教育・歯学教育のりかたに関する調査研究者会議報告(2001)
1患者中心の医療を実践できる医療人
2コミュニケーション能力の優れた医療人
3倫理的問題を真摯に受け止め適切に対処出来る人材
4幅広く質の高い臨床能力を身につけた医療人
5問題発見・解決型の人材
6生涯にわたって学ぶ習慣を身につけ根拠に立脚した医療を実践できる医療人

医学知識の量が膨大となってきた。

・学習目標の厳選→コアカリキュラム
・知識を与えるよりも学び方を教える→PBLチュートリアル
・経験を通して問題解決能力・技能・態度を習得→クリニカルクラークシップ

以上から
今後研修医としてくる人の特徴は
1、想起レベルの知識はかなりあるはず。応用力は不十分
2、コミュニケーションに関する基礎教育、医療面接法の基礎教育は受講済み。
3、身体診察技法の基礎は身につけている
4、プレゼンテーションもできるはず。
5、学習姿勢、態度についてのトレーニングは受けていない

研修プログラム
研修目標、研修方略、研修評価の3つ

研修医が目指すより良い状態が研修目標
目標を立てることの意義
モチベーションの維持
指導医、研修医間の情報交換が用意となる
限られた時間の有効利用
評価が容易
多施設との共同評価にも転用可能

一般目標と行動目標
一般目標は研修医を主語としてどういう医療者になって欲しいかと言うことを知識、態度、技能をもちい述べる
行動目標具体的な目標。行動目標がすべて達成できればその総和として一般目標に到達できると言う関係になる。

2010年3月15日月曜日

2010.3.10 JBJS(Am) Long-Term Results of Radial Head Resection Following Isolated Radial Head Fractures in Patients Younger Than Forty Years Old

要旨
背景
過去には骨接合ができないような撓骨頭骨折に対して撓骨頭切除術が行われることが多かったが,最近では人工撓骨頭が用いられるようになってきた。この研究は肘の靭帯損傷を伴わない撓骨頭切除についてその長期成績を明らかにすることである。
方法
40歳以下で撓骨頭骨折に対して撓骨頭切除を行われた患者。最低15年のフォローアップ(平均25年)。Mayo elbow
performance scoreとDASH scoreで評価を行った。
結果
81%の患者で肘の痛みを訴えなかった。3人が僅かな痛みを。二人が中程度の痛みを訴えた。平均可動域は9度から139度であった。ひとりの患者を除いて機能的には保たれていた。回内は84度、回外は85度。19肘で健側と比較して十分は強度がえられていた。Mayo
elbow performance
scoreは95点。92%の患者で十分な成績を獲得出来ていた。DASHスコアは6点であった。3人の患者が手関節の痛みを訴え、二人が僅かな痛みを、ひとりが中程度の痛みを訴えた.4人の患者で身体所見上で肘の不安定性を認めた.carrying
angleは健側に比べ増大していた.OA変化は17関節にわずかにみとめられ9関節に中程度認められた.レントゲン写真上の変化が機能上の問題にはつながっていなようであった.
結論
若年者での撓骨頭切除術は90%以上の患者で良好な成績であった.OA変化は認められるものの、その変化が機能障害につながっていると言うことはなかった.

図1a 術後21年後のレントゲン写真。腕尺関節にわずかに関節裂隙の狭小化をみとめるのみ。
図1b レントゲン写真側面像。手関節部において9mmのulna varianceを認める。この患者では中程度の手関節痛を認めた。
図2a,b 術後29年後のレントゲン写真。異所性骨化と変形性関節症を認めるが肘関節の機能障害はない。
図2c,d 手関節部にもトウ骨の短縮によるOA変化を認めるが手関節の疼痛、機能障害はない

