2009年12月28日月曜日

2009.12.28 JBJS(Am) Surgical Treatment of Dens Fractures in elderly patients

要旨
背景
歯突起骨折は高齢者でもっともよくみられる頚椎の骨折である。この研究は65歳以上の歯突起骨折を受傷し、手術治療を受けた患者さんのレントゲン上、機能学的な予後を解析することを目的として行われた。
方法
56人の患者、平均年齢71.4歳。1988年から2002年までで39例で前方からのスクリュウ固定、19例で後方からの頚椎固定が行われた。
結果
45人の患者が術前の日常生活レベルに復帰し、満足いく結果が得られた。35人の患者が頚椎の全可動域を獲得した。47人の患者で痛みが取れた。技術的な問題による失敗は8例あった。前方からのスクリュウ固定は良好な成績であった。37例中33例で骨癒合を得た。5例の患者で技術的な問題が発生した。後方固定が行われた19例は全例骨癒合し、3例で技術的な問題が見られた。機能的予後は前方固定に劣った。今回評価から除外された患者も含めると62例中10例で何かしらの問題があり、その死亡率は62人中4例であった。
考察
高齢者に対する歯突起骨折の手術治療結果は満足いくものであった。前方固定のほうが可動域の確保で有用であるということがわかったが、偽関節になったり再手術が必要となることと高い関連性があることがわかった。

表1 受傷機転とレントゲン上での骨折部の転位の程度

表2 アンダーソン分類、ロイカミレ分類による分類
アンダーソンタイプ2が多い。

表3 術後の機能予後、満足度調査 前方固定のほうがよい成績である

図1 前方固定の単純X線写真

図2 後方固定(ワイヤリング)

表4 ADL評価 前方固定のほうが頚椎の可動範囲では優れる。

考察
高齢化するにしたがって頚椎歯突起骨折はより頻度が高くなってくる。最近は麻酔のリスクはあるものの手術療法が有用であるということが提唱されている。手術が増える傾向にあるが、その長期予後について信頼に足る研究は少ない。
筆者らの研究では高齢者に対する歯突起骨折はあまり合併症を起こさず、良好な成績を得た。前方スクリュウ固定では89%という高い骨癒合率を得た。他の報告では75-85%くらいの癒合率とされているので、それよりも良好であった。前方固定後に骨癒合が得られない症例が4例あり、いずれも転位型の歯突起骨折であった。臨床成績についていえば満足のいくものであったとする報告がいくつかあり、特に若い患者では頚椎の可動域が保たれることが重要であるとされている。この研究でも2/3に日常生活の制限を認めず、痛みの無い生活が可能であった。技術的な失敗は5例(14%)で認められた。文献的には前方固定による合併症はまれであり、議論の余地があるとされている。アンダーソンらは高齢者ではたびたび前方固定が上手くいかないことがあったが臨床成績はそれほど悪くなかったとしている。われわれの研究では14%で上手くいかなかったが、再手術にいたったのは3例であった。ということで十分満足いく成績であると考えられる。
c1-2の後方固定では骨癒合率が100%であったが、頚椎の可動域制限が必ず出た。環軸椎固定で癒合が得られるかどうかはほかの文献でも高い癒合率が報告されている。癒合率が高い原因としてアンダーソンタイプ3骨折が半分以上の症例を占めている。一般的にタイプ3骨折の癒合率はタイプ2の骨折よりも高いということが知られている。ただし、今回の研究ではタイプ2とタイプ3でその骨癒合率には違いが無かった。後方固定では頚椎の可動域制限と慢性の痛みを訴えることがあるといくつかの文献で報告されている。特に回旋運動は環椎ー軸椎間でその運動の50%が行われているので、ここの固定を行うことでより深刻に発生する。いくつかの研究では高齢者では回旋制限は許容されるとしているが、われわれの研究では約半分の患者で満足感が得られていなかった。C1-2の経椎間関節スクリュウ法が今後別の方法として検討されてもよいのかもしれない。
われわれの研究では前方固定でも後方固定でもその合併症の発生率は似たようなものであった。ただ、他の研究では後方固定のほうが合併症の発生率が低いとされており、われわれの研究でそのようになったのは後方固定の患者数が少なかったことがある。しかし前方固定群に比べ再手術にまで至った症例は無かった。
有病率と死亡率については16%という高い数字であったが満足いく成績が得られたものと考えられる。ただ、手術をしないとその死亡率は10-25%とされており、また別の報告では手術をした歯突起骨折の患者の死亡率が0-30%となっていることからそれほど悪いものではないと考える。術前の合併症やそういった問題が関与している可能性がある。

《論評》
高齢者であれば後方固定の方が良いのかというように感じました.(今まで後方からのアプローチしか見たこと無いので)

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