2010年2月5日金曜日

2010.2.5 JBJS(Am) Biomechanics of knee ligament

1993年の時点での膝の靭帯についての研究のまとめ

膝には4つの靭帯がある。ACL,PCL,MCL,LCL。
形態学的に分けられており,また関節の中にあるかどうかでも分けられる。
LCLを除いたそれぞれの靭帯は細かくその成分が分けることが出来る。ACLは前方内側成分と後方外側成分に。PCLは前外側成分と後方内側成分とに分けられる。このように成分に分けることには意味があって、たとえば前十字靭帯,後十字靭帯共に伸展時に後方が緊張し、屈曲時には前方が緊張する。(図1)
内側側副靭帯は表面成分と深部成分に分けられ、それぞれが前方成分と後方成分とに分けられる。表面成分の前方部分は屈曲70-105度でもっとも緊張するようになっている。

ACLの平均の長さは31-38mm,幅11mm.PCLは38mm,幅13mmが平均である。ACLとPCLが交差するポイントはACLが遠位でPCLが近位であることがわかっているが臨床上これがどうしてなのかは不明である。(図2)

コラーゲン線維の太さも靭帯によって異なっており、MCLはACLの三倍太いため自然治癒能力が高い。

バイオメカニクス
ACLは前方への脛骨の移動を抑制し、PCLは後方への移動を抑制している。
MCLの表層成分は外反を防止し、LCLは内反防止に働いている。MCLとLCLは膝を包み込むような形状になっているのでこれによって内旋,外旋を制御している。

靭帯の強度
ACLとMCLの引っ張り力‐変形曲線を示す。これが上にあればあるほど変形やかかった力に耐えられるということである。MCLはACLの約2倍その耐える力が大きい。

靭帯は粘弾性を有する。図4のように力が加わってもそれを少しずつ変形し受けていくような形に靭帯は変化してゆく。

運動学
運動学は膝の形と機能を理解する上で重要である。膝靭帯の再建の目的は膝の柔軟性と運動力学と安定性を回復させることである。なのでどの靭帯が正常ではどのように働いているかを理解し,また同時に損傷している場合にはどうなるかを知る必要がある。
膝の運動は6つの方向で表現される。
移動が3つ:前方ー後方,内側ー外側,頭側ー尾側.
回旋が3つ:内反ー外反、屈曲ー伸展、内旋ー外旋
それぞれの運動は組み合わさって起こっており、前後方の回旋には内側への回旋が加わり、屈曲伸展の回旋には概則への回旋が加わる。
靭帯はほかの組織ともあいまって静的な安定性にも寄与している。
十字靭帯がクロスするようにあることでACLは回旋運動の中心となっていることがわかる。
図6では回旋運動とすべり運動の組み合わせについて述べている。回旋運動だけでは大腿骨が膝関節から脱臼してしまうが、すべりを伴うことで屈曲時の大腿骨の脱臼を抑えている。
前方への移動

前十字靭帯が脛骨の前方移動を制御している。完全伸展時には70%,30度屈曲、90度屈曲時には85%の力が前十字靭帯にかかる。つまり前十字靭帯の後方成分は完全伸展した時以外には力はかからない。
100Nの力を加えてみると完全伸展位の時には2-5mmしか前方移動しないが、30度屈曲位の時には5-8mmほど移動する。ここからは屈曲を強めれば強めるほど前方への移動量は減少する。ACLが部分ごとによって働く場所が違うので深屈曲していくことができる。
20-30度屈曲位で100Nの力で前方へ引き出すと7-9mm動く。ACL損傷にともなったMCLの完全断裂の際には前方への移動が起こるがMCLの部分的な問題では前方への移動は起こらない。同様に腸脛靭帯,LCL,後外側構造体,関節包などの損傷もACL損傷と合併すると前方への不安定性をます。PCL損傷は前方への移動量には関係がない。
気をつけなければいけないのは正常な膝の動きでは膝が屈曲するときには外反,内旋を伴いながら脛骨も前方に移動してゆく。ACLの損傷に伴ない30%前後方への移動が制限されると回旋も大きく減少する。つまりACLは前方への脛骨の動きを制限するだけでなく前後方の動きに伴う内旋,外旋の最初のきっかけである。