考察
トウ骨頭骨折は肘の脱臼に伴ってしばしば起こり、内側,外側の側副靭帯損傷を伴うこともあり、また前腕の不安定性が生じることもある。過去にはトウ骨頭はほおっておくことが出来るものだと考えられていたが、現在では肘、前腕の安定性に大きく寄与していることがわかっている。前骨間膜靭帯に及ぶような肘の脱臼、トウ骨頭の骨折の時には腕トウ関節を完全に整復するためにトウ骨頭のない固定も必要となってくる。幾人かの研究者は関節の適合性をますということで健常な若い患者ではトウ骨頭切除よりも内固定,人工トウ骨頭挿入術のほうが好ましいと考えている。この研究者達がトウ骨頭切除術が好ましくない理由としては肘の不安定感の出現。近位でのトウ骨の移動。短縮、肘の外反変形を挙げている。また、肘のバイオメカの研究ではトウ骨頭の切除によって、肘の靭帯が正常であっても肘の生体力学に変化が出るため、長期間の経過観察が必要であると結論付けている。
トウ骨頭切除後の治療成績についてはさまざまな報告がなされており、ほとんど機能障害を残さなかったとする報告から、そのように治療した大多数で不良な成績であったとする報告まである。しかしこれらの報告はあらゆる年齢から肘、前腕の不安定性を伴ったものまですべて含まれており、その解析は非常に困難である。今回の結果はトウ骨頭単独骨折で、40歳以下に症例を絞っていることがわかりやすい点で、将来的にトウ骨頭置換術を行った患者との比較が行われるとよいであろう。
われわれの研究では25年間にわたって92%の患者が痛みも機能障害も無くすごすことが出来た。肘関節の可動域は特に伸展でわずかに減少したがとくに機能障害につながることは無かった。他家の報告でもほぼ同様に良好な成績が言われている。
2人の患者で後外側への不安定性が認められた。これは受傷時にはっきりとしなかった靭帯損傷が関与しているとする報告がある。この2人の患者の両者とも伸展、回外時に肘の不快感を訴えた。ほかにもふたり肘の外反の進行を認めたが機能障害は起こさない患者がいる。これはいつの間にか側副靭帯損傷があったのかも知れない。しかしカルテをチェックしても全く愁訴がないので自然に靭帯が伸びてきたりしているのかもしれない。
以前から言われているようにトウ骨頭切除後では関節症性変化が高い割合で起こる。健側では見られないような関節症性変化が腕トウ関節の適合が失われているために起こっていた。しかしながらこれも以前から言われているように肘の関節症性変化と機能障害の程度とは相関しなかった。
この研究では平均3.1mmのトウ骨の短縮を手関節部で認めた。5mm以上の短縮を認めた3例では変形性手関節症となっており、また手関節の疼痛があった。わずかなトウ骨の短縮は臨床的に影響を与えないが、日常生活動作によって前骨間膜の伸張をきたす。5mm以上の短縮をきたした群ではEssex-Lopresti
injuryのように何かしらの損傷が前腕にあった可能性がある。トウ骨を伸展させてみたり、透視下で確認したりといった何かしらの確認が必要であろう。
この研究は長期間追跡したと行くことで価値があるがひょっとしたら途中で脱落した成績不良例がある可能性は否定できない。またすべて一般整形外科医が治療しており、肘の専門家が観たわけでないので肘の軟骨損傷や、靭帯損傷を見逃しているのかもしれない。

<論評>
実は僕の治療した患者さんで同様の患者さんがいます。確かに肘の愁訴も少なく通院を自己中断されました。
手術で内固定がうまくいかなかった時の最悪のオプションとして撓骨頭切除もあるよと言うことは知ってお居てよいのでは無いかと思いました。

