2012年6月27日水曜日

20120626 JBJS(Am) Does timing to operative debridement affect infections complications in open long-bone fractures? A Systematic review

"The Gross Clinic," by Thomas Eakins, 1875.


世の中システマティックレビューと大規模研究が花ざかりです。
そんな流れを感じさせるような論文です。

抄録
ガイドラインでは受傷後6時間以内に緊急でデブリードマンを行うように推奨されている。本研究の目的は手術開始までの時間と開放骨折後の感染との関連を明らかにすることである。
方法
MEDLINE、EMBASE、Cochraneデータベースを用いて文献を検索した。開放骨折と感染について、手術までの時間との関連について検討した無作為割付試験、後ろ向き、前向きのコホート研究を渉猟した。random effect modelを用いて緊急または時間がたってからデブリードマンを行った患者についてmeta analysisを行った。
結果
885編の論文を渉猟し得た。タイトルから173編にしぼり、RCT、後ろ向きまたは前向きのコホート研究を行った16編、3539骨折について研究対象とした。検討した結果、デブリードマンが緊急であっても少し時間がたった後でのデブリードマンであってもその感染率には有意な差はなかった。開放骨折の型、部位、感染の形態でサブグループ解析を行ったが有意な差はなかった。
結論
本研究では緊急手術によるデブリードマンと少し時間がたってからのデブリードマンとの間では術後の感染についての関連を見出すことができなかった。より重症な骨折で深部感染症の発生は多かった。今回の検討の結果、いわゆる”6時間ルール”を積極的に支持する根拠は得られなかった。今後はより慎重にデザインを考慮した研究が必要であろう。また同時にむやみに治療を遅らせることを勧めているわけでも無いことに注意は必要である。



考察
本研究では以下のことが明らかとなった。
・感染全体について見てみると早期にデブリードマンをするかどうかは感染成立との関連は無さそう。
・ただし、より重症な骨折、より深部への感染が考慮されるような場合には早期デブリードマンが有用。

本研究ではできるだけ多くの症例を集めてみた。サブグループ解析も行なっている。
後方前向き研究を入れたことで、バイアスはかかりやすくなっているものの、多くの症例について検討が可能となった。
入院中の抗生剤の投与について記載されているものは殆ど無かった。感染率を下げるにあたって、抗生剤の投与は大きくその成立の有無に対して寄与する。実験的研究でもこのことは明らかと成っている。これは今後デザインされた研究によって明らかになっていくだろう。

この研究では6時間ルールについての明確な結論を得ることはできなかった。今後は他の因子について(外傷センターに運ばれるまでの時間、デブリードマンの質、抗生剤投与のタイミング、骨欠損の有無、患者の併存症、喫煙歴の有無)についても調べ、前向きに調べることで開放骨折に関わる機能障害を減少させることができるだろう。

【論評】
いわゆる開放骨折6時間ルールについての検討であります。

出展は忘れましたが、この6時間。と言うのはin vitroの研究で最近が急激に増加する時間が6時間なだけであって、臨床的に6時間である必要があるのかどうかというのはいままで検討されてこなかったわけであります。
6時間じゃなくてもいいんじゃね?というのはこの数年アチラコチラで目にするようになってきていて、それのレビューが本研究となります。
早期のデブリードマンが必須であることは間違いありませんが、ソレとともにどこまで的確にデブリードマンするか、骨欠損の処置をどうするのか?definitive treatmentをどうマネージメントするか?ということまで考えるとなるとむやみに早期デブリにこだわらなくても、という主張のようにも受け取れました。

前に田舎の病院にいて、自前の施設では緊急手術ができませんでしたので、周りの医療機関にお願いすることもありました。その時に搬送されてきて、処置して、搬送してとやっているとあっという間に6時間超えてましたしね。6時間超えてもダメなわけじゃない。といってもらえるとそういうへき地でやっている人間は精神的に楽になります。笑

自分が緊急手術が出来ない環境にあった時にやっていたのは、CEZ1gを即座に投与。Gustilo2以上で挫滅が著しい場合にはGM60mgから120mgを併用。破傷風トキソイドの投与。
創部は疼痛があって十分な洗浄が困難だと判断した時点でガーゼでくるみ何度も開けないようにする。活動性の出血は圧迫で対処。てな感じでヘリコプターを要請したり、救急車でのっていったりしました。

受け入れてくださった周りの医療機関の先生方には本当に感謝しています。

話しはかわりますが、なんとか、こういったエビデンスを自分たちで創りあげて、発信していかなければならない。と強く思っています。
今週末にも骨折治療学会がありますが、どうしても報告の形態がcase seriesに偏っていると感じます。
発表の仕方が悪いということが言いたいわけではありません。
どうしても日常業務が忙しすぎて統計の手法を学ぶことが出来なかったり、また症例もアチラコチラに分散してしまう日本の現状ではcase seriesが精一杯になってしまうのはよく理解しています。(僕自身の発表がcase seriesばかりですし。)

若手がシステマティックレビューの様な手法を学ぶ機会を作ったり、症例の集約化またはデータベース化をして行かないと臨床面でも置いて行かれるんじゃないか。という危機感があります。

只今前向き研究の研究計画書を作成しております。
また出せるようになったらここでもおみせしますね。


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