Summary and recommendations
腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰椎の変性のために起こり、60歳以上で罹患することが一般的である。
・腰部脊柱管狭窄症の神経学的な予後自体は良好である。多くの患者さんが数年のフォローアップの間は特に症状の悪化なく経過する。しかし、一部の患者さんでは症状のためADLの低下が見られることがある。
・進行性に悪化する神経学的症状のないLSSの患者さんでは、保存療法を行なうべきである。理学療法や、鎮痛剤が用いられることが多いが、その効果について確固たるエビデンスはない。
・手術治療は適切な保存療法を行なったにもかかわらず症状の軽快が認められない患者、進行性に悪化する神経症状を認めた場合に考慮される。
側弯を認めない場合、何かしらの固定法を用いいない椎弓切除術は,インプラントを用いた他の方法より好んで行なわれることが多い。
・進行性の馬尾症状、脊髄円錐症候群、新規に生じた膀胱直腸障害を稀に生じることがあるが、このような場合には緊急手術の必要性についてコンサルトすべきである。
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LSSの予後
32人の患者を49ヶ月間フォロー、70%の患者で症状は変化せず。15%の患者で改善。15%の患者で症状の悪化をきたした。症状が不変であってもLSSによる不快感のためにADLが低くなった患者さんもいた。
(Johnsson KE The natural course of lumber spinal stenosis. Clin orthop relat Res 1992)
LSSの保存療法
理学療法、薬物療法、硬膜外ブロックなどがあげられる。
理学療法
理学療法は保存療法としてよく行なわれるが、その根拠は不明である。運動療法のレジメもないが、ストレッチ、筋力強化、有酸素運動などがよく勧められる。治療の目標は筋力の改善と姿勢の改善である。
腰椎の可動域の回復と腰椎の前弯の解消を主たる目的とする。体幹コルセットによって腰椎の前弯の解消に役立つものの帰って腹筋などの筋力低下につながるのではないかと危惧されている。
(Willner S effedt of a rigid brace on back pain Acta orthop scand 1985)
無作為試験でトレッドミルによる歩行訓練と腰椎のストレッチを行なった群との比較では歩行群の方が改善が良かった。(1年後には両群に差はなかったが。)
(Whitman JM A comparison betmeen two physical therapy treatment program for patinet w/ LSS ,RCT Spine 2006)
決まったレジメはないものの、これらの報告を参照して患者指導に用いると良いか。
薬物療法
NSAIdsなどが使われるが、その効果効能、副作用についての詳しい調査はない。また神経学的予後にどう影響するかという報告もない。
硬膜外ブロック
LSSに対する硬膜外ブロックの効果について確固たるエビデンスは存在しない。いくつかの限定的なエビデンスがあるのみである。(後ろ向き研究では効果があるとするものもあるが、小規模のRCTでは1ヵ月後にはプラセボと変わらない効果とされている。)
<論評>
腰部脊柱管狭窄症についてのUp to dateの記載です。
まだまだ分かっていないことがほんとに多いことを実感。
保存療法についても多施設でプロトコールを組んでやれると面白そうですね。
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