2015年1月15日木曜日

20140115 Osteoporosis international Wintertime surgery increases the risk of conversion to hip arthroplasty after inter fixation of femoral neck fracture

<論評>
目の付け所で勝った感じですね。統計解析してたらたまたまそういう結果が出たのだと思います。
考察の押し切りっぷりがなんとも香ばしい。


抄録
本研究では大腿骨頚部骨折に対して冬に骨接合術を行うと人工関節に置換されることが多いことを明らかにした研究である。季節性のものであることからビタミンDが大腿骨頚部骨折の治癒に関連していることを示唆した論文となっている。
はじめに
ビタミンDは季節性に変動することが知られているものの、大腿骨頚部骨折の治癒に関する影響については不明であった。本研究では大腿骨頚部骨折の骨接合術の成績を四季ごとで比較を行った。
方法
ハンガリーからの報告。国家規模。後ろ向きの観察コホート研究。2000年に退院した60歳以上の大腿骨頚部骨折を骨接合術で治療した2779人が対象。8年間フォローを行い、人工関節に置換された症例を対象とした。性別、年齢、骨折型、骨接合術を行った季節、手術までの時間、合併症についても検討を行った。
結果
190例が対象となった。置換率は6.8%で会った。発症率は1000人年中19.5人であった。補正前の季節ごとの発生率は冬、春、夏、秋がそれぞれ1000人年あたり28.6、17.8、16.9、14.7であった。若年、女性、転位型骨折、骨接合術を冬に行うことが独立した危険因子であることがわかった。
結論
大腿骨頚部骨折に対して冬に骨接合術を行うと人工関節置換術になるリスクが高くなることがわかった。本研究は大腿骨頚部骨折に対する骨接合術を治療成績を向上させることに寄与するかもしれない。

はじめに
全世界的に見て、大腿骨頚部骨折は1-3%ずつ増加傾向にある。年齢調整を行うと年間1%ずつ大腿骨頚部骨折の罹患率は増加していろ、2050年には全世界で8200万人が骨折するものと推定されている。
大腿骨頚部骨折の治療は、先進国では転位がなければ骨接合術、転位していれば人工骨頭挿入術が行うということがガイドラインでも推奨されている。しかしながらハンガリーを含めた発展途上国ではいまだ最初に骨接合術を行うように推奨しているところも多い。骨折部の転位の有無での人工関節への再置換率は転位していれば45%、転位していなければ15.4%であるとされている。また骨接合術が失敗した場合の医療負担は2倍になるものと推計されている。
一般に骨折の遷延癒合、偽関節はなんとか骨接合を目指して再手術を行うものであるが、大腿骨頚部骨折に関しては人工関節置換術が選択される。人工関節置換を行うと登録されるために治療成績としての記録がしっかりとなされる。
大腿骨頚部骨折の治療についてその治療成績に影響する因子についての報告は多数なされている。大腿骨頚部骨折の発症と季節の関連についての報告も2編ある。また季節とビタミンDの変化についての報告もあり、その報告の中では冬には骨吸収が進行することが示されている。すなわち、骨癒合に季節が影響している可能性がある。
疫学調査の結果から北半球の国々では季節性のビタミンD 不足が起こっていることが示されている。また長管骨の骨癒合に関してビタミンDのの血中濃度が関連しているとする報告もある。しかしながら大腿骨頚部骨折の骨接合術の治療成績に季節が関連しているとする報告はない。
本研究では大腿骨頚部骨折の骨接合の成績を季節ごとに比較するものである。

方法
ハンガリーの保険データベースを使用。69の医療機関で大腿骨頚部骨折の治療が行われていた。2000年に大腿骨頚部骨折を受傷した60歳以上の患者を抽出。それらの患者が人工関節置換術をおこなわれたかどうかをデータベース上から検索。死亡または人工関節置換術を行なわれたかどうかをエンドポイントとした。
年齢、性別、手術までの待機時間、骨折の転位の程度、季節についてそれぞれ危険因子であるか同化を検討した。
12月、1月、2月が冬、3月、4月、5月が春、6月、7月、8月を夏、9月、10月、11月を秋と定義した。