2010年3月8日月曜日

2010.3.8 JBJS(Am) The Influence of Femoral Cementing on Perioperative Blood Loss in Total Knee Arthroplasty

要旨
背景
TKAでは出血が問題となることが多い。大腿骨側をセメンティングすることでの出血量の評価を行った。また同時にセメントレスでは出血量が増えるのではないかと言う仮説を立てて研究に臨ん
だ。
方法
130人の患者にPSタイプのコンポーネントを用いて手術を行った。無作為に130人をセメント群とセメントレス群とに分けた。内側アプローチで進入。セメント群は55歳から85歳までの42人の女性と12人の男性。セメントレス群は37人の女性と16人の男性。(55歳から85歳)。術前、術後5日目にHb,とHct値を測定。術後ドレナージからの排液量と輸血の有無について調査した。
結果
2群でHb値とHct値、排液量、輸血の割合に有意な差なし。出血量は1758ml対1759mlであった。
結論
大腿骨側をセメンティングすることは術後の出血量、輸血についてははっきりとした影響はない。

<論評>
セメンティングした方が出血量が少ない気がしていたのですがこれは気のせいだったのでしょうか。
股関節とかでも同じことが言えるのでしょうか。また読み込んでみます。

2010.3.5 JBJS(Am )Mortality in Elderly Patients After Cervical Spine Fractures

要旨
背景
高齢者の頚椎骨折のリスクは増えているにも関わらずその骨折について死亡率の調査がなされたり、適切な治療が何かと言うことが検討されたことは今まで殆どない。この研究は頚椎骨折を受傷した65歳以上の患者の受傷後3ヶ月、12ヶ月の時点での死亡率について検討しその潜在的な要因について調べた。
方法
1991年から2006年までに二つの施設で治療された65歳以上の頚椎骨折の患者。性別、人種、治療方法、神経学的所見、受傷形態、合併症、死亡について後ろ向きに調査した。死亡率について検討し、層別にも解析した。Cox-Hazardにてここの現象について検討した。
結果
640人の患者。平均80歳。294人が男性、116人が白人ではなかった。3ヶ月後の死亡率は19%、1年後の死亡率は28%であった。受傷後3ヶ月の時点では治療による死亡率の差が出たが受傷後1年では差がでなかった。65歳から74歳の群では手術をしたほうが死亡率が低かった。男性であること、麻痺があることが死亡率に関わっていた。
結論
65歳以上75歳未満の頚椎骨折の患者では受傷後3ヶ月の時点での生命予後を改善する。受傷後1年の時点では差がでない。

図1 患者の研究の群分け。
表1 患者背景 歯突起骨折を含めた上位頚椎損傷が30%近くある。手術は15%しかしていない。神経障害があったのは7%
表2 全体の死亡率は19%。高齢の患者ほど死亡率が高い。65歳から74歳の患者層は3ヶ月後の死亡率は19%であったが85歳以上では30%にのぼる。
図2 手術群と非手術群の3ヶ月ごと1年後の死亡率のグラフ。若い年齢層では手術をしたほうが死亡率は低いが85歳以上では手術をしたほうが死亡率が高い。
表3 CoxーHazardモデルによる多変量解析の結果。65歳以上74歳以下の群で手術を行った方がよいという以外の有意な差はない。合併症が多いこと、男性であることが死亡率を高くすることに関わっていた。

