2012年10月10日水曜日

20121010 JBJS(Am) Outcome after sequential hip fracture in elderly

抄録

大腿骨頚部/転子部骨折(以下大腿骨近位部骨折)は高齢者の機能障害、死亡原因の一つとなりうる。片側の骨折をきたしたあとにも体側の骨折のリスクが存在する。本研究の目的は高齢者の近位部骨折の両側例について発生率、疫学、予後について調査することである

方法
スコットランドの急性期病院で1998年から2005年までのデータを収集。2つの時期に分けて分析を行った。片側の骨折をおこしてから2年間は20日間隔にフォロー。その後は半年間ずつフォローを8年間継続した。

結果
反対側の骨折を起こす割合は片側の骨折を起こしてから最初の12ヶ月に最も高かった。3%の患者に起こり、その後2%ずつ減じた。反対側骨折をおこした場合の1年生存率は、片側だけの骨折の場合には68%であるのに対し、63%と有意に低下していた。反対側の骨折は死亡率の増加、居住場所の変化に影響する独立した因子として存在した。

結論
片側の大腿骨近位部骨折後に反対側の大腿骨近位部骨折をきたすのは比較的珍しい病態であることがわかった。反対側の大腿骨近位部骨折を起こすと生命予後、機能に悪影響を与えることがわかった。

考察
骨粗鬆症、転倒は大きな健康、社会問題の一つである。近年65歳以上の3分の1が、80歳以上では2分の1が1年の間に一回は転倒しているというのがわかっている。転倒した患者の10%から15%が骨折にいたる、ということがわかっている。
骨脆弱性骨折の既往は骨粗鬆症、続発する骨脆弱性骨折の危険因子であるということは知られている。そしてそのような患者に対しての介入が必要であることが公衆衛生学的見地より言われている。
骨塩量の低下、高齢、骨脆弱性骨折の既往、機能障害、視力低下、睡眠導入剤の使用はそれぞれ独立した大腿骨近位部骨折のリスクであると言われている。いずれも介入することが難しく、できることは片側の大腿骨近位部骨折をきたした患者に対して介入することであると筆者らは考えた。
本研究では反対側の骨折を起こす割合は3%と低かった。今までの報告では2%から10%と報告されていたからこの結果は驚きである。
片側の骨折後1年以内に反対側を骨折するというのは従来の報告通りであった。
反対側の大腿骨近位部骨折をきたした症例では1年生存率が片側だけの群よりも有意に低くなっていた。
大腿骨近位部骨折では術後の機能障害も問題となる。術後120日での患者の居住場所について調べたところ片側のみ、反対側まで骨折した群で差は認められなかった。
もともと54%の患者が自立した生活を送れていたものの、大腿骨近位部骨折を減ることでその割合は14%減少した。反対側を骨折するような患者では、片側を手術して反対側を手術するまでの間は21%しか自立した歩行ができず、術後はわずか6%が自立歩行を回復した。
最近の研究で反対側まで予防的に骨接合する。と言う方法を行ったものがある。これは発生率からするとやり過ぎではないかと考えられる。

<論評>
片側の大腿骨近位部骨折をきたした患者で反対側の骨折をどれくらいきたすか、という研究です。
かくいうブログ主も一度調べたことがありまして、その時には7%でありました。
三重で同じような論文を英語でだしていらっしゃる先生がいて、同じような割合であったような気がいたします。(今回の中部整災でも同じようなネタがあった気が。)

日本でコレを調べようとすると、よその片側はA病院、反対側をB病院で、ということがしばしばあるためにその発生率がどれくらいになるのか、と言うのがわからないことが多かったです。
本研究は20000人のフォローということで、JBJSにのる価値のある論文やなあと感心して読んでおりました。

大規模になりましたので細かい因子分析などは行えておりませんがこれは仕方ないでしょう。

術後にどう介入するか、が今後の課題。ということになります。
大腿骨近位部骨折の患者で、同意が得られる患者であれば反対側骨折予防のためにて◯ぼんなどの投与も考慮してよいのではないでしょうか。
nは150くらい必要、ですな。。。。。


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