統計解析
カプランマイヤー法で比較。コックスハザード解析を行った。

結果
2000年にハンガリーで治療された大腿骨頚部骨折は5404例。うち大腿骨頚部骨折単独受傷は3783例。2779例(73.5%)が骨接合術を行なわれていた。この2779例を対象として検討を行った。(図1)
平均年令77.8歳。74.9%が女性。季節ごとの受傷形態に優位な差は認めなかった。51%が受傷後12時間以内に治療を行われており、24時間以上経過した例は32.1%であった。
8年間のフォローを行い、1980例(71.2%)が死亡。609例(21.9%)が骨癒合し治癒。190例、6.8%が人工関節置換術が行なわれていた。(ハンガリーの平均時妙は75歳)
カプランマイヤー法で検討したところ季節による死亡率に有意な差を認めなかった。(表2、図2)
大腿骨頚部骨折の骨接合術後に人工関節に置換されたのは1000人年中19.5出会った。190例の患者のうち69.5%が最初の1年に人工関節に置換されていた。
人工関節置換術が行われた季節ごとの違いは、冬が28.6人年なのに対して、春、夏、秋は17.8、16.9、14.7であった。(表3)
累積ハザード比は、年齢が1歳あがることに危険率は0.05減少し、女性であるとハザード比は1.57、転位型の骨折であると2.31、冬に骨接合されるとハザード比は2.0となった。手術までのチキ期間は骨接合術後の人工関節置換には影響を与えなかった。季節ごとの骨折型の違い、年齢、性別の違いも認めなかった。年齢、性別、骨折型にてそれぞれ解析を行ったがいずれも冬で人工関節置換術への変更が多かった。
考察
筆者らの知る限りでは本研究は大腿骨頚部骨折に対して骨接合術を行った場合に季節ごとでその治療成績が有ることを明らかにした最初の論文である。冬に骨接合術を行うと他の季節に比べて2倍リスクで人工関節への再手術が必要となることがわかった。
本研究は国家規模、8年間のフォローアップであり、対象も一般的な大腿骨頚部骨折の患者であることから本研究の結果は充分に意味のあるものであると考えられる。
本研究では季節ごとの死亡による影響は考慮していない。これは季節ごとに死亡率が違うというエビデンスがないからである。更に、本研究では手術、死亡についても検討を行っている。それ故に季節ごとの人工関節手術への影響は死亡以外のその他の原因に起因していると言える。
骨接合術が破綻し、人工関節になりやすいのは女性、転位のある骨折であることがわかった。冬であることは骨折型、性別に影響をうけないこともわかった。
女性の場合には閉経後骨粗鬆症によって大腿骨頚部骨折が起こりやすく、骨粗鬆症は固定性にも影響をおよぼす。
エストロゲンは年齢とともに減少し、男女ともに骨代謝に影響をおよぼす。女性では男性よりもビタミンDの血中濃度が低く、ハンガリーのコホート研究でもそれは明らかとなっている。
本研究では年齢が上がるごとにコンバージョンのリスクが減少した。これはハンガリーの老人の気質が影響している可能性がある。ハンガリーの老人は病院に行ったり再手術などを嫌がるからである。
骨接合術後の高い死亡率なども影響を及ぼしている可能性がある。
本研究の一番の発見は季節ごとによって骨接合術の治療成績が違うことである。南半球、北半球でビタミンDの血中濃度の季節変動についての研究が行なわれている。ハンガリーは特にビタミンD欠乏地域であると知られており。それは冬に顕著である。ハンガリーのある北緯40度近辺では太陽光によるビタミンDの活性化だけでは不十分で、ビタミンDのの補充が必要であるがEUでビタミンD3の添加についてのガイドラインはない。ビタミンDの減少は転倒、骨成熟の遅延などに関わっているとされ、大腿骨頚部骨折の増加はビタミンDの減少で説明できるかもしれない
近年の研究では長管骨骨折後にはビタミンDが減少していることが知られている。また骨粗しょう症の血液マーカーも季節性の変動をきたすということも言われている。夏にはビタミンDによって骨代謝が活発化し冬にはその反動がくる。
冬にビタミンDの補充療法を行うことは有用かもしれない。ビタミンDの投与によって上腕骨近位端骨折が良好に治癒したとの報告もある。ビタミンDの季節性の変動は骨折の治癒にも影響を与えうるものと考える。
メラトニンも季節性の変動を示すホルモンであるが、まだ基礎レベルでしか骨との関連はわかっていない。メラトニンが骨芽細胞に影響を与えると言われているので、何かしらの影響はあるかもしれない
本研究ではいくつかの限界がある。一つは登録されたデータのみで評価しているために患者の詳細が不明なこと。また採血でビタミンDの血中濃度を測定しているわけでもなくまた骨密度、その他の骨代謝マーカーも測定していない。骨接合術についての詳細も全くわからない。また2000年に行なわれた手術のみを対象としていることも問題となる。
しかしながら本研究は国家規模で行なわれていること、また季節性に注目した初めての研究で有ることから価値あるものと言える。この報告から冬場には骨接合術を行なわないほうが良いのではないかと低減できる。

結論として大腿骨頚部骨折に骨接合術を行った場合、冬に行うと人工関節置換術になるリスクが上昇することがわかった。これにはビタミンD、メラトニンなどが関連しているのかもしれない。

2015年1月8日木曜日

20140108 Plosone Effects of Home-Based Interval Walking Training on Thigh Muscle Strength and Aerobic Capacity in Female Total Hip Arthroplasty Patients: A Randomized, Controlled Pilot Study

