2017年9月18日月曜日

20170918 JBJS Am Patient-reported outcomes after total knee replacement vary on the basis of preoperative coexisting disease in the lumbar spine and other nonoperatively treated joints: the need for a musculoskeletal comorbidity index.

JBJS Amから。
ヨーロッパの多国間多施設共同研究です。(EUROHIP)
アメリカでも骨切りの多施設研究(ANCHOR)が報告しています。

小さな島国のなかで、お山の大将が、「うちの治療がいいんだて!」という時代はすでに終わっています。
新時代に何をしていくのか。10年後の後輩たちのために何を残してあげられるのか。
そんなことを考えながら当直しています。笑

術前の患者の状態を他関節罹患、脊椎疾患に罹患しているかどうかで4群に分けて検討。1関節だけ罹患している場合には脊椎と他関節まで罹患している場合よりも術後の成績が良いですよ。そんなGradingをつくりました。というシンプルなお話です。

抄録のResultをみていただければ驚愕しますよ。

------------------------

  • 脊椎疾患、他関節疾患がTHAの臨床成績に影響することが知られているものの、いままでに他疾患の機能障害について評価されてくることはなかった。本研究の目的は脊椎、多関節の状態がTHA術後1年後にどのような影響をあたえるのか。ということを調べることである。
  • EUROHIPというヨーロッパ20施設の多施設前向き研究に参加した1327例のTHAを受けた患者。WOMACという患者立脚型評価をもちいて術後1年での臨床成績を測定した。患者をmusculoskeletal morbidity score(MMS)という指標をもちいて4群に分けた。1,単関節のみ罹患、2,多関節を罹患、3,単関節と脊椎を罹患、4,多関節を罹患。年齢、性別、BMI、居住状況、股関節痛の期間、ASA、うつの有無、術前WOMACについての調査を行った。
  • 845例の患者で1年後のフォローが可能であった。平均年齢は65.7才、55.2%が女性であった。
  • 今回の分類でもちいたMMSという指標で、術後1年のTHAの成績には差があった。効果料は他の評価よりも大きかった。MMS4でも74%の患者で充分な手術の効果があった。
  • Introduction
  • THAは標準の術式であるが、他の関節症状、身体症状がある患者でその臨床成績がどう代わるかと言うことは明らかではない。
  • 一般的にTHAによって良い成績が得られる患者は84%から93%と報告されている。成績不良因子としては高齢であること、もともとの活動性が低いこと、BMIが高いこと、合併症が多いこと、脊椎疾患など多関節の症状があること、うつがあることが上げられている。
  • 筋、骨格系の問題は成績不良因子の1つであることが知られているが、それがどれくらいどの程度影響しているかは知られていない。HawkerらはTHAをうける患者の81.2%が他の大関節にも障害を抱えており、その臨床成績は多くで不良であったことを報告している。
  • QuintanaらはTHA患者の42.9%で反対側にもOAがあることを氏名。54.5%の患者で腰痛を訴えたことを示し、またそれらの患者では術後6ヶ月での患者立脚型評価の回復が不十分であったことを示している。
  • Ayersらは、他の関節、脊椎などの合併症評価としてMuscloskeltal cormobidity indexを作成し、評価をしようとしている。また、Chrnley、Katzらも他の関節についての評価を行っているが、充分とは言えない。
  • 本研究の目的は他関節、脊椎の影響についてヨーロッパの他施設共同コホートにてTHA術後1年の患者を評価することによって検討することである。
  • 12カ国、20病院。1327例の患者。2004年から2006年。図1のようにして患者をEnroll.
  • WOMACによる評価。REPP(術前−術後/術前)を求めて、0.2を満たしているようであれば治療効果あり。
  • 4群に分けた。1,股関節のみ、2、股関節と他の大関節、3,股関節と脊椎、4,股関節と他の大関節と脊椎のいずれも
  • 結果
  • 年齢分布はいずれの群でも同じであった。
  • 表3に各郡間の比較を示す。術前の状態はいずれも有意差を認めなかった。
  • 図3にREPPを示す。1が最もよく、4が最も悪かった。
  • ロジスティック回帰分析を行い、このGradingが有意な因子であることを確認した。Group4と1の間でのみ、RRが0.82となった。
  • 考察
  • 筋骨格系の合併症はTHAの術をに影響を及ぼす最も大きなパラメーターである。本研究の強みは複数の国にわたる多施設共同研究であることである。
  • この4分類で、術者は患者の術前の期待に対してあるていどの回答を与えることができる。他関節、脊椎に問題を抱える患者ではそうでない患者よりも回復が悪い。それゆえに他関節、腰椎の状態についての評価をおこなうことは重要である。
  • この方法は他の大関節置換の場合でも同様に用いることができそうである。酷寒説のみならず膝、肩など両側の関節が罹患するような場合には同様に考慮することが考えられる。ただし、膝と肩の場合には同様のコホート研究が必要となる。
  • 本研究で予想しなかったことは68%の患者が他関節、または脊椎に問題を抱えていたことである。もうひとつ驚いたことには患者の割合に4群間で差がなかったことである。
  • WOMACは膝と股関節を同時に評価してしまうのが問題である。今後は新しい患者立脚型評価について検討を行っている。
  • 幾つかのLimitationがある。まず、選択バイアスがかかっている可能がある。研究に参加したのが調子の良い患者ばかりである可能がある。WOMACが膝と股関節を同時に評価するために、反対側の状態を詳細に評価できているわけではない。反対側の膝の状態について適切な評価を行ったわけではない。またこの4群わけのValidityはとれていない