考察
高齢者の頚椎骨折の原因には転倒のような低エネルギー外傷と交通事故のような高エネルギー外傷の二つがある。低エネルギー外傷について発生率、罹患率、生命予後について今まで検討されてきたことはなかった。高齢者の低エネルギー外傷による脊椎損傷は若年者の高エネルギー外傷の予後とほぼ同様であるといういくつかの報告がある。気道閉塞、尿路感染、心血管イベント、などで高齢者の機能保持が困難であることによる。type2の歯突起骨折の様なものではっきりと示されている。
高齢者の頚椎骨折の治療方法の違いでの予後を述べた研究もあるが若年者と高齢者を同じように扱っていると言う問題がある。不適切な前提に基づいているにも関わらずこれらの研究では手術治療が適当でないと考えられる患者でも手術治療を行っている。ところが表3に示したように治療方法と死亡率との間に強い関連があるわけでは無い。図2-aの様に年齢で変わっていくところもあるので患者の状態で判断することが望ましいと考えられる。
高齢者では自然死の可能性もあり、予後を測定する際には年齢による調整も必要となる。しかしアメリカの国勢調査の結果と比較したところ39%という死亡率は高いことがわかった。これが骨折のせいなのか合併症のせいかははっきりとわからなかった。
一般的に高齢者の頚椎骨折は合併症予防のため早く手術しなさいといわれていたが、今回の研究でははっきりと示すことはできなかった。多変量解析で30%ほど死亡率を減らしたが、単純に手術をしなさいという推奨には至らなかった。
今回の研究ではっきりと伝えておきたいことは、頚椎骨折は死亡率が高く、また合併症を有する高齢者ではより死亡率が高くなると言うことである。合併症があると3ヶ月後、1年後で死亡率が上昇した。これは骨折以外のイベントで説明される。このことは今までの合併症の数と死亡率が関係ないとした以前の研究に反論するものである。
いくつかの研究の限界がある。骨折型と治療がどのような関係に成っているかが分からないと言うこと。これを調査することで骨折型と治療方法、死亡率との関係について述べることができたであろう。また手術の合併症についての調査が無い。また保存治療がうまくいかなくて手術を行ったという患者についても調査出来ていない。
また無作為に割り付けておらずその死亡の原因についてもはっきりはしていない。
結論として、高齢者における頚椎骨折は高い死亡率を示し、また年齢と合併症に依存する。手術治療が明らかに有用であるとするデータはなかった。

<論評>
思ったほど手術が有用ではなかったと言う結論に。年齢、合併症を鑑みて手術適応を決めましょう。

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2010年3月5日金曜日

2010.3.5 Mortality in Elderly Patients After Cervical Spine Fractures

要旨
背景
高齢者の頚椎骨折のリスクは増えているにも関わらずその骨折について死亡率の調査がなされたり、適切な治療が何かと言うことが検討されたことは今まで殆どない。この研究は頚椎骨折を受傷した65歳以上の患者の受傷後3ヶ月、12ヶ月の時点での死亡率について検討しその潜在的な要因について調べた。
方法
1991年から2006年までに二つの施設で治療された65歳以上の頚椎骨折の患者。性別、人種、治療方法、神経学的所見、受傷形態、合併症、死亡について後ろ向きに調査した。死亡率について検討し、層別にも解析した。Cox-Hazardにてここの現象について検討した。
結果
640人の患者。平均80歳。294人が男性、116人が白人ではなかった。3ヶ月後の死亡率は19%、1年後の死亡率は28%であった。受傷後3ヶ月の時点では治療による死亡率の差が出たが受傷後1年では差がでなかった。65歳から74歳の群では手術をしたほうが死亡率が低かった。男性であること、麻痺があることが死亡率に関わっていた。
結論
65歳以上75歳未満の頚椎骨折の患者では受傷後3ヶ月の時点での生命予後を改善する。受傷後1年の時点では差がでない。

<論評>
もう少し論文の中を読んでから検討してみます。まずは抄録だけ。

2010年3月3日水曜日

2010.3.3 JBJS(Br) C5 palsy after cervical laminoplasty

要旨
1858人の頚椎椎弓形成術の患者の2.3%に二頭筋は含んだり含まなかったりするが他の筋力は正常で、三角筋がMMT0-2レベルのC5麻痺を認めた.
この43例をP群.麻痺のない100例をC群として臨床的特徴、画像上の特徴について比較した.
P群では椎間孔が狭く、また上関節突起が大きいと言うことがわかった.MRIではC4/5部位での脊髄の後方への移動が多いことがわかった.
この論文はC5麻痺とC5神経根との関係性を明らかにした最初の論文である.椎間孔の除圧を前もってやっておくこと、椎弓形成を行うことで過剰な脊髄の後方移動に遠なうtetheringを避けることがC5麻痺を予防するであろう。

<論評>
なんとなくこういう病態でないかな、と言われていたC5麻痺について大きな母集団を用いて検討した文献.
このような内容が日本から発信されていることに誇りに思います.