THA術後の患者の活動性を下げないようにするための自宅での運動療法についてのレジメはない。本研究ではインターバルウォーキングトレーニングを用いいることでこの問題に対処しようとした。
60歳以下のTHAを受けた28例。コントロール群とトレーニング群の2群に分けた。トレーニング群は最大呼吸能力の70%の能力で60分間の歩行を目標として12週間行った。コントロール群は術前と同程度の活動性を保つように指示をした。活動量計をもちいて日中活動量を寝ているとき、お風呂に入っているとき以外の測定を行った。また膝伸展、屈曲筋力とVO2peak、Vo2ATを測定した。結果、膝屈曲筋力が術側、非術側の両方で23%改善した。Vo2peakとVo2ATもそれぞれ有意に改善した。コントロール群では術側のみ改善した。Vo2peakとVo2ATもコントロール群よりもトレーニング軍のほうが上昇していた。自宅での観血的歩行トレーニングは筋力低下の予防に有用であると言える。

はじめに
THAは変形性股関節症に対して有用な治療方法である。しかしながら術後2年以上経過しても筋力低下が残存していることが少なくない。筋力低下は関節の不安定性、ゆるみ、転倒リスクなどさまざまな合併症と関連する可能性がある。結果として活動性の低下につながる
これらの問題を解決するために専門スタッフの監視のもとでの術後早期からのリハビリテーションが推奨されている。ただ長期間の入院は保険上の理由から困難で、入院期間は筋力回復には充分な時間とは言いがたい。また、退院後外来リハビリを行うと筋力強化に有用であるとされているものの、保険上の問題、通院が困難であるなどの理由で継続が困難な患者さんもいる。
そこで筆者らは自宅でできるリハビリプログラムの作成が必要であると考えた。筆者らはインターバルウォーキングトレーニングを行うことで中年から老齢の患者の筋力や筋肉酸素量の向上が認められることを明らかにしている。しかしながらTHA術後の患者でどうなのかということは明らかとなっていない。本研究の目的はパイロットスタディとしてインターバルウォーキングトレーニングがTHA術後でも有用かを検討することである。

方法
膝屈曲、伸展筋力測定、Vo2peakの測定。サイクリングエクササイズにてVOATを測定。
3次元加速度計を装着し日常生活の動作量を測定。
Vo2peakを測定し、3分間VO2peakの70%以上85%未満となる程度の速さでの歩行を行い、1周間に60分以上になるように指導した。
2週間毎に来院。データを解析した。データを解析し、理学療法士が運動頻度、強さについて指導を行った。コントロールグループは普段通りの生活を送るように指導した。
12週後にデータを取得した。

結果
表1患者背景を示す
表2 トレーニング群は早歩きできる時間がコントロール群の2倍になっている。また運動中の酸素消費量もトレーニング群がコントロール群よりも多かった。
表3 筋力を示す。両群とも患側のほうが健側よりも筋力が低下していた。しかし有意な差はなかった。トレーニング群の方がコントロル軍よりも膝屈曲力が増加した。
表4トレーニング後の酸素取り込み能力を示す。トレーニング群の方がコントロール群よりも増加していた。
図2筋力変化について図示した。伸展筋力は変化がなかった。屈曲筋力は両群とも術側、健側とも増加した。トレーニング群は健側、患側とも筋力が増加したがコントロール群は患側のみであった。
増加量もトレーニング軍のほうが多かった。
図3VO2peak、VO2ATの結果を示す。コントロール群では変化がなかったが、トレーニング群では増加を認めた。
トレーニング前後の痛みに変化はなかった。トレーニング群の方が満足度が高かった。SF36でもそれはあきらかとなった。

考察
週辺り60分間の早歩きを励行することで、12週間後の筋力、筋肉の酸素摂取量が増加することがわかった。
筆者らの別の研究で、VO2peakが等しい3群で比較した研究で健康成人では早足による歩行訓練が有効であるということがわかっている。THAを受けるようなヒトの筋力、筋肉の酸素摂取量は健康成人の最低ランク群とほぼ同様の能力であった。
表2で示されているように、コントロールグループに比べてトレーニング群は早く歩けることがわかった。THA以外の研究で様々な結果が報告されている。それらの研究を元に今回THAの患者では週60分をメドにトレーニングをするように決定した。
表3、図2に表されるようにトレーニング群は膝屈曲筋力の回復を認めた。これは根本らの研究と同様の結果であった。膝伸展筋力が回復してこない理由については不明である。
表4、図3で筋肉の酸素摂取量の結果を示した。ともにトレーニング群で摂取量が増加している。
股関節の痛みはトレーニングを行っても悪化するということはなかった。
研究の限界は、股関節の手術であるが膝の筋力で代用していること。毎日の活動性の評価をトレーニングの後でしか行っていないこと。トレーニング群のほうが密にケアを受けていることなどがあげられる。


<論評>
大学ならではといった感じでしょうか。
確かに術後のリハビリをどのように自宅で行うかといったことについての一定の見解はなく、乱暴な言い方になりますが、週1値時間早歩きをするとよい。と指導できることは有効な手段となりるかもしれません。
頑張ってNを増やして頂いてPilotという言葉がなくなるとよいなあと思いました。

考察で同じ論文を繰り返し引いているのはかっこ悪く感じました。