後方への移動
後十字靭帯が85%-100%の脛骨が後方へ移動するのを制限している。LCLと後外側構造体がこれを補助している。MCLはほとんど後方への支えにはなっていない。普通だと100Nで4-5mmの脛骨の移動が後十字靭帯が損傷すると15-20mmの移動が起こるようになる。(90度屈曲位の場合)。また同様に外旋が減少する。LCL、後外側構造体が切断するとむしろ外旋は増加する。これは30度で外旋が最大となり屈曲に伴って減少していくことに関わっている。ACLは後方への不安定性には関係がない。
脛骨の回旋は二次性に関節包などが固くなることで前後方への移動を減少させ得る。内旋することで前後方の不安定性が減少する。腸脛靭帯と外側の組織,内外側側副靭帯が固くなることでこの丈夫さを生み出している。外旋の時は内外側側副靭帯が固くなる。

内反
外側側副靭帯は内反を抑えている。完全伸展位で掛かる力の55%を負っている。また外側側副靭帯は内旋を制限するようにも働いている。そうすることで後外側構造体にかかる力を少なくして屈曲しやすくする効果がある。完全伸展にて前十字靭帯、後十字靭帯は25%の力が分散している。90度まで曲げるとACLは緩んでACLに掛かる力は小さくなるがPCLにかかる力が大きくなる。後方の関節包は前方、側方の関節包の約3倍安定性に寄与している。
前後方の動きとともに内旋が生じ内反が起こる。後外側構造体が破綻している時には内反で外旋が起こってしまう。
LCLの損傷は内反の増大をもたらす。しかし、後外側構造体が破綻していない限りはこの不安定性はほとんど出ることがない。外旋の増大は後外側構造体の完全な破綻を示す。PCLの切断は内反を増大させる。後外側構造体のみ、後十字靭帯の切断ではそれほどでもないがLCL、ACL、PCLの合併損傷では内側の関節が開大する。

外反
外反を抑えているのは内側側副靭帯の表層成分である。完全伸展時に全体の50%の力を受けている。前方と後方の関節包が25%の力を受けている。残りの25%はACLとPCLで受けている。MCLは屈曲でより働くようになっている。外反と回旋が進む時にはMCLの役割は小さくなる。その時には関節包の後外側部分の役割が大きくなる。
MCL以外の靭帯を切っても外反不安定性は増大しないがMCLの完全切断では外反不安定性は急激に増す。MCLとPCLを同時に切るとその不安定性が最も増すということが知られている。
これから分かることは外反を最も抑えているのはMCLであるがその次はPCLであるということである。外反の動きの時にはACLはほとんど影響しない。

内旋
膝の屈曲で内旋の柔らかさは増大していく。20-40度の屈曲のところで25度の内旋が認められる。MCLとACLだけが内旋の動きを支える方に働いている。これらのどちらか一方を切断しても明らかな内旋不安定性が生じる。MCLの方がより重要な働きをしている。ACLにLCLや外後側方構造体の切離を加えると内旋が35度増す。PCLの単独損傷では内旋不安定性は生じない。
前方と内側の移動が内旋と共同して起こる。ACL損傷があると前方への移動が多くなる。PCL、後外側構造体、LCLはこの運動に関わらない。

外旋
膝の屈曲で外旋の柔らかさが増してゆく。30-40度屈曲位で最大20度くらいの外旋がでる。外旋は前十字靭帯、後十字靭帯で直接制限されない。唯一PCLと後外側構造体が破綻している時には外旋不安定性が生じる。PCLは90度でもっとも緊張する。LCLと後外側構造体が切れると最も不安定になる。
外旋には後方移動と外側移動をともに伴う。

<論評>
なんとなくわかったような気分に。

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