背景 トウ骨遠位端骨折は高齢者の脆弱性骨折として評価、治療がなされているが脊椎の骨折を伴わない患者において骨粗鬆の治療を始める重要な機会であることが逸しているということがいくつかの報告で言われている。今回の目的はトウ骨遠位端骨折の治療を行った術者が骨粗しょう症の治療を行ったかということについて調査を行った
方法 2007年の韓国の国の調査に基づいて行った。この調査は国民の97%を網羅している。股関節、脊椎、手関節の骨折を起こした50歳以上の女性に行われたBMDのチェックと骨粗しょう症の治療について評価を行った。
結果 31540人の股関節骨折と58291人の脊椎骨折と61234人の手関節骨折が2007年に認められた。股関節骨折患者の22.5%、脊椎骨折患者の28.8%、手関節骨折患者の8.7%がBMDをチェックされていた。股関節患者の22.4%、脊椎骨折の30.1%、手関節骨折患者の7.5%が骨粗しょう症の治療を受けていた。
考察 骨粗しょう症患者における脆弱性骨折の割合が増えているということが知られているということにもかかわらず、手関節骨折の患者では股関節骨折、脊椎骨折の患者にくらべ骨粗しょう症の診断、治療が行われている割合が低かった。このギャップを埋めるために更なる調査が必要である。また術者は責任をもって骨粗しょう症の治療を行わなければならない。
表1 ICD-10を用いた患者抽出
表2 2007年に脆弱性骨折を受傷した人数とBMDを測った数と骨粗しょう症の治療を行った数。手関節骨折は8.7%、7.5%と有意に少ない。
考察
今回の研究では50歳以上の韓国人女性は脊椎骨折、股関節骨折を受傷した患者に比べて明らかに骨粗しょう症の診断、治療を受けている割合が少ないということが判った。韓国では家庭医ではなく手術をした整形外科医が術後のフォローを行う。すなわちトウ骨遠位端骨折の治療を行った整形外科医が骨折後に骨粗しょう症の検査、治療を行っていないことがわかる。しかしながらトウ骨遠位端骨折をした人が今後骨折を起こす可能性は全く骨折をしていない人に比べ2-4倍といわれている。その上トウ骨遠位端骨折を受傷した患者は脊椎骨折、股関節骨折を起こす患者よりも年齢が低く、2度目の骨折を起こす前にその予防を行う機会を逸している。多くの整形外科医に骨粗しょう症の治療を行うよう提言しなければならないというのがわれわれの意見である。確かに薬剤投与が必要でない患者も含まれている可能性があるがハイリスク患者を見逃していいというわけではない。
確かに、脊椎骨折を起こしていない患者の骨粗しょう症治療は適切に行われていないということがよく言われている。2.8%の検査、22.9%の治療しか受けていないということを報告している人もいる。レビューによると15%以下しか骨粗しょう症の検査、治療を受けていない。
このギャップがある理由は不明である。骨粗しょう症に対する理解のなさ、術者と家庭医との連携不足などが今までの報告では言われてきたが韓国では術者とフォローする人間が一緒であるので連携不足ということはない。むしろ勧告では家庭医が不足しているため骨粗しょう症の診断と治療を行わない理由が一つ減る。保険の提供者からの情報提供が不十分なことも原因であろう。トウ骨遠位端骨折を起こした人は今までそのような骨折歴がなくまた検査も受けていないと推測される。トウ骨遠位端骨折を起こした患者の半数が自分の骨は正常であると考えており、骨粗しょう症であると考えている人は20%に過ぎなかった。これらの上方を治療する側、治療される側に提供する必要がある。トウ骨遠位端骨折を治療する人間には骨粗しょう症が国民的問題であり、その治療方法について研修を受けてもらったほうがいいのかもしれない。
脆弱性骨折を治療した術者は骨粗しょう症の治療を行う責任がある。
論評
日本でも術者が術後のフォローは受け持つ。また、以前、家庭医にまかせるよりも整形外科の専門医がフォローしたほうが骨粗鬆症の治療がうまくいくとの報告がJBJSにあった。(たぶん2008年)どうしても忙しい外来の中骨粗鬆症の説明を加え、治療を開始するというのは相当の強い気持ちがないといけない。ぜい弱性骨折の棋王があるとFRAXで試しに計算してみると約2倍に危険率が上がる。骨粗鬆症の認識を上げるとこから始めていかなければならない。
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