2011年8月1日月曜日

20110801 JBJS(Am) Comparison of total hip arthroplasty performed w/ or w/o Cement.RCT, 20 years F/U



抄録
THAのインプラントはすばらしい長期成績が報告されて来ているが、そのインプラントの固定法については未だ議論がなされている。250例の変股症の患者に対して無作為にセメント固定群とセメントレス群とにわけ、Kaplan-meier生存分析を用い平均20年間のフォローを行った。結果、セメントレスステムの生存率は99%であった。レントゲン写真上セメント固定ステムの95%に、セメントレス固定ステムの88%にいくらかのstress-shieldingを認めた。Grade3以上のstress shieldingはセメントレスステムの12%に認めた。

Malloy head total hip システムを使った20年の成績。
セメントレスシステムはセメント固定ステムの成績を上回った。このセメントレスTHAの生存率の全体の改善は大腿骨側ステムの長期成績が確保できたことが最も大きな容易であると考えられる。(ステム生存率は99%)
カップ側の置換率はともに大きな違いは認められなかった。
この研究の限界は、ステム以外はもう現在使われていないデザインであるということ。この研究はMalloy-headについてのみ、の検証であり、他のシステムについて同じことが言えるかどうかは不明である。

<論評>
股関節に興味をもっている人間として、読んでみました。

セメントレスステムの長期成績はものすごく安定している。と言うことがひとつ言えます。
以前このブログでも書いた記憶があるのですが、人工股関節の寿命がどれほど長いかを競う時代は終わりを告げようとしているのではないでしょうか。
人工股関節の生存に関する成績自体は安定しています。
やはり、人のQOLに関わる仕事をしているからこそ、その部分に着目した評価を行うべきでは無いかと考えています。

僕が考えるセメントレスTHAとセメントTHAの利点、欠点について
・セメントレスTHA
利点
・優れた長期成績
・手術時間が短い
・手技がセメントTHAよりは容易
欠点
・modular neckでない限り、ステムの太さとネックのオフセットが比例するので高齢者で髄腔の太いタイプでは大きなオフセットになりがち。
・脚長差、術後大腿部痛の出現はある一定の頻度で出現
・初期固定性が得られないと結構miserable
・髄腔の形状にステムの前捻、設置場所が規定される
・臼蓋側も同様に高位設置気味にならざるを得ない。
・revisionはfull porusタイプではとても大変。しっかりとした骨への固定性はrevisionの際の抜去困難と同義
・stress shieldingによる骨萎縮の問題

・セメントTHA
利点
・フレキシブルに脚長、前捻をコントロールできる。
・revisionがしやすい
欠点
・とにかく煩雑。手術チーム全体がセメントTHAに対する理解がないとトラブルが頻発
・セメント手技にともなう重大な合併症の可能性(血栓症など)
・手術時間が長い。

あくまでも僕の考えるところですので、機種の選定は術者がその機種についてしっかりと理解した上で行うべき。と考えますし、手術はナースや麻酔科の先生方の協力あって初めて成り立つものですので、チームとしてどうしたいかというコンセンサスを得ることも非常に重要であると考えました。

2 件のコメント:

  1. 20年の生存率が,99%ですか!?
    カップの入れ替えを行えば,30~40年もつ可能性もあるんですね~.勉強になりました.

    返信削除
  2. 杉本先生
    ステムはその生存率はかなり高くなっています。カップ側もクロスリンクポリエチレンが開発されて、より長い生存が期待できそうですねえ。
    だからこそ次のステップに進まねばと考えています。

    返信削除