2010年3月2日火曜日

2010.3.1 Manual Therapy 2007. Advice for the management of low back pain: A systematic review of randmised controlled trials

要旨
腰痛患者に対するアドバイスの効果、その内容と頻度の妥当性、急性期、亜急性期、慢性期におけるアドバイスの方法の比較についてのエビデンスについてまとめてみた。これはアドバイスについてのRCTのsystematic
reviewである。QUOROMガイドラインとCochrane collaboration back review group
guidelineを完全に網羅した。”high”
,"middle"に当てはまるような高いエビデンスレベルのものを抽出し、そのinclusion criteria
が少なくとも50%を超えるようなものを選んだ。効果判定には基礎となる5つのものを選んだ。痛み、就業困難、腰痛特有の機能、健康状態とそのケアにたいする満足度である。56編のRCTが方法論的な質を満たし、うち39編,7347人の患者がその適応基準に一致した。
慢性腰痛について、運動の補助的なアドバイスがもっとも痛みを改善し、腰痛特有の機能を改善し、就業をより容易にした。しかし急性の腰痛では活動性を保ちなさいというアドバイスと変わらない結果であった。亜急性期の腰痛に対しては腰痛学級のような方法でのアプローチがもっとも効果的であった。
急性腰痛に対するトライアルの15%がpositiveな結果であり、亜急性期または慢性期の腰痛は86%、74%であった。
さまざまな結果の測定方法が用いられており、治療同士の比較をすることは困難であった。腰痛に対するアドバイスはその罹患期間ごとでさまざまなものであった。今回のレビューではっきりしたことはこの領域で更なる研究が必要であるということである。
活動性を保つように指導することは急性腰痛に対して重要であるが今回のRCTではそれをはっきりと推奨する根拠にはかけていた。亜急性期の腰痛に対してどのようなアドバイスをどの頻度でかければよいのかということについても結論が出なかった。腰痛学級の一部としてアドバイスが用いられているという前提があったからである。
亜急性期の症状に対して治療が有効であったのは慢性化への伸展に直接影響したからであろう。これらの結果は腰痛の原因に対する教育や考え方の変化がこれらの患者の軍において有効に作用すると言うことが分かる。慢性期の腰痛に対しては活動性を保ちながら適切な運動をするようにすることが必要であると言う強いエビデンスが示された。自己管理が重要である。また腰痛に対するアドバイスの効果についてもさらなる研究が必要である。

