2009年12月7日月曜日

2009.12.7 JBJS(Am) Dec.2009 Assesment of technical skills of orthopaedic surgery residents perfoming open carpal tunnel releas surgery

要旨
背景
手が上手に動くかどうかということは妥当性のある手術技量に対する能力評価の重要な一部分を占める。手術技量を評価し、点数づけることが重要だと認識されていてもその評価方法はいまだ定義づけられておらず、またその妥当性も明らかにはなっていない。今回の研究の目的は整形外科レジデントに向けて行った4つの試験の妥当性と再現性について手根管開放術を行うことで判定をした。
方法
6つのレベルにある28人の整形外科研修医に対して死体標本を用いて手根管開放術を行ってもらった。資格を判定するのに4つの測定方法が用いられた。その1、web上で解剖、手術適応、手術の手順、手術レポートの口述、手術の合併症と入院適応についてテストを行った。その2、OSATSに参加したレジデントに対して権威ある手の外科医が2人で詳細なチェックリストスコア、global
rating scale、可か不可かを判定した。個々の評価はレジデントのレベルと同様にほかのものと関連を認めた。
結果
有意な違いを認めたのは経験年数とテストの点数、経験年数とチェックリストスコア、経験年数とglobal rating
scale、経験年数とと合格率であった。経験年数手術時間との間には有意な差を認めなかった。
考察
この結果から言えることは知識量のテストと死体標本を用いたテストでは優秀で教養のあるレジデントが抽出できるということだ。しかしながたら、知識量のテストの結果が悪かったことは実際の手術でも失敗につながったが、知識があっても上手に手術ができるわけでないということが分かった。知識のテストと実技のテストは別で行われる必要がある。

図1 試験のプロトコール 知識のテストとOSATSを別に行った。OSATSは3段階で行っている。

表1 参加者の成績。経験年数が増えるほど成績が良くなる

表2 このテストを受けるまでの参加者の手根管開放術の経験数

表3 OSATSテストの再現性 チェックリストとglobal rating scaleはテストとして妥当である。

図2 座学のテストが悪かったものは実技でもよい成績を得られなかったが座学のテストがよくても手術実技で合格点に達するわけでない。

考察
この研究は手術手技を評価する方法が妥当性があるかどうかを検討するために行われた。知識量のテスト、global rating
scale、詳細なチェックリストに基づいたテスト、合否判定のいずれの方法も経験年数に基づいた成績が得られた。このことからこれらのテストはいずれも妥当であると考えられる。知識のテストの成績が悪いことはOSATSの成績が不良であることを示唆するものの、知識のテストで合格してもOSATSで必ずしも良好な成績が得られるとは限らない。
今回の研究では一般的な手術全体で以前妥当性があるとされた方法を手根管開放術に用いて行ってみた。global rating
scale、詳細なチェックリスト、合格、不合格判定のいずれもレジデントのレベルと強い関連性を示した。知識量は卒後1年目から2年目に。合格、不合格のレベルに達するのは2年目と3年目の間に。すべての研修医は卒後3年目までに手根管開放術は成し遂げられるようになっていた。卒後2年目までの10人中9人がそのレベルには達していなかった。研究が行われた病院では手の外科を卒後3年目にローテーションするようになっている。なので卒後3年目になると手根管開放術ができるレベルに達する人数が増えるのであろう。

死体標本を用いたテストはそれぞれと関連を認めたものの、4人のレジデントでは知識量を問う試験では合格したものの、実技試験では不合格であった。知識量を問うテストでは実技がどれくらいできるかは分からない。しかしながら知識量を問うテストは手術技量を評価する前提条件として認知するための領域として重要な役割を担っている。知識量を問うテストは手術技量を評価する準備ができているか判定するためのスクリーニングツールとして有用である。しかしこのテストだけでは実技が上手にできるかどうかを判定するには実技テストの代わりになるものではない。

あらゆる方法は技術を評価する上で妥当性と再現性があることが分かった。以前の研究で言われていた一般的な手術の評価で行われるOSATS法のうちの二つが特に有用であるということがこの研究で分かった。OSATSが手根管開放術に修正されて用いられるときにそれらはよく似た結果であった。MatinらはOSATSのテストのうち3つの方法(global
rating scale、詳細なチェックリスト、可、不可判定)を用いたと記述している。global rating
scaleはたくさんの研究者によって用いられている。この方法は手術の技術評価の質的評価としてつかわれる。global rating
scaleはもっとも多くの手術の質を評価する際に使われている。この方法では安全性の測定やいかなる悪い評価をするようなところは起こらなかった。そこで筆者らは起きうる悪化する事態を記載したチェックリストをつくり、それを検者にもたせ合否の判定基準とした。
最後に手術の時間を測定したものの、この手術時間は経験年数とは関連がなかった。これは若い医者では素早く行えることができたが、専門性に欠けていたことと関連しているのかもしれない。

この研究の強みは評価項目の妥当性を評価しただけでなく、価値の高いテストのフォーマットとしてつかわれる厳格さがあると示したことです。すべての研修医は同じ2人の医師によって評価されており、言葉による助言は与えられず、同じ手術環境がつかわれたことである。

この研究の問題は二人の検者ということでバイアスがかかることである。また、検者はレジデントの経験年数を知っていた。将来的にはそのようなことをブライドとして行いたい。ほかの問題としては卒後1年目の研修医が2人しかいなかったことだ。そのうえ、行った手術が手根管開放術という容易な手術であった。もっと難しい手術の方が差が大きく出てよかったのではないだろうか。最後に、OSATSは一般的な手術に用いられる方法であるが、これを手根管開放術に用いたものは今までの研究ではなかったことだ。

OSATSの発展は整形外科教育、手術の教育の進歩の上で重要でまた必要である。腹腔鏡のようなほかの手術ではレジデントの教育で手術手技のテストが必要であるというようになっている。腹腔鏡手術では知識、周術期管理、テストにかかる時間で手先の器用さを判定している。今回の研究では手根管開放術でその評価を行った。今後整形外科手術全般で同様の評価が行われるときのフレームワークとなるでしょう。

≪論評≫
OSCIIの手術バージョンであるOSATSについての話でした。手根管開放術でOSATSで評価してみた。という方法です。教育、感染などさまざまな分野で一般外科の先生方はいろいろ考えて実行されているんだなと実感。
今後手術手技の評価は日本でも必要とされてくると思いますがOSATSという言葉を覚えておいても損はないかと。

1 件のコメント: