2012年11月19日月曜日
20121108 JBJS(Am) THA vs open reduction and internal fixation of distal fractures RCT and long term follow-up
抄録
転位型の大腿骨頚部骨折については、短期のフォローでは、高齢者で内術が固定よりもTHAのほうが成績が良く、再手術が少ないということはよく知られた事実である。
本研究の目的は長期にわたってフォローをしてみても、本当にTHAのほうが臨床成績がよいのか、ということを検証することである。
方法
100例の大腿骨頚部骨折の患者。単施設、無作為割り付け試験。受傷前は健康であった例を対象とした。女性79例、男性21例。平均年齢は78歳。43例にTHA、57例に内固定が行われた。最終評価ポイントは股関節機能とし、Harris Hip Score(HHS).を用いた。十zくする評価因子としては死亡率、再手術率、歩行スピード、ADLとした。
結果
HHSはTHAのほうが高得点であった。平均の得点差は14.7点であった。2群間に死亡率の違いを認め中田。THAの9%、内固定群の39%で再手術が行われた。最終的な再手術率はTHA群が23%、内固定群が53%であった。この結果は術後1年の段階でのADL、歩行スピードにも影響していた。
結論
17年という長期フォローを行った結果、健康な高齢者に発生した転位型大腿骨頚部骨折はTHAで治療したほうが臨床成績がよいことが分かった。
考察
近年健康な高齢者が増加している。健康な高齢者が大腿骨頚部骨折を受傷した場合の長期成績においても、THAのほうが内固定群よりも優秀であった。
THAはcementedにて行われている。使われているステムはチタン合金であった。近年チタン合金よりもコバルト合金のほうが臨床成績が良いことが知られてからは当施設では17年前に使っていたこのタイプのステムを使用していない。
本研究の価値はRCTである上に長期間のフォローを行ったことである。大腿骨頚部骨折の報告は雲の数ほどあるものの、長期成績について述べたものはほとんどない。今後長寿化が予想されるので、長期成績について知っておくことは重要である。
本研究の限界はいくつかある。一つは20年前に行われた無作為割り付けであるのでその確からしさが怪しい。
また完全に健康であった高齢者のみを対象にしていることは注意が必要である。
4年を超えたころから2群間でHHSの点数に差が出なくなってくる。これは多くの患者がTHAにコンバージョンしてしまっていることと、高齢化が進行し、機能低下が避けられないためであると考えられる。
死亡率については両群で差がなく高かった。しかしながら歩行能力はTHA群のほうが高かった。重要なことはTHA群のほうが疼痛なく生活できていたという事実であろう
THA群のもっとも多い合併症はやはり脱臼であった。大径骨頭の使用、後方要素の再建を行うことで脱臼率は低下傾向にあることは追記しておく。
ゆるみについては他の股関節疾患の患者とそれほど変わりは見られなかった。
<論評>
RCTにも関わらず、17年という長期フォロー。恐れ入りました。
確かに大腿骨頚部骨折の患者の長期フォローってなかなか難しいところがあります。
外来の予約日にお見えにならなくて電話をするとご家族が代わりに出られて、他界されたというお話を聞かされることは同様の研究を行ったものであれば一度は経験したことがあるかと。
HHSで20点違うというのはものすごい違いです。疼痛が常時あるか、歩行が必ず杖もしくは松葉つえとなっているか独歩疼痛なしかくらいの差がありますので、患者さんに負担をかけてまで内固定を選択する理由はないものと考えます。
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