術中の対応
・患者の体位
硬膜外静脈叢が下大静脈と弁のない経路で交通していることはよく知られている。伏臥位では腹圧の上昇が下大静脈の厚上昇につながり、そのために硬膜外静脈叢の循環血漿量を増加させ、出血量の増加につながる。古くはHallフレームが腹圧の低下につながり、出血量を有意に減少させたとする報告がある。最近ではWilsonフレームで広いパッドか狭いパッドのいずれが有効かという研究が行われ広いパッドの方がより出血量が少なかったとする報告がある。術中の出血量と腹圧との間には密接な関係がある。
・手術方法
皮切部からのウージングを抑えるために50万倍のボスミンの局注を行うことがある。傍脊柱筋への栄養血管は脊椎のすぐ近傍を通っているため骨膜下で剥離するようにするとこの血管を損傷せずに出血量を減らすことができる。適切な手術手技を習得することで出血量は減らすことができる。
固定術ではしばしばデコルチケーションを行わなければならない。この時には骨の表面から出血してしまう。そこでこの手技を一番最後にすると出血量は抑えられる。そして創部をwatersealする程度まできつく縫合し、タンポナーデ効果が得られるようにすることが必要である。熱凝固で出血を止めたり、骨蝋も骨からの出血を止めるために少量使うことも差し支えない。硬膜外出血はバイポーラで止める。もし、下大静脈圧が十分に低ければ、創部に生食を満たせばその圧だけでも硬膜外出血のコントロールは可能である。
・局所止血剤の使用
様々な注意を払っても止血困難な出血はある。そのような場合には止血剤の使用が考慮されることとなる。
これらの止血剤は大きく二つのタイプに分けられる。passiveなタイプと、activeなタイプの二つがある。
passiveなタイプは血小板凝集を促進するタイプの製剤である。activeなタイプとは凝固系を促進してフィブリン塊を形成するようなもののことをいう。
passiveなタイプにはコラーゲン性、ゼラチン性、セルロース性のものがある。
いずれの商品も多くの症例で10分以内で止血を得ることができる。
局所止血剤は有用であるがいくつか有害な点を潜在的に有していることには注意が必要である。passiveな止血剤では神経の圧迫のリスクがある。また異物反応、慢性の炎症、感染のリスクもある。
局所止血剤は必要最低限の使用にするほうが良い。
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