2012年11月12日月曜日

20121109 JBJS(Am) Does sleep deprivation impair orthopaedic surgeons' cognitive and psychomotor perfomance

SLEEP DEPRIVATION ILLUSTRATION


睡眠不足は、反応を遅らせ、判断を鈍らせ、思考能力を低下させる。本研究の目的は睡眠時間によって外傷整形外科医の認知機能や、精神状態が変化するのではないかということを調査した。

方法
都会にある教育研修施設であるような外傷センターに勤める31人の外傷整形外科医を対象とした。(レジデントから指導医まで)。ハンドヘルドのコンピューターを用いて認知機能と精神状態のテストを行った。結果は多変量解析を用いてテストの点数とその他睡眠量などに関連する因子に関して検討を行った。

結果
4時間をしきい値として、4時間以下の睡眠では有意にミスをする可能性が高くなった。(Odd比 1.43)。記憶力、集中力、注意力などでも有意に低くなった。

結論
4時間以下の睡眠しかとっていない整形外科外傷外科医は認知面での機能低下を認めた。このテストが実際にどの程度手術のパフォーマンスと関連しているかは不明である。

考察
本研究は当直/夜勤明けでも働いている整形外科外傷外科医の認知機能面での活動を評価したものである。睡眠が4時間以下となった場合には1つ以上のミスを犯す危険率が43%増加することがわかった。特に連続して記憶する能力の低下が認められた。記憶に関してはミスを犯す危険性が83%増加した。

本研究の対象となった外科医は短期の睡眠障害状態にあるというように本研究では定義されているが、実際にはこの外科医たちは慢性的な睡眠障害に陥っている。NIHの定義によると健康的な睡眠とは7から8時間程度の睡眠を指す。睡眠時間の減少は集中力の欠如、反応時間の遅延、気分障害を引き起こす。この研究に参加した外科医たちの睡眠時間は7時間を下回っていた。平均的な睡眠時間は研修医で5.4時間。指導医で6時間であった。以前に行われた研究では慢性的に6時間以下の睡眠しか取れていないと機能低下することが示唆されている。

もし、一晩寝られないだけで認知機能の低下が認められるようであれば、夜勤の連続は慢性の睡眠障害を引き起こし、より有害である。という結論になるのかもしれない。Saxenaらの研究で自宅までコールがあるレジデントと、自宅へのコールがないレジデントを比較して自宅までコールがあるレジデントのほうが反応が鈍くなってくるということを示している。これらの研究の結果は睡眠障害は認知機能、精神状態に大きく影響するということを示している。

いままで整形外科医に対する同様の研究はなかった。外科医以外での研究はいくつか行われており、それらはすべて睡眠障害が臨床能力に悪影響をおよぼすということを示唆している。ある研究ではコールが連続した状態の能力はアルコール摂取した精神状態とほぼ同じであるとする報告もある。

外科医の能力が睡眠障害によってどう変化するか、について。腹部外科では当直明けの医者が腹腔鏡シュミレーターを行うと手術時間が14%伸び、20%ミスが増加することを示している。この結果はシュミレーターを用いたものであり、実際の手術ではどうなるかは定かではない。

胸部外科の分野では、日中、夜勤帯での手術成績を比較して合併症、死亡率に差が無いことを示している。しかしその前にどの程度働いていたかなどのデータは無いため睡眠障害とどの程度関連しているかは不明である。

本研究の限界はテスト自体が10分間で終わるものであったために、実際の睡眠障害の程度を測る上で適切なテストであったかどうか不明なことである。またテストのまえに普段からのどのような生活をおくっているのかについても聴取できていない。本来1時間程度の精神状態を測定するほどのテストを行わないと行けないのであろうが、日中普通の業務をしている外傷外科医の時間をとるわけにはいかなかったため短時間のテストしか行えなかった。

睡眠障害では連続して記憶していく能力の低下が著しかった。これが注意力の低下、集中力の低下につながっていた。困難な事例に夜間遭遇した際に特に問題になるものと考えられた。

パイロットなどの職業では睡眠障害による害を認め、国家レベルで就業時間の制限を設けているのにもかかわらず、医療関係ではそういった配慮をしないことは不思議なことである。

実際の手術にどの程度影響があるかは本研究ではわからない。今後は睡眠障害と手術の影響についての評価が必要である。

<論評>
アメリカの夜勤帯はハゲしいと聞きますので、一概に日本の当直体制と比べて良いかはわかりません。笑

日本では当直明けそのまま勤務が普通ですので、36時間程度病院にいることは珍しくありません。
『当直』という言葉の定義は『夜間病院で何かがあった時に対応できるようにその病院にいること』ですので、救急などの対応を行うのは『夜勤』であるべきと考えています。

こんなブログを仕上げているひまがあれば早く寝なさいというのが本日の結論です。笑


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