考察
この研究は腰痛に対するアドバイスの有効性についてまとめた初めてのsystematic
reviewである。アドバイスの内容、頻度についても言及している。急性腰痛、亜急性期、慢性期の腰痛の3つのグループに分けて考えている。エビデンスレベルが中から高の39編の論文に基づいて検討した。22/39(56%)でアドバイス自体が有効であるとされ、21/22でその有効性がフォロー中も有効であると示された。一方、介入は一定しておらず、とくにその頻度と内容については全く一定していなかった。そこで急性期、亜急性期、慢性期に分けてそのアドバイスの違いについて調べてみた。このレビューはUKの腰痛ガイドラインとほぼエビデンスレベルが同じ程度である。
・アドバイスのタイプ
急性腰痛と慢性の腰痛は全く違うものと認識されているにも関わらずこのレビューで採用したRCTでは運動の補助としてアドバイスが用いられていた。現在のガイドラインでは急性腰痛に対する特別な運動は勧められていない。なんとかやれる範囲の活動を保つようにアドバイスすることが勧められている。このレビューの結果はガイドラインで言われていることを補完するものである。筆者は活動性を保つようにすることが特別な運動に加えてアドバイスを加えることの方が優れていると事を主張するのではない。急性腰痛の管理に関連した参考文献の上にこれらの患者では活動性を保っておけばそれで十分であると言う事をこのレビューでは述べたいのである。なので”The
back book”に記載されているように急性腰痛の患者はいかにして自分の活動性を保ち、またどのような方法でその活動性を保てばよいのか、どうしてそれが重要なのかと言う事を急性腰痛の患者に伝え、むやみに恐れることなくまた慢性化しないにはどうすべきかを知って置く必要がある。
これと比べると亜急性期の腰痛患者に対する腰痛学級の試み(運動とアドバイスを与える方法)はより好ましいものである。すべての研究で前向きな成果が得られた。機能保持と行動学的アプローチも亜急性期、慢性期の腰痛に用いた。全体の86%で有用で、フォローアップ率は100%であった。これらから言えることは亜急性期の腰痛患者に対しては機能保持のアプローチや腰痛学級といった方法が有用であると言うことである。しかしどれくらいの頻度でそのアドバイスを与えればよいかと言うことについては明らかにならなかった。もっと質の高い研究が必要であろう。
動ける範囲で動きなさいという単純なアプローチは慢性期の腰痛患者ではほとんど用いられることはない。運動に関すること、機能保持に関連したことなどなど動ける範囲で動きなさいというアドバイスに付け加えて何かしらのコメントが必要となる。これは長期間にわたって罹患しているために様々な見方が反映していることが考えられる。しかしなぜ慢性の腰痛患者には腰痛学級があまり用いられないのかは明らかでない。これは今回のレビューで腰痛学級の数が少なく除外されていることが考えられる。それゆえに質の高い腰痛学級は機能保持や運動のようなその他の介入と比較しても必要とされている。なのでそのような腰痛学級の標準化されたプログラムが必要とされる。
・腰痛のアドバイスの頻度
亜急性期の腰痛患者においてはフォローアップのおバイスはそれほど効果のあるものでっはなかった。これに対して慢性の腰痛患者ではフォローアップでリフレッシュするようなプログラムを組むと好ましい結果が得られることがわかった。しかしこの結果はひとつのRCTから得られたものであった。もし慢性の腰痛患者で長期にわたるアドバイスが良い結果につながっているとしたらそれを補完する研究が必要である。
・アウトカムの測定
活動性がどの程度保たれているか、社会活動への参加状況はどうかと言ったことがアウトカムとして測定されている。この場合腰痛患者の状態が少し改善してもそのimpairmentの程度には反映しない。身体の代替性は健康状態を反映しているとは言い難い。実情にあったアウトカム測定方法が望まれる
・このレビューの限界
公表されているバイアスが掛かっている。公表されているものは好ましい結果を得たものが多いのでそのために前向きな結果が出ているあ農政がある。またその研究のサイズをあまり検証しないようなカウント方法を用いたと言う問題もある。家庭医によって普段から腰痛についてのアドバイスを受けている群は普通に内科の診察だけを受けている群よりも上手に腰痛に対応ができる。これは家庭医によるアドバイスがより臨床的に重要な役割を果たしていると言うことを示しているのかもしれない。

結論
慢性腰痛患者ではアドバイス有効であった。どのようなアドバイスがよいのか、どれくらいの頻度でアドバイスをかければよいかと言う事については特定することは難しかった。
急性腰痛の患者に対しては活動性を維持するように伝えるだけで十分であった。慢性の腰痛患者では運動にアドバイスをつけ加えると言う方法が有効であるという強いエビデンスが得られた。そのアドバイスは自己管理に関するアドバイスが有効であり、ただ単に活動性を保ちなさいと言うアドバイスだけでは不十分であることがわかった。亜急性期の腰痛患者についてはより質の高い研究が必要であり、腰痛学級の指導内容の標準化が必要であると考えられた。慢性腰痛患者でのそのアウトカムの質を評価するためのツールが必要であることもわかった。

《論評》
結論に述べられていることがすべてです。