2012年10月12日金曜日

20121012 JBJS(Am) Prognostic factors for predicting outcomes after intramedullary nailing of the tibia

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長官骨骨折後の予後不良因子を予測することは患者の治療に当たる上で重要である。今回北米での前向き研究(Study to prospectively evaluate reamed intramedullary nails in patient with tibial fractures(SPRINT))を持って多施設での研究を行い、1226例の症例について検討を行った。

方法
ロジスティック回帰分析を用いて手術に関連する要素を解析してみた。

結果
高エネルギー外傷(OR=1.57)、ステンレス製の髄内釘の使用(OR=1.52)、骨折部のギャップの存在(OR=2.40)、術後の全荷重(OR=1.63)が骨癒合に不利な因子として明らかになった。
これにたいしてNSAIDSの使用、手術のタイミング、喫煙状況は独立した危険因子とはならなかった。
開放骨折は骨癒合遅延の予後不良因子の一つである。リーミングしてから髄内釘を入れた場合にはOR=3.26、ノンリーミングではOR=1.50であった。
開放骨折の患者で何かしらの軟部組織再建を加えた場合と、加えない場合では加えない場合の方が骨癒合遅延の危険性が低下した。

結論
脛骨骨幹部骨折に関わる危険因子について大規模な解析をおこなった。これらの要素について前もって患者に伝えておくことが重要である。

考察
脛骨骨幹部骨折ので再手術率は12%から44%までにのぼるとの報告がある。この問題に対処するために今回大規模な多施設共同前向き研究を行なってみた。高エネルギー外傷、ステンレス製の髄内釘の使用、骨折部のギャップの存在、術後荷重状況、開放骨折に対してリーミングして髄内釘を挿入することが危険因子として挙げられた。開放骨折に対する軟部組織再建については複雑な再建術を行うばあいよりも行わない場合の方が危険率が低下するということがわかった。その他の要因については危険因子となりえなかった。

開放骨折の場合にリーミングを行うか、ノンリーミングで行くか、ということは今までも議論されてきた。リーミングを行ったほうが骨癒合遅延が起こる、というのは筆者らの以前の研究でも報告してきた。
Randomized trial of reamed and unreamed intramedullary nailing of tibial shaft fractures. Study to Prospectively Evaluate Reamed Intramedullary Nails in Patients with Tibial Fractures Investigators, Bhandari M, Guyatt G, Tornetta P 3rd, Schemitsch EH, Swiontkowski M, Sanders D, Walter SD. J Bone Joint Surg Am.  2008 Dec;90(  12):2567-78.[CrossRef]
ちなみに有意な差はないとこの時には報告している。)

この他にもネイル径、骨欠損の程度、ネイルの製造メーカーについて検討したがいずれも独立した危険因子とは成り得なかった。

骨折部のギャップは1センチをしきい値として本研究では設定した。1センチのギャップで明らかに骨癒合遅延の危険性がました。

術後に全荷重も重要な因子であることがわかった。これは術後全荷重にしてよいと考える多くの術者の考えとは真っ向から対立する。荷重によって自然なダイネミゼーションがかかるのだが、疼痛、スクリューの破損などの危険もあり、脛骨の骨幹部骨折の髄内釘ではまずは荷重はホドホドにしておいたほうが良いのかもしれない。

喫煙は予想に反して危険因子とは成り得なかった。しかしながら有害であるということがわかっているため、禁煙は推奨した方がよい。

この研究の限界はアルコール使用、ステロイド、肥満などに搗いての調査が行えなかったことである。また比較的若年者を対象としているので高齢者が多くなるとまた変わってくるであろう。
しかしながらこれだけのサンプルサイズで行った研究がないことからこの研究結果は有用であるとかんがえられる。

<論評>
さすが北米。というような報告です。
臨床でもこれだけの多施設でまとまった研究ができるというのは素晴らしいことだなあと感じ入りました。
優れたコーディネーターの存在、データをまとめる人間がいることなどさまざまな要因が考えられます。日本では日常の雑務が多すぎて難しいでしょうね。。

結果についてはいままでの論文とやや違っているところも拝見されます。
リーミングした方が良いのでは?とおもっていましたが、今回は逆の結果となりました。
また喫煙も危険因子になるだろうと思っていましたがならなかったですね。

荷重については今ひとつよくわからなかったので、原文を読まれた方はコメントいただければと存じます。

また考察にも書いてありましたが、比較的若年対象ですので、日本のように高齢者が多いところで同じ話が通じるわけではない。というのは注意が必要でしょう。



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